肺癌
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54 巻, 3 号
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原著
  • 藤原 綾子, 東山 聖彦, 狩野 孝, 徳永 俊照, 岡見 次郎, 井上 敦夫, 冨田 裕彦, 今村 文生
    2014 年54 巻3 号 p. 121-127
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.肺癌術後経過観察中の患者に出現した孤立性充実性病巣のうち,悪性疾患(2次性原発性肺癌(SPLC)または肺癌再発(LM))に対する診断精度や手術成績を検討した.方法.1976年1月から2010年12月までの間に当院で切除を行った原発性肺癌症例中,複数回の肺切除が行われSPLCまたはLMと診断された54例を対象とし,後ろ向きに比較検討した.結果.2回目手術の病理学的診断は,SPLC 35例,LM 19例.背景因子に2群間で有意差を認めなかった.全症例の2回目術後生存期間中央値は61.9ヶ月,群別ではLMが61.6ヶ月,SPLCが60.9ヶ月で,有意差を認めなかった(P=0.77).2回目手術以降の経過について検討したところ,LM群で有意に再発頻度が高く(P=0.007),再発様式は,LM群では胸腔内,特に肺内転移の再々発が有意に多かった.結論.肺癌切除後に発見された孤立性充実性肺悪性病変に対する外科切除後の成績は5年生存率60.8%と比較的良好で,積極的に手術適応と考えられる.その後の再発様式は,SPLCとLMでは異なり,経過観察に配慮が必要である.
  • 乾 俊哉, 横山 琢磨, 高田 佐織, 平田 彩, 西沢 知剛, 肥留川 一郎, 和田 裕雄, 石井 晴之, 滝澤 始, 後藤 元
    2014 年54 巻3 号 p. 128-134
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.未治療非小細胞肺癌に対するcisplatin(CDDP)+pemetrexed(PEM)併用療法の効果と忍容性を検討した.方法.当科でCDDP+PEM併用療法を行った未治療非扁平上皮非小細胞肺癌41例(男性31例,女性10例)を対象に後方視的検討を行った.結果.年齢中央値は66歳(44~78歳).組織型は腺癌39例,非扁平上皮非小細胞癌2例.Grade 3/4の有害事象は白血球減少12.2%,好中球減少34.1%,貧血7.3%,血小板減少4.9%,低ナトリウム血症24.4%,食思不振22.0%,嘔気9.8%,嘔吐2.4%であった.治療効果は奏効率が35.3%,病勢制御率が76.5%であり,median progression-free survivalは5.2ヵ月,median survival timeは22.1ヵ月であった.結論.CDDP+PEM併用療法について,本結果は大規模臨床試験と同等の治療効果を認めた.しかし消化器毒性が多く,嘔気の管理が重要と思われた.また,低ナトリウム血症が多かった.
症例
  • 下山 武彦, 河崎 勉, 田ノ上 雅彦, 木村 文平
    2014 年54 巻3 号 p. 135-140
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.結節性硬化症に合併する呼吸器症状としてmultifocal micronodular pneumocyte hyperplasia(MMPH)やpulmonary lymphangiomyomatosis(LAM)が知られている.今回,我々は結節性硬化症に合併したMMPHを背景に伴う肺腺癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例.69歳女性.13歳時に結節性硬化症と診断,21歳時より胸部異常影を指摘されていた.69歳時に精査を勧められ,当院へ紹介となった.胸部CTでは右S3にspiculaを伴う結節影を認め,両側肺野に多数の微小結節が散在していた.FDG-PET/CT検査では右S3の結節にのみ集積を認め,原発性肺癌cT1aN0M0(IA)と診断,右S3区域切除術を施行した.病理組織診断で腺癌と診断した.また,周囲の微小結節はMMPHに相当する病変と考えられたが,一部は細気管支肺胞上皮癌に相当した.術後3年の時点で無再発であるが,CEAが斬増しており,厳重に経過観察している.結論TSC遺伝子が肺腺癌発現に関わっている可能性があり,今後さらなる検討が必要である.
  • 上野 泰康, 服部 有俊, 阪野 孝充, 鈴木 健司
    2014 年54 巻3 号 p. 141-145
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺全摘術後の稀な合併症としてBenign Emptying of the Postpneumonectomy Space(BEPS)という病態がある."肺全摘術後に,胸部X線上術側の液面低下を認めるが,気管支断端瘻もしくは膿胸の病態では説明のつかない無症候性臨床所見を呈する現象"と定義されている.症例.60歳代女性.検診で異常影を指摘され,胸部CTで左上葉に16 mmの結節を認めた.転移が疑われた肺門部リンパ節が肺動脈へ浸潤していたため,左肺全摘除術を行い(adenocarcinoma,pT1aN1M0 stage IIA),術後1ヶ月より補助化学療法を行った.1コース終了時,胸部X線上術側の液面低下を認めた.気管支断端瘻が疑われたが,気管支鏡で瘻孔を認めず,BEPSと診断し保存的治療とした.術後1年6ヶ月が経過した現在も左胸腔は完全な空洞だが,全身状態は良好であり,無再発生存中である.結論.BEPSは気管支断端瘻,引き続く膿胸との鑑別が重要で,通常は除外診断となる.侵襲的な治療を要さない病態として念頭に置くべきである.
  • 後藤 英典, 上原 浩文, 齋藤 雄一, 元井 紀子, 石川 雄一, 奥村 栄
    2014 年54 巻3 号 p. 146-152
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Anaplastic Lymphoma Kinase(ALK)融合遺伝子をもつ肺癌とEpidermal Growth Factor Receptor(EGFR)の変異をもつ肺癌の同時性多発肺癌の切除例は稀であり,癌発生や治療の観点から興味深いので,今回我々は2例を報告する.症例1.61歳女性.左乳癌術後フォロー中,胸部CTで左上葉腫瘤影と左下葉結節影が指摘された.左上葉肺癌と左下葉肺癌の重複癌と診断し,左肺全摘+リンパ節郭清を施行した.遺伝子検査で左上葉がEGFR陽性,免疫組織化学的検査(IHC)で左下葉がALK陽性であった.症例2.56歳女性.検診で右S2に異常影を指摘された.気管支鏡検査で肺腺癌,cT2aN2M0 stage IIIAの診断となった.術前化学療法後に右上葉切除術+リンパ節郭清を施行した.IHCでS2病変はALK陽性であり,またS1にEGFR陽性の重複癌を認めた.結論.多発性肺腫瘍の切除検体にEGFR肺癌とALK肺癌が併存した2症例を経験した.多発癌においては異なる遺伝子変異をもつ可能性を念頭に置く必要がある.
  • 大沼 仁, 井上 ゆづる, 加藤 仁一, 関 邦彦
    2014 年54 巻3 号 p. 153-157
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Echinoderm microtubule-associated protein-like 4(EML4)-anaplastic lymphoma kinase(ALK)は2007年に同定された強力な癌化能を示す融合型発癌タンパクである.EML4-ALK陽性肺癌の臨床的特徴として若年発症がある.非常に若年のEML4-ALK陽性肺腺癌を認め,クリゾチニブによる治療を行ったことを報告する.症例.18歳女性.咳嗽と血痰を主訴に来院.右肺下葉に9.5 cmの腫瘤,両肺の多発結節,肺門・縦隔のリンパ節腫大および両側副腎の腫大を認めた.病理的に印環細胞の成分を含む肺腺癌と診断.EML4-ALK融合型遺伝子をreverse transcriptase-polymerase chain reaction法を用いて検出した.クリゾチニブによる1次治療が開始され,症状,画像所見の改善を認めた.結論.本症例は,稀有な非常に若年のEML4-ALK陽性肺腺癌であった.今後,若年者肺癌の遺伝子プロファイルが明らかにされることが必要であると考えられる.
  • 山下 理奈子, 玉岡 明洋, 瀧 玲子, 宮崎 泰成, 稲瀬 直彦, 明石 巧
    2014 年54 巻3 号 p. 158-164
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.心膜原発悪性中皮腫は稀であり,予後不良の疾患である.症例.64歳男性,元電気工.ネフローゼ症候群にて通院中に胸部X線にて心膜肥厚と左胸水を指摘され,収縮性心膜炎と診断された.内服加療を受けていたが,徐々に労作時呼吸困難と嗄声が出現,当科入院となった.急速な心不全の進行により永眠され,剖検にて心膜原発悪性中皮腫(上皮型)と診断された.結論.心膜中皮腫の早期診断は困難であるが,収縮性心膜炎の鑑別において念頭に置くべきと思われた.
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