肺癌
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45 巻, 2 号
April
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原著
  • 平井 啓, 所 昭宏, 中 宣敬, 小河原 光正, 河原 正明
    2005 年 45 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的. 外来化学療法への移行に関して, 行動変容の理論であるトランスセオレティカル・モデル (TTM) の理論を用いた面接調査を行い, 患者の外来移行への意思決定を体系的に把握することを目的とした. 対象と方法. 2003年10月から11月までの期間で, 化学療法中の入院ならびに外来通院中の肺がん患者22名に対する面接調査とその内容分析を行った. 結果. 外来移行への準備性段階として, 前熟考期7名 (31.8%) ;熟考期6名 (27.3%) ;準備期3名 (13.6%) ;実行期6名 (27.3%) に分類された. 外来化学療法の移行の意思決定バランスのカテゴリーとして, 恩恵19項目と負担19項目の合計38項目のカテゴリーが作成された. 恩恵のカテゴリーで出現頻度が最も高かったのは「食事の自由」, 負担のカテゴリーでは「病状変化に対する不安」であった. 準備性段階毎では, 前熟考期と熟考期では, 負担カテゴリーが多かったのに対して, 準備期と実行期では恩恵カテゴリーの方が多かった. 結論. 本研究の結果から, 外来化学療法の移行に関して, TTMの理論を用いた準備性段階による評価と意思決定バランスのカテゴリーの作成は妥当である可能性が示された.
  • 江夏 総太郎, 白石 武史, 岩崎 昭憲, 蒔本 好史, 前川 信一, 三好 立, 平塚 昌文, 山本 聡, 川原 克信, 白日 高歩
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2005 年 45 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的. 大動脈合併切除を施行した原発性肺癌症例を検討する. 方法・対象. 当施設で大動脈合併切除を施行した原発性肺癌5症例を対象とした. 大動脈合併切除の必要性は術前診断にCT・MRIを用い, 術中所見にて最終的な判断を行った. 臨床・病理病期は肺癌取扱い規約に準じた. 結果. 全例が男性の喫煙者. 平均年齢は57歳. 術式は左肺全摘術が4例, 左肺上葉切除術1例. 合併切除部位は大動脈外膜1例 (再建なし), 大動脈弓部1例 (パッチ補填), 下行大動脈3例 (人工血管置換術) であった. 術後合併症は2例 (肺炎, 不整脈) に認めたが, 手術関連死は認めなかった. 組織型は扁平上皮癌2例, 腺癌1例, 大細胞癌1例, 小細胞癌1例であった. 病理病期pT3N0M0 (IIB) 2例, pT3N2M0 (IIIA) 1例, pT4N0M0 (IIIB) が2例であった. 病理学的に大動脈壁への浸潤を2例に認めた. 大動脈浸潤2症例の予後はそれぞれ3年2ヶ月, 7年2ヶ月無再発生存中である. 結語. 原発性肺癌の大動脈浸潤を術前に診断することは困難であった. 腫瘍の浸潤が大動脈壁に留まりリンパ節その他への浸潤転移がない症例において良好な切除成績を期待できる可能性が示唆された.
  • 河端 美則, 青山 克彦, 星 永進, 生方 幹夫, 高柳 昇, 杉田 裕
    2005 年 45 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的. 様々な拡がりのusual interstitial pneumonia (UIP) 病変を有する肺癌例の術後急性増悪の病理学的特徴を知ることを主な研究目的とした. 対象と方法. 対象は過去15年間に肺癌のため肺葉以上の切除がされた900例 (男性673例, 女性227例, 平均年齢66歳) である. UIP病変を肉眼的な拡がりによりびまん性, 限局性, ミクロ的に分け, また肉眼形態の特徴から亜分類した. 結果. UIP病変は211例 (男性189例, 女性22例, 平均年齢70歳, 23.4%の頻度) に, 術後の急性増悪と考えられる急性悪化は12例 (5.7%) に見られた. びまん性の拡がりを有する47例は5例 (10.6%) に急性悪化を, 限局性の100例は6例 (6.0%) に, ミクロ的な64例は1例 (1.6%) に認めた. 亜型別には厚壁蜂窩肺型72例中9例 (12.5%) に, 薄壁蜂窩肺型68例中2例 (2.9%) に急性増悪が見られた. 結論. 今回の成績は, a) 肺癌例にはUIP病変が高率に存在する, b) 極めて軽度のUIP病変でも急性増悪の原因になる, c) 急性増悪を誘起しやすい亜型が存在する, の3点を示唆する.
症例
  • 神谷 健太郎, 伊藤 秀幸, 奥脇 英人, 森田 敬知, 藤井 丈士
    2005 年 45 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景. 印環細胞癌 (signet-ring cell carcinoma: SRCC) は胃に多く発生し, 肺原発のものは稀である. 今回我々は肺原発の印環細胞癌症例を経験したので報告する. 症例. 28歳, 女性. 喀血のため前医に緊急入院し, 当院転院となった. 胸部CTで右下葉に60×35 mmの内部不均一な腫瘤影とそれに連続した肺門, 縦隔リンパ節腫大を認めた. 右中下葉切除及び縦隔リンパ節郭清術を施行した. 肉眼的には, 右下葉に57×50×37 mmの白色充実性腫瘍を認めた. 病理組織学的には, 微細顆粒状~泡沫状の豊かな細胞質 (PAS, alcian blue陽性) を有する印環細胞が肺胞腔を充満するように増殖していた. 印環細胞は腫瘍の約95%以上を占めていた. 免疫組織学的には, thyroid transcription factor-1 (TTF1) 弱陽性, cytokeratin-7 (CK7) 陽性, cytokeratin-20 (CK20) 陰性であった. 以上より, 肺原発の印環細胞癌と診断した. 病期はpT2N2M0, stage IIIAであった. 結論. 印環細胞癌は稀ではあるが肺原発の可能性も考慮する必要があり, また印環細胞成分が予後因子の1つとなる可能性が考えられた.
  • 加藤 達雄, 中島 賢憲, 今尾 要浩, 小牧 千人, 佐野 公泰, 吉見 直己
    2005 年 45 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景. 肺癌の自然退縮は非常にまれであり, ほとんど報告はない. 症例. 60歳, 男性. 肺結核を合併した右肺上葉の肺癌で, 肝臓に転移を認めた. 抗結核剤の投与のみで抗癌剤の投与は行われなかったが, 原発巣, 肝転移ともに縮小した. 血清CEAは入院時には88 ng/mlと上昇していたが3ヵ月後正常化した. 7年間経過観察中であるが, 再発をみていない. 結論. 本例は肺結核に合併した肺癌が自然退縮した希少な症例であると考えられた.
  • 高野 真吾, 楠本 昌彦, 立石 宇貴秀, 松野 吉宏, 大江 裕一郎, 浅村 尚生
    2005 年 45 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景. 小細胞癌は, 気管, 喉頭悪性腫瘍の中では非常にまれである. 症例. 28歳, 男性. 嚥下時違和感, 嗄声, 乾性咳を主訴に受診. 気管支鏡にて声門直下に気管内腔に突出する腫瘍を認め, 同部位よりの生検にて小細胞癌の診断となった. CTにて輪状軟骨浸潤, 甲状腺右葉浸潤を疑った. 声門直下気管小細胞癌の診断で, 化学療法としてcisplatin (CDDP), etoposide (VP-16) を4コース, 放射線治療45 Gy/30回を同時併用で行った. 治療開始時より1年9ヶ月経過した現在, CR持続中である. 結論. 化学療法, 放射線治療同時併用にて寛解を得た若年者声門直下気管原発小細胞癌の1例を経験したので報告する.
  • 山田 徹, 小林 良樹, 北 英夫, 安場 広高, 千葉 渉, 人見 滋樹
    2005 年 45 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景. 高出力半導体 (GaAlAs) レーザー装置の開発により気管, 気管支内の悪性腫瘍に対して気管支鏡下の半導体レーザー治療が可能となった. 以前より使用されていたNd-YAGなどの高出力レーザーよりも装置が小型, 軽量という利点があり, 同等の臨床効果がある. 症例. 外科的切除術の適応とならない気管癌1例, 腎細胞癌, 乳癌の気管支内転移各1例に対して, 気管支鏡下に高出力半導体 (GaAlAs) レーザー装置 (UDL-60, オリンパス社製) を用いて半導体レーザー治療を行い, 全身化学療法と体外放射線照射を併用した. レーザー治療の総エネルギー量はそれぞれ1340 J, 3023 J, 1115 Jで, 特に合併症は生じなかった. 3例とも半導体レーザー治療施行後の早期よりそれぞれ血痰, 喘鳴, 咳嗽の呼吸器症状の消失を認めた. また, 全身化学療法と体外放射線照射を併用することで2年以上の比較的長期にわたり, 気道内局所再発による呼吸器症状の再発を防ぐことが出来た. 結論. 高出力半導体レーザー治療は気管, 気管支の悪性腫瘍に対して局所制御による呼吸症状の消失をもたらすのみではなく, 全身化学療法, 体外放射線照射との併用により長期にわたり呼吸器症状の再発を防ぎうる.
  • 小田島 奈央, 山崎 浩一, 別役 智子, 西村 正治
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2005 年 45 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景. 今回我々は, 間質性肺炎と糖尿病を背景とした肺アスペルギルス症の診断後に同部位に肺扁平上皮癌と診断した症例を経験したので報告する. 症例. 81歳男性. 2000年3月に胸部CT上左S9の浸潤影を指摘され, 肺アスペルギルス症と診断された. Itraconazole内服で経過観察中, 2002年11月頃より浸潤影が急速に増大し, 2003年3月当科に入院した. 経気管支生検にて肺扁平上皮癌と診断, 左下葉切除を施行した. 病理組織学的には, 腫瘍壊死空洞部分にアスペルギルスが存在し, その周囲には間質性肺炎 (nonspecific interstitial pneumonia: NSIP, group 2) を認めた. NSIPによる既存の嚢胞内に腐生性にアスペルギルスが感染し, その後肺癌を発症したと推測された. 結論. 肺アスペルギルス症が抗真菌剤に反応しない場合, 肺癌が合併する可能性を常に念頭におくべきである.
  • 山川 範之, 西尾 智尋, 佐々木 信, 河村 哲治, 中原 保治, 望月 吉郎
    2005 年 45 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景. 肺癌と肺アスペルギルス症の同部位合併例は散見するが, 別部位合併の報告は稀である. 今回, 我々は別部位合併に対し内科的に治療した症例を経験したので報告する. 症例. 66歳男性, 主訴は血痰. 胸部CTにて右S6, 左下葉に腫瘤を認め, 気管支鏡下生検にて腺癌と診断した. 化学療法を施行し, 左肺腫瘤は縮小したが逆に右肺腫瘤は増大し, 肺アスペルギルス症の関与が判明した. 抗真菌剤投与を行い右肺腫瘤には効果が見られたが, その後, 肺癌の悪化により死亡した. 結論. 肺癌と肺アスペルギルス症の別部位合併例は報告が少なく, 今後, 抗癌剤, 抗真菌剤併用の方法などについて症例を重ね検討する必要があると思われる.
第20回肺癌集検セミナー
  • 光冨 徹哉
    2005 年 45 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的. 分子生物学を肺癌検診に応用していく試みを整理し問題点を明らかにする. 方法. 肺癌感受性診断, 微量肺癌細胞の検出による早期診断などに関する文献を検索した. 結果. 肺癌の感受性診断 : 疫学的に示される肺癌の弱い遺伝性の実体として, 発癌物質代謝酵素, 遺伝子修復関連や癌関連遺伝子などの多型などがあり, 数倍の肺癌リスク上昇が示されている. このような単塩基多型 (single nucleotide polymorphism: SNPs) を網羅的に同定しその意義を検証する研究が現在進められており, 今後の発展が期待される. 微量肺癌細胞の検出 : 喀痰, 血清などの癌関連遺伝子の突然変異, メチル化, 上皮マーカーの発現などをPCR法によって増幅し高感度に検出して早期発見に役立てようとする試みである. これにより高感度に癌を発見できると報告されているが, 感度と特異度は両立し難く, また再現性にも問題があることが多い. 最近ではマススペクトロメトリーによる血漿蛋白の解析によって癌の早期診断を行う試みがあり検診への応用が期待されている. 結論. 肺癌の集検にこのような方法をすぐ応用していくことは未だ困難である. 発展のためには集検時に良質な検体を蓄積していくことが重要であろう.
  • ―FDG-PETは肺癌検診として有用か?―
    寺内 隆司
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2005 年 45 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    FDG-PETはがん検診の新しい手法として期待されている. わが国においてPETがん検診施設が急速に増加しており, 良好ながん発見率が報告されている. しかし, PETがん検診はまだ有効であるという科学的根拠 (エビデンス) は明らかにはなっておらず, 今後エビデンスを明らかにすることがPETがん検診を確固たるものとするために必要である. 肺癌検診としても新たな検診手法としてPETは期待されているが, 病変検出能ではCTによる検診の方が優れており, 今後PET検診がいかにCTから得られる情報に有用な情報を付加できるかが重要な検討事項である.
  • 仁木 登
    2005 年 45 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    国立がんセンター中央病院, 国立がんセンター東病院, 東京から肺がんをなくす会は1993年9月より肺がんのCTスクリーニングを実施している. このCT検診によって多数の早期肺がんを発見して有効性を示している. この検診に1997年7月よりCADを導入して臨床運用している. CADを利用した読影が早期肺がんの発見に寄与していることを報告する.
  • ―肺癌
    中山 富雄, 楠 洋子, 鈴木 隆一郎
    2005 年 45 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の市町村で行われている肺癌検診は, 年間700万人以上が受診しているが, 肺癌発見数は3600人弱 (発見率51/10万人) で, 受診者の増加に伴っていない. 都道府県別にみると発見率は最大111.5, 最小18.5でその差は最大6.2倍とバラツキは大きかった. 市町村別に見ると, 精検受診率や精検完了率が30%を下回る市町村も認められ, 受診者数5000人以上の市町村の6.3%で過去2年間肺癌は1例も発見されていなかった. 肺癌検診は外的精度管理の枠組みがないまま, 急速に普及していった. 市町村事業と位置づけられてからは, 実施数や費用のみが問題とされており, 精度については検討されておらず, 受診者にも精度に関する情報は提供されていない. 今後は対象者や精度管理指標の基準値を盛り込んだ運用指針の見直しと, 第3者機関による検診成績の情報公開が必要である.
  • 佐藤 功
    2005 年 45 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的. 肺癌検診を中心としたCTから肺気腫の発症頻度を検討した. 対象と方法. 対象は2731例で, 男性1890例, 女性841例の21~91歳である. 肺気腫はCT上の低吸収域で診断し, 呼吸機能検査は参考にしていない. 男性では喫煙者が過去喫煙者を含めて1592例, 非喫煙者が298例であり, 一方女性では喫煙者が過去喫煙者を含めて114例, 非喫煙者が727例であった. CT所見は正常と, 肺気腫を軽度のgrade1から重症のgrade4にまで分類した. CTは1 cm厚の連続画像で, 高分解能CTは使用していない. 結果. 男性において肺気腫は喫煙者1592例中827例 (51.9%), 非喫煙者298例中6例に認められた. 女性では喫煙者114例中27例 (23.7%), 非喫煙者727例中10例 (1.4%) に認められた. 男性喫煙者での肺気腫の重症度別では, grade1が383例, grade2が206例, grade3が154例, grade4が84例であった. 一方女性喫煙者での重症度別ではgrade1が17例, grade2が6例, grade3が4例でありgrade4はなかった. また男性喫煙者の年齢別の肺気腫の発症頻度は30歳未満で27例中8例 (29.6%), 30歳代90例中33例 (36.7%), 40歳代294例中138例 (46.9%), 50歳代507例中241例 (47.5%), 60歳代406例中231例 (56.9%), 70歳代以上268例中176例 (65.7%) であった. 考察. 肺気腫は30歳以下の若年者から認められる. 肺気腫は非喫煙者でも発症するが, 喫煙と密接に関連し年余にわたる喫煙の積み重ねで進行する. 肺気腫は平均では男性喫煙者の半数以上に認められる.
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