肺癌
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52 巻, 7 号
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原著
  • 中野 喜久雄, 吉田 敬, 北原 良洋, 難波 将史, 砂田 祥司
    2012 年52 巻7 号 p. 995-1000
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.化学療法の継続を含む終末期医療について癌腫別に比較し,肺癌の特徴を明らかにした.対象と方法.対象は一次治療以上の化学療法を行い,2007年から2009年の間に当院で死亡した肺癌131例,胃癌69例,大腸癌36例,乳癌30例,婦人科癌17例,造血器腫瘍92例.方法は化学療法の継続期間,死亡前の最終入院の理由,看取り場所について後ろ向きに検討した.結果.死亡1か月以内の化学療法例は造血器腫瘍で67%と最も多く,次いで肺癌,乳癌,胃癌,大腸癌,婦人科癌の順であった.化学療法終了から死亡までの中央値は肺癌で42.0日と,大腸癌の131.0日や婦人科癌の100.0日に比べ短かった(P<0.006).最終入院の理由は,肺癌で呼吸不全が,胃癌と大腸癌で食欲低下が最も多かった.看取り場所としての緩和病棟は婦人科癌で71%と最も多く,次いで大腸癌,胃癌,乳癌,肺癌,造血器腫瘍の順であった.非小細胞肺癌での看取り場所別の一般病棟と緩和病棟との比較で,化学療法終了から死亡までの期間は一般病棟が36.0日と,緩和病棟の177.0日に比べ短かった(P<0.001).結論.固形癌の中で肺癌は終末期医療の質が最も低く,化学療法の適切な中止時期が要求される.
  • 小池 輝明, 吉谷 克雄, 篠原 博彦, 白戸 亨, 横山 晶, 竹之内 辰也, 土田 正則, 鳥谷部 真一, 山崎 理, 若月 道秀
    2012 年52 巻7 号 p. 1001-1006
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.本邦肺がんの罹患,治療成績,生存率に関する統計は,それぞれ異なる集団を対象としている.一定の対象集団における罹患・病態・治療成績・生存率について検討した.対象と方法.新潟県地域がん登録資料と肺がん手術登録資料より1991年以降の変動を解析した.結果.新潟県は本邦と同様,悪性新生物が死亡原因の第一位で,臓器別死亡原因でも肺がんが第一位であり,年齢調整罹患率も全国値と近似していた.肺がん全体の生存率は年代とともに上昇し,2000~'04年診断例では29.0%に改善した.生存率の改善は,小型で早期の肺がんが増加し,これらを外科治療で対処したことが主たる要因と推察された.結語.新潟県においては,年代に伴い小型で早期の肺がん増加による生存率の改善傾向を認めた.
  • Makoto Nakashima, Ryoko Ohnishi, Mizuho Kobayashi, Toshitaka Suzuki, S ...
    2012 年52 巻7 号 p. 1007-1016
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    Objective. Bevacizumab/carboplatin/paclitaxel (BEV-CP) combination therapy extends the progression-free survival (PFS) of chemotherapy-naive patients with non-small-cell lung cancer. However, the efficacy and tolerability of BEV-CP therapy in patients with a history of chemotherapy have not been investigated. In the present study, patients receiving BEV-CP therapy at the Nagara Medical Center were divided into 2 groups. Methods. The first-line therapy (FLT) group consisted of 18 patients who had never received chemotherapy before treatment with BEV-CP, and the non-FLT group included 13 patients who had received other chemotherapy regimens before BEV-CP therapy. The efficacy and tolerability of BEV-CP therapy in the FLT and non-FLT groups were analyzed retrospectively. Results. The response rate (RR) was 72.2% in the FLT group and 61.5% in the non-FLT group, whereas the disease control rate (DCR) was 83.3% in the FLT group and 92.3% in the non-FLT group. However, neither RR nor DCR was statistically significant between the FLT and non-FLT groups (p=0.40 and 0.43, respectively). The median PFS time was 240 days in the FLT group and 258 days in the non-FLT group, which was not statistically significant (p=0.84). The rate of discontinuation of BEV-CP therapy because of adverse effects was 22.2% in the FLT group and 7.7% in the non-FLT group. The discontinuation rate was lower in the non-FLT group than in the FLT group, but the difference was not statistically significant (p=0.28). Conclusion. The efficacy and tolerability of BEV-CP therapy as non-FLT and FLT were comparable.
症例
  • 小林 宣隆, 沼波 宏樹, 山地 雅之, 田中 元也, 高橋 恵美子, 羽生田 正行
    2012 年52 巻7 号 p. 1017-1022
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌肉腫は上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍から構成される悪性腫瘍であり,稀で予後不良な疾患である.加えて,肺癌肉腫の結腸転移は極めて稀である.症例.59歳男性.血痰を主訴に近医を受診し,胸部単純X線写真で異常陰影を指摘され,当院に紹介された.胸部CTで左下葉に70 mmの腫瘤を認めた.頭部MRI,上部および下部消化管内視鏡検査で転移を認めなかった.気管支鏡下擦過細胞診で原発性肺癌(扁平上皮癌)と診断した.左下葉切除術およびリンパ節郭清術を施行した.腫瘍は骨肉腫や紡錘形腫瘍細胞を主とする肉腫成分(70%)と腺癌成分(30%)から構成され,肺癌肉腫(pT2bN0M0,stage IIA)と診断した.肺切除術の15カ月後,横行結腸に亜有茎性腫瘍を指摘され,内視鏡的粘膜切除術が施行された.結腸腫瘍は紡錘形腫瘍細胞のみから成り,癌成分を認めなかったものの,肺癌肉腫の結腸転移と診断した.顕微鏡的に切除断端が陽性であったため,腹腔鏡下横行結腸切除術を追加した.患者は結腸切除術から39カ月間無再発生存中である.結論.肺切除術後に発生した孤発性結腸転移に対し外科的切除した症例を経験した.自験例は,検索し得た限り,孤発性結腸転移を来した肺癌肉腫の最初の報告である.
  • 美馬 雄一郎, 宮本 京介, 鎌田 浩史, 谷山 大輔, 梶 政洋, 坂巻 文雄
    2012 年52 巻7 号 p. 1023-1029
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺高血圧患者に対する手術は周術期合併症のリスク因子として知られるが,肺癌における肺葉切除術におけるリスクの検討は十分ではない.症例.68歳男性.左上葉の肺腺癌と同時に慢性血栓塞栓性肺高血圧症を診断された.抗凝固療法の開始後,CTにて左肺動脈内血栓の減少,心エコーなどにて肺高血圧の改善を認めたため胸腔鏡下左上葉切除術を施行したが,全身麻酔導入後より右心カテーテル上平均肺動脈圧40 mmHg以上の,術前検査と比べ重度の肺高血圧を認めた.術後も肺高血圧が持続し,抗凝固療法およびシルデナフィル,ボセンタンの併用療法を行った.術後約30日の経過で運動耐容能の改善を認め,在宅酸素療法下に退院可能となった.結論.肺葉切除後の肺高血圧増悪に対してシルデナフィル,ボセンタン併用が有効であった.今後はさらに大規模な検討が期待される.
  • 有倉 潤, 安達 大史, 近藤 啓史, 中野 浩輔, 福元 伸一, 原田 眞雄
    2012 年52 巻7 号 p. 1030-1034
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺に認められた悪性黒色腫はほとんどが他臓器からの転移であり,肺原発の場合は極めて稀である.症例.74歳男性で,検診の胸部X線検査で胸部異常影を指摘され当院を受診した.胸部CTでは左肺S10に辺縁整な4.0×3.2 cmの腫瘍を認め,気管支鏡下の生検で悪性黒色腫の診断となった.皮膚を含め全身の検索を施行したが他に原発巣は認めず,肺原発悪性黒色腫の診断となり,胸腔鏡下左肺下葉切除及びリンパ節郭清を施行した.結論.原発性肺腫瘍の約0.01%の頻度と報告されている,極めて稀な肺原発悪性黒色腫の手術症例を経験したので,文献的考察を含め報告した.
  • 森川 慶, 峯下 昌道, 西根 広樹, 古屋 直樹, 大林 樹真, 宮澤 輝臣
    2012 年52 巻7 号 p. 1035-1040
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌における骨転移の頻度は高く,経過中に約4割の骨転移が認められる.骨転移そのものに対する治療として緩和的放射線照射やビスホスホネート製剤の投与があるが,病勢制御が困難であることも少なくない.症例.69歳男性.背部痛を主訴に整形外科を受診し胸部X線写真にて異常陰影を指摘され,精査目的で当科を紹介受診した.胸部CTにて左下葉に55 mm大の壊死を伴う腫瘤影,脊椎MRIにて第8胸椎の圧迫骨折を認めた.気管支鏡検査を施行し左S8/9原発肺扁平上皮癌,cT2bN3M1b(骨転移),stage IVと診断した.気管支鏡検査後に肺炎を合併したため,殺細胞性全身化学療法に先行し骨転移に対する緩和的放射線照射とゾレドロン酸投与を開始した.一次治療としてcarboplatinとpaclitaxelの投与を開始し原発巣は制御し得たが,骨病変の増悪でPS 4となり抗癌剤治療は2コースで中断した.骨転移治療としてゾレドロン酸からデノスマブへ変更したところ,投与開始1週後から背部痛が改善し,2週後には再び歩行可能となった.デノスマブ投与前後で,骨代謝マーカーや画像の改善も認めた.PS改善に伴い二次治療を開始し,デノスマブを継続投与中である.結論.ゾレドロン酸投与で骨病変の制御が困難な場合,デノスマブへの変更が有効であることがある.
  • 兒玉 愛梨, 土井 美帆子, 濱井 宏介, 舟木 将雅, 上綱 雅一, 土井 正男
    2012 年52 巻7 号 p. 1041-1046
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.原発性肺癌に対する化学療法中の気胸は稀な合併症である.症例.症例は73歳男性.定期検診の胸部単純X線写真で左上肺野胸膜直下に異常陰影を指摘され,2年後の胸部CTで左胸膜腫瘤の増大,縦隔リンパ節腫大を認めたため胸腔鏡下胸膜生検を行い,肉腫様肺癌stage IV(T2aN3M1a)と診断した.初回治療として,カルボプラチンとパクリタキセルにベバシズマブを併用した化学療法を行い,腫瘍縮小効果を認めたが,3コース投与後気胸を発症したため,4コース目のベバシズマブ併用を中止した.4コース目施行後,腫瘍の増大を認め,二次治療としてペメトレキセドを選択したが,3コース後に進行した.S-1にベバシズマブを併用した三次治療を開始し,現在,気胸の再発なく,6コースまで腫瘍の増大なく継続している.結語.肉腫様肺癌に対し,ベバシズマブ併用療法が奏効し,腫瘍縮小に伴う続発性気胸を来した.気胸改善後,ベバシズマブ再投与による気胸の再燃なく,腫瘍の進行抑制を認めた.
  • 後藤 真輝, 内山 美佳
    2012 年52 巻7 号 p. 1047-1051
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.縦隔成熟奇形腫にカルチノイドを合併することは稀である.症例.患者は38歳男性.健診にて胸部異常影を指摘され,当院を受診した.胸部造影CT検査では右前縦隔に3 cm大の石灰化を伴う辺縁明瞭,内部不均一な腫瘤を認めた.MRI検査でも同様に3 cm大の辺縁明瞭,内部不均一な腫瘤を認めた.以上より縦隔奇形腫を疑い胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査では成熟嚢胞性奇形腫を認め,その中の一部にカルチノイドの領域を認めたことからa carcinoid arising from a mature cystic teratomaと診断した.結論.縦隔成熟嚢胞性奇形腫にカルチノイドを合併した稀な1例を経験したので報告した.
  • 伊藤 俊輔, 平居 義裕, 渡部 克也, 外岡 暁子, 植草 利公, 金子 猛
    2012 年52 巻7 号 p. 1052-1056
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma)は軟部腫瘍の約1%を占め,小児や若年者の四肢,特に下肢に好発する稀な軟部組織悪性腫瘍である.今回我々は健診胸部単純X線写真で胸壁腫瘍として発見され,胸腔内に向かって進展し,稀な発育形式を呈した胞巣状軟部肉腫の症例を報告する.症例.症例は19歳男性.2011年4月に健診で胸部単純X線写真上,右上肺結節影を指摘され当院紹介受診となった.胸部X線写真で右上肺野に類円型で辺縁平滑な20 mm大の結節影を認めた.胸部造影CTでは右肺上葉背側胸膜に胸腔内に突出する24 mm大の,内部が均一に造影される腫瘤を認めた.若年であり,悪性疾患の可能性もあることから,早期診断のため胸腔鏡下切除術を施行した.摘出した腫瘍の細胞核は,免疫染色でTFE3陽性であり,病理学的形態と合わせ,胞巣状軟部肉腫の診断であった.術後,全身検索の目的で施行したPET/CTおよび頭部・下肢MRIにて転移巣および原発巣を認めず,胸壁原発胞巣状軟部肉腫と診断した.結語.若年者の胸壁腫瘍は比較的良性疾患が多く,経過観察することが多い.しかし,本症例のように稀ではあるが悪性疾患も認めることから,CTガイド下肺生検や胸腔鏡下生検などの病理学的精査が早期診断に重要であると考える.
  • 鎌田 稔子, 稲福 和宏, 飯田 智彦, 藤原 大樹, 長門 芳, 柴 光年
    2012 年52 巻7 号 p. 1057-1063
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.腫瘍随伴性皮膚病変は,特定の内臓悪性腫瘍に随伴する非特異的な皮膚病変であり,内臓悪性腫瘍の診断に先立つ場合や再発の予兆となる場合がある.今回われわれは,再発時に腫瘍随伴性皮膚病変を認めた肺腺癌の1例を経験したので報告する.症例.63歳,男性.58歳時に原発性肺癌の診断で手術施行.60歳時に通院を自己中断していたが,難治性の皮疹を主訴に当院皮膚科を受診.CTにて肺腫瘍を認め当科再診となった.精査の結果,肺癌の再発の診断にて化学療法を施行したところ,画像上腫瘍は縮小し,皮疹も改善した.その後再度皮疹の増悪と再発病巣の再増大を認め放射線化学療法を施行.腫瘍は著明に縮小し皮疹も改善した.現在まで再燃なく外来経過観察中である.結論.再発時に治療抵抗性の皮疹を呈し,化学療法による腫瘍の縮小とともに皮疹の軽快を認めた肺腺癌の1例を経験した.本症例のように皮膚病変が再発の予兆ともなることもあり,治療抵抗性の皮膚病変を認めた場合,肺癌の再発も含め内臓悪性腫瘍の検索が必要と考えられた.
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