肺癌
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49 巻, 3 号
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原著
  • 西垣 豊, 藤田 結花, 藤内 智, 平松 美江, 山本 泰司, 武田 昭範, 山崎 泰宏, 藤兼 俊明
    2009 年 49 巻 3 号 p. 241-247
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.ニューモシスチス肺炎(pneumocystis pneumonia;PCP)は致死的な日和見感染症として知られている.一方,肺癌の治療経過中,時に,PCPの発症を経験する.PCP発症の実態を明らかにするため,症例の臨床的特徴,治療法による発症頻度をretrospectiveに検討した.研究計画.2004年1月から2005年12月までに当科で肺癌の確定診断が得られた297症例を対象とした.PCPの診断は,臨床症状,臨床所見とともに気道検体の検鏡またはpolymerase chain reaction法でニューモシスチス陽性とした.結果.全297例中13例(4.4%)で経過中にPCP発症が診断された.13例へ施行された肺癌治療は化学放射線療法4例,抗癌剤化学療法7例(緩和的放射線治療併用は4例),放射線治療単独1例,外科的切除施行例1例であり,さらに13例中10例は副腎皮質ステロイド剤の投与を受けていた.化学療法および放射線療法施行,またステロイド治療を受けた症例で高頻度にPCPの発症を認めた.結論.化学療法や放射線療法が施行され,加えてステロイド剤を使用する場合にはPCPの発症に十分な注意が必要であると考えられる.
  • 由佐 俊和, 門山 周文, 木村 秀樹, 斎藤 幸雄, 柴 光年, 山川 久美, 廣島 健三, 藤澤 武彦, 吉野 一郎
    2009 年 49 巻 3 号 p. 248-256
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.悪性胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘術の意義を明らかにすることを目的として,その手術成績および予後因子について後ろ向きに検討した.対象.われわれの多施設共同研究グループで胸膜肺全摘術を行った悪性胸膜中皮腫32例を対象とした.結果.症例の内訳は,男性31例,女性1例,平均年齢55.4歳であった.術後合併症は膿胸,横隔膜再建パッチの脱落などがみられ,発症率は56.3%であった.術死は2例(6.3%)にみられた.併用療法は胸腔内灌流温熱化学療法,全身化学療法などを13例(40.6%)に行った.全例の術後累積生存率は,2年および3年がそれぞれ40.1%,16.0%で,中間生存期間は16.2ヵ月であった.予後因子に関する多変量解析では,performance status(Eastern Cooperative Oncology Group)0,N0,手術時間600分未満の3因子が独立した有意の予後良好因子であった.これら3因子を全て持った症例の術後2年および3年生存率は,それぞれ64.8%,51.9%であった.結論.悪性胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘術は患者選択によっては良好な成績が期待できる.
  • 佐藤 輝幸, 井上 彰, 福原 達朗, 榊原 智博, 太田 洋充, 海老名 雅仁, 西條 康夫, 貫和 敏博
    2009 年 49 巻 3 号 p. 257-261
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブは,活性型EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者に対して著明な抗腫瘍効果をもたらすが,後に生じる耐性化への対策は十分に検討されていない.方法.2004年6月∼2007年6月の間に,当施設で活性型EGFR遺伝子変異陽性と診断され,ゲフィチニブ治療が開始された進行非小細胞肺癌患者を対象に,増悪形式に関連した臨床的特徴をレトロスペクティブに解析した.結果.51例にゲフィチニブ治療が行われ,奏効率,病勢制御率は各々71%(36/51),86%(44/51)であった.病勢制御できた44例のうち,2008年4月末時点で33例に増悪を認め(無増悪生存期間中央値14ヶ月),21例は胸郭内,12例は遠隔臓器での増悪(うち10例は脳転移)であった.脳転移増悪例の過半数では放射線治療とともにゲフィチニブが3ヶ月以上継続され,生存期間中央値は28.2ヶ月と極めて良好であった.耐性遺伝子変異T790Mは全て原発巣近傍から検出された.結論.ゲフィチニブ治療例においては異なる増悪形式が認められ,それぞれの機序をふまえた治療法の開発が望まれる.
症例
  • 桑野 知子, 溝渕 輝明, 藤原 大樹, 森谷 哲郎, 野呂 昌弘, 岩井 直路
    2009 年 49 巻 3 号 p. 262-267
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.アスペルギルス症と肺多形癌の合併は文献上報告がない.稀な症例の蓄積は,重要と考える.症例.75歳,男性.1ヵ月前39°C台の発熱で前医を受診.右S9肺膿瘍の診断で抗生剤治療施行も,感染制御不全のために,当院へ転院.胸腔ドレナージ(20 Fr)と抗生物質治療で感染制御不良.極度の全身衰弱があり,救命のための開窓術施行となる.術中胸水培養でAspergillus fumigatusを検出,抗真菌剤の投与を開始.しかし肺膿瘍残存のため,2ヵ月後に開窓創より膿瘍切開を追加.膿瘍の病理組織像からアスペルギルス症と肺多形癌の合併と診断した.肺切除術の耐術能はなく,1週間に3度の包帯交換を要したが,開窓状態で退院となる.感染の制御の後,開窓創より電子線治療(2 Gy×25回)で局所制御を得られ,15ヵ月間比較的高いQOLを維持可能であった.しかし化学療法(DOC単剤→GEM単剤)は効果を認めず,再発およびリンパ節転移から,19ヵ月後に癌死となった.結語.アスペルギルス症と肺多形癌の合併を,稀な症例として報告する.
  • 林 諭史, 北田 正博, 小沢 恵介, 佐藤 一博, 徳差 良彦, 三代川 斉之
    2009 年 49 巻 3 号 p. 268-272
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺小細胞癌の唯一の亜型である稀な混合型小細胞癌の1切除例を経験したため報告する.症例.64歳,男性.右肺下葉に22 mm大の結節影を認め,術中迅速組織診で低分化型腺癌と診断された.肺動脈周囲の癒着が強く,右肺中下葉切除,縦隔リンパ節郭清を施行した.摘出標本の病理組織学的所見により,肺混合型小細胞癌と診断された.非小細胞癌成分として神経内分泌マーカーが陽性の腺癌を含んでいた.術後50病日で癌性胸水を認め,現在化学療法中である.結論.本組織型は予後不良と考えられ,慎重な経過観察が必要である.
  • 片岡 和彦, 藤原 俊哉, 松浦 求樹, 妹尾 紀具
    2009 年 49 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.重症筋無力症(MG)に合併した肺癌の報告は少ない.症例.76歳の女性で,主訴は眼瞼下垂と下肢の脱力.エドロフォニウムの注射により筋力の改善を認めた.Sero-negative MGと診断された.胸部X線写真にて,右上肺野に異常影が認められた.胸部CTにて,右S1に3 cmのmixed ground glass opacity(GGO),右S3に1 cmのGGO,左S10に5 mmのGGOの3病変が認められた.肋間開胸を伴わない胸骨正中切開にて,拡大胸腺摘出術と根治的右上葉切除,リンパ節郭清術を同時に施行した.病理学的検索により,S1とS3の病変はそれぞれ混合型腺癌と肺胞上皮癌と診断された.術後経過は良好で,術後10日目にMGの薬物治療のために神経内科に転科した.4年2か月後の現在,患者は無再発生存しており,左S10のGGOに変化を認めず,pyridostigmine bromideの内服のみで筋力はほぼ正常に維持されている.結論.胸腺腫を合併しないMGと原発性多発肺癌の同時手術症例を報告した.MGに肺癌を合併する可能性がまれながら存在することを念頭に置くことが必要である.
  • 北見 明彦, 神尾 義人, 玄 良三, 植松 秀護, 中島 宏昭, 門倉 光隆
    2009 年 49 巻 3 号 p. 278-281
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸腔外悪性腫瘍からの肺を経由しない縦隔リンパ節転移はまれである.症例.症例は当院初診時56歳の女性.40歳時に乳癌にて左定型的乳房切除術施行(浸潤性乳管癌T2N0M0 stage IIA).45歳時と50歳時に左鎖骨上リンパ節に再発を認めたが,いずれも化学療法後complete responseが得られた.2003年1月右S3の肺結節の精査治療目的で,当院紹介受診となった.気管支鏡下生検で確定診断が得られず同年4月手術を施行.術中迅速病理の結果高分化腺癌と診断され,右肺上葉切除,ND2aを追加した.郭清した気管気管支リンパ節に肺腺癌とは異なる異型腺管構造を認め,免疫染色の結果estrogen receptor,progesterone receptorが弱陽性,CEA,thyroid transcription factor 1が陰性を示したことから,乳癌の縦隔リンパ節転移と診断した.結論.胸腔外臓器から肺を経由しない縦隔リンパ節への転移経路があることは留意すべきである.
  • 塙平 孝夫, 高尾 匡, 善家 義貴, 四竃 純, 箱田 有亮, 井上 智治
    2009 年 49 巻 3 号 p. 282-286
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺腺癌の多発脳転移の症例で治療の前後でEGFR遺伝子変異が解析されていることはまれである.今回,我々は肺腺癌の多発脳転移の症例でgefitinibが奏効し,原発巣では治療前及び剖検時,転移部位においては剖検時にEGFR遺伝子変異を検討しえた症例を経験したので報告する.症例.44歳女性.咳嗽,呼吸困難を主訴に来院.来院時,胸部X線写真にて右胸水と腫瘍影を認めCT下肺生検にて肺腺癌組織を認めた.遠隔転移は認めずStage IIIBと診断しcarboplatin(CBDCA),gemcitabine(GEM)2コースを施行したが胸水の増量を認め,その後docetaxel(TXT)4コースを施行したが多発脳転移を認めPDであった.全脳照射は希望されずgefitinibの内服を行い病状が悪化し入院するまで約6ヶ月間,外来通院が可能であったが,その後,病状悪化し永眠された.結論.肺腺癌の多発脳転移で肺原発巣生検組織のEGFRのexon 19領域における遺伝子欠失を認めgefitinibが有効な症例であった.剖検では肺原発巣及び脳転移部位においてのEGFR遺伝子変異はともに認められずgefitinib抵抗性に変化したと考えられた.
  • 加藤 雅人, 牧野 裕子, 松本 耕太郎, 鶴田 伸子, 添田 博康, 樋口 和行
    2009 年 49 巻 3 号 p. 287-291
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺動脈欠損症は稀な先天性疾患であり,今回,本症の患側肺に肺癌を発症した症例を経験したので報告する.症例.55歳.男性.咳嗽を主訴とし,胸部X線で左肺の容量低下と左上肺野に異常陰影を指摘され当院に入院となった.胸部CT上,左上葉に辺縁不正で境界不明瞭な結節影を認め,同時に左肺動脈の欠損が疑われた.結節影は気管支鏡検査で腺癌と診断され,肺動脈造影で左肺動脈欠損症と診断されたため,左肺摘除術を施行した.結語.極めて稀な先天奇形である左肺動脈欠損症に肺癌を合併した1例を経験した.
  • 深見 武史, 中島 淳, 村川 知弘, 日下部 将史, 杉浦 未紀, 高本 眞一
    2009 年 49 巻 3 号 p. 292-297
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.AFPを産生する肺腺癌は稀な疾患であり,予後不良とされる.今回我々は淡明細胞が主体を成すAFP産生肺腺癌,いわゆる高悪性度胎児肺型腺癌(H-FLAC)の1例を経験したので報告する.症例.69歳男性.検診にて右肺異常影を指摘.胸部CTにて右肺下葉に46×28 mm大の比較的境界明瞭な分葉状充実性腫瘤を認め,気管支鏡にて非小細胞肺癌の診断を得たため,右肺下葉切除およびリンパ節郭清施行.組織学的には高円柱状の淡明細胞を主体とする胎児肺を模倣する腺癌を認めた.免疫組織化学的にAFP陽性であった点,moruleが見出せなかった点をふまえ,high-grade adenocarcinoma of fetal lung type(H-FLAC)と診断した.病期はpT2N1M0,stage IIBであった.術後補助化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)を2コース施行したが術後9ヶ月目に再発死亡した.結論.稀な腫瘍であり,臨床病理像がまだ確立したとは言えない.今後の治療方針についてさらなる症例の集積と分子生物学·遺伝子学的手法による検討が必要である.
  • 小舘 満太郎, 大崎 敏弘, 徳渕 浩, 山本 英彦, 海老 規之, 村上 純滋
    2009 年 49 巻 3 号 p. 298-302
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.粘表皮癌は区域あるいは亜区域気管支から発生する比較的稀な疾患である.今回,喀血で発症し気管支動脈塞栓術後に肺切除を行った末梢発生の粘表皮癌の1例を経験した.症例.57歳男性.血痰が持続するため精査加療目的にて当院呼吸器内科入院となった.胸写上,右上肺野にすりガラス状の透過性低下を認め,胸部CTでは内部均一な腫瘤病変を認めた.喀血を繰り返すため,気管支動脈塞栓術を先行させた後,11日目に右上葉切除およびリンパ節郭清(ND2a)を行った.右肺上葉S2に腫瘍径21 mmの充実性結節がみられ,腫瘍の大半は動脈塞栓術による壊死に陥っていた.病理学的に腫瘍細胞の多くは淡明細胞で,中間細胞が混在し,扁平上皮細胞は少数みられ,低悪性度の粘表皮癌,pT1N0M0,p-stage IAと診断した.結論.粘表皮癌は末梢肺病変であっても喀血を来すことがあり,気管支動脈塞栓術を積極的に考慮すべきである.
  • 秦 明登, 片上 信之, 今井 幸弘, 西村 尚志, 富井 啓介, 石原 享介
    2009 年 49 巻 3 号 p. 303-308
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.アスベスト曝露歴を含める複数の発癌危険因子を持つ患者は重複癌を発症する場合がある.症例.75歳,男性.30年以上にわたる職業でのアスベスト曝露歴あり.会社の定期検診で撮影された胸部X線およびCTにおいて,右下葉および左下葉に結節影を指摘され,精査のため当院に紹介された.入院後に行われた右下葉の結節影に対するCTガイド下肺生検の結果,肺扁平上皮癌と診断された.さらに全身検索を行ったところ,胃癌,大腸癌が合併しており三重癌であることが判明した.また,肺,縦隔および肺門リンパ節,肝臓に多発転移があり全身化学療法の適応と判断した.抗癌剤は各々の癌に奏効し得る化学療法としてirinotecanとS-1の併用療法を選択した.3コース治療した時点で腫瘍は縮小傾向であった.結論.アスベスト曝露歴がある際に,肺癌の発症率が高いのはよく知られているが,胃癌や大腸癌の発症率も高いとする報告もある.特に発癌危険因子を複数持つ症例においては,重複癌の存在に留意すべきである.
  • 櫻井 裕幸, 小山 敏雄
    2009 年 49 巻 3 号 p. 309-312
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.今回我々は,肺癌に併存した濾胞リンパ腫に対して,両疾患に根治的な治療を行うことができた症例を経験したので報告する.症例.患者は68歳の男性.定期検診にて胸部X線写真で異常陰影を指摘され,近医を受診した.肺癌が疑われ精査ならびに治療のため当院へ紹介された.全身精査では肺病変の他に腹部リンパ節の腫大を認めた.まず腹部リンパ節を生検し,濾胞リンパ腫と診断された.肺病変は前医の生検で腺癌が疑われていたが,リンパ腫の節外病変を除外するために再度生検を施行し,肺癌と診断された.肺癌は病期IBで,濾胞リンパ腫は病期IIと判断し,肺癌に対する根治的外科治療を先行し,その後,濾胞リンパ腫に対する化学療法を施行した.結論.侵襲的ではあるが積極的に腹部リンパ節生検を行うことで同時性重複悪性腫瘍(肺癌および悪性リンパ腫)と確定診断でき,また両疾患において根治的治療を行うことができた.
  • 田内 俊輔, 田根 慎也, 北村 嘉隆, 内野 和哉, 岩永 幸一郎, 吉村 雅裕
    2009 年 49 巻 3 号 p. 313-316
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.癌性胸膜炎による胸水貯留は胸腔ドレナージ施行後も肺が十分に再膨張しないことがあり,そのコントロールに難渋することがある.今回,我々は癌性胸膜炎による膨張不全肺に対して,ウロキナーゼの胸腔内注入を行い良好な肺の再膨張を得られた症例を経験したので報告する.症例.56歳女性.左乳癌術後経過観察中に左胸水の出現を認めた.その後胸水の著明な増加と労作時の呼吸困難が出現したため,当院乳腺科入院となった.胸腔ドレナージの後に胸膜癒着術が施行されたが,肺の膨張は不十分で胸腔内に多房性の胸水貯留が認められた.フィブリン溶解を目的としてウロキナーゼが胸腔内に投与された.その結果,形成されていた多房性の胸水は消失し良好な肺の再膨張が得られた.その後,再度胸膜癒着術が施行された.患者は約7ヶ月後に癌死となったが,その間胸水の再貯留を認めることなく安定した呼吸状態を保ち,自宅での生活が可能であった.結論.癌性胸膜炎に対するウロキナーゼの胸腔内注入は,trapped lungに対する治療法として有用であった.
  • 川久保 尚徳, 加藤 雅人, 松本 耕太郎, 綿屋 洋, 鶴田 伸子, 樋口 和行
    2009 年 49 巻 3 号 p. 317-321
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Mucoepidermoid carcinomaは気管支腺由来の腫瘍である気管支腺腫に分類され,全肺癌の0.1%程度である.症例.68歳,男性,呼吸困難感を主訴に当院救急外来に救急搬送.胸部X線写真上,左肺の透過性がびまん性に低下しており,肺換気血流不均等の状態と考え,挿管下にICUで人工呼吸管理を行った.気管支鏡検査で左主気管支に気管支を閉塞する白色の腫瘍を認め,経気管支肺生検で扁平上皮癌と診断された.呼吸状態が改善したのち,挿管4日目に抜管した.全身精査後,左肺摘除術を施行した.左主気管支を閉塞する大きさ31×26 mmの腫瘍であり,組織学的にmucoepidermoid carcinomaの診断であった.結論.Mucoepidermoid carcinomaは気管支腺由来の腫瘍である気管支腺腫に分類され,その組織学的特徴,頻度から術前に確定診断をつけるのは困難である.一般的にmucoepidermoid carcinomaの予後は良好とされているが,全体の約20%に悪性度の高いhigh grade malignantなものがあり,術後病理検査でhigh grade malignancyが疑われる場合には慎重な経過観察が必要と考えられる.
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