従来より, 転移性肺腫瘍における薄壁空洞形成機序については種々の説がある.今回我々は, 足背皮膚扁平上皮癌の肺転移で, 1週間で直径5cmもの空洞が出現し, その後多発性空洞を呈した症例の剖検肺を用い, 空洞形成の成因について病理組織学的に検索した.その結果, 直径5mm以上の空洞634個を, 組織、学的に, 気腫性空洞・腫瘍血栓を伴う空洞, 炎症を伴う空洞, 腫瘍血栓と炎症の合併する空洞に分類し, 微小空洞の検索により, 腫瘍血栓を伴う空洞と気腫性空洞は同一成因によるもので, 連続切片の再構築により, それらは, 肺動脈腫瘍血栓とその周囲の高度かつ広範な線維化のためのcheck-valvemechachanismによるものと考えられた.腫瘍血栓を伴う空洞では大きな空洞の割合が多く, これは線維化の程度の差によるもので, これらが胸部写真で見られる薄壁輪状影に発展していくと推測された.また炎症を合併した空洞では, 更に大きな空洞に進展することがわかった.
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