水文・水資源学会誌
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29 巻, 4 号
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巻頭言
原著論文
  • 手計 太一 , 北 隆平, 橋本 充弘, 下坂 将史
    2016 年 29 巻 4 号 p. 219-226
    発行日: 2016/07/05
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,既存井戸の柱状図データ731本とその比抵抗データを利用することによって定量性を持った黒部川扇状地の地質図を新しく作成した.本稿では,縦断図と横断図を合わせて5つ示し,黒部川扇状地の堆積構造を明らかにした.1983年から2012年までの30年間に実施された貴重な流量観測データを整理し,長期的な湧水・伏没機構について検討した.その結果,検討期間を通して収支では伏没量が支配的であり,その量は近年増加していることがわかった.さらに,黒部川における河川-地下水交流関係の季節変化や長期的な変化が認められた.
  • 孫 玫, 艾 麗坤 , 開發 一郎, 藤井 秀幸, 近藤 昭彦
    2016 年 29 巻 4 号 p. 227-237
    発行日: 2016/07/05
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー
     乾燥・半乾燥地域における土壌水分は地表面の熱収支変化,気候変化などと関連する重要な水文要素である.近年,衛星リモートセンシングを用いて,広域を対象とした長期間の土壌水分を観測することが可能となり,改良型マイクロ波放射計(AMSR-E)による土壌水分の広域・時系列データが利用できるようになった.そこで,本研究は中国の山西省においてAMSR-E土壌水分の検証を行い,これと検証地の地表面の水文因子(降水量)や植生因子(NDVI)との関連を調べることを目的とした.その結果,108カ所の地上観測地点のうち64カ所においてAMSR-E土壌水分と実測土壌水分との良い相関が得られた.相関係数が高い地点は,1)十分な密度の地上観測地点がある地域,2)土地利用タイプが均一な地域,3)地形が相対的に平坦な地域であり,これらの条件を考慮することによりAMSR-E土壌水分観測から広域の土壌水分変動をより正確に捉えることができることが明らかとなった.
解説シリーズ「都市気象学の体系化に向けた最近の研究から」
  • 解説シリーズ「都市気象学の体系化に向けた最近の研究から」
    仲吉 信人
    2016 年 29 巻 4 号 p. 238-250
    発行日: 2016/07/05
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー
     本解説は,個人の動線に沿った微気象変化,およびそれに伴う人体生理応答を計測・評価する都市生気象学の新たな研究手法について紹介するものであり,本手法の根幹技術であるウェアラブルな気象・生理計測システム,およびそれを用いた都市街区での被験者実験に焦点を当て報告する.ウェアラブル計測システムは,微気象因子として全ての熱環境因子(気温,湿度,風速,短波・長波放射),生理因子では皮膚温度,脈拍,活動量指標,温熱感覚を計測する.微気象因子のうち,風速,短波・長波放射量は本手法のために開発した新センサ,グローブ風速・放射センサを用い評価する.本手法の応用例として,2011年8月22-24日にかけ岐阜県多治見市の都市街区にて温熱生理実験を実施した.本計測システムにより,AMeDASなどのルーチン観測網では評価できない街区微気象の局所性が可視化され,また微気象に対する生理応答に性差・体格差といった明確な個人属性の影響が見られることが確認された.都市の微気象評価や生気象研究における本手法の有用性が示された.
研究ノート
  • 笹川 幸寛, 手計 太一
    2016 年 29 巻 4 号 p. 251-258
    発行日: 2016/07/05
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー
     富山県射水市新湊を流れる二級河川の内川は,流域の社会経済発展にともない流路が複雑化してきた.常に海水と淡水が複雑に交錯して流れており,多くの環境問題を抱えていることで知られている.2011年から継続的にADCP を用いた流速観測を行った結果,塩水楔が浸入する直前に全層で逆流する特異な現象を捉えている.この現象の流体力学要因を明らかにするために,VOF法を利用した数値解析を行った.その結果,観測結果とほぼ同様に,全層逆流現象を再現することができた.密度や圧力の計算結果によって,この逆流現象は,塩水遡上が淡水域を押し上げていることに因るものであることがわかった.
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