日本臨床免疫学会会誌
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35 巻, 4 号
第40回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の192件中151~192を表示しています
一般演題(ポスター)
  • 宮本 佳昭, 池田 昌郁, 宇賀 均, 三枝 淳, 森信 暁雄, 熊谷 俊一, 倉田 寛一
    2012 年 35 巻 4 号 p. 359a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      SKGマウスはT細胞受容体シグナル分子ZAP70の点突然変異を有することから,T細胞の胸腺教育異常により,末梢中に自己反応性T細胞が出現し,ヒトの関節リウマチに類似した関節炎を自然発症する.一方,Th17細胞は,関節炎モデルにおいて病原性を示すなど,自己免疫疾患病態への深い関与が注目されている.
      我々は関節リウマチの病態を分析するために,SKGマウスの関節病変組織におけるサイトカイン発現や浸潤Th細胞の経時的変化を解析した.その結果,病態慢性化に伴い,IL-1βやTNF-αなどの炎症性サイトカイン遺伝子発現が増強すること,Th1細胞やTh2細胞に比べ,Th17細胞およびTreg細胞の病変組織浸潤が有意に増加することを見出した.さらに,naïve Th細胞の分化培養系の改良によって高純度のTh1, Th2, TregおよびTh17細胞を取得し,発現マイクロアレイ比較解析によりTh17細胞特異的に発現する遺伝子マーカーを同定した.興味深いことに,これらマーカーの多くが慢性化に伴い病変組織おいて発現が増強し,また組織浸潤Th細胞に発現していた.
      これらの結果は,SKG関節炎モデルの病態にTh17細胞およびTreg細胞の動態が深く関与することを示しており,Th17細胞特異的マーカーが発症や疾患活動性の評価に有用である可能性を示唆している.
  • 泉 啓介, 吉本 桂子, 亀田 秀人, 竹内 勤
    2012 年 35 巻 4 号 p. 359b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    背景 NKG2Dは主にCD8+T細胞やNK細胞等に発現する受容体で,腫瘍,感染,自己免疫疾患等のストレス下の細胞に発現するリガンドを認識する.CD8+T細胞ではDAP10を介したTCR共刺激分子として,一方,NK細胞では直接刺激分子として働き,免疫応答を調節する新たな標的分子として注目されている.
    目的 RA病態におけるT細胞上NKG2Dの発現様式を解析する.
    方法 末梢血単核球(PBMC)は生物学的製剤未使用の活動性RA患者8人及び年齢/性を適合させた健常人7人から採取し,37°Cで3日間培養した.抗NKG2Dモノクローナル抗体を用いて,FACSにてNKG2D, CD4, CD8, CD28の発現を解析した.
    結果 RA患者の平均年齢は53.3±16.6歳,平均罹病期間は36.8±54.3カ月.EULAR基準疾患活動性は高度が5人(62.5%),中等度が3人(37.5%).MTX使用は7人(87.5%)で使用者平均8.3 mg/週.1人(12.5%)は抗リウマチ薬不使用.プレドニゾロン使用は2人(25.0%)で使用者平均3.5 mg/日であった.CD4+CD28およびCD4+CD28+T細胞におけるNKG2D陽性率はRA患者と健常人で同等であり,それぞれ40%程度と20%程度であった.一方,CD8+CD28およびCD8+CD28+T細胞におけるNKG2D陽性率もRA患者と健常人では同等であり,それぞれ70%程度と95%程度であった.しかし,MFIではCD8+CD28 T細胞のNKG2Dにおいて,健常人と比較しRA患者で有意な低下が認められた(p<0.001).
    結論 CD8+CD28 T細胞のNKG2D発現がRAの病態形成に関与している可能性が示唆された.
  • 松木 郁親, 三枝 淳, 熊谷 俊一, 森信 暁雄
    2012 年 35 巻 4 号 p. 360a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】T細胞をCCR7, CD45RAを用いてナイーブ,セントラルメモリー,エフェクターメモリーに分類することは,その機能解析において重要である.我々は,関節リウマチ(RA)の病態において中心的役割を果たしているCD4陽性T細胞の亜集団を同定することを目的として,RA患者の末梢血CD4陽性T細胞を上記2つの表面マーカーにCD27とCD28を加えてさらに細かく分類し,各集団における炎症性サイトカイン産生能やFoxp3の発現を解析した.【方法】RA患者及び健常人由来の末梢血CD4陽性T細胞をCCR7, CD45RA, CD27, CD28の4つの表面マーカーを用いて分類し,各亜集団のサイトカイン産生能,Foxp3及びRANKLの発現をeight-colorフローサイトメトリーを用いて解析した.【結果】4つの表面マーカーを用いることにより,末梢血CD4陽性T細胞を6つの亜集団に分類した.RA患者末梢血では,CD27+CD28+のCD4陽性セントラルメモリーT細胞が有意に減少していた.また,そのサブセットのFoxp3陽性細胞がRA患者で有意に減少していた.さらに,CD27+CD28+のCD4陽性エフェクターメモリーT細胞におけるIL-17とTNF-αの産生がRA患者において有意に高値であった.【結論】CCR7, CD45RAにCD27, CD28を加えて末梢血CD4陽性T細胞を分類することにより,特定の亜集団が制御性作用やサイトカイン産生の中心的役割を担っていることが明らかとなった.さらに,RA患者の末梢血における各亜集団の量的・質的な異常を同定した.
  • 菊池 潤, 椎名 雅史, 橋詰 美里, 吉本 桂子, 亀田 秀人, 竹内 勤
    2012 年 35 巻 4 号 p. 360b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】RAにおけるTh17細胞の病因的意義は不明な点が多い.近年,ヒトTh17細胞の表面マーカーとしてCタイプレクチン様受容体であるCD161が報告された.【目的と方法】RA患者末梢血全血をFACSで解析し,CD4+CD45RO+CCR6+CD161+細胞(以下CD161+細胞とする)のRA病態および治療の影響を探索的に検討した.【結果】RA患者81名(未治療7名,DMARDs治療19名,TNF阻害治療29名,トシリズマブ治療26名),健康成人17名を対象とした.CD4+細胞に占めるCD161+細胞比率はRA無治療群で他の治療群よりも有意に高値であった.健康成人の平均+2標準偏差以上で定めた高値例は,健康成人で0%,RA患者では23%であり,RA患者では,DMARDs治療群(2/19=10.5%)およびトシリズマブ治療群(1/26=3.8%)と比較して,未治療群(5/7=71.4%)およびTNF阻害治療群(11/29=37.9%)で有意に高率であった.さらに,TNF阻害治療群の中で,CD161+細胞高値例は,抗CCP抗体価>100 U/mlではそれ以外と比較して有意に高率であった(66.7%対16.67%).臨床データを含めた多変量解析の結果,CD161+細胞高値は疾患活動性との相関は示さなかったものの,治療の種類と抗CCP抗体価>100 U/mlが有意な関連因子として抽出された.【結語】RA患者において,未治療例およびTNF阻害剤治療例,抗CCP抗体高値例で,末梢血中CD161+細胞の比率増加が見られた.
  • 岡本 明子, 藤尾 圭志, 松本 巧, 住友 秀次, 岡村 僚久, 山本 一彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 361a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    [背景]マウス新規制御性T細胞CD4+CD25LAG3+T細胞(以下LAG3+Treg)は,転写因子early growth response gene-2(Egr-2)を発現し,強力な自己抗体産生抑制能を示す.Janus kinase(Jak)3欠損マウスではCD4+LAG3+T細胞が増加する.
    [目的]Jak阻害薬tofacitinibのLAG3+Treg分化への影響を検討した.
    [方法]若齢C57BL/6(B6), NZB/W F1(BWF1)マウスにtofacitinibを4週間持続投与し,脾臓LAG3+Tregをフローサイトメトリーで解析した.tofacitinib添加下にCD4+T細胞を培養し,Egr2の発現を検討した.tofacitinib添加下に培養したCD4+ T細胞をBWF1マウスに養子移入した.
    [結果]B6マウスではtofacitinib投与後に脾臓LAG3+Tregが増加したが,BWF1マウスでは若年齢よりLAG3+Tregが減少しており,tofacitinibによるLAG3+Tregの増加も見られなかった.tofacitinib添加下のCD4+ T細胞培養により,B6, BWF1マウス両方でEgr2が誘導された.tofacitinib添加下に培養したCD4+ T細胞はBWF1マウスの抗DNA抗体産生と蛋白尿進展を抑制した.
    [結論]Jak阻害薬は生体内のLAG3+Treg分化,試験管内のEgr2発現を誘導し,これらが作用機序の一つである可能性が考えられた.
  • 仲野 総一郎, 鈴木 智, 渡邉 崇, 宮下 知子, 森本 真司, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 361b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      IL-12ファミリーの新規サイトカインであるIL-35は,制御性T細胞(Treg)の免疫抑制機能に関わることが報告されている.ヒトにおいて,IL-35はTregで発現さされており,リコンビナントIL-35を添加しエフェクターT細胞(Teff)をTregとともに固相化抗CD3抗体と抗CD28抗体で刺激し培養を行うと,IL-35の濃度依存性にTeffの機能を抑制する.さらに,コラーゲン誘導性関節炎(CIA)マウスモデルにリコンビナントIL-35を投与することで関節炎に対する治療効果を示し,その機序についてはT細胞増殖抑制やTh17分化抑制にあることを示した報告も出ており,炎症制御の観点から関節炎病態との関連が示唆されている.今回我々は関節リウマチ患者におけるIL-35とTregの機能について検討を行った.血清IL-35濃度は関節リウマチ患者で有意に減少しており,疾患活動性と逆相関がみられた.また,ソーティングした患者末梢血TregとTeffを用いたSuppression assayでは,IL-35添加でTeffの分裂が抑制されており,Tregの機能増強が確認された.また,培養上清を用いてサイトカインプロファイルを調べたところ,IL-2・IFN-γ・IL-17の炎症性サイトカイン産生はIL-35添加で抑制されていた.これらの結果から,詳細なメカニズムは明らかではないが,IL-35はTreg細胞個々の抑制活性を高めTresの細胞増殖を抑制し,炎症性サイトカイン産生も抑制することで炎症制御に関わっている可能性が示唆された.
  • 鈴木 英二, Gary Gilkeson, Dennis Watson, 渡辺 浩志, Zhang Xian
    2012 年 35 巻 4 号 p. 362a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Ets転写因子の一種であるFli-1は免疫担当細胞を含む血球系細胞に広く発現している.我々はcarboxy-terminal transcriptional(CTA)domainを欠いたFli-1(Fli-1ΔCTA)を発現するマウスを作成し,Fli-1ΔCTAが脾のおけるB細胞の分化に影響を与えることえを報告した.免疫系細胞の分化におけるFli-1の更なる役割を知るため,mononuclear phagocytes system(MPS)の分化におけるFli-1の発現の影響を検討した.Fli-1ΔCTA/ΔCTA B6マウスでは野生型マウスと比較して骨髄において造血幹細胞とcommon dendritic cell precursors,脾においてclassical dendritic cells, plasmacytoid dendritic cellsとマクロファージ,末梢血においてpre-classical dendritic cellsと単球が増加していた.更に,Fli-1ΔCTA/ΔCTA B6マウスおよび野生型マウスの骨髄を各々のドナーマウスに移植したところ,血球系細胞と骨髄ストローマ細胞の両者のFli-1の発現がMPSの分化に影響を与えることが示された.Fli-1ΔCTA/ΔCTAマウスから得られたmultipotent progenitorsでは,野生型マウスに比べて,樹状細胞の分化に重要な因子であるFms-like tyrosine kinase 3 ligandのmRNAの発現が有意に増加していた.以上よりFli-1はMPSの分化に重要であり,また,Fli-1のCTA domainはMPSの分化を負に制御することが示唆された.
  • 久保 輝文, 叶 汭, 三橋 由佳梨, 山下 恵司, 佐藤 明紀, 小島 隆, 佐藤 昇志, 一宮 慎吾
    2012 年 35 巻 4 号 p. 362b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      アトピー性皮膚炎は本邦の小児の約1割が罹患し,罹患者の生活の質を著しく低下させる.さらにアトピー性皮膚炎自体が気管支喘息やアレルギー性結膜炎など種々の慢性アレルギー疾患の根底にある可能性が分子免疫学的にも支持されつつあり,その病態の機序の解明が急がれている.
      近年,アトピー性皮膚炎の患部のケラチノサイトがthymic stromal lymphopoietin(TSLP)を高産生することが明らかとなった.TSLPはTSLP受容体(TSLPR)を発現する樹状細胞を介してTh0細胞をTh2細胞へと分化させることで,アトピー・アレルギー疾患の病態形成に中心的役割を果たすと考えられている.
      我々は今回,表皮ケラチノサイトにおけるTSLPRの発現を明らかとした.また,表皮ケラチノサイト初代培養細胞および表皮モデルHaCaT細胞を用いた検討において,TSLPRの発現は表皮幹細胞因子p63を介した自然免疫経路によって制御されていた.興味深いことに表皮に対するTSLP刺激は更なるTSLP産生を惹起し,その他の炎症性サイトカインの発現も促進していた.これらの結果からTSLPはオートクラインあるいはパラクラインによってケラチノサイト自身にも作用するループを形成し,アトピー性皮膚炎患部表皮の炎症環境の形成,維持に関与していると考えられる.
  • 近藤 裕也, 田原 昌浩, 飯塚 麻菜, 坪井 洋人, 高橋 智, 松本 功, 住田 孝之
    2012 年 35 巻 4 号 p. 363a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】T細胞における転写因子RORγtの発現が自己免疫性関節炎に与える影響を明らかにする.
    【方法】1)C57BL/6 (B6),RORγtトランスジェニックマウス(RORγt Tg)に対してコラーゲン誘導関節炎(collagen induced arthritis; CIA)を誘導し,発症率,重症度,関節炎の病理所見を比較した.2)CII投与後にリンパ節細胞を採取しCIIとともにin vitroで培養し,培養上清中のサイトカイン濃度をELISAで測定した.3)2)で培養したT細胞の転写因子発現をFACSで解析した.4)CCR6発現と転写因子発現との関連をFACSで解析した.
    【結果】1)RORγt TgにおいてCIAの発症率,重症度がB6と比較して有意に抑制され,組織学的にも関節炎の所見は軽度であった.2)CII反応性T細胞によるIL-17産生は,RORγt Tgで有意に高値を示した.3)RORγt TgではCD4+T細胞におけるRORγt発現がB6と比較して有意に亢進していた.CD4+T細胞においてRORγt,Foxp3は共発現していたが,B6,RORγt Tg間でFoxp3発現の差は認めなかった.4)RORγt TgではCD4+ T細胞におけるCCR6発現が亢進しており,特にCD4+ Foxp3+ T細胞において有意な発現亢進を認めた.
    【結論】RORγt Tgでは抗原であるCIIに対するIL-17産生が亢進しているにも関わらず関節炎発症は抑制されたことから,RORγt発現が関節炎抑制に関与している可能性が示唆された.
  • 海江田 信二郎
    2012 年 35 巻 4 号 p. 363b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Mast cellは関節リウマチ滑膜組織にてその数の増加や,関節液中のmast cell特異的顆粒成分tryptaseおよびhistamineの濃度上昇が報告され,その病態への関与が推測される.我々はこれまでにsynovial fibroblast由来のIL-33がmast cellの顆粒成熟化および炎症性サイトカインの産生を誘導し,関節炎症に促進的に作用することを報告した.さらにわれわれは,in vitroのco-culture experimentでsynovial fibroblast-mast cell間にamplification loopが形成され,Il-33/ST2 receptor pathwayがその形成に寄与することを明らかにした.IL-33 receptor KOマウスにおいて関節炎は軽減し,また炎症関節部においてIL-6, IL-1bおよびIL-33のmRNA発現は有意に低下していた.Mast cellは滑膜組織における主要なST2 receptor発現細胞であり,IL-33/ST2 pathwayはmast cell/fibroblast interactionに作用し,関節炎症促進的に作用することが推測される.IL-33は関節炎症の新規治療のターゲットになりうることが示唆された.
  • 井上 明日香, 松本 功, 梅田 直人, 田中 勇希, 住田 孝之
    2012 年 35 巻 4 号 p. 364a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      TIARP分子は関節炎マウス脾臓および関節に発現し,マクロファージに局在する.本研究では,TIARP欠損マウスを作製し,関節炎発症における機能を明らかにすることを目的とした.12ヶ月齢のTIARP欠損マウスは,関節炎を自然発症し,血清IL-6濃度高値,及び脾臓マクロファージ数の増加を認めた.TIARP欠損マウス由来マクロファージは野生型と比較して,TNFα刺激で有為なIL-6産生増加,アポトーシス細胞数の減少を認め,さらにNF-κB抑制因子であるIκBα発現量は長期持続的に分解が進んでいた.またコラーゲン誘導関節炎(CIA)を誘導したTIARP欠損マウスは野生型と比較して,発症率・重症度ともに増悪していた.一方,抗CII抗体価に有為な差は認められなかった.CIA誘導後の血清IL-6濃度はTIARP欠損マウスで高値を示した.抗IL-6受容体抗体投与によりTIARP欠損マウスのCIAが減弱した.IL-6作用後のマクロファージを用いてその下流シグナル分子の発現をウェスタンブロット法で測定したところ,リン酸化STAT3発現量は野生型と比較して,TIARP欠損マウスで増強していた.一方,シグナル抑制分子SOCS3発現量に有為な差は認められなかった.これらのことからTIARPはNF-κBおよびSTAT3シグナルを制御し,炎症性サイトカインの産生抑制およびアポトーシスを促進することにより関節炎を負に制御している可能性が示唆された.
  • 森村 壮志, 菅谷 誠, 佐藤 伸一
    2012 年 35 巻 4 号 p. 364b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      フラクタルカインはCX3CR1のリガンドで,遊走作用を持つほか,接着因子としても機能する.フラクタルカインは関節リウマチや皮膚筋炎などにおいて,マクロファージや樹状細胞の活性化に関与していると報告されている.これらの膠原病や結節性多発動脈炎は,抗原,抗体,補体が結合した免疫複合体によって組織損傷が起こる・型アレルギーに分類されている.今回我々はCX3CR1ノックアウトマウスを用い,・型アレルギーの実験モデルであるアルザス反応におけるフラクタルカインとCX3CR1の役割を調べた.皮膚アルザス反応では,CX3CR1ノックアウトマウスは野生型マウスと比較し,有意に浮腫や出血が軽度で,組織に浸潤する好中球,肥満細胞も少なかった.また,皮膚におけるIL-6とTNF-αの産生も有意に減少していた.腹腔アルザス反応でも同様に,CX3CR1ノックアウトマウスでは浸潤する好中球,肥満細胞,腹水中のIL-6, TNF-αは少なかった.次に結節性多発動脈炎の患者血清中のフラクタルカインを測定したところ,健常人と比べて有意に上昇しており,また組織染色では血管内皮細胞にフラクタルカインが強く発現していた.CX3CR1は好中球や肥満細胞に発現していることから,これらの細胞の血管外浸潤に寄与していると考えた.以上より,フラクタルカインとCX3CR1は血管炎の発生に重要な役割を果たすことが示唆された.
  • 花見 健太郎, 中野 和久, 山岡 邦宏, 斉藤 和義, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 365a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】関節リウマチ(RA)の罹患関節では破骨細胞による骨吸収亢進の病態が形成される.中枢神経障害を合併する RA では麻痺側の骨破壊抑制が知られ,骨破壊病態と神経系の関連が示唆される.今回,神経系と骨系の連関を解明するために,ドパミン受容体シグナルを介するヒト破骨細胞への直接的な影響について検討した.
    【方法】健常人より単球を分離し,破骨細胞分化因子刺激下で培養.破骨細胞の分化・機能をTRAP染色及びpit formation assay,培養開始後のカテプシンK, NFATc1発現レベルをqPCRを用いて評価.また,細胞内cAMP assayを行った.
    【結果】培養前及び培養4日目のヒト破骨細胞前駆細胞は,D1~D5ドパミン受容体を発現していた.破骨細胞分化因子と同時のドパミン(10 nM)添加により,14日目のTRAP陽性多核細胞は濃度依存性に有意に減少した(366±36→87±24/cm2).また,D2様受容体作動薬の添加でも,TRAP陽性多核細胞は減少した.また,ドパミン及びD2様受容体作動薬は,カテプシンKを有意に抑制し,pit吸収窩面積を減少させた.さらに,培養4日目の細胞内cAMP濃度,14日目のNFATc1も有意に抑制した.
    【結語】ドパミンD2様受容体シグナルは,細胞内cAMP濃度低下,NFATc1発現抑制を介して破骨細胞分化を抑制したと考えられる.D2ドパミン受容体シグナルが直接的に骨吸収を抑制する事を初めて明らかにし,ドパミンを介する神経系と骨系の機能連関の可能性が示唆された.
  • 石山 健太郎, 西山 千春, 八代 拓也, 田村 直人, 奥村 康, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 365b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】 転写調節因子PU.1は関節リウマチの病態において重要な役割を果たす破骨細胞の分化誘導に関わる.一方,TGF-βも破骨細胞において分化促進因子である.これらの背景から,TGF-β制御下にPU.1が破骨細胞特異的遺伝子発現を制御しているかを検証すると共に,その分子機構を明らかにすることを目的とする.
    【方法】①BALB/cマウスの骨髄由来細胞を,M-CSF, RANKL, TGF-β存在下で破骨細胞を分化誘導する過程において,si RNAを用いてPU.1発現をノックダウンした.得られた細胞を,TRAP染色で酵素活性を評価し,定量的PCRにて破骨細胞マーカー遺伝子群のmRNA発現量を測定した.②TGF-βの有無が,PU.1のmRNA発現量に及ぼす影響を定量的PCRにより解析した.③破骨細胞特異的遺伝子のプロモーターに対し,PU.1がTGF-β制御下にどのように作用しているか,クロマチン免疫沈降法を用いて検討した.
    【結果】①PU.1 siRNA導入により,TRAP活性は低下し,破骨細胞のマーカー遺伝子であるAcp5やカテプシンKなどのmRNA発現が抑制された.②TGF-βは,PU.1並びに破骨細胞特異的遺伝子群の発現量を増加させた.③Acp5やカテプシンKのプロモーター領域にPU.1の結合を認め,さらにTGF-β刺激により結合量が増加した.
    【考察】破骨細胞形成において,TGF-βやPU.1は重要な因子となっている.引き続きTGF-β刺激に呼応したSmad分子群がPU.1の転写活性に関わっているかなど検討していく.
  • 山口 絢子, 野澤 和久, 藤城 真樹, 川崎 美紀子, 髙崎 芳成, 関川 巌
    2012 年 35 巻 4 号 p. 366a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】関節リウマチ(RA)における病態の主座であるパンヌス形成にエストロゲンがどのような役割を担っているか解析した.【方法と結果】RA滑膜細胞に17β-estradiol(E2)を添加して,(1)細胞活性(2)抗アポトーシス作用(3)MMP-3産生能を解析した.結果(1)早期よりERK1/2のリン酸化が認められた.(2)H2O2で誘導したアポトーシスを抑制した.(3)E2とTNF-αで共刺激した滑膜細胞からはMMP-3の発現が有意に高かった.また,E2刺激により発現が変化する分子をDNA microarrayにより網羅的解析した.ケモカインはRAの病態に関与していることが報告されているが,そこから同定された分子CCL13は,E2刺激で2.61倍と発現が亢進していた.CCL13の発現を滑膜細胞のmRNAと培養上清で確認したところ,E2刺激したもので上昇していた.実際にRA滑膜細胞におけるCCL13の発現は,変形性関節症の滑膜細胞と比べて高く,活動性のあるRA患者の血清においても有意に高かった.【考察】エストロゲンは滑膜に作用し,アポトーシス抑制という滑膜細胞への直接作用やCCL13を介した間接作用でRAの病態形成に関与すると考えられる.
  • 橋詰 美里, 田中 圭介, 吉田 広人, 鈴木 美穂, 松本 義弘
    2012 年 35 巻 4 号 p. 366b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)の骨破壊には,全身性の慢性炎症が関与すると考えられている.破骨細胞前駆細胞(OCPs)に発現するスフィンゴシン1-リン酸受容体タイプII(S1PR2)は,スフィンゴシン1-リン酸の濃度勾配を介して骨髄から血中へのOCPsの移行を制御し,骨破壊に関与する分子である.S1PR2の発現と骨髄でのOCPsの増加に及ぼすIL-6の影響を関節炎モデルを用いて検討した.関節炎マウスにおいて大腿骨の骨量の減少が認められた.関節炎マウス骨髄中のOCPs(CD11b+Gr-1low+med)は正常マウスに比べて増加した.関節炎マウスOCPsにおけるS1PR2発現量は正常マウスに比べて高値だった.抗IL-6受容体抗体の投与は骨髄中のOCPsを減少し,OCPsにおけるS1PR2発現量を低下した.in vitroで骨髄由来OCPsをIL-6で刺激すると,OCPsはS1PR2発現量が増加し,スフィンゴシン1-リン酸への走化性が低下した.我々は初めて,IL-6がS1PR2の発現を誘導し,骨髄中のOCPsを増加させることを明らかにした.これまでにRAの骨破壊においてIL-6が滑膜細胞にRANKLを誘導しOCPsの分化を促進することを報告しているが,骨髄でのOCPsの増加にもIL-6が関与することが明らかとなった.
  • 吉田 広人, 鈴木 美穂, 橋詰 美里, 田中 圭介, 椎名 雅史, 松本 功, 住田 孝之, 松本 義弘
    2012 年 35 巻 4 号 p. 367a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】関節リウマチ(RA)患者における骨粗鬆症の有病率は,原発性骨粗鬆症患者の割合に比較し2~4倍多いことが報告されている.しかしながら抗IL-6受容体抗体であるtocilizumab治療がRA患者の骨粗鬆症に対して改善効果を発揮するかは不明である.
    【目的】関節炎モデルを用い関節腫脹部位以外の骨量減少にIL-6が関与しているか明らかにする.
    【方法と結果】Glucose-6-phosphate isomerase(GPI)誘導関節炎モデルはGPIをアジュバントとともに1回免疫し誘導した.GPI免疫から1週毎に大腿骨を採取し,遠位部海綿骨の骨量体積比と大腿骨全体の骨密度を測定すると,関節腫脹のピークであるday14まで骨量体積比,骨密度ともに顕著に減少し続けた.その後,関節炎の自然治癒に伴い骨量は回復していった.次にこの骨量減少にIL-6が関与しているか検討した.抗マウスIL-6受容体抗体(MR16-1)をday5に1回投与すると関節炎は有意に抑制した.day35時点でこのマウスから大腿骨を採取し解析したところ,コントロール群に比べて骨量体積比は有意に高く,骨密度も高い傾向にあった.
    【考察】IL-6は関節炎によって誘導される大腿骨遠位部の海綿骨量の減少に関与していることが明らかとなり,IL-6阻害療法は炎症局所以外の骨粗鬆症に対し有効である可能性が示唆された.
  • 中野 和久, Gary S Firestein, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 367b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    日本臨床免疫学会会誌35巻4号(日本臨床免疫学会総会抄録号)P367(P2-082)に掲載の下記抄録は、著者からの取り下げの要望に伴い審議した結果、取り消すことに致しました。
  • 松平 蘭, 田村 直人, 伊東 朋子, 山路 健, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 368a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    目的 生物学的製剤(Bio)使用中のRA患者における治療前後の各抗体の推移と疾患活動性との関連について検討.方法 Bio使用患者65名について治療前後(12ヶ月)の抗CCP抗体,抗Sa抗体,RF,MMP-3を測定した.疾患活動性についてはDAS28/CRPにより評価.結果 治療前の抗CCP抗体,抗Sa抗体,RF,MMP-3の陽性率は各々,61(93.8%),40(61.5%),55(84.6%),55(84.6%)で,治療後は60(92.3%), 28(43.1%),45(69.2%),49(75.4%)であった.治療前RF高値例は疾患活動性も高い傾向にあった(p=0.003).一方で,高疾患活動42症例において抗Sa抗体は15例で陰性で,他に比べ陰性率が高かった (4.8%,35.7%,7.1%,7.1%;p=0.001).治療後DAS28/CRPの改善はRF陽性症例で有意に高く(p=0.039),他では差はなかった.さらに,治療後中等度から低疾患活動性の改善をみた54症例中,35(64.6%),27(50%),34(62.9%),35(64.8%)で抗体価の低下は認めたが,寛解症例において差はみられなかった.抗Sa抗体,RF, MMP-3は治療後陰転化が10,6,10例でみられたが,抗CCP抗体では1例以外陰転化はみられなかった.また,疾患活動性改善の有無に関わらず,各抗体の抗体価は治療後に明らかに低下した(p=0.008,p=0.023,p=0.002,p<0.001).結語 RFは他に比べBio治療後の疾患活動性改善と相関した.また抗CCP抗体は治療効果群での抗体陰転化はわずか1例のみで,治療中の疾患活動性マーカーとしては有用でないことが示唆された.
  • 副島 誠, Marc C Levesque
    2012 年 35 巻 4 号 p. 368b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    目的
    関節リウマチ(RA)患者において,抗リウマチ薬(DMARDs)のACPAやB細胞に対する影響を明らかにする.
    方法
    早期RA患者226名と晩期RA患者115名の連続した血清を用い,DMARDs(MTX vs MTXを含む3剤の経口DMARDs vs MTXと抗TNF治療併用)投与後の抗CCP2抗体を含むACPA値の変化を比較した.ACPA値はELISAを用い測定した.また,フローサイトメトリーを用いてB細胞分画を比較した.統計学的手法としてmixed effects regression model, ANOVA, t-testを用いた.
    結果
    研究開始時における各治療群の年齢,性別,人種,RFや疾患活動性に統計学的な有意差はなかった.治療後のACPA値の変化は早期,晩期RA患者で同じ傾向がみられた.治療後6ヶ月後にすべての治療群でACPA値の低下がみられた.治療6ヶ月以降,経口DMARDs群ではさらにACPA値の低下がみられたが,抗TNF治療群では経口DMARDs群に比べACPA値は有意に上昇した(p<0.01).末梢血記憶B細胞の割合は,健常人,経口DMARDs群に比べ,抗TNF治療群で有意に低く(p<0.01),末梢血ナイーブB細胞の割合は有意に高かった(p<0.01).
    結論
    経口DMARDsと抗TNF治療後のACPA値の変化は異なることが示された.治療後6ヶ月以降にACPA値が上昇した抗TNF治療群ではナイーブB細胞数の上昇,記憶B細胞数の低下がみられた.ナイーブB細胞は自己抗体産生能が高いことが報告されているが,抗TNF治療後にACPAが産生される機序については今後の研究課題である.
  • 松本 和子, 長嶋 孝夫, 岩本 雅弘, 釜田 康行, 永谷 勝也, 小内 葉子, 池ノ谷 紘平, 本根 杏子, 丸山 暁人, 室崎 貴勝, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 369a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      成人発症Still病(Adult onset Still's disease, AOSD)の疾患活動性評価に尿中β2ミクログロブリン(β2M)が有用であるかどうかを検討した.活動期AOSD入院患者延べ36人(男性6人,女性26人,重複4人)について,尿中β2Mと疾患活動性の指標である血清フェリチンとの相関,マクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome, MAS)合併AOSD群と非合併群における血清フェリチン,尿中β2Mについて検討を行った.36例の入院時年齢45±17.9歳(平均±SD),23例(63.9%)は新規発症,13例(36.1%)は再燃であった.MASは5例(13.9%)に合併し,2例はAOSDの診断と同時にMASも診断されたが,3例は治療中に発症し,副腎皮質ステロイド増量もしくはシクロスポリン併用で治療された.入院時の血清フェリチンと尿中β2M(β2M/Cr)はそれぞれ10272.7±18295.9 ng/ml(平均±SD),17011.1±33071.5で両者には有意な相関を認めなかった(r=0.238, p=0.162).MAS合併群と非合併群の血清フェリチンはそれぞれ25741.6±17887.0 ng/ml, 7777.7±17097.0 ng/mlで,新尿β2M(β2M/Cr)は47839.0±40368.3, 12038.8±28797.3であり,MAS合併群では新尿β2M及び血清フェリチンが非合併群より有意に上昇していた.血清フェリチンと同様に,MASを合併したAOSDにおける尿中β2Mの有用性が示唆された.
  • 藤枝 雄一郎, 志田 玄貴, 渡邊 俊之, 金塚 雄作, 奥 健志, 坊垣 暁之, 堀田 哲也, 保田 晋助, Amengual Olga, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 369b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】抗カルジオリピン抗体(aCL)-IgG/IgM,抗β2-グリコプロテインI (aβ2GPI)-IgG/IgMは抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断基準で認められた臨床検査であるが,本邦ではaCL-IgGおよびβ2GPI依存性aCL-IgGのみが保険収載されており,aCL-IgMやaβ2GPI-IgG/IgMを測定する標準化されたアッセイは存在しない.
    【目的】aCL-IgG/IgM, aβ2GPI-IgG/IgM測定キット(Phadia: EliATM)を用いることによるAPSの診断における有用性を検討した.
    【方法】当科外来患者のうち,230例(APS100例,SLE31例,関節リウマチ50例,その他の自己免疫疾患49例)の保存血清を用い,EliATMCardiolipinTM(CL-G, CL-M),EliATMβ2-Glycoprotein I(b2-G,b2-M)を測定した.対照として既存のMESACUPカルジオリピン(MESACUP),ヤマサ抗CLβ2GPIキット(ヤマサ)を同時測定した.
    【結果】感度,特異度,ROC曲線下面積(AUC)はそれぞれ,CL-G(45%, 94%, 0.80),CL-M(20%, 94%, 0.54),b2-G(33%, 93%, 0.88),b2-M(16%, 99%, 0.64),MESACUP(62%, 94%, 0.81),ヤマサ(51%, 99%, 0.87)であった.CL-G/M, b2-G/Mいずれかが陽性であるときの感度,特異度は55%,88%であり,APS100例でCL-G陰性45例のうち,CL-M, b2-G/Mのいずれかが陽性であるのは10例であった.
    【結語】Phadia:EliATMの4種類のキットを用いて複数の抗リン脂質抗体検査を組み合わせることで,現行の方法よりもAPS診断の感度をあげることができる.
  • 瀬理 祐, 石垣 和慶, 岩崎 由希子, 澁谷 美穂子, 庄田 宏文, 住友 秀次, 岡本 明子, 岡村 僚久, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 370a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成においてType I Interferon(Type I INF)とそれを産生するplasmacytoid dendritic cell(pDC)の重要性が示唆されているが,現時点ではSLE患者でのpDCの活性化を示す直接的な証拠は示されていない.そこで,我々はマウスではpDCが血清中の大部分のsoluble lymphocyte activation gene 3(sLAG3)を産生することに注目し,SLE患者と関節リウマチ(RA)患者,健常人で血清sLAG3濃度をELISAで測定した.健常コントロールの血清sLAG3濃度を1としてRA, SLEと比較すると,RAでは1.33+/−0.77だが,SLEでは36.2+/−21.5と著明な上昇を認めた.また,SLE患者では血清sLAG3濃度はSLEDAIとの相関も認め,多変量解析において特に血球障害との関連が示唆された.さらに,SLE患者の血清sLAG3濃度は末梢血単核球のType I INF signatureとの相関も認めた.以上より,SLE患者における血清sLAG3濃度は,Type I INF signatureを反映するSLEの新たな疾患活動性のマーカーとなる可能性が示唆された.
  • 安藤 誠一郎, 天野 浩文, 松平 蘭, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 370b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    〈目的〉ヘプシジン-25は主にIL-6に誘導され,鉄代謝に影響し慢性炎症状態時の貧血病態形成に関与する.抗TNF-α及び抗IL-6療法を用いて治療した関節リウマチ患者のヘプシジンの変化を観察し,治療効果に影響するか検討する.
    〈方法〉当院へ通院中の関節リウマチ患者のうち,インフリキシマブ治療を受け有効と評価された群,インフリキシマブで治療不十分と評価され治療中止した群・トシリズマブ治療が有効と評価された群の3群を抽出.治療前後の血清を用いてヘプシジン-25をELISA法で測定し,その他の臨床データも含めて比較検討した.
    〈結果〉上記3群いづれも治療前後においてヘプシジン-25は低下した.インフリキシマブ抵抗群及びトシリズマブ有効群の治療前ヘプシジン-25血中濃度は,インフリキシマブ有効群よりも高い傾向が見られた.また,ヘプシジン-25濃度と関連する末梢血Hb値の治療前値の比較において3群間に有意差が見られた.
    〈考察〉新規に生物製剤導入を検討する活動性関節リウマチ患者のHb値及びヘプシジン-25の測定は抗TNF-α療法及び抗IL-6療法の選択の決定の一助となるかもしれない.
  • 渡邉 崇, 仲野 総一郎, 天野 浩文, 森本 真司, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 371a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    〈目的〉海外では移植免疫に対してCTLA4-Igが使われており,HLA-Gを介した活性化リンパ球の抑制やDCのmaturation抑制が示されている.本邦では,現在RAにおいてCTLA4-Igが治療薬として用いられるため,HLA-Gを介した病態改善のメカニズムが起こっている可能性が考えられる.
    〈方法〉アバタセプト(CTLA4-Ig)の治療にHLA-Gが関連しているかどうかをRA患者(n=5)と健常者(n=5)と他の薬剤使用群患者(n=10)血清で調べた.
    〈結果〉CTLA4-Ig治療中のRA患者群では健常者と比較し,ELISA法にて血清HLA-G定量が有意差をもって増加していた.他の薬剤使用群においても同様の結果であった.
    〈考察〉現在のところ作用機序は不明であるがRAにおいてもCTLA4-Ig治療はHLA-Gを介している可能性が考えられる.
  • 渡辺 隆司
    2012 年 35 巻 4 号 p. 371b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】酸素封入ナノバブル(O-NB),海水由来ミネラル濃縮結晶水(S-MCM)とスーパーオキサイドデスムターゼ(SOD)配合液をアレルギー性皮膚炎惹起マウス背部の軽度熱傷創傷面(熱傷深度:1度)に塗布した場合の創傷面及び創傷皮膚組織内の治癒促進作用について検討する.【検討事項】1.軽度熱傷創傷部位作製法と創傷面積測定:ICR雌7週齢マウス背部に深度1度の軽度熱傷創傷を作製.アレルギー性皮膚炎の惹起は好酸球数とIgE抗体価で確認.測定法:背部創傷面作製直後から28日間に亘り,画像解析装置で面積計測.2.アレルギー性皮皮膚組織切片の特殊染色検査:エラスチカ・ファンギーソン染色法で結合組織の形成・再生観察.【結果】1.アレルギー性皮膚創傷面縮小・治癒推移:創傷面は,配合剤の塗布回数に伴って縮小し,塗布7日目以降,対照間に有意差が得られた.一方,実験群(16回塗布)の完全治癒率は,塗布後21日目にみられた(対照群:40%).2.傷創傷面内部の14日目における皮膚組織所見:配合剤の塗布回数に伴って,特殊染色法で赤色・紅色に染色された真皮層・皮下組織が増加し,繊維性蛋白質の再生が観察された.【結語】配合剤の塗布回数に依存した創傷面治癒作用は,ナノバブル酸素が効率良く繊維芽細胞群に供給されると共にSODによる細胞壊死の防御とS-MCMの免疫機能亢進との相乗作用に基づくものであろう.
  • 草生 真規雄, 村山 豪, 午來 美沙, 山田 里沙, 菱沼 留加, 根本 卓也, 寶達 桂, 小田 啓介, 河本 敏雄, 今 高之, 杉本 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 372a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      白血球除去療法(LCAP)は多剤無効例の関節リウマチ患者や,感染や薬剤アレルギーの存在などの為に生物製剤を含むスタンダードな治療が受けがたい患者に対しても比較的高い安全性をもつ,難治性症例に対する一つの治療選択肢である.炎症性腸疾患や壊疽性膿皮症,慢性脱髄性神経疾患,ANCA関連血管炎などへの有効性や皮膚潰瘍の改善効果も知られており,その効果機序の解明が進められている.治療後のCD34+細胞等の末血への動員や,TNFα,IL-6の低下,IL-10の増加などのサイトカイン・バランスの補正,活性化血小板の除去等の様々な知見が集積されているが,詳細は未だ不明である.我々は当院にて大量白血球除去療法を施行した関節リウマチ患者から治療直前,直後に末梢全血のmRNAを抽出,DNAマイクロアレイ(東レ:3-D gene®)にて網羅的に遺伝子の発現量変化を観察し,得られた結果をパスウェイ解析ツールであるMetaCore®(Thomson Reuters社,米国)を用いて検討を行った.計16名の患者における解析で抗原提示に関わる遺伝子群やインテグリンを介する細胞接着に関する遺伝子群が特にLCAP後に減少することを見出した.これまでに知られることがなかったLCAPの治療効果機序の一端である可能性がある.
  • 池田 高治, 古川 福実
    2012 年 35 巻 4 号 p. 372b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】UVA1など紫外線療法はアトピー性皮膚炎などで使用されるが,強皮症などの皮膚硬化病変を改善する臓器特異的な治療法としても報告されている.TGFβ発現低下・collagenase発現誘導などによる線維化の抑制が作用機序と考えられるが,アトピー性皮膚炎などでは紫外線照射によるpathogenicな皮膚浸潤細胞のapoptosis誘導が報告されており,これとUVA1の皮膚硬化改善作用との関連を示唆する報告は少ない.一方bleomycin誘導皮膚硬化モデルマウスでは,硬化皮膚の真皮浸潤細胞のapoptosisの増加がみられ,皮膚硬化の進行と相関するとされる.
    【目的】紫外線照射による硬化皮膚の改善の機序を解明する.
    【方法】bleomycin誘導皮膚硬化モデルマウスにUVA1を照射し,採取した硬化皮膚をTUNEL assay,免疫組織化学手法で,皮膚線維化とapoptosisの面からUVA1による変化を検討した.
    【結果】UVA1を照射した硬化皮膚の真皮内TUNEL陽性細胞密度は,照射前と比較し有意に減少した.真皮内細胞に対するTGFβ陽性細胞の割合は照射前後で有意差はみられなかったが,Smad7陽性細胞の割合は有意に減少した.
    【考察】既報のUVA1の皮膚浸潤細胞のapoptosis誘導作用とは異なる作用が関与する可能性が示唆された.また強皮症の硬化皮膚ではSmad7-SmurfのTGFβシグナル伝達を抑制するnegative regulationの障害とSmad7発現の増加が報告されているが,UVA1により変化し,硬化改善に影響した可能性が考慮された.
  • 辻村 静代, 齋藤 和義, 田中 良哉, 笹栗 靖之
    2012 年 35 巻 4 号 p. 373a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)の治療は薬物療法が主体だが,治療抵抗性はしばしば臨床的問題となる.我々はRAリンパ球上に発現するP糖蛋白質(P-gp)は,細胞内の薬剤排出促進作用を介して治療抵抗性を齎すことを報告してきた.今回,リンパ球のP-gp発現と組織侵襲性との関連性を検討した.
      RA末梢血B細胞上P-gp発現は健常人より有意に高く,疾患活動性と正相関して発現した.P-gp発現はB細胞遊走や生存に関与するケモカインレセプターCXCR4発現と強く正相関した.また,その発現は,in vitroでステロイド(CS)添加時の細胞内CS残留濃度と逆相関した.一方,RA患者の滑膜炎組織,間質性肺炎局所に浸潤したB細胞にもP-gp発現を認め,その発現はCXCR4陽性B細胞で顕著であった.さらに,末梢血CXCR4+P-gp+B細胞の著増例では,活動性関節外病変を伴い,TNF阻害療法により炎症病態が改善した症例では,CXCR4+P-gp+B細胞の減少,細胞内CS残留濃度回復が認められた.
      CXCR4陽性B細胞ではP-gp高発現が顕著であり,炎症局所に浸潤して病態形成や薬剤抵抗性に関与することが示唆された.末梢血リンパ球上のP-gp発現は滑膜・肺間質局所のリンパ球浸潤を反映しており,末梢血リンパ球上P-gp発現評価は,治療抵抗性の予測および治療選択において有用な指標となることが示された.
  • 岡本 祐子, 勝又 康弘, 川口 鎮司, 五野 貴久, 山中 寿
    2012 年 35 巻 4 号 p. 373b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】全身性エリテマトーデス(SLE)の臨床においてシクロホスファミド(CY)は基本的治療の1つであるが,その詳細な作用機序は必ずしも明らかではない.本研究は,SLEにおけるCYのin vivoおよびin vitroの作用を解析することを目的とした.
    【方法】新規発症または再燃・治療強化目的で入院したSLE患者で,新たにCYパルス療法(体表面積あたり0.5 g/m2,4週毎)およびステロイド高用量を受けた13例を対象とした.治療前,CYパルス療法初回の2週後,8週後(2回目パルスの4週後)に末梢血からPBMCを採取し,B細胞亜集団の比率をFACSで解析した.健常人末梢血からCD19陽性B細胞を採取し,CpG ODN+IL-2+IL-10で刺激し,一部はCYの活性体である4-hydroperoxycyclophosphamide (4-HC)を加えて培養した.B細胞の増殖・分化,およびIgM・IgGの産生を解析した.
    【結果】SLE患者において初回CY投与後2週間の時点で,形質芽球(plasmablast)が既に優位に減少していた.培養B細胞の増殖は4-HCによって有意かつ濃度依存性に抑制された.無刺激および4-HC添加細胞では,形質芽球の割合が有意に低下していた.4-HC添加によって,IgM・IgGの産生が有意かつ濃度依存性に抑制された.
    【結論】CYは形質芽球の活性化や生存率を優位にかつ速やかに抑制した.CYのSLEに対する治療効果の少なくとも一端はこの機序によると考えられた.
  • 小橋川 剛, 南家 由紀, 高添 正和, 山中 寿, 小竹 茂
    2012 年 35 巻 4 号 p. 374a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】Behçet病は遺伝的要因としてHLA-B51との関連を認め,その腸病変は炎症性腸疾患との鑑別を要す.HLA-B27は慢性の長期経過をとる強直性脊椎炎をはじめとする血清学的陰性脊椎関節症との関連が認められており,炎症性腸疾患腸外病変もこれに含まれる.我々は男性のHLA-B27(+)B51(−)の腸管Behçetを10年来経過観察し得たので報告する.【症例】30歳頃から再発性口腔内アフタ性潰瘍を繰り替えし,30歳代に消化管潰瘍を認める.39歳から関節炎を伴う高熱を繰り返すも検査異常を認めず.40歳から陰茎部潰瘍を繰り返す.48歳に下部消化管内視鏡にて大腸ポリープを認め摘出する.49歳時に高熱を伴う下血を認め近医より炎症性腸疾患に伴う肛門膿瘍を疑われ前医を受診.緊急入院しドレナージが施行され,抗生剤およびPSL20 mg/日が開始されるも炎症反応高値で,緊急下部消化管内視鏡にてS状結腸に多発潰瘍を認めた.組織学的にはクローン病は否定,潰瘍性大腸炎との鑑別を要した.ステロイドパルスで一時的に解熱するも再燃を繰り替えし,大腸全摘出術後に症状安定化.現在60歳,口腔内アフタ性潰瘍,痤創および結節性紅斑を軽度繰り返すも腸病変は安定している.【結語】腸管Behçet,炎症性腸疾患そして血清反応陰性脊椎関節症の鑑別を有したHLA-B27(+)B51(−)の腸管Behçet患者1例を長期経過観察した.
  • 根本 卓也, 杉本 郁, 村山 豪, 山田 里沙, 安藤 誠一郎, 景山 倫彰, 河本 敏雄, 草生 真規雄, 小笠原 倫大, 山路 健, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 374b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は46歳男性.26歳より乾癬にて他院で通院加療中.10年前より下肢の疼痛を認め他院で精査するも原因不明であった.平成23年6月より前胸部疼痛出現し,近医受診するも診断には至らず肋間神経痛疑われ,消炎鎮痛剤で経過観察されていた.改善ないため10月当院整形外科紹介,リウマトイド因子(RF)軽度陽性を認めたため当科紹介となった.
      遠位指節関節(DIP関節)優位の関節痛であり,X線上もDIP関節裂隙狭小化を認めたこと,乾癬の既往があることより乾癬性関節炎が疑われた.また,前胸部の腫脹及び圧痛を認めたことから関節超音波検査施行.前胸骨部,胸骨柄周囲にPD signalを伴う炎症所見がみられ胸骨柄結合部関節炎と診断.乾癬性関節炎の合併症と考えられ,サラゾスルファピリジン(SASP)で治療を開始した.胸骨柄結合部関節炎は乾癬性関節炎や強直性脊椎炎に合併することが報告されているが,頻度は少なく,今回は継続的画像診断的評価を行い得た貴重な症例でありここに報告する.
  • 小笠原 倫大, 根本 卓也, 村山 豪, 山田 祐介, 草生 真規雄, 今 高之, 関谷 文男, 杉本 郁, 松平 蘭, 松下 雅和, 多田 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 375a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      関節超音波検査(US)のパワードップラシグナル(PD)は,関節リウマチ(RA)における疾患活動性と骨関節予後判定に有用である.今回我々は,日常診療で得られる臨床情報で,PDの有無やグレード予測に有用な因子が何れかを明らかにすることを目的とした.US評価対象関節は両側の1-5MCPと手関節,滑液貯留/滑膜肥厚/PDの有無の確認と半定量でのグレード分類を行った.腫脹関節数(SJC),圧痛関節数等の日常診療評価項目をPD寄与因子候補として以下2つの解析を行った.(1)PDグレードに関連しうる因子を相関解析,多重回帰分析により選択(2)PD無に寄与する因子を多重ロジスティック解析により選択.SJCがPDスコアの程度に最も関連する因子として抽出された(PD score=1.968 +0.625*SJC, R square=0.4566, p value <0.0001).PD remissionにはSteinbrockerのステージがI/II(odds ratio [OR] 9.23, p=0.0049),手指のSJCがゼロ(OR 6.60, p=0.0039), SDAI (or CDAI) remission(OR 5.06, p=0.0450)が寄与因子として同定され,3項目を同時に満たす場合にPD remissionの陽性的中率が100%であった.PDスコアグレードはSJCで,PD remissionはSDAI/CDAI, Stage, SJCを組み合わせる事で日常診療評価項目からある程度予測が可能であると考えられた.エコー要/不要症例を適切に選択することが可能となり,有効なUS活用法の確立につながると考えられる.
  • 玉井 慎美, 有馬 和彦, 上谷 雅孝, 岩本 直樹, 岡田 覚丈, 喜多 潤子, 川㞍 真也, 一瀬 邦弘, 中村 英樹, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 375b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:長崎大学早期関節炎コホートを用い,関節リウマチ(以下,RA)のMRI骨炎の有無や経過と関節予後との関連を明らかにする.
    方法:長崎大学早期関節炎コホートで罹病期間2年以内のRAを2年間フォローアップし,初診時と1年毎に関節所見,炎症マーカー(CRP, MMP-3), HAQ, modified Genant-Sharp score(以下,mGSS),手指関節MRIを施行した.Xp進行の有無をアウトカムとし,統計学的解析を行った.
    結果:対象は43名,%女性84%,平均罹病期間5.2ヶ月,平均年齢52.7歳,RF陽性76.7%,APCA陽性100%,初診時MMP-3陽性65.0%,初診時mGSS 2.30,初診時MRI骨炎39.5%,全経過中MRI骨炎62.8%,Xp進行46.5%に認めた.初診時マーカーではMRI骨炎が,経過中では1年後MRI骨炎が2年後のXp進行に寄与していた.
    結論:初診時MRI骨炎が,RA関節破壊を予測することは知られていたが,今回経過中のMRI骨炎もXp進行に寄与していた.
  • 片嶋 有希, 石津 桃, 古川 哲也, 藤田 計行, 佐藤 ちえり, 斎藤 篤史, 西岡 亜紀, 関口 昌弘, 東 直人, 北野 将康, 角 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 376a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【症例】54歳女性.2009年4月に多関節痛と紅斑を主訴に受診.39度超の弛張熱とリンパ節腫脹を呈し,血液検査では肝機能異常を認めフェリチンが上昇.さらに,IL-18を中心とした高サイトカイン血症が有りASDと診断.パルス療法を含むステロイド加療を開始したが,反応不良で血球貪食症候群も併発し,cyclosporin(CyA)追加投与にてようやく軽快を得た.しかし,ステロイド漸減の過程で,関節痛と発熱が再燃した為,低用量のmethotrexate (MTX)の併用も実施したが,MTX投与にて逆に病勢は悪化し,高容量のステロイドとCyAを減量する事が出来ない状態が続いた.そこで,血清中IL-18を指標として治療を開始したところ,症状・血液検査所見共に著明に改善し,CyAやステロイドの減量も可能となった.また増悪時のMRIと関節エコーにて骨びらんを認め,関節エコーでは,治療前に認めた罹患関節滑膜の肥厚や異常血流シグナルの著明な改善が確認された.【考察】MRIと関節エコーにて骨びらんを認めたASDの1例を経験した.そしてその関節病変の活動性尺度として関節エコーが有用であった.本症例は,治療前後での関節エコー上の変化を指摘し得た貴重な1例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 桝田 緑, 高橋 伯夫
    2012 年 35 巻 4 号 p. 376b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      IgGレセプターIII(FcγRIII: CD16)には,NK細胞とマクロファージ(Mφ)に発現しているIIIa型と,好中球に発現しているIIIb型があり,両者とも細胞表面から放出され,可溶型(sFcγRIIIs)として血漿中に存在している.演者らは,血漿sFcgRIIIaが健常者では加齢とともに増加すること,成人病検診症例では動脈硬化症のリスクファクターが増すに従い増加すること,虚血性心疾患(CAD)症例では冠動脈の有意狭窄数が増すに従い増加することを認めている.今回は,頸動脈エコー検査の結果との相関をさらに多くの検査施行患者で検討した.
    (方法)血漿sFcγRIIIa量は,FcγRIIIaに特異的なmAb MKGR14を用いた高感度化学発光ELISAで測定した.
    (結果)頸動脈エコー検査施行患者では総sFcγRIII量(sFcγRIIIa+sFcγRIIIb),sFcγRIIIa量(sFcγRIIIaNK+sFcγRIIIa)に明らかな増加は認められなかったが,sFcγRIIIa量は健常者と比して高値を示した.低エコープラーク群が最も高値を示し,石灰化の進んだ高エコープラーク群はその他の群よりも低値を示した.プラークの最大径との正の相関が認められ,この相関は低エコープラーク群でより明確であった.
    (結論)sFcγRIIIa量は低エコープラーク群で最も高く,プラークの最大径と正の相関を示した.不安定プラークでは脂質とともに多くのMφが観察されることから,sFcγRIIIa量が新しい不安定プラーク検出法になる可能性が示唆された.
  • 松下 雅和, 河本 敏雄, 山路 健, 田村 直人, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 377a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    目的
    多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)患者血清から特異的に検出される自己抗体に抗Jo-1抗体が知られている.本抗体の対応抗原は細胞質に存在するアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)のひとつであるヒスチジルtRNA合成酵素であることが明らかとなっている.近年,他のARSに対する自己抗体が多数同定されており,これらの抗体を有する症例は,臨床経過に特徴がみられることから,抗ARS抗体症候群と呼ばれている.我々は,PM/DMを始めとした様々な膠原病患者において本抗体を測定し,その臨床的有用性について検討した.
    対象と方法
    当院へ通院中している197例の膠原病患者を対象とした.抗ARS抗体はEUROIMMUNE社から市販されている「Myositis anti-gens Profile 3」を用いて測定した.各疾患での抗ARS抗体の陽性率,間質性肺炎(IP)の有無,投与しているステロイドや免疫抑制剤などについて検討した.
    結果
    抗ARS抗体はIPを合併しているPM/DM患者から有意に高率に検出された.さらに臨床的にIP合併RA患者においても陽性例が見られた.PM/DM患者では抗核抗体で細胞質に染色が認められた場合,抗Jo-1抗体が陰性であっても他の抗ARS抗体が高率に陽性であった.抗ARS抗体が検出されるIPの合併したPM/DM患者症例では,陰性群と比較してステロイドが高用量で,免疫抑制剤の投与率が高い傾向が見られた.
    結語
    抗ARS抗体の測定は,IPを併発した膠原病患者において臨床上,有用であることが示唆された.
  • 内田 一茂, 楠田 武生, 三好 秀明, 小藪 雅紀, 西尾 彰功, 岡崎 和一
    2012 年 35 巻 4 号 p. 377b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    (目的)今回我々は,1型自己免疫性膵炎(Type 1 AIP)をはじめとするIgG4関連疾患における,IgG4産生機序,制御性T細胞(Treg)の関与について検討した.
    (方法)Type 1 AIP33例,アルコール性膵炎11例,特発性膵炎18例,健常人16例を,CD4+CD25highTreg及びnaïve(CD4+CD25+CD45RA+)Treg, IL-10+Treg, IL-10産生に重要なICOS+Tregをフローサイトメトリーにて検討した.Type 1 AIP9例アルコール性10例の切除膵,膵外病変としてType 1 AIP10例とPSC10例の肝組織についてIgG4+/Foxp3+細胞を検討した.
    (結果)Type 1 AIPのTreg(3.17%)は,健常人(1.86%)・アルコール性膵炎(1.89%)・特発性慢性膵炎(1.85%)と増加していた.Type 1 AIPのnaïve Treg(0.52%)は,健常人(0.90%)・アルコール性(0.78%)・特発性(0.82%)と減少していた.Type 1 AIPのIL10+ICOS+Treg(3.81%)は健常人(1.38%)より増加していた.切除膵ではType 1 AIPのTregは15.3 cells/HPF/IgG4+細胞20.0 cells/HPF,アルコール性は0.18 cells/HPF/2.1 cells/HPFであった.肝臓ではType 1 AIPのTregは5.33 cells/HPF/IgG4+細胞14.3 cells/HPF,PSCでは2.04 cells/HPF/3.58 cells/HPFで,Type 1 AIPではTreg, IgG4+細胞が増加していた.またIgG4+細胞とTregは正の相関を認めた.
    (結論)Type 1 AIPでは,ICOSを介したIL-10産生Tregの増加が高IgG4血症に,発症にはnaïve Tregの減少が関与している可能性があると考えられた.
  • 清水 英樹, 吉澤 亮, 福岡 利仁, 平野 和彦, 下山田 博明, 今野 公士, 駒形 嘉紀, 要 伸也, 有村 義宏, 山田 明
    2012 年 35 巻 4 号 p. 378a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    [背景]近年IgG4関連疾患の診断基準が作成されているが,その病態,病像には不明の点も多い.
    [目的と方法]2011年2月から2012年3月まで当科症例でIgG4高値を示した9症例を検討した.全例で口唇生検と障害臓器の組織生検を試み,臨床経過を腎症の有無・自己免疫疾患の有無に応じ比較検討した.
    [結果]平均年齢68.1±12.2歳(52-90),男女比は5:4.腎症ある症例は4例(うち2例は腎生検で診断)であった.ミクリッツ徴候を主体とした症例は3例(すべて女性)で,既存の自己免疫疾患合併症例は2例であった.9例ともに悪性腫瘍は除外され,8例でIgG4-RDと診断した(1例はRAと診断).IgG4-RDの診断には,口唇生検と涙腺生検を施行し,口唇生検の5/8例で,涙腺生検の2/2例でIgG4浸潤細胞を認めた.腎症のある症例は,多臓器障害を認め,抗核抗体高値と低補体血症とIgE高値を伴った.IgG4関連疾患否定のRA症例では,Th2サイトカインの上昇を認めなかった.全例で膵病変なく,IgG4関連疾患8例でステロイドに著効した.
    [結論]IgG4関連疾患は症例ごとに多臓器障害を認めやすい.全身の臓器障害部位を評価の上,組織生検も施行すべきである.尿所見・CT所見から腎症を疑う際には,腎生検も考慮すべきである.
  • 金子 俊之, 天野 浩文, 河野 晋也, 箕輪 健太郎, 安藤 誠一郎, 渡邉 崇, 仲野 総一郎, 鈴木 淳, 森本 真司, ভ ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 378b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】
      我々はこれまでにANA陽性・KL-6高値症例群について解析した結果,KL-6正常値症例群と比べて血清中のIgAが有意に高値であることを報告した.今回,混合性結合組織病(MCTD)患者を中心に間質性肺炎(IP)の合併群(IP+)と非合併群(IP−)におけるIgAおよびIgAサブクラス,更にB細胞の成熟分化に関与するBAFF/APRIL系について解析を行った.
    【方法】
      MCTDを中心とする膠原病患者63人を間質性肺炎合併群(IP+)20人と間質性肺炎非合併群(IP−)43人に分け,血清中のIgA1, IgA2値(DID法)とBAFF・APRIL値(ELISA法)を測定した.さらに患者血清を用いてフローサイトメトリー(FACS)でBAFFに関与するレセプターの測定を行った.
    【結果】
      IP+患者はIP−患者・健常人と比較し有意にBAFF・APRILが高かった.IgAに関しては両者で有意差は生じなかったものの,IgA2ではIP+患者で有意に上昇していた.またFACS解析では,IP+の患者でBAFF-Rの発現強度・割合が低くなる傾向が見られた.
    【考察】
      これまではIPの発生機序に関してT細胞の異常を中心に論じられてきたが,今回の研究ではB細胞の異常も関与している可能性が示唆された.今後はBAFFとそのレセプターの異常によりγグロブリンの異常産生および肺の繊維化が誘導されている詳しい機序に関して研究を進めていく必要がある.
  • 杉山 昌史, 坂野 喜史
    2012 年 35 巻 4 号 p. 379a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は49歳の女性.幼少時より精神遅滞,脳性麻痺があり当院内科へ通院中であった.以前よりてんかん発作が認められており,他院精神科にて抗てんかん薬の投与を受けていた.また,以前よりIgAの低値を指摘されており,少なくとも5年前よりIgA 0-1 mg/dlで推移していたが,しばしば感染部位のはっきりしない発熱を繰り返しており,抗菌療法などで治療されていた.2011年12月頃より持続する38℃台の発熱,CRP上昇,血清クレアチニンの上昇,検尿異常が出現,血液検査にてMPO-ANCAとPR-3 ANCAが陽性であり,ANCA関連腎炎の疑いで入院となった.腎生検では,多くの糸球体で細胞性~細胞線維性半月体の形成が認められたが,蛍光抗体法では有意な免疫グロブリンの沈着を認めなかった.血清クレアチニンは3.8 mg/dlまで上昇,ANCA関連腎炎としてプレドニゾロン50 mg/dayの投与を開始した.治療開始後数週間で血清クレアチニンの低下,ANCAの低下も認められ,CRPも徐々に低下した.ステロイドの漸減を行ったが血清クレアチニンは0.9 mg/dlまで改善,現在外来にて維持療法を継続し経過観察中である.選択的IgA欠損症では甲状腺疾患やリウマチ性疾患の併発はしばしば報告されるが,血管炎の報告は少ない.症例の経過に若干の文献的検索を加えて報告する.
  • 河本 敏雄, 松下 雅和, 山路 健, 田村 直人, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 379b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)患者血清から特異的に検出される自己抗体に抗Jo-1抗体が知られている.本抗体の対応抗原は,細胞質に存在するアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)であるヒスチジルtRNA合成酵素であることが知られている.近年,他のARSに対する自己抗体が多数同定されており,これらの抗体を有する症例は,臨床経過に特徴がみられることから,抗ARS抗体症候群と呼ばれている.さらに本抗体は,PM/DM以外の膠原病からも検出されることがある.我々は,PM/DM以外の膠原病における本抗体の陽性率について検討した.
    【方法】当院に通院歴のある72例の関節リウマチ(RA),76例の全身性エリテマトーデス(SLE),19例のシェーグレン症候群(SjS),10例の混合性結合組織病(MCTD),12例の強皮症(SSc)などの症例を対象とした.抗ARS抗体はEUROIMMUNE社から市販されている「Myositis anti-gens Profile 3」を用いて測定した.各疾患での抗ARS抗体の検出率,他の自己抗体との関連,臨床症状および治療薬などについて検討した.
    【結果】抗ARS抗体はPM/DMに特異的とされてきたが,今回のキットで測定した結果,筋炎以外の自己免疫疾患からも低率であるが,陽性例が見られた.本抗体が検出された症例は間質性肺炎の合併が高率であるなどの特徴が見られた.
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