肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
48 巻, 7 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著
  • 小島 陽子, 斉藤 春洋, 伊藤 宏之, 近藤 哲郎, 尾下 文浩, 中山 治彦, 横瀬 智之, 亀田 陽一, 野田 和正, 山田 耕三
    2008 年48 巻7 号 p. 801-806
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.我々は,陳旧性炎症として比較的長期間経過観察される肺腺癌の一群を,特徴的なCT画像所見からBubble-like appearance(BLA)を呈する肺腺癌として報告した(斉藤ら.気管支学.2004;26:346-351).これらのBLA型肺腺癌について臨床病理学的な検討を行った.方法.2003年8月~2007年3月に当センターで外科切除された肺腺癌で,診断時のTS-CT画像所見がBLAを呈した17例を対象とし,CT画像,病理所見,臨床像の対比検討を行った.結果.腫瘍最大径は平均35.4 mm.TS-CT画像所見の特徴は,①腫瘍の形状は不整形,辺縁は直線状,②腫瘍周囲にわずかなGGO所見,③腫瘍内部に複数の小気管支拡張像,④著明な胸膜陥入像,であった.病理所見は,(1)腫瘍辺縁にBAC,(2)腫瘍内部に比較的広範な肺胞虚脱,(3)複数の小気管支拡張所見,の特徴を認めた.過去画像を追跡できる全例が炎症性陰影と判断されていた.腫瘍倍加時間は平均1167日であり,全例に術後再発を認めていない.結論.BLA型肺腺癌は,不整な形状で増大速度が緩徐であり,陳旧性炎症として比較的長期間経過観察される傾向がある.炎症陰影との鑑別に注意が必要である.
症例
  • 村田 眞理子, 庄司 剛, 中山 英, 板東 徹
    2008 年48 巻7 号 p. 807-810
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.乳癌放射線治療後の合併症としての肉腫は稀な疾患であり,予後は一般的に悪いことが知られている.右乳癌に対する術後放射線療法施行20年後に,同部位に発生した前胸壁骨肉腫の1切除例を報告する.症例.症例は57歳女性.1986年9月に右乳癌に対し定型的乳房切断術および術後化学療法,放射線療法を施行.2003年12月に胸部CTにて胸膜および左鎖骨上リンパ節再発を指摘され,乳癌再発として化学療法を施行.2006年3月,胸部CTにて胸骨の溶骨性変化を指摘され,乳癌の再発と診断され,化学療法を継続していた.2007年4月,前胸壁の腫瘤に増大傾向あり,確定診断のための切開生検にて肉腫が疑われ,当科紹介受診.2007年5月,前胸壁腫瘍切除,胸骨,両鎖骨,両第1,第2肋骨,右肺合併切除術(上・中葉部分切除)を施行,前胸壁欠損部は遊離両腹直筋皮弁にて補填した.病理組織は骨肉腫であり,切除縁に腫瘍残存は認めなかった.結論.放射線照射部位の腫瘍性病変の診断には,照射後肉腫発生の可能性を念頭に入れる必要があり,生検での早期診断が,治療方針の決定上,重要と考えられる.
  • 和田 啓伸, 門山 周文, 坂入 祐一, 安達 章子, 兼子 耕, 吉野 一郎
    2008 年48 巻7 号 p. 811-815
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.直径10 mm未満で胸腺腫としての形態学的特徴を持つMicrothymomaという概念があり,胸腺腫形成の初期段階に位置づけられ,被膜を伴わないことがある.症例.70歳代,女性.眼瞼下垂,全身倦怠感を自覚して当院神経内科を受診し,全身型重症筋無力症(Myasthenia Gravis Foundation of America:class IIa)と診断され,胸部CTで前縦隔腫瘍を指摘された.ステロイド隔日大量療法を施行後,頸部から両側前縦隔胸膜切除を伴う拡大胸腺摘出術を行った.病変は8×5×5 mm大の結節状でWHO分類のType B2 Thymomaと診断した.胸腺腫固有の被膜は認めなかったが,一部で胸腺本来の被膜に接していた.結論.術前CTで指摘し得たMicrothymomaの概念に相当する1切除例を経験した.小型胸腺腫が認識される機会が増加しており,このような症例を重ね検討することで,胸腺腫の発生過程を解明する手がかりを得られる可能性があると思われた.
  • 片岡 和彦, 藤原 俊哉, 松浦 求樹, 妹尾 紀具
    2008 年48 巻7 号 p. 816-820
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺全摘後の肺癌に対する対側肺切除についての報告は少なく,そのほとんどは1回の再切除の報告である.症例.45歳男性で,胸部異常影にて入院した.CTにて,右主気管支への壁浸潤を伴うS6原発の腫瘍を認めた.右肺全摘とND2aのリンパ節郭清を施行した.病理学的には,扁平上皮癌で,pT3N1M0 Stage IIIAであった.5年後,CTにて左下葉に腫瘤影を認めた.呼吸機能は,2回目の手術に十分な程度保持されており,左肺下葉の部分切除を施行した.16 mmの扁平上皮癌と診断され,Martiniらの診断基準により異時性多発癌とした.さらに3年8ヶ月後のCTにて,左上葉のbullaに接して腫瘤影が出現し,FDG-PETで弱い集積を認めた.混合性呼吸機能障害を認めるも,PSは良好であり,3回目の手術を希望された.左肺上葉部分切除を施行し,病理にて15 mmの腺癌と診断された.術後経過は良好であった.術後PSの低下を認めるも,日常生活に支障なく,術後1年5ヶ月の現在再発を認めていない.結語.右肺全摘後に2回の左肺部分切除を施行した,異時性多発肺癌の症例を経験した.積極的な手術が,初回手術より10年という長期生存につながっていると考えられた.
  • 大場 岳彦, 玉岡 明洋, 古家 正, 宮崎 泰成, 稲瀬 直彦, 吉澤 靖之
    2008 年48 巻7 号 p. 821-824
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.全身化学療法抵抗性の小細胞肺癌(SCLC)肝転移再発に対して,肝動注化学療法が有効であった症例を報告する.症例.61歳男性.進展型SCLCの診断でカルボプラチンとイリノテカンの全身化学療法を行いCRとなったが,最終治療終了105日後に多発肝転移・肝門部リンパ節転移を認めた.再発後全身化学療法は奏効せず,再発病巣は多発肝転移が主体であったため,肝動注化学療法が施行された.シスプラチンとエトポシドによる肝動注化学療法は奏効しなかったが,シスプラチン(20 mg/body,day 1),ドキソルビシン(20 mg/body,day 1),イリノテカン(40 mg/body,day 1)による2週に1回の肝動注化学療法によりPRが得られた.再発後生存期間は66週であった.結論.肝転移が予後規定因子である全身化学療法抵抗性のSCLCにおいては,肝動注化学療法が有効な可能性がある.
  • 益田 武, 中野 喜久雄, 大森 謙一, 須崎 剛行, 竹内 幸康, 谷山 清己
    2008 年48 巻7 号 p. 825-831
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.孤立性腫瘤陰影を呈した悪性胸膜中皮腫の症例は稀である.症例.73歳,男性.咳嗽,労作時呼吸困難を呈し,画像所見で右胸水貯留,右横隔膜上に腫瘤をみとめた.確定診断のため胸腔鏡検査を施行した.検査所見では横隔膜上に腫瘤をみとめ,壁側胸膜に白色の小結節が散在していた.生検により二相性悪性中皮腫,pT2N0M0,Stage IIと診断された.CDDP,Pemetrexedによる化学療法を5コース施行し,PRとなった.胸水コントロールが不良であり,胸腔鏡下腫瘤横隔膜合併切除術,ピシバニール®の胸腔内投与による胸膜癒着術を施行した.その後胸水の増加はなく8ヶ月無症状で経過しているが,播種病変が増大したため,Gemcitabineによる化学療法を追加した.小結節病変に比べ,孤立性腫瘤のより強い増殖能がCD34抗体,D2-40抗体,Ki-67抗体による免疫染色により示された.結論.免疫染色の結果,小結節病変と比較して,孤立性腫瘤は血管新生が強く,増殖能が亢進していることが証明された.腫瘤は増殖した肉腫成分により形成されていた.
  • 山崎 成夫, 岡安 健至, 鈴木 康弘, 細川 正夫
    2008 年48 巻7 号 p. 832-835
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.気管癌は稀な悪性腫瘍であり,通常は増大した腫瘍による呼吸器症状などをきっかけに発見される.小さい病変を無症状で発見することは困難である.症例.症例は79歳の男性である.呼吸器症状はなかった.食道癌(扁平上皮癌)の治療前に他癌の検索目的に気管支鏡検査を行ったところ,気管中部付近の膜様部に長径約5 mmの隆起性病変が認められた.生検にて粘表皮癌と診断された.胸部CTでは病変の指摘は困難であった.気管癌,食道癌ともに切除可能であったが,年齢及び手術侵襲などを考慮し,同一照射野にて60 Gyの放射線治療を行った.治療後,気管癌,食道癌ともに消失し,約3年経過時にはいずれの病変も再発は認められなかった.結論.食道癌治療前スクリーニングとして行った気管支鏡検査にて,無症状で微小病変として発見された気管癌(粘表皮癌)の1例を報告した.治療は放射線治療が有効であった.
  • 前田 純, 尾田 一之, 岡見 次郎, 東山 聖彦, 児玉 憲
    2008 年48 巻7 号 p. 836-840
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌術前病期判定における画像診断は基本的に胸部CTを用いるが,PET検査の併用は有効であることが認識されてきている.症例.73歳男性.検診胸部X線にて左上肺野(S3)の異常陰影を指摘され,気管支鏡下生検にて肺扁平上皮癌と診断された.術前胸部CTで,原発巣は左S3末梢にφ19 mmの充実腫瘤を呈し,さらにB1+2気管支起始部にφ18 mmの腫瘤影を認めたため肺門リンパ節転移陽性と考え,cT1N1M0 stage IIAと診断した.しかし,同時期に行ったPET-CT検査では集積はS3病変のみで肺門リンパ節への転移は否定的であった.左上葉切除+ND2aを施行したところ,肺門リンパ節と思われた結節は定型カルチノイドであった.最終診断はカルチノイド合併肺扁平上皮癌で,リンパ節転移を認めずstage IAであった.結論.肺癌術前リンパ節転移診断にはCTとPET検査を含めた総合的な評価が必要な症例があり,本例ではPET検査が有用であったと考えられた.
  • 石川 将史, 川上 賢三, 木曾 末厘乃, 島田 一惠
    2008 年48 巻7 号 p. 841-845
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.類上皮血管内皮腫(epithelioid hemangioendothelioma:EHE)は全身のいずれにも発生し得る血管内皮由来の中間悪性の腫瘍で,肺・肝・骨・軟部組織に多い.多彩な臨床・画像所見を呈し,確定診断には組織学的検索を要するため,胸膜原発例の報告は稀である.症例.65歳男性.左肩~胸部痛が徐々に悪化し,画像上左胸水貯留を指摘された.気管支鏡検査,胸水穿刺,局所麻酔下胸膜生検では確定診断が得られなかったため,全身麻酔下に胸腔鏡下左胸膜生検を施行した.び漫性の白色の胸膜肥厚と部分的な胸膜癒着を認め,胸水細胞診では高度異型細胞,術中迅速病理診断では悪性胸膜中皮腫などの悪性病変が疑われたが,術後の病理標本では血管内皮マーカー陽性でEHEと診断された.有効な治療法が確立されていないため,積極的治療は行わずに外来で経過観察した.左胸水の増量と左肺下葉の腫瘤陰影の出現とともに,強い疼痛と呼吸困難を来したため,オピオイドなどの投与や在宅酸素療法を要したが発症後約18ヵ月で死亡した.結論.EHEの臨床経過は多彩であることが知られているが,胸膜発生のEHEは他部位に比して予後が悪く,治療法も確立されていない.予後不良であった胸膜原発のEHE症例を経験したので報告する.
  • 豊 洋次郎, 大政 貢, 志熊 啓, 奥田 雅人, 瀧 俊彦
    2008 年48 巻7 号 p. 846-849
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌の消化管転移は比較的稀であり,さらに十二指腸転移は極めて稀である.最近ではダブルバルーン内視鏡,カプセル内視鏡による全消化管検査も可能であるが,まだまだ普及しておらず,検査方法も限られているため,発見時には既に進行しており治療対象とならないことが多い.また,腋窩平滑筋肉腫も極めて稀である.症例.左上葉肺癌の術前検査にて右腋窩皮下に腫瘍が確認された.転移としては非典型的であったため,多重癌と考え,左上葉切除+ND2aおよび右腋窩腫瘍切除術を施行した.病理組織学検索の結果,右腋窩皮下平滑筋肉腫を合併した肺腺癌と診断した.右腋窩局所再発に対し再手術を施行した後,突然の下血を認めた.上部消化管内視鏡検査にて肺腺癌の十二指腸転移が確認されたが,後腹膜,膵臓へ浸潤しており,治療は困難であった.結論.肺腺癌に平滑筋肉腫を合併した1症例を経験した.平滑筋肉腫の予後因子としては腫瘍径と切除マージンが重要であるとされ,マージン追加切除にて再発は見られなかったが,急速に増大する肺癌の十二指腸転移巣に対しては治療不可能であった.一般的に消化管転移を有する症例は予後不良だが,長期生存する症例もあることより,消化管転移にも留意が必要である.
  • 片岡 和彦, 藤原 俊哉, 岩本 康男, 住吉 秀隆, 松浦 求樹, 妹尾 紀具
    2008 年48 巻7 号 p. 850-855
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺硬化性血管腫は,術中迅速病理検査にて腺癌と診断されたという報告が散見される腫瘍である.症例.25歳の女性が,検診にて肺腫瘍を指摘された.胸部X線写真では,左下肺野に腫瘤影が認められた.胸部CTでは,左S8に40 mmの境界明瞭な腫瘤が認められた.PETではFDGの異常集積(SUV 5.0)が認められた.気管支鏡は咳にて挿入できなかったため,胸腔鏡下手術を施行することとした.腫瘍の針生検を施行し術中迅速病理診断に提出し,カルチノイドと診断されたため,左下葉切除+リンパ節郭清術を施行した.しかしながら,切除標本の術後検索では,硬化性血管腫の組織像に矛盾しない組織所見を呈していた.硬化性血管腫は,組織学的には乳頭状部分,充実性部分,硬化性部分,血管腫様部分が混在すると報告されている.乳頭状の部分は腺癌と診断される可能性があり,充実性部分はカルチノイドと診断される可能性がある.術中の針生検の標本に充実性部分しか含まれていなかったため,今回の腫瘍はカルチノイドと診断された.結論.硬化性血管腫が疑われる場合,術中針生検では複数の標本を採取すべきと考えられた.
  • 秦 明登, 片上 信之, 木田 陽子, 東 陽一郎, 富井 啓介, 石原 享介
    2008 年48 巻7 号 p. 856-860
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.癌性心膜炎の症例では,抗癌剤などの硬化剤の心嚢内投与が無効で心嚢液の制御が困難なことを少なからず経験する.症例.74歳,女性.前医にて両側多発肺内転移のあるstage IVの肺腺癌と診断され,全身化学療法を受けていた.経過中に心不全症状が出現し,胸部CTで大量の心嚢液を認め,その細胞診で癌性心膜炎と診断された.cisplatin(50 mg/body)およびadriamycin(30 mg/body)を計3回心嚢内投与されたが無効で,ドレナージカテーテルより大量の血性心嚢液が持続的に排液されていた.そこで,心膜に対する放射線療法によって心嚢液を制御する目的で,当院に転院した.全心膜に対して,1.5 Gy×20 Fr(計30 Gy)の放射線照射を行ったところ,良好な心嚢液のコントロールが得られ,心不全症状は改善し,退院可能となった.結論.癌性心膜炎の症例では,硬化剤の心嚢内投与が無効である場合に,心膜への放射線療法を行うことにより心嚢液を制御できる可能性があると考えられた.
  • 片岡 和彦, 中村 泉, 住吉 秀隆, 藤原 俊哉, 松浦 求樹, 妹尾 紀具
    2008 年48 巻7 号 p. 861-865
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.薄壁空洞病変を呈する原発性肺癌はまれである.症例.51歳女性が,右下肺野の薄壁空洞を呈する胸部異常影にて入院した.CTにて,右S10に65×30 mmの薄壁空洞病変が認められた.空洞壁は不整で,厚みは2~6 mmであった.PETでは,空洞壁の一部にFDGの異常集積を認めた.SUVは最高で3.2であった.胸腔鏡下に手術を施行し,まず底区域切除を施行した.術中迅速病理診断にて,粘液産生型細気管支肺胞上皮癌と診断されたので,S6を追加切除し,リンパ節郭清も施行した.最終病理診断はほとんどが粘液産生型肺胞上皮癌である混合型腺癌と診断された.病理病期はT2N0M0 stage IBであった.結論.画像所見が薄壁空洞を呈する場合,胸腔鏡下手術を含めた精査を考慮すべきである.FDG-PETが薄壁空洞病変の鑑別診断に有用である可能性があるが,症例の集積が必要である.
feedback
Top