背景.重症筋無力症(MG)に合併した肺癌の報告は少ない.
症例.76歳の女性で,主訴は眼瞼下垂と下肢の脱力.エドロフォニウムの注射により筋力の改善を認めた.Sero-negative MGと診断された.胸部X線写真にて,右上肺野に異常影が認められた.胸部CTにて,右S
1に3 cmのmixed ground glass opacity(GGO),右S
3に1 cmのGGO,左S
10に5 mmのGGOの3病変が認められた.肋間開胸を伴わない胸骨正中切開にて,拡大胸腺摘出術と根治的右上葉切除,リンパ節郭清術を同時に施行した.病理学的検索により,S
1とS
3の病変はそれぞれ混合型腺癌と肺胞上皮癌と診断された.術後経過は良好で,術後10日目にMGの薬物治療のために神経内科に転科した.4年2か月後の現在,患者は無再発生存しており,左S
10のGGOに変化を認めず,pyridostigmine bromideの内服のみで筋力はほぼ正常に維持されている.
結論.胸腺腫を合併しないMGと原発性多発肺癌の同時手術症例を報告した.MGに肺癌を合併する可能性がまれながら存在することを念頭に置くことが必要である.
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