日本臨床免疫学会会誌
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35 巻, 4 号
第40回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の192件中51~100を表示しています
Workshop
  • 鈴木 敏彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 306a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      病原体パターン受容体Nucleotide-binding, oligomerization domain (NOD)-like receptor (NLR)ファミリーのいくつかは,細胞内カスパーゼ-1の活性化を誘導し,宿主炎症応答を制御することが明らかになってきている.NLRC4は細菌のべん毛や分泌装置由来のタンパクを認識する.一方で,NLRP3は細菌,ウイルス等の病原体のみならず,生体内危険因子(尿酸結晶,コレステロール結晶等)も認識してカスパーゼ-1を活性化する.また,AIM2は2本鎖DNAを認識するとされている.このように,NLRはそれぞれ異なった刺激因子を認識していると考えられるが,その分子機構は未だよくわかっていない.我々は,グラム陰性病原細菌の感染に伴って誘導されるカスパーゼ-1の活性化機構を,菌および宿主NLRの両面から調べてきた.その中で,菌が分泌する因子がNLRによるカスパーゼ-1活性化を阻害することを見出し,菌が免疫応答を回避する可能性が示唆されている.本セミナーでは細菌感染とNLRとの関わりについて,我々の研究知見を交えながら紹介したい.
  • 高橋 将文
    2012 年 35 巻 4 号 p. 306b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      心血管病における炎症の重要性が示されている.心血管病での炎症は,病原体の関与がないことから無菌性炎症と呼ばれているが,その炎症が惹起される機序はこれまでわかっていなかった.近年,いくつかの病態における無菌性炎症がインフラマソーム(Inflammasome)と呼ばれる新たな炎症経路を介して誘導されていることが報告されており,心血管病の無菌性炎症においてもインフラマソームの関与が明らかとなりつつある.インフラマソームとは,危険シグナルによって細胞内に形成される分子複合体であり,カスパーゼ-1の活性化により炎症性サイトカインであるIL-1βの産生を誘導して炎症を惹起する.我々は,血管傷害や動脈硬化,腹部大動脈瘤,心筋梗塞といった心血管病マウスモデルの病変部においてインフラマソームが活性化されていることを認めており,インフラマソーム構成分子の欠損マウスでは,炎症反応の減弱とともにその病態も改善することを見出している.これらのことから,インフラマソームが様々な心血管病における無菌性炎症反応の感知センサーとして働いており,これらの疾患に対する新たな治療標的となりえることが示唆される.
  • 伊藤 さやか, 原 諭吉, 窪田 哲朗
    2012 年 35 巻 4 号 p. 307a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      [目的]インフラマソームは感染やストレスに応答して形成される蛋白複合体で,caspase-1を活性化して炎症性サイトカインを放出する機構である.とりわけNLRP3インフラマソームについては,NLRP3遺伝子変異がCAPS(cryopyrin関連周期熱症候群)の原因であることが明らかになり,急速に研究が進んだ.CARD8はcaspase-1依存性IL-1β放出やNF-κB活性などの負の制御因子として知られているが,NLRP3インフラマソームとの関係については,NLRP3(δLRR)と会合するという報告はあるものの,不明の点が多い.私たちはCARD8がNLRP3インフラマソームの機能を制御している可能性について検討した.[方法]HEK293細胞にNLRP3インフラマソームの構成要素(NLRP3,ASC,procaspase-1,proIL-1β)およびCARD8(完全長,FIIND,CARD)の遺伝子を導入した.発現した分子の会合は,免疫沈降で検討した.上清のIL-1β濃度をELISAで測定した.[結果]NLRP3(WT)とCARD8が会合した.これはASCを共発現させると,濃度依存性に解離した.CAPS関連変異NLRP3(R260W, D303N, H312P)は,CARD8と会合しなかった.CARD8の共発現は,NLRP3(WT)インフラマソームによるIL-1β放出を減少させたが,CAPS関連変異NLRP3のIL-1β放出には影響を与えなかった.CARD8は,FIINDを介してNLRP3と会合した.[考察]CARD8はNLRP3インフラマソームの負の制御因子であることが示唆された.CAPS関連変異NLRP3は,この制御を受けないことが示唆された.
  • 西小森 隆太, 井澤 和司, 河合 朋樹, 八角 高裕, 平家 俊男
    2012 年 35 巻 4 号 p. 307b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)はNLRP3遺伝子異常による自己炎症疾患であり,蕁麻疹様皮疹,無菌性髄膜炎,関節炎を3主徴とする.その病態は変異NLRP3遺伝子による過剰なIL-1βの産生が主因とされ,IL-1βの重要性は抗IL-1療法がCAPS患者に著効することでも支持されている.我々はヒト化抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体であるcanakinumabのCAPS患者に対する第III相臨床試験にたずさわり,canakinumabは2011年9月,本邦で初めてCAPSに対する治療薬として承認された.またCanakinumab承認まで抗IL-1療法として個人輸入で使用されてきたanakinraのCAPSに対する治療効果について,本邦でanakinraが治療として用いられたCAPS患者を対象に疫学調査を行った.本レビュートークでは,Canakinumabの臨床試験とanakinraの疫学調査についてのべることにより,本邦におけるCAPSに対する治療の実際についてあきらかにし,今後のCAPS治療の展望について考察してみたい.
  • 馬場 義裕, 松本 真典, 黒崎 知博
    2012 年 35 巻 4 号 p. 308a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      B細胞におけるCa2+シグナルは,様々な生理的応答に重要な役割を果たすと考えられている.細胞内Ca2+濃度の上昇は主に二つの経路から供給され,一つは細胞内Ca2+ストアである小胞体からのCa2+放出,もう一つは細胞膜上のチャネルを介した細胞外からのCa2+流入である.細胞外からのCa2+流入は小胞体内腔のCa2+濃度の減少が引き金となって引き起こされるCa2+流入,つまり,ストア作動性カルシウム流入(Store-operated calcium entry: SOCE)が主要経路となり,長時間の持続的シグナルを維持する上で重要である.近年,SOCE活性化に必須の分子である小胞体Ca2+センサーSTIM1およびSTIM2が同定されたことにより,SOCE誘導メカニズムの詳細が明らかになりつつあるが,B細胞におけるSOCEの生理的役割は不明であった.我々は,B細胞特異的STIM1/2欠損マウスを用いて,STIM分子がB細胞レセプター刺激依存的なSOCEに必須であることを見出した.STIM欠損により,B細胞分化や抗体産生には異常がなかったが,NFATの活性化不全と,それに起因する抗炎症性サイトカインIL-10の産生障害が認められた.その結果,B細胞特異的STIM欠損マウスでは,多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎の著しい増悪化を示した.これらの結果から,B細胞におけるSTIM依存的SOCEがIL-10を介した制御機能に必須であり,自己免疫性炎症反応の抑制に重要な役割を果たすと考えられた.
  • 江里 俊樹, 今村 充, 神崎 健仁, 川畑 仁人, 赤平 理紗, 道下 和也, 土肥 眞, 徳久 剛史, 山本 一彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 308b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Lymphopenia results in the homeostatic peripheral expansion of lymphocytes to maintain T cell homeostasis. Accumulating data show that lymphopenia-induced proliferation (LIP) has a pathogenic role in the development of autoimmunity in animal models and human systemic autoimmune diseases such as systemic lupus erythematosus, Sjögren's syndrome and rheumatoid arthritis.
      To clarify the mechanism of anti-nuclear antibodies (ANA) production, we established a lymphopenic mouse model in which CD4+ T cell subsets from wild-type BALB/c mice were adoptively injected into BALB/c nude mice, which induced IgG-type ANA production. We observed that class switching and ANA production were enhanced when regulatory T cells were depleted. We identified IL-21-producing PD-1+ TFH cells which develop from conventional T cells during LIP and drive germinal center reactions with aberrant B cell responses. Compared with traditional TFH cells, this subset has a distinctive ontogeny and a critical role in breaking B cell tolerance.
      This study reveals the physiological mechanism how immunological tolerance is maintained during LIP and would help to understand the pathogenesis of systemic autoimmune diseases.
  • 濱口 儒人, 松下 貴史, 長谷川 稔, 竹原 和彦, 藤本 学
    2012 年 35 巻 4 号 p. 309a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】B細胞は抗体産生以外に多彩な機能を有しているが,近年,炎症をコントロールする制御性B細胞に注目が集まっている.しかし,肺線維化における制御性B細胞の役割は明らかではない.【目的】ブレオマイシン誘発肺臓炎モデルを用いて,肺線維化における制御性B細胞を含めたB細胞の役割を検討した.【方法と結果】B細胞を除去する抗CD20抗体を事前に投与してB細胞を除去したマウスにブレオマイシンを投与したところ,コントロール抗体を投与したマウスに比べ肺の線維化は増悪していた.一方,ブレオマイシンを投与した3日後の炎症期に抗CD20抗体を投与したマウスでは,コントロール抗体を投与したマウスに比べ肺線維化が軽減した.遺伝的にB細胞を欠損したマウスにブレオマイシンを投与したところ,野生型マウスに比べ肺の線維化は増悪したが,事前に野生型マウスの制御性B細胞(B220+CD5+CD1dhigh B細胞)を移入することで,増悪した肺の線維化は野生型マウスと同程度まで軽減した.一方,非制御性B細胞(B220+CD5lowCD1d B細胞)を移入しても肺の線維化は抑制されなかった.【結語】肺の線維化においてB細胞の役割には2面性があり,発症期では主に制御性B細胞が炎症をコントロールする一方,炎症期ではB細胞は炎症を促進する役割を有していることが示唆された.これらの知見は,肺線維化の新たな治療戦略を考える上で有益であると考えられた.
  • 天野 浩文, 河野 晋也, 金子 俊之, 林 青順, 安藤 誠一郎, 渡邉 崇, 仲野 総一郎, 出井 章三, 広瀬 幸子, 髙 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 309b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      SLEの疾患モデルであるBXSBマウスでは,TLR7の重複を認めるYaa遺伝子の存在下においてSLE類似の腎症を発症する.それに伴い末梢血での単球増加と単球分画の変化が生じる.我々は,BXSBマウス末梢血の単球分画によってIgGのFcレセプター(FcγR)の発現が異なることを発見し,特にGr-1単球分画においては,刺激性FcγRであるFcγR III, IVを高発現しており,抑制性FcγRであるIIb(FcγRIIb)は低発現していることを見出した.刺激性Fcレセプターの共通γ鎖を欠くBXSBγ鎖欠損マウス(BXSBγ−/−)およびBXSBマウスのFcγRIIbを野生型C57BL/6(B6)に置き換えたマウス(BXSB FcγRIIbB6/B6)では,明らかな末梢血の単球増加抑制を認め,Gr-1分画で顕著であった.一方,B6マウスにおいてFcγRIIbを欠損するYaaマウス(B6.FcγRIIb−/−Yaa)では,血清中の抗DNA抗体をはじめとする自己抗体の上昇と末梢血でのGr-1単球分画の単球増加を認め,SLE類似の腎症を発症した.BXSBマウスの脾臓胚中心では,FcγRIIbの発現が低いことが知られており,自己抗体の産生につながっていることが考えられる.さらにBXSBマウスの血清中ではIgG2aが高濃度で存在しており,IgG2a免疫複合体の存在がBXSB末梢血の単球上のFcγRIIIを介してGr-1分画への分化成熟を促すことで腎炎の発症へとつながると考えられる.
  • 大村 浩一郎, 山本 奈つき, 寺尾 知可史, 中嶋 蘭, 井村 嘉孝, 吉藤 元, 湯川 尚一郎, 橋本 求, 藤井 隆夫, 松田 文彦, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 310a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Myelin basic protein(MBP)は神経ミエリン鞘を形成する主要なタンパクであるが,関節リウマチ(RA)において,myelin basic proteinに対する自己抗体が高率に認められることを我々は以前報告した(PLoS One 2011; 6: e20457).ヒト脳由来抽出タンパクを抗原として用いた場合,抗MBP抗体はRAの約65%に認められ,特異度は膠原病患者を対照として83%であり,またその対応抗原は主にMBPタンパク自身ではなく,シトルリン化MBPに対する抗体であることも明らかにした.一方,MBPは神経系に発現するclassic MBPと神経系のみならず血球系にも発現するGolli-MBPのアイソフォームがあり,それぞれにまたいくつかのアイソフォームが存在する.RAで認められる抗MBP抗体の対応抗原がclassic MBPなのかGolli-MBPなのかは不明であったことから,classic MBPおよびGolli-MBPのrecombinantタンパクを作成しin vitroでシトルリン化し,ELISAで抗MBP抗体を検出したところ,その感度,特異度に差は認められなかった.現在Golli-MBPのアミノ酸配列(304アミノ酸)を15種類の25アミノ酸ペプチドでカバーし,それぞれのペプチドをシトルリン化して抗原とし,12人の抗MBP抗体陽性RA患者血清を用いてELISAにてエピトープマッピングを行っている.
  • 鈴木 和男
    2012 年 35 巻 4 号 p. 310b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      MPO-ANCA(myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎患者の血清MPO-ANCA値は,必ずしも病態と相関しない場合があり,新たな抗体の存在が検討されてきた.そこで,我々は,マウス糸球体血管内皮細胞にMPO抗体が直接反応する対応分子の存在をつきとめmoesinと同定し,接着分子の発現上昇を誘導すること,およびMPO-ANCA関連血管炎モデルマウスSCG/Kjマウスの血漿中に抗体が存在し,腎臓での発現上昇することを報告した(Nagao et al., NDT, 2011).これらの結果から,MPO-ANCAと抗moesin抗体の両者のMPO-AAV(MPO-ANCA associated vasculitis)の病態への関与が考えられた.MPO-AAV患者の血清中の抗moesin抗体価は,健常人と比し有意に高く,血漿中のIL-12p70, IL-7は抗moesin抗体価と有意に相関した.また,in vitroでの抗moesin抗体による好中球,単球との反応が認められた.また,moesin抗体で刺激した培養上清中のサイトカインは,好中球では,IL-8, MCP-1, IFN-γが,単球においては,TNF-α, IL-6, IL-8, MCP-1の産生が有意に上昇した.蛍光抗体での好中球との反応は細胞質型を示した.
      以上の結果から,抗moesin抗体は,MPO-AAVの病態や炎症誘導に関与しており,抗moesin抗体がMPO-ANCAと連動して血管炎を誘導する新規自己抗体である可能性が示唆された.
  • 小林 茂人
    2012 年 35 巻 4 号 p. 311a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      レンサ球菌感染症に伴う反応性関節炎はpoststreptococcal reactive arthritis(PSRA〉と呼ばれ,リウマチ熱(ARF)との異同が論議されている(Rheumatol 2004;43;949).我々は,レンサ球菌以外の細菌感染に起因する反応性関節炎(ReA)を多く経験したため,「扁桃炎に伴う反応性関節炎(TiReA)と報告している(Otolaryngol 1996:523:206).20-40歳に多く,関節炎は非対称性,大関節〈膝,足,手)などのoligoarthritisを呈する.リウマトイド因子(RF)陰性で繰り返す膝の関節水腫は本疾患も念頭に入れる.虹彩炎や輪状紅斑,原因不明の腹痛を伴うこともある.ARFにみられる舞踏病や成人例での心炎はない.多くはRFは陰性である.PSRAではASO/ASKも陽性で,抗カルジオリピン抗体(ベータGPI非依存性)が陽性になる.埋没扁桃に起こることが多い.レンサ球菌以外にpseudomonas aeruginosa, peptostreptococcus, chlamidia trachomatisなどが同定された.検討した範囲では,患者にはHLA-B39が有意に多かった(Arthritis Rheum 1992;35 supple 9;244).HLA-B39は興味あることにHLA-B27と分子相同性があることが報告された(Arthritis Rheum 1995:38:1672).急性型はNSAIDsや抗生剤投与にて完治する.慢性型は扁桃炎と関節炎を長期間に渡り繰り返すか,扁桃炎の症状が明確でない関節炎も多いが,扁桃摘出術によって完治する.扁桃炎による「focal infection」の一型と考える(口咽科2012;1:47-51).
  • 望月 學
    2012 年 35 巻 4 号 p. 311b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      リウマチ性疾患・自己免疫病の多くは様々な眼病変をともなう.中には,ベーチェット病やサルコイドーシスなどのように眼病変が診断基準の重要な項目になっているものもある.また,眼病変は視力低下,霧視,視力低下,あるいは複視などの自覚症状が顕著であり,患者がこれらの症状に不安をもって眼科を受診するので,疾患の発見の端緒となる場合も少なくない.更に,その血管病変や炎症病変が細隙灯顕微鏡や眼底検査などの眼科検査により直視下で確認できるので,臨床病理の理解に役立つ.また,眼病変の予後は自然軽快から失明まで多様であり,眼病変の基礎疾患と適切な治療が重要である.
      ウマチ性疾患・膠原病により生じる眼病変としては,①ぶどう膜炎・網膜血管炎(ベーチェット病,サルコイドーシス,炎症性腸疾患,強直性脊椎炎,若年性特発性関節炎,間質性腎炎,側頭動脈炎,Churg-Strauss症候群,Miller-Fisher症候群など),②網膜循環障害(全身性エリテマトーデス),③強膜炎(関節リウマチ,Wegener肉芽腫症),④乾性角結膜炎(RA,シェーグレン症候群),⑤神経眼科疾患(抗リン脂質抗体症候群,重症筋無力症)などがあげられる.シンポジウムではこれらの眼病変の主要なものについて解説,討論する予定である.
  • 森 雅亮
    2012 年 35 巻 4 号 p. 312a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      小児期にみられるリウマチ性疾患は,若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis: JIA)を筆頭に,その病態の表現型が成人と大きく異なり,決して小児リウマチ疾患は成人疾患の「小型化」ではない.小児リウマチ性疾患の特徴として,・病期が小児期の分だけ長期にわたり,その時期が成長期にあたること,・成人例と比較して多臓器に障害が及ぶこと,・経過が進行性で臓器障害の程度が重いこと,・薬剤の効果,副作用に小児特有のものがあること,等が挙げられる.いずれの疾患も全身性の慢性炎症の特徴を有しており,長期予後を見据えた全身性アプローチを必要とし,早期でかつ正確な診断と治療法の構築が求められている.
      JIAは,滑膜炎による関節の炎症が長期間繰り返す結果,関節軟骨および骨破壊が進行し関節拘縮や障害を引き起こす原因不明の慢性の炎症性疾患である.わが国の小児リウマチ診療の実情に合わせ,「全身発症型(systemic-onset JIA)」と「関節発症型関節炎(articular-onset JIA)」の二群に大別して,それぞれ病態・診断(臨床症状,検査所見,鑑別すべき疾患など)・初期治療および初期治療が奏効しない患児への対応(生物学的製剤の適応や使用上の注意点)について,整理すると有用だと思われる.
      今回は,日本小児リウマチ学会で作成した種々の「診療の手引き」を基に,最近の知見も交えて,JIAの臨床と治療について概説する.
  • 根路銘 安仁, 武井 修治
    2012 年 35 巻 4 号 p. 312b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      SLEの25%が20歳未満で発症し,5歳以降発症率は成人まで次第に増加する.小児期発症全身性エリテマトーデス(以下小児SLE)は,成人SLEと同じ症状を呈する.しかし,成人例に比し重症例が多いことが報告されている.全国調査で,1980~1994年と1995~2006年に発症した小児SLEの10年生存率は,92.3%から98.3%と改善が達成されたが,event-free生存率は66.1%に過ぎず,永続的な機能障害を残す小児発症例が多いことを示している.
      初発症状では,発熱,蝶形紅斑や尿異常が成人に比し多く,関節症状は少ない.また,腎炎の合併率も高い.検査では低補体血症の頻度が高い.そのため診断においてはACRの分類基準は小児にも用いることができるが,これに低補体血症を加えた小児SLE診断の手引きは診断感度が優れ,特異度も同等である.
      治療においては成人と同等の治療法が用いられている.小児は重症例が多いため永続的な機能障害を残さないように,ステロイドや免疫抑制剤,エンドキサンなどを初期段階から選択することも必要で,小児だからという理由で避けるのではなくリスクを考慮しながら選択することが重要である.これらの治療を成長期・思春期に行うため,心身ともの成長期,怠薬や性の問題があり,患児との信頼関係,学校との調整なども治療上考慮すべきである.
  • 細野 祐司, 中嶋 蘭, 村上 孝作, 山川 範之, 井村 嘉孝, 湯川 尚一郎, 吉藤 元, 橋本 求, 大村 浩一郎, 藤井 隆夫, 三 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 313a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】
    PM/DMは悪性腫瘍を伴うことがある.抗p155/140抗体は悪性腫瘍と密接に関連するが,他の自己抗体の意義は明確でない.日本人の悪性腫瘍合併筋炎の臨床的特徴と自己抗体との関連を追求した.
    【対象と方法】
    DM 105, PM 75例の保存血清を用い,HeLa細胞を抗原とするRNA免疫沈降法及び蛋白免疫沈降法により抗体を検出した.悪性腫瘍合併例の臨床的特徴を非合併例と比較し,自己抗体のプロフィールを解析した.
    【結果】
    21例(11.7%)に悪性腫瘍の合併を認めた.男女比は11:10とほぼ同等であり,筋炎発症時の平均年齢は悪性腫瘍合併例で58.3歳と非合併例51.3歳に比べ高齢であった.特定の悪性腫瘍との関連は認めなかった.抗p155/140抗体は11例と最も高頻度で,抗ARS抗体8例,120 kDa蛋白を沈降する未知の抗体2例も認めた.抗p155/140抗体陽性例は全例DMで,抗ARS抗体陽性例はPM5例とDM3例,未知抗体は全例PMであった.抗ARS抗体と未知抗体陽性例は73%で筋炎発症が平均5.25年悪性腫瘍に先行していたのに対して,抗p155/140抗体陽性例は全例DM診断時に進行癌を認めた.
    【結語】
    悪性腫瘍合併筋炎では抗p155/140抗体が高頻度に出現し,DM診断時に進行癌を呈していた.高齢発症DMは筋炎特異抗体の検査が有用であり,悪性腫瘍合併を念頭に治療介入を行う必要がある.
  • 松谷 隆治, 李 穎, 村上 美帆, 關口 昌弘, 松井 聖, 北野 将康, 大村 浩一郎, 井村 嘉孝, 藤井 隆夫, 黒岩 孝則, 中原 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 313b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】アバタセプト(ABT, CTLA4-Ig)は,CTLA-4分子の細胞外ドメインとヒトIgG1のFc領域からなる可溶性融合蛋白で,共刺激分子CD28よりも高い親和性でCD80/86と結合し,T細胞の活性化を抑制する.関節リウマチ(RA)患者におけるABT治療が,感染や発癌に対する免疫監視機構に関わるCD8+ T細胞にどのような影響を与えるかを検討した.
    【方法】生物学的製剤未使用RA患者に対するABTの有効性と安全性の検討試験(ABROAD試験)に登録した31例の患者から治療前および治療後6ヵ月に末梢血単核球を分離し,T細胞活性化に関わるCD25, CD69, CD62L等の細胞表面マーカーをFACSで解析し,CD4+ T細胞とCD8+ T細胞の間で比較した.
    【結果】CD28+細胞の割合は,CD4+ T細胞に比べCD8+ T細胞で低く(mean: 94% vs. 37%), CD8+ T細胞におけるCD28+細胞の割合は患者年齢と逆相関した(r=−0.62, P=0.0019).ABT治療によりCD4+ T細胞中のCD25+細胞の割合は有意に低下したが(%mean±SD: 11.8±5.3 to 5.9±5.3),CD8+ T細胞中のCD25+細胞への影響はなかった(5.8±4.6 to 6.0±3.7, P=0.96).
    【考察】CD28の発現頻度はCD4+ T細胞とCD8+ T細胞で異なる.高齢者におけるCD28発現頻度の低下はCD8+ T細胞による免疫監視機能の低下を示唆する可能性がある.ABTはCD4+ T細胞特異的にCD25の発現を抑制し,免疫監視に関わるCD8+ T細胞の活性化への影響が小さいことから,ABT治療時の感染や発癌リスクの増加は少ないと期待される.
  • 佐山 浩二
    2012 年 35 巻 4 号 p. 314a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      皮膚は環境中のさまざまな病原体に常にさらされている.なかでも表皮は物理的なバリヤーであると同時に,表皮自身が独自の病原体の認識・排除機能を持っている.表皮の主な構成細胞である角化細胞は体表面で最初に病原体に接触する細胞として直接病原体を認識する役割を担っている.角化細胞はTLR-2を介してグラム陽性菌を認識し,ウイルス感染に対しては,TLR-3, NLRP3 inflammasomeがウイルス由来の二重鎖RNAを認識し,初期免疫反応に関わっている.一方,角化細胞はhBD 1-3, LL-37などの抗菌ペプチドを産生する.表皮におけるこれらの抗菌ペプチドの発現はhBD1を除いて通常低く,細菌の接触,創傷,炎症性サイカインにより亢進する.これらのペプチドは抗菌活性以外にさまざまな生物活性を持っており,角化細胞遊走促進作用および血管新生作用により,創傷治癒を促している.さらに病原体以外にも,角化細胞はダニ抗原をNLRP3 inflammasomeを介して認識し,IL-1β, IL-18を産生する.ダニ抗原はアトピー性皮膚炎の発症,増悪に関与していることから,表皮角化細胞自身の自然免疫反応がアトピー性皮膚炎の病態に関わっていると考えられる.
  • 高村(赤司) 祥子, 山川 奈津子, 大戸 梅治, 中西 広樹, 清水 敏之, 三宅 健介
    2012 年 35 巻 4 号 p. 314b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      病原体認識分子群であるTLRに会合する分泌蛋白MD-1およびMD-2は,脂質が入るポケットをもつ脂質会合分子でもある.MD-2のポケットにはLPSの活性中心・LipidAが含有され,TLR4と会合しLPS認識応答が開始される.MD-1は,TLR4と同様な構造をもつRP105に会合しTLR4/MD-2を介するLPS応答を増強させるが,MD-1のポケットにはLipidAの前駆体LipidIVaのほかPC,PEなどのリン脂質が含有されることが報告されている.われわれは作製した抗MD-1抗体を用いてMD-1が血清中にも存在することや,MD-1が陰性荷電リン脂質とも結合することを見出した.自己免疫疾患モデルマウスであるB6/lprとかけあわせたTLR2あるいはTLR4KOマウスでは,ワイルドタイプを掛け合わせた群に比べ症状が軽減すること,RP105/MD-1はTLR2, TLR4とも会合するなどの報告があることなどから,RP105/MD-1の関与による自己抗体産生への影響を検討した.その結果B6/lprとMD-1KOマウスを掛け合わせた群では,ワイルドマウスをかけあわせた群に比べ抗リン脂質抗体上昇が認められた.RP105/MD-1はLPSなどの病原体成分に対してTLR4/MD-2による認識応答を増強させるが,生体内脂質に対してはTLR4/MD-2を介する認識応答を抑制させることが示唆された.
  • 香山 尚子, 竹田 潔
    2012 年 35 巻 4 号 p. 315a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      腸管組織は常時外来異物の侵入が起こる場であるため,エフェクターT細胞による炎症応答は生体防御機構において重要な役割を担う.しかし,慢性的な炎症反応は炎症性腸疾患の発症原因ともなるため腸管内においては免疫応答を抑制するメカニズムが存在している.これまでに,免疫応答抑制機能に特化した制御性T細胞がエフェクターT細胞の過剰な活性化を抑制することで腸管組織の恒常性が維持されることが報告されている.
      腸管粘膜固有層には多種多様な自然免疫細胞集団が存在し獲得免疫系細胞の分化や機能獲得に関与することが報告されているが,エフェクターT細胞の増殖を直接制御する自然免疫細胞の存在に関する知見は乏しい.我々は,腸管粘膜固有層に存在するCX3CR1highCD11b+CD11c+制御性ミエロイド細胞(Mreg細胞)がCD4+ T細胞と極めて高い親和性で結合すること,さらにIL-10/Stat3シグナル依存的にCD80/86の発現を低下させることでT細胞の増殖を抑制することを明らかにした.また,ナイーブT細胞移入腸炎モデルマウスへのMreg細胞投与が腸炎発症を抑制すること,腸炎を自然発症するLysM-cre; Stat3flox/floxマウスへのMreg細胞投与が炎症症状の改善を誘導したことよりMreg細胞の機能不全が炎症性腸疾患の病態に関与することが示唆された.
  • 岩井 秀之, 細矢 匡, 竹中 健智, 村上 洋介, 宮坂 信之, 上阪 等
    2012 年 35 巻 4 号 p. 315b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Triggering receptor expressed on myeloid cells (TREM)-1は,マクロファージに発現し,その阻害は,感染防御に必要な炎症性サイトカインは温存し,炎症を抑制することが示唆されている.我々はこれまでに感染合併の少ない抗リウマチ薬の開発を目指しTREM-1の関節リウマチ患者滑膜細胞での発現,及びTREM-1Ig投与によるコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスでの治療効果を検討した.さらに,マウスTREM-1リガンド分子(TREM-1L)をB細胞上に同定し,抗TREM-1L抗体投与によるCIAでの治療効果を報告した.しかし,(1)抗TREM-1L抗体の作用機序及び,(2)ヒトTREM-1L分子は不明であった.今回これらの解明を目的として解析を行った.(1)TREM-1L強制発現細胞での抗TREM-1L抗体架橋では,細胞内ITIMモチーフのリン酸化は認められなかった.マクロファージ及びB細胞共培養系ではTNFα産生が見られたが,抗TREM-1L抗体添加によりマクロファージからのTNFα産生は低下した.これらより,抗TREM-1L抗体によるCIA改善効果はTREM-1Lへのシグナル伝達によるものではなく,マクロファージのTREM-1を介した活性化阻害によることが示唆された.(2)ヒトTREM-1IgはマウスTREM-1Lの推定上のヒトorthologueとは結合を認めなかったが,マクロファージ細胞株U937と結合した.同細胞を用いた発現クローニングを行いヒトTREM-1Igと結合する分子を同定した.ヒトTREM-1L分子の修飾により新規関節炎治療薬開発が期待される.
  • 武井 正美, 矢島 美彩子, 今留 謙一, 桑名 慶和, 猪股 弘武, 野崎 高正, 井汲 菜摘, 白岩 秀隆, 北村 登, 澤田 滋正, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 316a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)とEBVの関連は多くの報告があるが,直接的な関与は証明されていない.我々は,約23%のRA滑膜細胞にEBV遺伝子(EBER-1)やEBV関連蛋白(LMP-1)が発現することを報告した(Int Immunol 9, 739,1997).また,EBV関連疾患のIgA腎症末梢白血球よりクローニングした遺伝子の中にEBV細胞傷害性T細胞の誘導に関わり,EBVに致死的感染症を起こすX-linked lymphoproliferative syndrome(XLP)原因遺伝子のsignaling lymphocytic-activation molecule(SLAM) associated protein (SAP)遺伝子を発見し(AB586694 genbank),mRNA発現が,RA患者T細胞で健常人に比し低いことを報告した(Int Immunol 13,559,2001).また,NOD-SCID(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ)(NOG)マウスに臍帯血ヒトCD34陽性細胞を移植しヒト免疫化マウスを作製し,EBV感染により滑膜の増殖とビラン性関節炎を起こすことに成功した(PLoS ONE 6 : e26630. doi:10.1371.2011).骨ビランを起こしている肉芽組織(パンヌス)の骨接触部位に破骨細胞様の多核細胞が認められ,罹患関節近傍骨髄にCD4陽性T細胞の強い浸潤を認めた.本報告では,当研究室でこれまで報告して来たEBVとRAの関連の結果を先に述べ,直接証拠としてのヒト免疫化NOGマウスにEBVを感染させ発症させたビラン性関節炎について報告する.
  • 土肥 多惠子
    2012 年 35 巻 4 号 p. 316b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      炎症性腸疾患のマウスモデルを用いた病態解析炎症性腸疾患(IBD)とはクローン病,潰瘍性大腸炎を指し,共に消化管をおかす難治性の慢性炎症性疾患で,急激に増加している.原因は未だ不明であるが,常在する腸内細菌叢に対する過剰な免疫応答がその病態の重要な部分であることがわかってきている.
      消化管免疫学のなかでも,IBDの病因病態研究は,動物疾患モデルの導入によって発展してきたと言っても過言ではない.特に遺伝子改変動物モデルの解析により分子レベルでの消化管の恒常性維持機構が明らかになってきたと言える.これまでの数多くの遺伝子改変マウスや実験モデルとしての腸炎が報告され,その結果,様々なタイプの細胞の異なった因子による免疫応答の異常が,最終的なアウトプットとして腸炎という共通のフェノタイプを示すこともわかってきた.さらに,近年GWASにより,あらたに100個以上のIBD感受性遺伝子が見つかっており,これらの遺伝子機能とIBDの病態を関連づけて理解するために,今後も動物モデルは重要な役割をはたすはずである.さらに,動物腸炎モデルは,新たな治療法の探索,治療薬の効果及び安全性の評価のためにも,なくてはならない重要なツールでもある.本ワークショップでは,それぞれのモデルの特徴を示しながら,私たちの最近の病態解析・治療ターゲット探索研究の成果であるTNFスーパーファミリー分子TWEAKの役割を中心に発表する.
  • 中島 喜美子, 片岡 佐誉, 寺尾 美香, 片山 一朗, 竹田 潤二, 佐野 栄紀
    2012 年 35 巻 4 号 p. 317a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      It has been recognized that ceramide levels are decreased in the epidermis of patients with atopic dermatitis and psoriasis. However, the underlying mechanism by which ceramide deficiency leads to skin inflammation still remains unclear. Here, we generated Sptlc2 targeted mice under control of the keratin 5 promoter, by which their keratinocytes were devoid of serine palmitoyltransferase (SPT), the rate-limiting enzyme for de novo sphingolipid synthesis. K5-SPT-KO mice have demonstrated barrier dysfunction. From 2 weeks of age, they develop the skin lesion, showing psoriasis-like histopathologic changes. Transcriptional levels of IL-17 and IL-22 were increased in the skin and draining lymph nodes. Strikingly, K5-SPT-KO mice showed increased numbers of gd-T cells that produce IL-17 (gd-17) in the skin lesion and lymph nodes and most of them also produce IL-22, similar to Th17 cells. In vivo administration of anti-IL-12/23p40 antibody ameliorated the skin lesions and reduced the number of gd-17 cells in K5-SPT-KO mice. Therefore, we conclude that ceramide deficiency in the epidermis results in the development of psoriasis-like lesions, mediated by IL-23-dependent gd-17 cells in mice.
  • 岩渕 和也
    2012 年 35 巻 4 号 p. 317b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      ベーチェット病は,医学文献としてはトルコのベーチェット博士の記述(1936年)を嚆矢とするが,疾患の特徴(アフタ・外陰部潰瘍・眼症状など)については既にヒポクラテス(紀元前5世紀)や張仲景(AD200年頃)の時代から記述があり,古くからヒトに関わりの深い疾患である(大野博士).未だに疾患発症に至る過程に不明の点も少なくないが,2010年には水木博士(横浜市大)・大野博士(北大)・猪子博士(東海大)のチームによるゲノムワイド相関解析により,HLA-B*51, A*26, IL-10, IL-23R/IL-12RB2,などの疾患感受性遺伝子が明らかにされ,また最近では何らかの自己炎症性症候群スペクトラムを有することも示唆され,大きく疾患理解が進んでいる.一方,マウスモデルについては,残念ながらベーチェット病の皮膚・眼症状,さらには特殊病型を再現するようなモデルは開発されていない.我々も,眼炎症を抗原(視細胞間レチノイド結合タンパク由来ペプチド)特異的に生じさせる実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎(EAU)をモデルに,眼炎症の病態理解とその実験的制御を試みているのみである.ただ,このように限界のあるモデルにおいても,ベーチェット病で見られると同様にTh17およびTh1が自己免疫病態に関わっていることが示されており,効用もまた存在している.本ワークショップでは,オステオポンチンやNKT細胞を標的とした,EAUの病態制御について紹介したい.
  • 張 香梅, 山岡 邦宏, 園本 格士朗, 近藤 真弘, 福興 俊介, 佐竹 真, 兼子 博章, 岡田 洋右, 中野 和久, 中山田 真吾, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 318a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    Objectives: Mesenchymal stem cells (MSCs) are considered as a possible tool for treatment of rheumatoid arthritis (RA) due to their immunoregulatory ability and pluripotency. Here we established an effective delivery system of MSCs on a arthritis animal model.
    Methods: MSCs were seeded on poly-lactic-co-glycollic acid (PLGA) scaffold then implanted into ankles (IMP) of collagen induced arthritis (CIA) rats or simply injected intra-articularly (IA) or intra-peritoneally (IP).
    Results: IMP to bilateral ankles significantly suppressed the severity of arthritis evaluated by arthritis score, hind paw thickness and body weight compared to CIA, while IA and IP showed less or no effect. Accordingly, bone destruction detected by X-ray, micro CT and infiltration of inflammatory cells, damage of cartilage and bone destruction detected histologically were reduced in IMP group but not in other groups. Furthermore, the size of the draining lymph nodes was smaller with reduced germinal center formation in the IMP group.
    Conclusion: Implantation of MSCs with nano-fiber scaffold efficiently suppressed arthritis and bone destruction, suggesting a novel MSCs delivery system for future RA treatment.
  • 藤井 康行
    2012 年 35 巻 4 号 p. 318b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    背景
    S1Pは,スフィンゴ脂質と呼ばれる生体内に多く存在する脂質である.生体内でのリンパ球の移動は,リンパ球上に発現するS1P1が血液ならびにリンパ液に存在するS1Pと反応することで制御されていることが遺伝子改変マウスを用いた研究から明らかにされている.このようなことから,直接的な免疫抑制ではなく,リンパ球のS1P1を標的にしたリンパ球の移動制御,すなわち,病変部からの隔離を介して作用する免疫抑制剤の開発が注目されている.しかしながら,現在までに開発された非選択的S1P受容体拮抗薬は免疫抑制作用がなく,逆に,多発性硬化症の治療薬として認可されたFTY720のような非選択的S1P受容体作動薬がリンパ球移動の抑制を起こすことから,S1P1を介した免疫抑制メカニズムは不明な点が多い.
    成果
    現在までに開発されたS1P1拮抗薬はS1Pと類似する化学構造を有しているが,大正製薬が創製した化合物は,構造上S1Pとは異なる基本骨格を有する.本化合物の経口投与により,循環血液中のリンパ球が減少し,胸腺からのT細胞の放出,脾臓におけるリンパ球の移動が抑制され,TGF-bの産生に関与するCD69の発現が増強した.関節炎モデルを用いて,免疫抑制活性を検討した結果,関節炎の発症,コラーゲンに対する自己抗体の産生を有意に抑制した.従って,S1P1の機能抑制がリンパ球移動制御を伴う免疫抑制に必要であり,本化合物が新たな免疫抑制剤として応用可能であることが示唆された.
  • 金井 隆典, 筋野 智久, 三上 洋平, 日比 紀文
    2012 年 35 巻 4 号 p. 319a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】腸管には健常状態でも自然にTh17細胞(Natural Th17)が存在する一方,炎症性腸疾患においてTh17細胞(Colitogenic Th17)はTh1細胞とともに病態に関与する.今回,健常,IBD腸炎マウスに存在する腸管Th17細胞の腸炎病態への関与について包括的に検討した.【方法】・RORgt GFPレポーターマウスLy5.2+ CD4+CD45RBhigh T (RBhigh)とWild typeマウスLy5.1+ TregをRAG2KOに移入した(単独,共移入群).・単独移入群大腸炎CD4+細胞からGFP+, GFP細胞を分離し,RAG2KOマウスに再移入した(G+,G−群).・RORgt GFPレポーターマウス大腸Th17細胞とRBhigh細胞を単独または共移入した(nTh17, RBhigh, nTh17+ RBhigh群).【結果】・単独移入群ではTh1細胞の増加を認め,共移入群ではTh17比率の増加を認めた.共移入群ではT-betを発現せず,単独移入群ではTh17細胞においてもT-betの発現を認めた.・G+,G−群は腸炎を発症し,G+移入群でRORgtT-bet+ Th1細胞(alternative Th1)の出現を認めた.・nTh17群は腸炎を発症せず,nTh17+ RBhigh共移入によって,逆にRBhigh細胞由来のFoxp3+細胞の誘導とRBhigh細胞移入腸炎の抑制を認めた.【結語】慢性大腸炎においてはColitogenic Th17細胞はTh17→Th17/Th1→alternative Th1経路の前駆細胞としてpathogenicに,健常Natural Th17細胞はnaïve T細胞をTreg化する‘infectious tolerance’に寄与する全く異なる細胞集団であることが示唆された.
  • 長谷川 明洋, 白井 睦訓, 中山 俊憲
    2012 年 35 巻 4 号 p. 319b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Th2細胞はアレルギー反応の誘導に深く関与しているが,T細胞自体は数の上では浸潤細胞の数パーセント程度であり,Th2細胞が実際の炎症の場でどのような機序で炎症誘導における重要な役割を果たしているのかほとんどわかっていない.特にTh2細胞が浸潤するタイミングや浸潤したTh2細胞のダイナミックな細胞動態は不明のままである.本研究では蛍光標識したTh2細胞を移入してリアルタイムで観察するシステムを構築し,アレルギー性喘息モデルを用いて抗原吸入後の肺への浸潤様式の時間的定量的な解析を行った.
      OVAで免疫したGFPマウスのCD4+ T細胞を移入したマウスでは,OVAを吸入させて喘息を誘導することにより,OVA吸入前やOVAを吸入させなかった場合に比べて8~20倍の数のGFP+細胞が肺に浸潤していた.肺へのCD4+ T細胞の集積はOVA吸入12時間後から顕著となり,18~36時間後に最大となった.このT細胞浸潤はステロイドを投与することにより抑制された.さらにOVA特異的Th2細胞を用いて解析したところ,OVA吸入後に肺に集積してきたTh2細胞は肺組織内で寄り集まってfocusを形成し,その後に誘導される炎症巣の形成場所を制御していると考えられた.この新しいイメージングシステムは生体内での気道炎症誘導メカニズムの解析や,新規の抗喘息薬開発において有用なツールになると期待される.
  • 中山田 真吾, John O'Shea, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 320a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞は胚中心におけるB細胞の機能と抗体反応を制御する新規ヘルパーT細胞である.近年SLE等の自己免疫疾患においてTfh細胞の病因的意義が報告されつつあるが,その細胞分化の機序は不詳である.今回,サイトカインで誘導される転写因子のエピゲノム制御に着目してTfh細胞の分化機構を解明した.(1)インターロイキン(IL)-12を介したSTAT4の活性化はナイーブT細胞ヘTh1細胞の表現型に加えてIL-21の産生やBcl6の発現などTfh細胞様の表現型を誘導した.(2)STAT4で誘導されるT-betとBcl6との間には拮抗作用が存在し,細胞内外のシグナルによる両者の優劣関係がTh1細胞あるいはTfh細胞への分化偏向を規定した.(3)クロマチン免疫沈降-シークエンス法を用いたゲノムワイド解析の結果,Bcl6の遺伝子座における活性型のヒストン修飾はTfh細胞,Th1細胞のみならずBcl6を発現しないナイーブT細胞にも普遍的に認められ,Bcl6の転写が潜在的に準備状態であることを示唆した.以上の結果より,Tfh細胞は他のヘルパーT細胞サブセットと表現型を共有しながら分化成熟することが明らかとなった.すなわち,Tfh細胞の分化における可塑性は細胞内での転写因子群のバランスによるエピゲノム制御機構で決定されることが示唆された.
  • 武藤 剛, 新倉 芹菜, 森田 林平, 小林 隆志, 吉村 昭彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 320b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      アダプター分子TRAF6(TNF receptor-associated factor 6)はNF-kBの活性化に関与し,自然免疫反応の制御において重要な役割を果たすが,近年T細胞における機能が注目されている.今回我々は,制御性T細胞特異的にTRAF6を欠損させたマウスは,著明な全身リンパ節腫脹・皮膚炎・関節炎を自然発症することを発見した.このマウスでは末梢リンパ組織におけるTreg数の増加を認める一方で,血清IgE値の著明な上昇や,脾細胞におけるIL-4, IL-10産生亢進・IgE産生細胞増加を認め,このマウスの炎症はTh2型であることが示唆された.
      一方,TRAF6 flox/flox, Foxp3YFP -Cre/+マウスの解析より,TRAF6を欠損した制御性T細胞(TRAF6−/−Treg)がin vivoで不安定であることが示唆され,またRAG2欠損マウスやCD3ε欠損マウスなど免疫不全マウスへのナイーブT細胞と制御性T細胞の共移入実験の結果から,TRAF6−/−Tregはin vivoでIL-2の存在下でも充分に増殖することができず,ナイーブT細胞の増殖を抑制する機能が欠如していることが判明した.さらにこれらの免疫不全マウスへのTreg単独移入実験の結果より,TRAF6−/−Tregは不安定になりやすく,Foxp3発現を失った細胞集団からTh2サイトカインが産生される可能性が示唆された.これらを総合すると,TRAF6は制御性T細胞のin vivoにおける安定した生存増殖,およびTh2型炎症の抑制制御に重要な役割を果たしていると考えられる.
MWSワークショップ
  • 川崎 洋, 永尾 圭介, 久保 亮治, 畑 毅, 清水 篤, 水野 秀昭, 山田 健人, 天谷 雅行
    2012 年 35 巻 4 号 p. 321a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      フィラグリンの遺伝子変異は,アトピー性皮膚炎の主要な発症因子として報告されている.私たちは本研究で,フィラグリン欠損(Flg−/−)マウスを作成し,角層のバリア機能維持及び経皮免疫応答におけるフィラグリンの影響について検討した.
      生後早期のFlg−/−マウスは,落屑を伴い乾皮症様の外観を呈した.フィラグリンの分解産物を主な構成成分とするNMF(Natural moisturizing factor)はFlg−/−角層で著しい減少を認めたものの,角層内水分量や経皮水分蒸散量は正常だった.テープストリップを用いた実験から,物理刺激によるFlg−/−皮膚での角層剥離の亢進が示された.電子顕微鏡による観察から,Flg−/−角層におけるケラチンパターンの消失が確認され,これがFlg−/−角層の脆弱性に関与している可能性が示唆された.続いてカルセイン含有リポソームをマウス皮膚に塗布し,共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ,Flg−/−角層で色素透過性の亢進を認めた.これらFlg−/−角層の機能異常は,ハプテン誘導性接触過敏反応やタンパク抗原経皮塗布後の液性免疫応答の亢進をもたらした.
      我々が作成したFlg−/−マウスは,in vivoでのフィラグリンの機能を正しく評価し,バリア機能異常を有する皮膚への経皮的抗原曝露から疾患が発症するまでのアトピー性皮膚炎発症機序の解明につながる有用なツールとなる.
  • 岩田 慈, 山岡 邦宏, 新納 宏昭, 中野 和久, ワン シャオペイ, 赤司 浩一, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 321b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      自己免疫疾患の病態形成において,B細胞は重要な役割を果たす.Sykは,B細胞受容体(BCR)のシグナル伝達において重要な役割を担うチロシンキナーゼであるが,最近我々は,ヒトB細胞において,Sykを介するシグナルが,TRAF6のoptimalな発現誘導を介してTLR9の効率的なシグナル伝達を齎し,強力なB細胞の活性化とともに,抗体産生など様々な機能発現に重要であることを報告した.そこで今回,Sykのヒト自己免疫疾患への関与について検討した.フローサイトメトリーを用いて末梢血CD19陽性B細胞のリン酸化Syk(p-Syk)を測定したところ,SLE患者(n=58),RA患者(n=62)ではいずれも,B細胞のp-Sykの発現が,健常人(n=27)に比し有意に亢進していた.SLE患者では,B細胞のp-Syk発現は,疾患活動性指標であるSLEDAIに有意に相関しており,また抗ds-DNA抗体陽性例において有意に亢進していた.一方,RA患者では,疾患活動性指標であるDAS28, CDAI, SDAIとの相関は認められなかったが,抗CCP抗体強陽性例で有意な亢進が認められた.以上より,自己免疫疾患病態において,B細胞におけるSykを介するシグナルは,自己抗体産生を介する機序で病態形成に深く関与するとともに,RAに比しSLEで,B細胞のより強い病態への関与が示唆された.
  • 長谷川 英一, 七田 崇, 森田 林平, 木村 彰宏, 関谷 高史, 大島 裕司, 武田 篤信, 園田 康平, 石橋 達朗, 吉村 昭彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 322a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)17は眼科分野においてもぶどう膜炎への関与が多数報告されている.一方IL-17は腫瘍・リウマチにおいて血管新生促進作用の報告もある.今回我々は視力予後不良な眼疾患の加齢黄斑変性の主病態である脈絡膜血管新生に対するIL-17の作用についてマウスレーザー脈絡膜新生血管(CNV)モデルを用いて検討を行った.
    【対象と方法】(1)C57BL/6Jマウス網膜にレーザー光凝固を20ヶ所行いIL-17の眼内発現をリアルタイムPCR法を用いて測定した.(2)C57BL/6Jマウス網膜にレーザー光凝固を4ヵ所行いCNVを作成後,IL-17投与群,抗IL-17抗体投与群,非投与群で照射7日後にフラットマウント法によりCNVの面積を比較した.更にIL-17欠損マウスでも同様にCNVの面積測定を行った.(3)FACS解析にてレーザー後眼内におけるIL-17産生細胞の同定を行った.
    【結果】(1)IL-17はレーザー照射後より眼内発現が上昇し4日目がピークであった.(2)IL-17投与群では非投与群に対しCNVが増大していた.また抗IL-17抗体投与群・IL-17欠損マウスではCNVの縮小が見られた.(3)FACS解析においてIL-17産生細胞のほとんどはCD4陽性T細胞ではなくγδT細胞であった.TCRγδ欠損マウスにおいてレーザー後IL-17発現量は減少しCNV形成も縮小が見られた.
    【結論】マウス脈絡膜新生血管モデルにおいてIL-17産生γδT細胞がCNV形成に重要な役割を果たしている可能性が考えられた.
  • 宮﨑 雄生, 新野 正明, 菊地 誠志, Amit Bar-Or
    2012 年 35 巻 4 号 p. 322b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)の病態には中枢神経ミエリン抗原反応性T細胞が中心的な役割を果たしていると想定されているが,加えてその他いくつかの免疫担当細胞が疾患増悪または抑制性に作用していることが知られている.われわれはMSにおいてB細胞がlymphotoxin-α (LT), tumor necrotizing factor (TNF)を高産生しT細胞を異常に活性化することが疾患増悪に関与することを報告したが,そのメカニズムは不明である.今回われわれはmicro (mi) RNAがMS B細胞のサイトカイン産生異常に関与する可能性を検討した.15名のMS患者および13名の健常者末梢血よりB細胞を精製し,CD40およびB細胞抗原受容体供刺激後にヒトB細胞に発現が知られている102種のmiRNAを定量した.その結果MS患者B細胞はLT,TNFの高産生に伴ってmiR-132を有意に高発現することが判明した.また,健常者のB細胞にmiR-132を導入するとLT,TNFの上昇が見られた.このメカニズムを解明するために,miR-132が抑制しうる遺伝子の中でsirtuin (SIRT)-1に着目した.実際,MS患者B細胞はSIRT1発現が健常者に比し低値であった.SIRT-1抑制剤であるEX-527は健常者B細胞からのLT産生を増強した.さらにSIRT1活性剤であるresveratrolはMS患者B細胞のLT, TNF産生を抑制した.以上より,MS B細胞においては,高発現したmiR-132がSIRT1を抑制することが炎症性サイトカイン産生亢進のメカニズムの一つとして考えられた.
  • 尾崎 富美子, 狩野 博嗣, 金兼 弘和, 野々山 恵章, Sang-Kyou Lee, 高木 正稔, 水谷 修紀, 森尾 友宏
    2012 年 35 巻 4 号 p. 323a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      X連鎖無γ-グロブリン血症(XLA)は,BTK遺伝子の異常により骨髄におけるB細胞の分化障害をきたし,末梢血B細胞が欠損し,抗体産生不全と易感染性を特徴とする.治療としては,定期的な免疫グロブリン補充療法により感染の頻度を抑えることが可能になっている.しかし,診断前や感染症発症時に好中球減少の合併を呈することがあり,感染が重篤化することが問題となっているが,その原因は明らかでない.
      まずXLA患者由来好中球におけるROS産生を検討したところ,様々な刺激後のROS産生は対照群と比較して明らかに亢進していた.またXLA由来患者好中球ではROSの過剰産生により早期にアポトーシスを起こすことが分かった.さらに,膜透過性ペプチドであるHph-1を用いて正常なBTKをXLA患者由来好中球に導入すると,XLA患者の好中球での過剰なROS産生とアポトーシスが健常レベルにまで回復した.
      次に過剰なROS産生が起きるメカニズムを知るために,好中球機能を詳細に検討した.数名のXLAの好中球を用いた検討から,XLA患者の好中球は休止期ですでに,ROS産生準備段階(プライミング)状態にあることが分かった.さらに,正常好中球での解析から,正常好中球においては休止期のBTKはToll like receptor(TLR)の下流で働くMyD-88 adaptor like protein(Mal)を細胞質に留めている役割をしていて,PI(3)KやSFK, Sykの活性化が起こらないよう制御していることが明らかとなった.
  • 塚原 智英, 江森 誠人, 鳥越 俊彦, 佐藤 昇志, 和田 卓郎
    2012 年 35 巻 4 号 p. 323b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      骨肉腫患者の予後は化学療法の導入により5年生存率約70%に向上した.しかし化学療法不応性の骨肉腫患者の予後はいまだに不良である.また上皮系癌と比べて若年発症例が多く,骨肉腫に対するペプチドワクチン療法に対する期待は大きい.我々は1999年より骨肉腫に対するペプチドワクチンの開発を始め,世界で初めて自家CTLクローンに認識されるヒト骨肉腫抗原PBFをcDNAライブラリ発現クローニング法により同定した.PBF蛋白全長よりHLA-A24拘束性ペプチド(PBF A24.2)およびHLA-A2拘束性ペプチド(PBF A2.2)を設計し,これらの免疫原性を検討した.そしてPBFペプチドを用いた末期骨肉腫患者に対するペプチドワクチンの第1相臨床試験を2009年より開始した.これまでにPBFA24.2ペプチド+IFAを5例に,PBFA2.2ペプチド+IFAを2例に接種した.PBF A24.2ペプチド症例の5/6例で,PBF A2.2ペプチド症例の1/2例でペプチド特異的免疫応答がテトラマーまたはELISPOTで検出された.臨床効果は全例PDであったが,PBF A2.2ペプチドを接種した1例で皮下転移巣の石灰化がみられ,切除標本において腫瘍の部分壊死とCD8陽性T細胞の浸潤が認められた.ペプチドワクチンによる効果が示唆された.有害事象としてアドリアマイシン心筋症によると考えられるCPAが1例でみられた.他に重篤な有害事象はみられなかった.今後さらに症例を重ねて,ペプチドワクチンの免疫応答,臨床効果と安全性を検討していく.
一般演題(ポスター)
  • 花岡 成典, 五野 貴久, 川口 鎮司, 桑名 正隆, 杉浦 智子, 古谷 武文, 高木 香恵, 市田 久恵, 勝又 康弘, 山中 寿
    2012 年 35 巻 4 号 p. 327a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【方法】1992年から2010年までに受診した抗MDA5抗体陽性のDM31症例中17例でHLA-DRB1の遺伝子多型について解析を行った.また,抗ARS抗体陽性PM/DM症例33例,抗ARS抗体陰性かつILDを有さないPM/DM症例33例,健常者265名とHLA-DRB1の遺伝子多型について比較検討を行った.
    【結果】HLA-DRB1*0101とDRB1*0405の頻度は,抗MDA5抗体陽性DM症例で各々29%と71%と健常者と比較して高かった.また,抗MDA5抗体陽性のDM17例中16例(94%)でDRB1*0101またはDRB1*0405のいずれかの対立遺伝子を有しており,いずれもCADM症例でILDを併発していた.DRB1*0101またはDRB1*0405のいずれかを有する頻度は,ARS陰性かつILDを有さないPM/DM症例(P=1.1×10−5, OR: 42.7, CI: 4.9-370.2),ARS陽性のPM/DM症例(P=4.5×10−3, OR: 13.3, CI: 1.6-112.6)のいずれより有意に高かった.
    【結語】HLA-DRB1*0101/*0405は日本人において,抗MDA5抗体陽性のDMと関連がある.
  • 渡邉 幹夫, 井上 直哉, 山田 宏哉, 武村 和哉, 林 文明, 山川 法子, 赤羽 舞子, 清水 石裕, 日高 洋, 岩谷 良則
    2012 年 35 巻 4 号 p. 327b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】全ゲノム関連解析で見出された自己免疫性甲状腺疾患感受性遺伝子のうち,CTLA4, PTPN2, CD40, FCRL3, ZFATに存在する機能的多型と疾患予後との関連を解析した.
    【方法】197名の自己免疫性甲状腺疾患患者(抗甲状腺剤治療が中止できないバセドウ病難治群61名,抗甲状腺剤を中止しても再発のないバセドウ病寛解群42名,甲状腺組織破壊が高度な橋本病重症群51名,甲状腺組織破壊が軽度な橋本病軽症群43名)および健常群86名のゲノム遺伝子を用い,CTLA4 CT60, CTLA4 +49 A/G,CTLA4 −1147C/T, CTLA4 −318 C/T, PTPN22 −1123 C/G, PTPN22 SNP37, CD40 −1 C/T, FCRL3 −169 C/T, ZFAT Ex9b-SNP10, ZFAT Ex9b-SNP2の各多型をタイピングした.
    【結果】CD40 −1 CC genotypeと−1 C allele,およびFCRL3 −169 TT genotypeはバセドウ病寛解群において難治群より高頻度であった(P=0.041, P=0.031,およびP=0.032).ZFAT Ex9b-SNP10多型のTT genotypeとT alleleは橋本病重症群において軽症群よりも高頻度であった(P=0.0029およびP=0.0049).CTLA4 CT60のGG genotypeでは,他のgenotypeに比較してバセドウ病発症時のTSHレセプター抗体価が高値であった(P=0.012).
    【結論】CD40およびFCRL3遺伝子の機能的多型はバセドウ病の難治性に関連し,CTLA4遺伝子の機能的多型は自己抗体産生に関係していた.ZFAT遺伝子の機能的多型は橋本病の重症度に関与していたが,疾患感受性との関連は小さいと考えられた.
  • 金子 俊之, 天野 浩文, 西川 桂子, 河野 晋也, 大辻 希樹, 西村 裕之, 廣瀬 幸子, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 328a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】
      我々はヒトと同様の高度の骨破壊を伴う関節リウマチ(RA)を自然発症するFcγRIIB欠損B6マウス(KO1マウス)を樹立した.一方,KO1マウスをそれ自身では病態を発症しないNZWマウスと交配した(KO1 x NZW)F1マウスには,RAは発症せず,代わりに高度の全身性エリテマトーデス(SLE)が発症した.本研究は,KO1とNZWの交配マウス系を用いて,RAおよびSLEの両疾患に共通の遺伝要因ならびに疾患特異的な遺伝要因を解析することを目的とする.
    【方法】
      (KO1 x NZW)F1マウスおよび(KO1 x NZW)F2マウスの病態解析を行った.また,F2マウスを用いてループス腎炎およびRAの原因遺伝子のマッピングを試みた.
    【結果】
      (KO1 x NZW)F1マウスには12ヶ月齢でループス腎炎・唾液腺炎などの発症が認められた.一方,(KO1 x NZW)F2マウスには12ヶ月齢ではループス腎炎が約35%,唾液腺炎が約60%,RAが約6%に認められこれらの病態をoverlapして発症するマウスの存在も認められた.F2を用いたQTLマッピングで,第1染色体テロメアにループス腎炎およびRAの原因遺伝子がマップされた.
    【考察】
      今後,更なるRA,ループス腎炎,唾液腺炎の原因遺伝子領域のマッピングを行い,これらの疾患特異性を決定する遺伝要因を明らかにしたい.
  • 西小森 隆太, 阿部 純也, 井澤 和司, 河合 朋樹, 八角 高裕, 満生 紀子, 小原 收, 豊島 至, 長谷川 一子, 一瀬 宏, 平 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 328b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【はじめに】Aicardi-Goutières症候群(AGS)は主に1歳未満に発症する早発型脳症である.大脳基底核石灰化,髄液IFN-α上昇などを特徴とし,約40%の症例に凍瘡様皮疹を認める.また5種類の病因遺伝子(TREX1, RNASEH2B, RNASEH2C, RNASEH2A, SAMHD1)が同定されている.
    【目的】我々は寒冷誘発重症凍瘡を呈する1家系の解析から,昨年本邦初のAGSとその類似疾患であるFamilial Chilblain Lupusが混在する家系を報告した.現在本邦のAGS症例の集積と実態調査を行っており,経過を報告する.
    【方法】全国の小児神経専門医ならびに神経内科専門施設を対象に,1852通のアンケートを実施し,最終的にAGS診断基準を満たす8名の患者を同定した.更に小児神経専門医や小児リウマチ専門医などから,当科に直接紹介された患者から7名のAGS患者(definitive 5名,probable 2名)を同定した.これら15名のうち,遺伝子解析について同意を得られた患者に対して,上記5遺伝子をダイレクトシークエンス法により解析した.
    【結果】現在までに8名の解析が終了した.TREX1ヘテロ患者を3名同定したが,全てに凍瘡所見が見られた.またRNASEH2B, SAMHD1変異症例を各1名ずつ同定したが,残り3名は5遺伝子に異常を認めなかった.
    【結論】近親婚が非常に稀な本邦でのAGS遺伝子解析では,通常多いとされる常染色体劣性遺伝形式より,稀な常染色体優性遺伝形式のTREX1変異症例が多く見られた.
  • 石村 匡崇, 水野 由美, 高田 英俊, 後藤 元宏, 土居 岳彦, 保科 隆之, 大賀 正一, 大島 孝一, 原 寿郎
    2012 年 35 巻 4 号 p. 329a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      壊死性リンパ節炎(HNL,菊池病とも呼ばれる)は有痛性頚部リンパ節腫脹を主徴とする良性炎症性疾患であるが,その病因は不明である.HNLは特徴的な症状や特異的検査がなく,悪性疾患との鑑別のために時としてリンパ節生検が必要である.我々はHNLの非侵襲的な早期診断法を確立するため,末梢血単核球の遺伝子発現を解析し,判別分析を行った.
      マイクロアレイによりHNL患者末梢血単核球で高発現する5つの遺伝子(IFI44L, CXCL10, GBP1, EPSTI1, IFI27)を同定した.この5遺伝子は全てインターフェロン誘導遺伝子であり,HNL患者リンパ節でも同様に遺伝子発現が上昇していた.HNL患者24例,正常対照34例,疾患対照94例の末梢血単核球で同遺伝子を定量PCRにより遺伝子発現を解析した.この5遺伝子の発現レベルは対数正規性を示し各遺伝子間で正の相関を認めた(r2=0.28-0.60).また同様に血清CXCL10もHNLの有症状期に上昇していた.この5遺伝子の遺伝子発現レベルを用いて判別分析を行った.84%の正確性でHNL群,正常対照群,疾患対照群を判別することが可能であり,早期診断に有用であると考えられた.インターフェロン誘導遺伝子は抗ウイルス活性を持ち,HNL患者末梢血でこれらの遺伝子の高発現がみられることは,HNLと何らかのウイルス感染との関連を示唆する所見であると考えられた.
  • 神人 正寿, 市原 麻子, 福島 聡, 尹 浩信
    2012 年 35 巻 4 号 p. 329b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      尋常性乾癬において臨床的に有用な血清マーカーはいまだ見いだされていない.我々はmicroRNAに着目しその血清中濃度が疾患・治療マーカーとして応用出来る可能性を検討した.
      まず皮膚組織から抽出したmicroRNAを用いたPCRアレイの結果,miR-424が尋常性乾癬で著明に低下していた.培養表皮細胞にmiR-424 inhibitorを強発現するとターゲットであるMEK1やcyclin E1の蛋白発現が増加するとともに細胞数も増加した.
      以上の結果をもとに乾癬患者において血清中のmicroRNA濃度を測定した.患者の血清中では正常人と比較しmiR-424濃度の低下傾向がみられたが有意ではなかった.しかし血清miR-424減少例では発症から受診までの期間が短く,自覚症状が強い傾向があると考えられた.
      加えて,我々はIL-17Aを制御する可能性があるmiR-1266の血清濃度についても測定した.予想に反してmiR-1266は乾癬患者血清で増加し,皮疹の体表面積と弱い負の相関を示した.
      本研究により,乾癬患者において血清microRNA濃度が病勢マーカーとなる可能性が示唆された.
  • 高橋 令子, 伊藤 健司, 木村 文彦, 吉村 昭彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 330a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      我々は,T細胞特異的SOCS1欠損マウスにおいて,制御性T細胞(regulatory T cell; Treg)はFoxp3の発現を失い,IFNgammaやIL-17などのサイトカイン産生ヘルパーT細胞へ変化すること,すなわちTregの可塑性の増強を発見した.しかし,これはSOCS1の欠損しているTreg以外のT細胞の影響を受けている.よって我々は,Treg特異的SOCS1欠損マウスを作成して,Tregの可塑性などを検討し,TregにおけるSOCS1の役割を研究した.Treg特異的SOCS1欠損マウスのTregをRag2欠損マウスへ移入したが,T細胞特異的SOCS1欠損マウス由来のTregとは異なり,Tregの抑制能,Foxp3の発現共に保たれた.しかし,DSS腸炎モデルなど炎症状態では,Treg特異的SOCS1欠損マウスは野生型マウスと比較して病態が増悪し,炎症状態下でのTregの可塑性が示唆された.Treg特異的SOCS1欠損マウス由来のTregはin vitroの培養で,そのままではIFNgammaも産生しないが,常に高サイトカイン状態にあったT細胞特異的SOCS1欠損マウス由来の抗原提示細胞と共に培養すると,Foxp3を失いIFNgammaを産生するようになった.これはIL-12抗体で遮断された.また,Treg特異的SOCS1欠損マウス由来のTregではSTAT4が亢進していた.よって,SOCS1は炎症状態でTregの可塑性を防御している事が明らかになった.また,SOCS1をTregにおいて発現増強することでTregの可塑性を防ぐことにより,自己免疫状態をコントロールする可能性を示唆する.
  • Joaquim Carreras, Rifat Hamoudi, William Howat, Anne Lavergne-Slove, S ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 330b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      To evaluate the status of the immune regulation and homeostasis mechanisms in Celiac Disease (CD), and its progression toward Refractory Celiac Disease (RCD) and transformation to EATL type 1 focusing on FOXP3+Tregs, ITGAX+DCs, BTLA+cell, PDCD1+TFH subpopulations.
      The series was comprised of 69 cases consisting on 50 samples of CD and 19 samples of EATL type 1. Protein expression was analyzed and quantified by digital image analysis. Histological compartmentalization included lamina propria, isolated lymphoid follicles and tumoral lymphoid area. In comparison to physiological conditions, CD was characterized by higher numbers of FOXP3+Tregs and ITGAX+DCs, but lower BTLA+cells and PDCD1+TFH cells. Progression from CD to RCD1, RCD2 and transformation to EATL was characterized by decreasing trends of FOXP3+Tregs and BTLA+cell. ITGAX+DCs showed a similar decreasing trend from CD to RCD stages but transformation to EATL was characterized with a striking increase. The RCD progression and EATL transformation stages show a defect in inhibitory pathways of FOXP3 and BTLA. Those results pinpoint the role of immune homeostasis and tolerance in CD and in the generation of cancer.
  • 前田 伸治, 前田 智代, 難波 大夫, 速水 芳仁
    2012 年 35 巻 4 号 p. 331a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】Abatacept (CTLA4-Ig)は抗原提示細胞のCD80/86と結合し,T細胞の活性化を抑制することで関節リウマチ病態を抑制する.しかし制御性T細胞への作用は詳細に検討されていない.
    【方法】今回我々はAbatacept使用前後(0, 4 wks)のヒトリウマチ患者末梢血(n=16) CD4+ Foxp3+T cell (Treg)のPhenotype (CD25, CD45RA, CD69, CD62L, CD31, CD39, CD127, CD161),機能マーカー(CTLA-4 (intra), GITR, GARP, LAG-3, HLA-DR)ケモカイン受容体(CCR4, CCR6, CXCR3)および,内在性(Helios)および増殖マーカー(Ki67)と全部で18のマーカーを染色,多色フローサイトメトリー法にて網羅的に比較解析した.
    【結果】患者のDAS, CRPは4 wks前後では大きな変化は無かった.TregにおいてCTLA-4, GITR,などの機能分子の発現量は使用4 wks後に有意に低下した.また,CD45RAhigh CD25low (=resting Tregs)の割合はAbatacept使用前後で著明に増加し,CD45RA CD25high (=activating Tregs)は著減した.一方,Th17マーカーであるCD4+Foxp3CCR6+CD161+ T細胞は,Abatacept使用により有意に減少した.
    【考察】resting Tregは,activated Tregとともに抑制能力を持ち,activated Tregに移行することでvivoにおいても長期間免疫病態を抑制することが知られる.Abatacept使用により,このような機能的Treg (fTreg)の割合が維持され,fTreg/Th17バランスが増加することは,関節炎の長期抑制に関与している可能性がある.
  • 福與 俊介, 岩田 慈, 山岡 邦宏, 斎藤 和義, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 331b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的・方法】
    生物学的製剤使用歴のない活動性RA患者(n=10)を対照に,ABT治療後のT, B細胞のphenotypeの変化(0, 2, 24週)をFACSにて解析した.
    【結果】
    ABT投与後,SDAIは22.1±8.5(0週)→11.8±9.9(24週)と有意に低下した.CD4陽性T細胞について,エフェクター(CD4+CD127+)/制御性T (CD4+CD25highCD127)細胞の比率,メモリーT細胞(CD4+CD45RO+)の割合に変化はなかった.RA患者ではCD4+CD28/CD4+細胞の割合が健常人に比し有意に増加しており,ABT投与24週後有意に低下した.B細胞では,対照としたSLE患者では健常者に比しCD19+IgDCD27+クラススイッチメモリーB細胞が有意に増加していたのに対し,RA患者では増加を認めなかった.ABT投与後CD19陽性細胞上のCD95(活性化マーカー)の発現は低下傾向を示した.BCRシグナル伝達に重要なSpleen tyrosine kinase(Syk)のリン酸化は健常者に比しRA患者で有意に高く,特に抗CCP抗体強陽性群で亢進していたが,ABT投与24週後有意に低下した.
    【考察】
    今回の結果より,ABTはT細胞とともに,共刺激分子を介したB細胞活性化の制御を介しRAの疾患制御効果を齎す可能性が示唆された.
  • 南家 由紀, 小橋川 剛, 八子 徹, 小竹 茂
    2012 年 35 巻 4 号 p. 332a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      背景:最近,自己免疫性疾患の病態には制御性T細胞(Treg)の関与が注目されている.ミクリッツ病におけるTregの報告は我々の知る限りない.シェーグレン症候群の唾液腺浸潤リンパ球は初期はT細胞優位,その後B細胞優位となっていく.浸潤T細胞についてはHLA-DR抗原,IL-2Rを発現している.一方,CD4+CD25+Foxp3の制御性T細胞は認められなかったと報告されている(Wang et al., 1997).
    目的:ミクリッツ病とシェーグレン症候群との唾液腺組織における
    Treg細胞に特異的なFoxp3の発現を検討する.
    対象:シェーグレン症候群 5症例(39歳~65歳,全例 女性),ミクリッツ病 1例(56歳 女性)
    方法:各々の唾液腺組織をFoxp3の免疫染色を行った.
    結果:シェーグレン症候群では5例中3例にFoxp3が陽性であった.ミクリッツ病では顎下腺にFoxp3陽性細胞が検出された.
    考察:これまでの報告と異なり一部のシェーグレン症候群ではTregが陽性であった.ミクリッツ病においてもTregが陽性であった.
    結語:ミクリッツ病,一部のシェーグレン症候群において,その病態にTregの関与が示唆された.
  • 瀬川 誠司, 後藤 大輔, 堀越 正信, 松本 功, 住田 孝之
    2012 年 35 巻 4 号 p. 332b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    [目的]
    間質性肺炎合併膠原病患者におけるCD161+ Vδ1+ γδT細胞の機能解析を行う.
    [方法]
    ・健常人(HC, n=22),関節リウマチ(RA, n=17),多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM, n=14),全身性強皮症(SSc, n=35)由来末梢血単核球中のCD161+ Vδ1+ γδT細胞の割合をフローサイトメトリーで解析した.
    ・PM/DM, SSc患者について,間質性肺炎合併の有無による血中CD161+ Vδ1+ γδT細胞の割合,血中KL-6値との相関を解析した.
    ・HC (n=3)由来末梢血単核球中CD161およびCD161+ Vδ1+ γδT細胞を用いて,micro arrayを実施した.
    [結果]
    ・SSc患者において,末梢血単核球中CD161+ Vδ1+ γδT細胞の割合はHCに比べて有意に増加していた(p<0.05).
    ・SSc患者において,間質性肺炎非合併群では間質性肺炎合併群に比べて末梢血単核球中CD161+ Vδ1+ γδT細胞の割合は有意に増加(p<0.05)しており,血中KL-6値と有意な負の相関を認めた(p<0.05).
    ・HC由来CD161+ Vδ1+ γδT細胞ではCCL3発現が亢進していた.
    [結論]
    CD161+ Vδ1+ γδT細胞は,CCL3発現を介してSSc患者における間質性肺炎の病態に関与している可能性が示唆された.
  • 永石 宇司, 山地 統, 鬼沢 道夫, 鈴木 雅博, 谷口 未樹, 金井 隆典, 荒瀬 尚, 渡辺 守
    2012 年 35 巻 4 号 p. 333a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】野生型naive CD4+ T細胞をrecombination-activating gene欠損マウス(RAG−/−)に移入するとeffecter memory T細胞(TEM)が誘導され大腸炎を惹起するが,interleukin (IL)-7非存在下(IL-7−/−RAG−/−)では大腸炎は発症しない.これにはIL-7の欠損だけでなくアポトーシスなど細胞傷害活性の関与が推測されたことから,我々はこのモデルにおけるnatural killer (NK)細胞の機能を解析した.【方法・結果】RAG−/−およびIL-7−/−RAG−/−の脾臓由来NK細胞の表面抗原や機能を解析した結果,分化マーカーやサイトカイン産生,TEMに対する細胞傷害活性はIL-7の有無によって影響されなかった.抗asialo GM1抗体の投与でRAG−/−のNK細胞を除去し,naive T細胞の移入後早期の腸間膜リンパ節を解析した結果,移入5日後よりCD44+ CD62L−およびCD44− CD62L−のT細胞分画が増加した.RAG−/−およびIL-7−/−RAG−/−へnaive T細胞を移入して大腸炎を誘発しつつ,抗asialo GM1抗体を第1-4週,第5-12週,第1-12週に投与した各群と12週間の溶媒コントロール投与群を比較すると,第5-12週抗体投与群ではコントロール投与群同様に腸管の炎症を誘導せず,第1-12週抗体投与群では大腸炎が顕在化した.第1-4週投与群も同様の大腸炎を発症し,投与中止後も炎症は持続した.【結論】NK細胞はnaive T細胞からTEMへの分化段階における早期を標的とし,腸炎の発症を抑制していることが示唆された.
  • 赤平 理紗, 今村 充, 川畑 仁人, 神崎 健仁, 道下 和也, 江里 俊樹, 土肥 眞, 山本 一彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 333b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      従来より自己免疫疾患の病因や病態形成に自己反応性T細胞は重要な役割を担っていることが示されており,自己反応性T細胞の制御機構の解明は病態の理解や治療を考える上で重要である.全てのCD4+T細胞が全身性核内自己抗原に反応し機能的Foxp3を欠くRDBLSfマウスを作製し,このマウスに出現するT細胞の挙動の解析により全身性自己抗原反応性T細胞トレランスにおけるclonal deletionとTreg細胞への分化以外の新規制御機構の有無を確認し,その機構を解明することを目的に実験を行った.その結果,RDBLSfマウスは皮膚以外臓器障害がなくトレランスが維持されており,自己反応性T細胞が胸腺や末梢にantigen-experienced T細胞として出現しておりTregマーカーは発現していなかった.また,特徴的サイトカイン産生プロフィールを持ちin vivoでanergicなT細胞であった.本サブセットはTreg細胞への分化と独立かつ並行に存在し,野生型マウスやヒトでの存在も確認した.本研究により既知のclonal deletionとTreg細胞への分化以外に自己反応性T細胞がanergicなT細胞に分化する新たな経路が明らかになった.今後,自己免疫疾患の病態解明と治療における本機構の意義を検討するためには,正常個体やヒトの自己免疫疾患における本サブセットの動態を解明することが課題となる.
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