47才男性右肺門部原発の小細胞癌症例を報告した.治療前, 造影頭部CTで多発性脳転移像を認めた.右前頭葉に浮腫を伴う円形病変, 左後頭葉に壁在結節を有しリング状に造影される嚢胞状病変を認めたが, 脳転移巣に由来する臨床症状は認めなかった.2コースの化学療法後, 胸部X線上部分寛解を得, 壁在結節を含め嚢胞状病変も縮小した.
2コースの化学療法6週後, Gerstmann症候群が出現した.頭部CTではmidline偏位を伴う嚢胞状病変の増大を認めた.マンニトールやステロイド剤の投与で症状は改善せず, 嚢胞状病変の摘出術が施行された.摘出標本から肺小細胞癌脳転移の確定診断を得た.術後, 放射線療法を併用し, 脳転移巣はコントロールされた.この間, 胸部腫瘤影の増大を認めなかった.その後化学療法を追加し, 発病後18カ月を経た現在, 外来管理中である.文献上, 壁在結節を有する嚢胞状転移はまれであり, その要因に対する考察を含めて報告した.
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