肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
53 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
原著
  • 中野 喜久雄, 吉田 敬, 北原 良洋, 荒木 佑亮
    2013 年 53 巻 6 号 p. 745-750
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.進行非小細胞肺癌の生命予後および化学療法の目標に対する患者認識の実態と,終末期の転帰との関連を調査した.対象と方法.進行非小細胞肺癌で一次治療以上の化学療法を施行した36例.方法は,癌の治癒と化学療法による癌の完全除去についての患者認識をアンケート調査し,さらに正確あるいは不正確な認識による終末期の転帰の差を前向きに研究した.結果.化学療法開始日から調査時までの中央値は17.7ヶ月であった.癌が治癒しないと認識した患者は56%で,癌の治癒と化学療法による癌の完全除去について正確に認識が一致した患者は38%だけであった.調査後に死亡した19例のうち,認識が正確な群(正確群)11例と不正確な群(不正確群)8例との間で,化学療法中止から死亡までの期間と生存期間に差がなかった.化学療法中止を医者が患者に直接説明した例は正確群で64%と,不正確群の38%に対して多い傾向であった.看取り場所の緩和ホスピス例は,正確群が不正確群に比べて多い傾向であった(31% versus 0%,P=0.055).結論.多くの進行非小細胞肺癌患者が生命予後と化学療法の目標について誤認識しており,それが不適正な終末期治療選択に繋がると考えられる.
症例
  • 中野 智之, 石川 成美, 齊藤 紀子, 蘇原 泰則, 黒田 一, 遠藤 俊輔
    2013 年 53 巻 6 号 p. 751-754
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸腺癌は稀な腫瘍で,その中でも類基底細胞癌の頻度は少ない.症例.71歳,男性.肺癌と直腸癌術後の定期検査でCEAの上昇と前縦隔に嚢胞性病変を伴う腫瘍を認め,PET-CT検査ではこの腫瘍にのみ,SUV max 8.4の集積を認めた.診断・治療目的に胸骨正中切開による縦隔腫瘍摘出術を施行.病理組織学的に胸腺類基底細胞癌,pT2N0M0,stage II,正岡分類II期であった.術後に放射線療法を追加し,CEAは一度は正常範囲内となったが,その再上昇に伴い,術後13か月で多発性骨転移と右副腎転移が確認された.現在は骨転移への緩和放射線治療中である.結論.肺癌と直腸癌術後に発症した,胸腺類基底細胞癌の1例を報告した.先行する他臓器の悪性腫瘍があっても,孤立性の嚢胞状変化を伴う前縦隔病変では,胸腺由来の原発腫瘍を考え,診断治療に臨むべきである.
  • 森山 雄介, 渡邉 恵介, 新海 正晴, 後藤 秀人, 石ヶ坪 良明, 金子 猛
    2013 年 53 巻 6 号 p. 755-759
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Garcin症候群とは,主に頭蓋底部の腫瘍性疾患などにより,一側性多発性に脳神経が侵され,四肢麻痺及び頭蓋内圧亢進症状を認めないものとされている.Garcin症候群による症状を契機に発見された肺癌症例は2例のみ報告されているが,いずれも神経症状の改善は得られていない.症例.61歳の女性.嗄声,嚥下障害を主訴に当院を紹介受診した.左側IX~XIIの脳神経障害を認め,頭部CTにて左側後頭蓋窩に単発の腫瘤を認めた.また,胸部CTで右肺S2内側に腫瘤及び縦隔リンパ節腫大を認めた.頭蓋骨の腫瘍生検を施行し,肺小細胞癌,頭蓋骨転移及び片側性多発脳神経障害(Garcin症候群)の併発と診断した.カルボプラチン(carboplatin)+エトポシド(etoposide)にて化学療法を開始したところ,神経症状の改善及び腫瘍の縮小を得た.結論.片側性多発脳神経障害を認めた際,頭蓋底部の腫瘍性疾患を念頭に置く必要があると考えられた.また,肺癌の頭蓋底転移による腫瘍の縮小が認められると神経症状が改善する可能性が示唆された.
  • 藤原 俊哉, 西川 仁士, 稲田 順也, 金原 正志, 小谷 一敏, 松浦 求樹
    2013 年 53 巻 6 号 p. 760-766
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.小細胞肺癌治療後,二次癌の発生相対危険度は高い.症例1.63歳,男性.右中葉原発限局型小細胞肺癌(LD-SCLC)に対し同時併用放射線化学療法を行った.画像上CRとなり,予防的全脳照射を行った.5年後,再発は認めなかったが,対側肺にCT上充実性結節が出現した.左底区域切除を施行し,術後診断は扁平上皮癌,p-stage IAであった.症例2.81歳,男性.低分化肺癌の診断で右下葉切除施行.術後病理検査でLD-SCLCと診断.術後補助化学療法を施行した.15年後,他疾患通院中にCTで対側肺に多発する混合型スリガラス影を認めた.左上区域切除を施行し,術後診断は腺癌,p-stage IBであった.症例3.60歳,女性.前医で中間気管支幹原発LD-SCLCに対し,化学療法と逐次的胸部放射線照射を行った.画像上CRとなり,予防的全脳照射を行った.8年後,CTにて肺結節が出現,PETで同結節と気管分岐下リンパ節にFDG集積を認めた.右下葉切除を施行し,術後診断は腺癌,p-stage IIIAであった.全例無再発生存中である.結論.小細胞肺癌治療後,長期生存例に対して注意深い観察が必要であると考えられた.
  • 齋藤 大輔, 小田 誠, 大和 太郎, 今井 哲也, 龍澤 泰彦, 佐藤 勝明
    2013 年 53 巻 6 号 p. 767-770
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.縦隔発生の脂肪肉腫は非常に稀である.症例.70歳,男性.2012年7月全身倦怠感および微熱を主訴に当院を受診した.胸部単純X線写真で巨大縦隔腫瘤を指摘された.胸部CT検査では前縦隔に13 cm大の巨大腫瘤を認めた.CTガイド下針生検を施行したところ,病理組織学的に非上皮性の紡錘形細胞に富む所見で,肉腫が疑われた.約1カ月と短期間の経過で腫瘍が急速に増大したため,同年9月縦隔腫瘍摘出術を施行した.胸骨上半分の正中切開,およびこれに続く左第4肋間前側方切開にて開胸した.腫瘍は前縦隔に位置し,表面は平滑で線維性被膜に囲まれており,肺や大血管などの他臓器への浸潤は認めなかった.病理組織学的には免疫染色により脱分化型脂肪肉腫の診断であった.術後6カ月で左胸膜播種を認め,再切除を行った.結論.脱分化型脂肪肉腫は予後不良であり,局所再発だけでなく遠隔転移の可能性も高く,厳重な経過観察が必要と考える.
  • 藤本 源, 古橋 直樹, 安達 勝利, 井端 英憲, 小林 哲, 田口 修
    2013 年 53 巻 6 号 p. 771-777
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.多形癌は1999年のWHOによる肺癌の組織学的再分類に伴い,新たに提唱された肺癌の組織型の1つである.通常非小細胞肺癌として治療されるが,効果は乏しく,予後は不良とされている.一方,口蓋扁桃への転移性腫瘍は非常に稀で,予後不良因子と考えられている.我々は口蓋扁桃へ転移し,化学放射線治療後にS-1を投与したところ,著効した多形癌を経験したので報告する.症例.63歳男性.検診で左肺の異常陰影を指摘され前医を受診,経皮針生検で非小細胞肺癌と診断され,手術目的に当院へ紹介となった.左肺上葉切除術を施行し,多形癌pT2N0M0 stage IBと診断,術後補助化学療法としてuracil-tegafur(UFT)を処方していたが,3カ月で口蓋扁桃へ転移した.carboplatin+paclitaxelによる化学療法および放射線治療を併用したが腫瘍縮小効果は得られず,その後S-1を投与したところ7カ月後には転移巣は消失した.現在S-1開始後4年6カ月経過しているが,無増悪生存中である.結論.口蓋扁桃へ転移した多形癌に対し,化学放射線治療後にS-1を投与し,著効した症例を経験した.今後,多形癌に対するS-1の有効性を検討する意義がある.
  • 片山 優子, 佐渡 紀克, 深田 寛子, 籏智 幸政, 北 英夫, 菅 理晴
    2013 年 53 巻 6 号 p. 778-781
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺腺様嚢胞癌の有効な化学療法は,いまだ確立されておらず,ペメトレキセド(pemetrexed)を用いた治療報告は現在までみられていない.症例.70歳女性.半年以上持続する咳嗽を主訴に当院を受診,右肺全摘術を施行し,肺腺様嚢胞癌と診断した.しかし術後22カ月で再発したため,シスプラチン(cisplatin)とペメトレキセドの併用化学療法を4コース施行し,引き続きペメトレキセド単剤の維持化学療法を3コース施行した.再発病変は著明に縮小し,現在まで再燃を認めていない.結論.肺腺様嚢胞癌において,ペメトレキセドが治療薬の選択肢の1つとなる可能性が示唆された.
  • 長又 誠, 大熊 裕介, 細見 幸生, 比島 恒和, 岡村 樹
    2013 年 53 巻 6 号 p. 782-786
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.国内外のガイドラインではALK陽性肺癌患者に対し,初回crizotinib療法は推奨されているものの,高齢者およびperformance status(PS)不良のALK陽性肺癌患者に対しての効果・安全性についての報告は少ない.症例.77歳,女性.2012年7月より左臀部痛を自覚した.全身検索の結果,右下葉原発肺腺癌の診断とされ,免疫組織化学染色およびFISH(fluorescence in situ hybridization)法にてechinoderm microtubule-associated protein-like 4-anaplastic lymphoma kinase(EML4-ALK)融合遺伝子陽性であった.高齢かつPS 3であるため,殺細胞性抗腫瘍剤の適応はないと考え,初回抗がん剤治療としてcrizotinibを選択した.悪心や補正QT時間延長を認め,250 mg 1日2回経口投与から200 mg 1日2回経口投与に減量したが,腫瘍縮小とPSの改善が得られ,治療開始6か月となる現在も効果を維持している.結論.高齢者・PS不良のEML4-ALK融合遺伝子陽性肺癌に対する初回抗がん剤療法としてcrizotinibを選択し,partial responseが得られた1例を経験した.
  • 星野 英久, 石川 亜紀, 松島 秀和, 安達 章子, 門山 周文
    2013 年 53 巻 6 号 p. 787-792
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)は,リンパ球や形質細胞などの炎症細胞の著明な浸潤を伴う,筋線維芽細胞の増殖から成る腫瘍性病変であり,その頻度は肺腫瘍の0.04~1%と稀な疾患である.症例.63歳,男性.血痰を契機に撮影した胸部CTで左S1+2に結節影を指摘され,当院紹介となった.気管支鏡検査で左B1+2bを完全閉塞するポリープ状腫瘤を認め,生検を行うも確定診断は得られなかった.Positron emission tomography(PET)では,同部位に一致してSUVmax:13.61の異常集積を認め,悪性腫瘍が否定できず胸腔鏡補助下左肺上葉切除+ND2aを行った.組織学的には,紡錘形細胞の増生と形質細胞,リンパ球浸潤を認め,免疫染色でanaplastic lymphoma kinase(ALK)陽性でありIMTと診断された.結論.PET陽性の気管支内腔病変を認めた場合,鑑別診断としてIMTも考慮する必要がある.本症例では,病理診断確定に苦慮したが,ALKの免疫染色結果が診断確定の一助となった.
  • 角 俊行, 多屋 哲也, 澤田 格, 高橋 弘毅
    2013 年 53 巻 6 号 p. 793-798
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.ゲフィチニブとエルロチニブは,切除不能非小細胞肺癌および再発性肺癌に対して使用可能な上皮成長因子受容体チロシンキナーゼを阻害する分子標的治療薬(epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor:EGFR-TKI)である.これまで,ゲフィチニブによる重篤な肝機能障害例にエルロチニブを安全に後投与できたとする数編の論文報告がある.症例.3症例はいずれもEGFR遺伝子変異陽性の肺腺癌であり,ゲフィチニブ投与数週間後にCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)version 4.0でGrade 3以上の肝機能障害を認めた.同障害改善後にエルロチニブに変更したところ,肝機能障害の再発なく抗腫瘍効果が得られた.結論.ゲフィチニブによる重篤な肝機能障害発現例において,エルロチニブへの変更は治療選択肢の1つになり得ると考えられる.
  • 中川 正嗣, 寺町 政美
    2013 年 53 巻 6 号 p. 799-802
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.完全内臓逆位症は,10,000人あたり1~2人にみられる常染色体劣性遺伝の奇形であり,原発性肺癌合併の報告例は少ない.症例.76歳,完全内臓逆位症の男性.近医で胸部異常陰影を指摘され,紹介されてきた.右肺S9に2.5 cm大の腫瘤陰影を認めたが,確定診断が得られず,胸腔鏡下生検を行うことにした.3D-CT angiographyを行って,肺動脈分岐様式を確認した上で手術を行った.気管支ブロッカーによる分離肺換気下に,穿刺吸引細胞診で非小細胞肺癌と診断し,胸腔鏡下右下葉切除・リンパ節郭清術を施行した.最終の病理診断は低分化扁平上皮癌,pT1bN0M0 Stage IAであった.結論.完全内臓逆位症に対する肺切除術において,肺動脈の分岐形態の把握には3D-CT angiographyが,また分離肺換気には気管支ブロッカーが有用である.
  • 西沢 知剛, 横山 琢磨, 高田 佐織, 下山田 博明, 滝澤 始, 後藤 元
    2013 年 53 巻 6 号 p. 803-808
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.原発性肺癌で極めて稀な,松果体転移を示した1例を経験したため報告する.症例.68歳女性.頭痛,嘔吐,意識障害が契機となり,松果体腫瘍,胸部異常陰影を指摘された.確定診断と症状改善目的に,内視鏡下第三脳室開窓術,生検を行った.腫瘍組織は,HE染色で小型の核と繊細な核クロマチンを有する,細胞質に乏しい異型細胞を認めた.免疫染色の結果と合わせて,肺原発小細胞癌の松果体への転移と診断した.放射線治療,化学療法を行い,肺病変,頭蓋内病変ともに著明な縮小を認めた.結論.極めて稀な,松果体に転移した小細胞肺癌の1例を経験した.
  • 粟野 暢康, 近藤 圭介, 安藤 常浩, 生島 壮一郎, 熊坂 利夫, 武村 民子
    2013 年 53 巻 6 号 p. 809-814
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌患者において,消化管壊死や穿孔を合併することは稀である.症例.当院で発症した例は小腸転移の壊死穿孔,アメーバ赤痢,非閉塞性腸管梗塞と,原因は多様であった.結論.肺癌診療中に様々な原因で消化管壊死,穿孔を合併した3例を経験した.その予後は不良で時に致死的な経過をたどるため,多様な原因を念頭に置いた検索が重要であると考えられた.
支部会推薦症例
関東支部
feedback
Top