日本臨床免疫学会会誌
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35 巻, 4 号
第40回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の192件中101~150を表示しています
一般演題(ポスター)
  • 野田 真史, 浅野 善英, 佐藤 伸一
    2012 年 35 巻 4 号 p. 334a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      TGFβシグナルのSmad非依存性経路の一つであるc-Abl/PKCδ/Fli1経路は全身性強皮症皮膚線維芽細胞の恒常的活性化に強く関与している.今回我々はc-Abl/PKCδ/Fli1経路が限局性強皮症皮膚線維芽細胞の恒常的活性化に関与している可能性について検討した.全細胞溶解液を用いた免疫ブロットでは,c-AblとPKCδの発現量,およびc-AblとFli1のリン酸化は限局性強皮症皮膚線維芽細胞において正常皮膚線維芽細胞よりも亢進していた.一方,核抽出液におけるFli1の発現量とクロマチン免疫沈降法で評価したCOL1A2遺伝子プロモーター領域に結合するFli1はいずれも減少していた.また,PKC-dの細胞内局在について蛍光抗体法で検討したところ,限局性強皮症皮膚線維芽細胞ではPKCδはより核内に局在していた.以上の細胞実験の結果は皮膚組織を用いた免疫染色によりin vivoにおいても再現性を確認できた.さらに,RNA干渉によるc-Ablの遺伝子サイレンシングにより,限局性強皮症皮膚線維芽細胞では・型コラーゲン蛋白の発現量,COL1A2遺伝子のmRNAの発現量がいずれも減少したが,PDGFR阻害薬では同様の効果は見られなかった.以上より,c-Abl/PKCδ/Fli1経路の恒常的な活性化が限局性強皮症皮膚線維芽細胞の恒常的な活性化に寄与していることが示された.また,過去に報告されたメシル酸イマチニブの限局性強皮症の皮膚硬化に対する有効性はc-Abl/PKCδ/Fli1経路の抑制により発揮されている可能性が示唆された.
  • 山本 相浩, 河野 正孝, 茎田 祐司, 藤岡 数記, 永原 秀剛, 村上 憲, 藤井 渉, 中村 薫, 妹尾 高宏, 角谷 昌俊, 川人 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 334b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Allograft inflammatory factor-1(AIF-1)はラット異所性心移植モデルにおいて同定された分子量約17 kDのポリペプチドである.これまでに我々は,関節リウマチ患者の関節滑膜組織において,AIF-1の発現が滑膜細胞,単核球,線維芽細胞で亢進していることや,AIF-1が滑膜細胞の増殖,及び滑膜線維芽細胞やヒト末梢血単核球(PBMC)のサイトカインIL-6産生を促進することを報告している.前回,健常人のCD14陽性単核球において,RNA MicroarrayでAIF-1刺激による発現遺伝子を網羅的に検索し,ケモカインCCL2, CCL3, CCL7が高発現することを示した.また,これらケモカインのELISAでの定量的評価や,Cell Migration Assayでの細胞遊走能の評価も行った.今回さらに解析を進め,CCL2, CCL3, CCL7以外にもIL-6やCCL1の発現が亢進していることを明らかにし,定量的評価や細胞遊走能の評価も行った.関節リウマチにおけるAIF-1のサイトカイン・ケモカイン産生能および細胞遊走能について,考察を交えて報告する.
  • 野澤 和久, 藤城 真樹, 川崎 美紀子, 山口 絢子, 池田 圭吾, 森本 真司, 髙崎 芳成, 関川 巌
    2012 年 35 巻 4 号 p. 335a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】以前に我々はヒト滑膜細胞を用いた解析にて関節リウマチ(RA)の滑膜組織ではCTGF (Connective Tissue Growth Factor)が過剰産生され,破骨細胞の異常活性化きたす事でRAの病態形成に関与する事を報告した.今回,RAのモデルマウスであるCIAマウスを用いて抗体投与を施行し,in vivoでのCTGF阻害による関節炎抑制効果について検討した.【方法】DBA/1Jマウスにtype・collagenとCFA (Complete Freund‘s Adjuvant)を投与しCIAを誘導して,中和活性を持つ抗CTGF抗体の投与を行いCTGF経路阻害による関節炎抑制効果を検討した.【結果】抗CTGF抗体投与群において,抗体非投与群と比べて関節炎スコアの有意な改善を認めた.又,血中のCRPやMMP-3値についても抗体投与群で有意な減少を認めた.抗体投与による関節炎抑制効果の解析では,CD14陽性前駆細胞からの破骨細胞分化誘導能の評価では抗体投与群において破骨細胞への分化抑制効果を認めた.また抗体投与群において,type・collagen抗原特異的T細胞の増殖反応抑制効果が認められた.【結論】抗CTGF抗体投与されたCIAマウスにおいて,CTGF阻害による関節炎抑制効果が認められた.CTGFはCIAマウスの関節炎発症において重要な因子である事が示唆された.
  • 一瀬 邦弘, 川上 純, George C. Tsokos
    2012 年 35 巻 4 号 p. 335b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      〈目的〉全身性エリテマトーデス(SLE)に合併した腎病変は未だに死因の主要因となっている.SLEのT細胞ではCalcium/calmodulin-dependent protein Kinase Type IV (CaMKIV)の発現が増加しており,T細胞機能の異常を引き起こすことが報告されている.そこで我々はSLEのモデルマウスであるMRL/lprマウスを用いて,CaMKIVの腎臓メサンギウム細胞の機能制御についての検討を行った.〈方法〉8週齢のMRL/lprマウスとそのコントロールマウスであるMRL/MPJ, MRL/lpr.Camkiv−/−マウスの腎臓からメサンギウム細胞を分離培養し,PDGF-BB刺激でのフローサイトメトリーとウェスタンブロット解析による細胞増殖とPCR法によるIL-6発現,Electrophoresis Mobility Shift Assay (EMSA)によるIL-6プロモーター活性についての検討を行った.〈結果〉MRL/lpr.Camkiv−/−マウスメサンギウム細胞の細胞周期はG0/G1期にシフトし増殖が抑制されていた.ウェスタンブロット解析では増殖に関与するCDK2およびcyclin-D1の発現が低下していた.またメサンギウム細胞由来のIL-6 mRNAレベルもCaMKIVの欠失により低下しており,IL-6プロモーターにおける転写因子activator protein-1(AP-1)の結合とAP-1の核内移行が抑制されていた.〈結論〉CaMKIVはループス腎炎における治療のターゲットとなり得ることが示唆された.
  • 土江 健太郎, 野澤 和久, 蛭間 香織, 仲野 総一郎, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 336a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】SLE患者血清中にはPCNA複合体を形成するタンパク群に対して様々な自己抗体が産生される事が報告されている.今回我々は,そのPCNA複合体タンパクの一つであるChromatine assembly factor-1(CAF-1)に注目して各種疾患特異的自己抗体陽性血清における抗CAF-1抗体を測定して臨床的解析を加えた.【方法】抗ds-DNA, SS-A, RNP,セントロメア,核小体,Jo-1抗体陽性の患者血清を用いたdirect ELISA法にて抗CAF-1抗体を測定すると共に臨床的解析を施行した.また,活動性SLE患者PBMCにおけるCAF-1の発現に関して定量的PCR法を用いて測定した.【結果】抗ds-DNA抗体陽性群の約10%に抗CAF-1抗体が認められ,他の血清では抗CAF-1抗体はほとんど認められなかった.抗CAF-1抗体陽性血清のほとんどは,疾患活動性の高いSLE患者由来であり,特に腎症が高率に認められた.また,SLE患者のPBMCにおいてCAF-1が高発現しているのが認められた.【結論】CAF-1はSLE患者のPBMCにおいて発現が亢進しており,抗CAF-1抗体は活動性が高いSLE患者に特異的にみとめられ特に腎症との相関が高いことよりSLEの診断および活動性の良い指標となり得ると考えられた.
  • 蛭間 香織, 野澤 和久, 池田 圭吾, 山口 絢子, 関川 巌, Edward K Chan, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 336b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    背景:我々は今回,新規自己抗体である抗SSNA-1抗体の詳細な解析をする目的にて本研究を施行した.方法:各種自己抗体陽性患者の血清を用いて,抗SSNA-1抗体の出現率及び抗SSNA-1抗体血清中のIP−10とBAFF濃度との相関についてELISA法を用いて調べた.結果:抗SS-A抗体,抗セントロメア抗体,抗U1-RNP抗体陽性患者血清において抗SSNA-1抗体の出現頻度が高く,疾患としては原発性シェーグレン患者とMCTD患者において出現頻度が高かった.抗SSNA-1抗体陽性群では陰性群に比べて血清中のIP−10とBAFF濃度が高濃度であった.また,免疫蛍光染色では分裂期の細胞のみが染色された.結論:抗SSNA-1抗体は原発性シェーグレン症候群およびMCTDに特異的な自己抗体であり,抗SSNA-1抗体産生には,IP−10とBAFFが重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 中村 雅一, 松岡 貴子, 山口 広美, 三宅 幸子, 荒木 学, 岡本 智子, 林 幼偉, 小川 雅文, 村田 美穂, 荒浪 利昌, 山村 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 337a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】Fingolimodは多発性硬化症(MS)の再発抑制効果を有するが,視神経脊髄炎(NMO)では効果が疑問視されている.MS病態ではB細胞サブセットの中でもメモリーB細胞(mB)の重要性が示唆されており,我々はNMOにおけるプラズマブラスト(PB)の重要性を報告した.今回,同薬のB細胞サブセットへの影響を検討する.【方法】対象は2010年McDonald診断基準を満たすMS 6名.フローサイトメトリーにて末梢血単核細胞(PBMC)中のB細胞サブセット(ナイーブ,mB,PB)の割合とケモカイン受容体,HLA-DR,活性化マーカーCD38の発現率,PB分化マーカーCD138の平均蛍光強度(MFI)を投与前と2週間後で解析した.【結果】PBMC中のB細胞サブセットの割合は有意に低下した(p<0.05).mBではHLA-DRのMFI,CD38発現率が有意に低下し(p<0.05),活性化の低下と考えられた.PBではCD138陽性率が有意に増加し(p<0.05),同陽性群でのCXCR3発現率の増加傾向を認めた.【考察】MSではmBが末梢血から中枢神経系へ浸潤し,病態形成に関与することが示唆されている.Fingolimodにより末梢血mBの減少のみならず,残存mBの活性化低下が明らかとなり,再発抑制機構の一因と推測される.昨年我々は学会で,CD138陽性PBがNMO再発時にCXCR3依存性に中枢神経系へ浸潤することを報告した.Fingolimodによる同群の割合増加は,NMOでの無効に関連する可能性がある.
  • 汪 暁珮, 岩田 慈, 山岡 邦宏, 新納 宏昭, Jabbarzadeh Tabrizi Siamak, 赤司 浩一, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 337b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      B細胞は,関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患の病態形成に重要な役割を担う.Btk(Bruton's tyrosine kinase)はB細胞受容体(BCR)のシグナルに重要な役割を果たすが,ヒトB細胞におけるBtkの役割は明らかでない.そこで,B細胞の分化,抗体産生におけるBtkの役割を解析した.末梢血B細胞のAICDA(AIDコーディング遺伝子)の発現,IgG産生は,BCR刺激,BCRおよびsCD40L/sBAFF刺激,または,IL-21刺激では,わずかに誘導されるのみであった.しかし,BCR, sCD40L/sBAFF, sIL-21の3者の刺激により,強力なAICDAの発現とIgG産生の誘導が認められ,特異的Btk阻害剤(ONO-A)により,濃度依存性にIL-21単独刺激と同程度まで抑制された.以上より,Btkを介したBCR/BAFF/CD40シグナルは効率的なIL-21のシグナル伝達に重要で,その結果,ヒトB細胞にクラススイッチおよび抗体産生を誘導すると考えられた.これらの結果,及び,Btk阻害剤のコラーゲン誘導関節炎マウスに対する有効性,BtkトランスジェニックマウスにおけるSLE様病態の報告等から,BtkはB細胞依存性の自己免疫疾患の炎症病態形成に重要な役割を担う可能性が示唆された.
  • 小荒田 秀一, 永尾 奈津美, 田代 知子, 末松 梨絵, 大田 明英, 多田 芳史
    2012 年 35 巻 4 号 p. 338a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      RP105(CD180)はToll like receptor関連分子でMD1分子とともに主としてB細胞表面上に発現し,B細胞制御に関与している.RP105はB細胞活性化に対して抑制的に作用していることが最近報告され,その欠損は永続的なB細胞活性化につながる可能性が指摘されている.全身性エリテマトーデス(SLE)ではRP105(−)B細胞が増加しており,同細胞が自己抗体を産生している.皮膚筋炎,シェーグレン症候群でもRP105(−)B細胞が増加しており,種々の病態においてB細胞活性化と関連していると考えられる.IgG4関連疾患は,IgG4陽性形質細胞が病態の主要な役割をもっていると考えられ,B細胞異常が背景に存在すると推定されるが,その詳細な解析はほとんどなされていない.そこで,IgG4関連疾患患者4例において末梢血のRP105(−)B細胞数をフローサイトメトリーにて解析した.さらに,そのRP105(−)B細胞を5つのサブセットに分類し,そのフェノタイプと各サブセットの細胞比率をSLEと比較した.IgG4関連疾患のRP105(−)B細胞数は増加しており,このことが同疾患におけるB細胞の免疫異常や病態へ影響を与えていると考えられる.
  • 川村 直, 住本 秀敏, 谷口 智憲, 辻川 敬裕, 守井 賢二, 小林 明日香, 河上 裕
    2012 年 35 巻 4 号 p. 338b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Immunosuppressive and tumor promoting conditions are generated by cancer cell's gene alterations in tumor microenvironment, but their mechanisms have not been well understood. In this study, we attempted to identify new signaling molecules which involved in these conditions. Using the kinase siRNA library, we screened kinases which are involved in the human melanoma cell's production of immunosuppressive cytokines affecting on dendritic cells (DC), and found Serine/Threonine kinase 24 (STK24) was involved in the production of IL-10, TGF-b, and CCL2 by melanoma cells. Phosphorylated STK24 was increased in various human cancer cell lines and melanoma tissue samples. When the human melanoma cell line transduced with lentiviral STK24-shRNA was implanted in nude mice, tumor growth was decreased compared with mock-melanoma. Decreased tumor growth was accompanied by higher DC ability to stimulate T cells along with decreased IL-10 and increased TNF-a production, as well as by decrease of CD11b+ macrophages in tumor. These results indicate that STK24 in cancer cells is involved in the generation of tumor promoting and immunosuppressive tumor microenvironment.
  • 青木 類, 川村 龍吉, 五島 典, 小川 陽一, 中江 進, 中尾 篤人, 西山 幸廣, 島田 眞路
    2012 年 35 巻 4 号 p. 339a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      The essential contribution of mast cells (MCs) to bacterial host defense has been well established; however, little is known about their role in viral infections in vivo. Here, we found that intradermal injection with HSV-2 into MC deficient KitW/W-v mice lead to increased clinical severity and mortality with elevated virus titers in HSV-infected skins. Ex vivo HSV-specific tetramer staining assay demonstrated that MC deficiency did not affect the frequency of HSV-specific CTLs in draining lymph nodes. Moreover, the high mortality in KitW/W-v mice was completely reversed by intradermal reconstitution with BMMCs from wild-type, but not TNF−/− or IL-6−/−, mice. HSV did not directly induce TNF-α or IL-6 production by BMMCs, whereas supernatants from HSV-infected keratinocytes induced production of these cytokines by BMMCs without degranulation. Furthermore, IL-33 expression was induced in HSV-infected keratinocytes and blocking the IL-33 receptor, T1/ST2 on BMMCs significantly reduced TNF-α and IL-6 production by BMMCs. These results indicate MC involvement in host defense at HSV-infected sites through TNF-α and IL-6 production, which is induced by keratinocyte-derived IL-33.
  • 記村 貴之, 菅谷 誠, 管 析, 森村 壮志, 甲斐 浩通, 鑑 慎司, 藤田 英樹, 佐藤 伸一
    2012 年 35 巻 4 号 p. 339b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      アトピー性皮膚炎において病勢と一部の血清ケモカイン値が相関することが知られているが,その中でどの物質がかゆみに関与しているのか判断するのは難しい.それは自覚症状であるかゆみを客観的に評価,比較することは難しく,また病勢が大きく変化すると多くのサイトカイン濃度が同時に変化してしまうためである.そこで比較的病勢が落ち着いている外来患者において複数回血清を採取し,同時にかゆみの評価を行うこととした.当科外来に通院中の患者のうち,同意を得られた10人に対し,8週の間隔をあけて血清採取と同時にかゆみをvisual analogue scale (VAS)で評価した.ELISA法にてIL-8, MCP-1, RANTES, MIP-1α, MIP-1β, IP-10, I-TAC, MIG, eotaxin, TARC, MDC, GROαの濃度を測定した.ケモカイン同士またはVASとケモカイン濃度の相関についてはスピアマンの順位相関を用いて検定した.患者10人20検体について,ケモカイン濃度の相関をみたところ,MIP-1αとMIP-1β, TARCとMDC, MIG, IP-10, I-TACの3者間に正の相関があった.興味深いことに,好酸球遊走因子であるeotaxinは,IP-10, I-TAC, MIGなどのTh1系ケモカインと正の相関があった.またGROαはMIP-1α, IP-10, I-TAC, MIG, eotaxinなど多数のケモカインと相関があった.次にVASの変化量とケモカインの変化量の相関を検討したところ,VASの変化量とTARCの変化量の間には正の相関があり,I-TACの変化量とは負の相関があった.
  • 増井 友里, 浅野 善英, 柴田 彩, 門野 岳史, 佐藤 伸一
    2012 年 35 巻 4 号 p. 340a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      全身性強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化と血管障害を特徴とする全身性の自己免疫疾患である.その発症機序はいまだ不明であるが,炎症・自己免疫・血管障害など様々な要因により線維芽細胞が恒常的に活性化され,結果的に細胞外基質の過剰な沈着が生じると考えられている.その過程にはTGF-βをはじめとし,多くの炎症性サイトカインや成長因子が関与していることが明らかにされている.
      ビスファチンは主に脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一つで,内臓脂肪蓄積量と高度に相関し,内臓脂肪蓄積を基盤とした病態や脂肪細胞の分化・誘導に関与していると言われている.また,炎症・線維化・免疫調節への関与も報告されており,関節リウマチやベーチェット病,炎症性腸疾患などの炎症性自己免疫疾患での病態に関わることが示唆されている.
      今回我々は全身性強皮症患者において血清ビスファチン濃度を測定し,臨床症状や検査データとの関連について検討を行った.さらにTHP-1細胞およびヒト皮膚線維芽細胞を用いてビスファチンが線維化の過程に及ぼす影響を検討し,全身性強皮症の線維化の病態におけるビスファチンの役割について考察した.
  • 宮下 知子, 仲野 総一郎, 渡邉 崇, 鈴木 淳, 鈴木 智, 森本 真司, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 340b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    [目的]近年,IL-27が抗炎症性サイトカインであるIL-10の産生に関与する事が報告されている.今回我々はSLEにおけるIL-27のIL-10産生調節性T細胞(Tr1)への関与につき検討した.
    [方法]SLE,健常対象各14名より採血し,ELISAによる血清IL-27濃度の測定,RT-PCRによるPBMCのWSX-1発現,プレートコートしたCD3/CD28刺激IL-27添加によるin vitro CD4+CD25T細胞培養上清中のIL-10, IL-21, IL-6, TGFbをELISA法にて測定し,IL-27添加によるSTAT1, STAT3のリン酸化をwestern blot法により測定した.
    [結果]SLEにおいて血中のIL-27濃度が健常者と比し有意に増加し,PBMCにおいてWSX-1 mRNAの発現が健常者と比し有意に低下していた.CD4+ T細胞ではリコンビナントIL-27添加によりTh1サイトカインの産生増強,IL-17産生抑制,STAT1, STAT3が活性化された.
    [考察]SLEでは活性化されたCD4+CD25T細胞にIL-27の刺激が加わることによりSTAT1, STAT3が活性化されるが,レセプターであるWSX1の発現低下によりそのシグナルが伝わらずIL-10産生が低下し病態形成に寄与していることが想定された.
  • 志賀 俊彦, 湯本 妙子, 井上 明日圭, 田崎 智江美, 李 進海, 岩永 智陽, 朝戸 佳世, 矢野 智洋, 樋野 尚一, 岸本 和也, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 341a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【症例】37歳,男性.2012年1月に発熱,咽頭痛が出現し,その後手指の関節痛,体幹部の皮疹も生じ始め他院に入院となった.抗生剤治療を施行されたが病状に改善認めなかったため不明熱の精査目的で当科へ転院となった.入院時より急性腎不全,急性肝不全などの多臓器不全に加えてDICを併発し,血球減少,フェリチン・LDH・可溶性IL-2Rの増加を認めた.骨髄穿刺で血球貪食像を確認したため血球貪食症候群(HPS)と診断し,ステロイドパルス療法(mPSL pulse: 1 g×3日間)を施行した.治療開始前の血清インターロイキン(IL)-6は124 pg/mlと高値で,さらに血清IL-18は354000 pg/mlと異常高値を呈していた.その後病状は増悪傾向にあったため血漿交換(PE×3日間)を施行し,後療法としてプレドニゾロン:1 mg/kg/dayに加えシクロフォスファミド大量静注療法(IVCY)の併用を開始した.リウマトイド因子,抗核抗体は陰性で,悪性腫瘍や感染症も否定的だったことから成人発症Still病(AOSD)と診断した.1度の病状再燃はあったが経過は良好で,退院前の血清IL-18は370 pg/mlまで改善した.【考察】これまでHPS合併のAOSD重症例に対してはステロイド単剤のみの病状抑制はしばしば困難で,免疫抑制剤の併用や血漿交換などの集学的治療が必要であると報告されており本症例でもそれらが有効であった.またAOSDの病態に関して血清IL-18などの炎症性サイトカインの推移もふまえて検討し,文献的考察を加えて報告する.
  • 千葉 麻子, 田村 直人, 松平 蘭, 髙崎 芳成, 山村 隆, 三宅 幸子
    2012 年 35 巻 4 号 p. 341b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    背景・目的:Mucosal-associated invariant T (MAIT)細胞はMHC Class Ib分子に属するMajor histocompatibility molecule related 1 (MR1)分子に拘束され,T細胞受容体(TCR)にインバリアントなα鎖(マウスVα19,ヒトVα7.2)を発現している.ヒトMAIT細胞は末梢血T細胞の約5%を占め感染免疫や自己免疫に関与することが示唆されているが,そのメカニズムや認識する抗原については不明な点が多い.今回ヒトMAIT細胞の活性化機序について解析を行った.
    方法:健常人末梢血単核球にTCR刺激や様々な種類のサイトカインによる刺激を加え,細胞内染色により産生サイトカインを解析し,CellTrace試薬を用いて細胞増殖能を調べた.セルソータ—で単離したMAIT細胞にTCR刺激を加え活性化を検証した.
    結果:末梢血単核球にTCR刺激や炎症性サイトカインの刺激を加えた場合,MAIT細胞は活性化し増殖した.しかし単離したMAIT細胞はTCR刺激で活性化せず,増殖はほとんど見られなかった.MAIT細胞の増殖はIFNαやIL-10の存在下で抑制された.
    考察:MAIT細胞の活性化は,TCRを介した抗原刺激だけでなくサイトカインに影響を受けることが考えられた.
  • 村上 孝作, 田中 真生, 臼井 崇, 川端 大介, 塩見 葵, 井口 美季子, 清水 正和, 吉藤 元, 湯川 尚一郎, 大村 浩一郎, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 342a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      ホリスタチン関連タンパク質(FRP)は分泌タンパクであり,TGF-βスーパーファミリータンパクとの相互作用により臓器の分化形成に関わる.またFRPは関節リウマチの自己抗原であり,マウス実験関節炎の抑制あるいは促進作用,ラット実験心移植の生着改善作用などの報告もある.しかし,FRPは炎症の促進・抑制のいずれに働くものであるか一定せず,また分子レベルでの作用機序も不明であった.これまでの研究で,FRPがCD14と結合する知見が得られていたため,FRPがCD14とTLR4を介して自然免疫反応を惹起する可能性を検討した.ヒトFRPはヒト培養関節滑膜細胞のIL-6産生を促進し,マウスFRPはマウス線維芽細胞株のIL-6産生を促進した.マウス関節炎モデルでは,マウスFRPを高発現させたT細胞を移入すると関節炎は増悪した.さらに,これらFRPの作用には種特異性が存在することも示された.野生型マウス由来の脾細胞では,添加したマウスFRPの濃度依存性にIL-6産生が増加するのに対し,TLR4ノックアウトマウス由来の脾細胞では無反応であった.また,293細胞はCD14,MD2,TLR4を発現させた場合のみFRP濃度依存性にIL-8産生が増加した.さらに,FRPは,リポ多糖(LPS)と同様にTLR4シグナルのトレランスを誘導した.従って,免疫系におけるFRPの作用は,自然免疫系では炎症反応を促進し,この場合の受容体がCD14を介したTLR4であることが明らかとなった.
  • 岩崎 由希子, 藤尾 圭志, 岡村 僚久, 柳井 敦, 住友 秀次, 庄田 宏文, 田村 智彦, 吉田 裕樹, 山本 一彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 342b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      IL-10は抗炎症性サイトカインであり,IL-27はSTAT1, STAT3依存性にIL-10の産生を誘導する.また,CD4+T細胞におけるIL-10産生において,Blimp-1(遺伝子名Prdm1)も重要な働きをもつことが知られている.
      既に我々はT細胞にanergyを誘導する働きをもつ転写因子Egr-2のCD4+T細胞への強制発現により,IL-10産生が誘導されることを報告した.今回我々はIL-27によるIL-10産生誘導におけるEgr-2の関与を検討した.CD4+ナイーブT細胞のTCR刺激時にIL-27を添加するとEgr-2, Prdm1, IL-10の発現亢進が認められた.Egr-2欠損CD4+ナイーブT細胞を用いた場合,Prdm1及びIL-10のIL-27 刺激による誘導は認められなかった.更に,IL-27受容体WSX1を欠損したCD4+ナイーブT細胞では,IL-27刺激によるEgr-2の誘導が消失した.Luciferase assayによりEgr-2の誘導がPrdm1プロモーターの活性化に繋がり,ChIP assayの結果Egr-2がPrdm1のプロモーター領域に結合することが明らかとなった.また,STAT1ノックアウトマウス並びにCD4特異的STAT3コンディショナルノックアウトマウス由来のCD4+ナイーブT細胞においては,IL-27刺激によるEgr-2の誘導は認められず,双方のEgr-2誘導への関与が示唆された.これらの結果,Egr-2とBlimp-1を介したIL-27シグナル伝達経路は,ナイーブT細胞からのIL-10産生に重要であることが示された.Egr-2を発現するCD4陽性CD5陰性LAG3陽性制御性T細胞サブセットとの関連も含めて考察する.
  • 有馬 和彦, 井田 弘明, 金澤 伸雄, 吉浦 孝一郎
    2012 年 35 巻 4 号 p. 343a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】中條—西村症候群は,昭和14年中條博士が報告した,明らかな誘因のない全身性炎症をきたす疾患である.本疾患はプロテアソーム機能低下症であった.プロテアソームは,ポリユビキチン化蛋白質を選択的差別的に分解する.皮膚生検ではポリユビキチン化蛋白質の蓄積と単球の浸潤を認める.MCP-1は重要な単球走化性因子である.AP-1は,c-Fos, c-Jun, ATF, JDPファミリーが構成する,炎症性サイトカインの転写因子である.
    【目的】中條—西村症候群患者の炎症機序の解明
    【方法】健常者と患者由来培養細胞のMCP-1発現を定量PCRとELISAで比較した.正常者由来培養細胞をプロテアソーム阻害剤処理後に経時的にc-Jun・c-Fos・FosB・FosL1の発現を定量した.
    【結果】患者細胞では健常者細胞よりもMCP-1 mRNA発現量と培養上清中への蛋白質分泌量が増加していた.プロテアソーム阻害によりAP-1構成蛋白の発現量が上昇した.
    【考察】本疾患皮膚病変での皮膚線維芽細胞が産生するMCP-1は単球浸潤に関与している可能性が示唆される.プロテアソームの機能低下は,AP-1複合体構成蛋白の発現量に影響することで,サイトカインの遺伝子発現制御に関与していることが考えられる.
    【結論】失われて初めてわかるプロテアソームの正常機能を理解することは,本邦特有の自己炎症症候群の新たな治療法開発のみならず,炎症を呈する他の疾患制御戦略の新展開に貢献出来ると期待される.
  • 木村 直樹, 中里 洋子, 高村 聡人, 平田 真哉, 宮坂 信之, 上阪 等
    2012 年 35 巻 4 号 p. 343b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      多発性筋炎の病態においてCD8陽性T細胞の重要性が示唆されているが,その動物モデルであるC蛋白誘導性筋炎(CIM)においてもCD8陽性T細胞による筋傷害が主要な病態である.しかし,自己反応性CD8陽性T細胞の活性化だけでは筋炎は発症せず,同時に標的筋組織の自然免疫が活性化している必要がある.即ち,CIM養子移入の際,レシピエントの足底に完全フロイントアジュバント(CFA)を注射すると同側の筋には筋炎が起きるが,不完全フロイントアジュバントを注射した対側には筋炎を誘導できない.
      ヒト筋炎において筋局所の自然免疫活性化に寄与する因子として,我々は筋壊死後の再生に着目した.筋再生の過程で筋組織内に存在する筋原性幹細胞が増殖・活性化し再生筋線維へと分化するが,これらが様々なケモカインを分泌することが知られている.再生筋線維が分泌するケモカインが自己反応性T細胞を標的組織へ遊走させ,筋炎発症に寄与するという仮説の下,C蛋白を免疫したマウスのCFA非投与側の後肢筋に薬剤性筋壊死を起こし,筋炎が誘導できるか解析した.さらに,再生筋線維が活性化T細胞の遊走に関与するケモカインを発現するか検証した.
      結果,筋壊死・再生が筋炎を誘発できた.また,再生筋線維がCCL8とCXCL10を発現し,CIM病変部に浸潤する細胞はこれらの受容体を発現していた.即ち,再生筋線維が自己反応性T細胞の局所への遊走を介し,自己免疫性筋炎に関与する可能性が示唆された.
  • 道下 和也, 川畑 仁人, 神崎 健仁, 赤平 理紗, 江里 俊樹, 山本 一彦
    2012 年 35 巻 4 号 p. 344a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    背景
    自己免疫疾患の特徴に自己抗体の産生がありRAやSLEなど病態形成に深く関わる疾患も多い.このためB細胞除去は自己免疫性疾患の治療に効果的であると考えられる.実際に,抗CD20抗体であるリツキサンはB細胞除去によってヒトRAなどに効果があるが,日和見感染やB肝炎の再活性化などの副作用のリスクもあり選択的自己反応性B細胞標的とする治療が望まれる.
    目的
    自己免疫性疾患での非特異的な免疫抑制による病原性B細胞の除去の副作用を最小限にするため,修飾自己抗原を利用して,コラーゲン誘導関節炎マウスにおけるB細胞の選択的除去療法の開発と分析を行った.
    方法
    関節炎惹起性シトルリン化CII epitopeをテトラマー化しトキシンを付与したものを作成し,初回免疫後のDBA/1Jマウスに2度投与し,追加免疫後の血清抗体価と関節炎の評価を行った.
    結果
    抗シトルリン化CII epitope抗体価は低くなり,コントロール群(PBS投与群)に比べテトラマー投与群では関節炎発症率が有意に低くなった.総IgG価と抗CII抗体価では有意差は見られなかった.
    結論
    毒性を付加したペプチドテトラマーにより選択的に自己反応性B細胞が除去され全般的な免疫抑制を起こすことなく関節炎の改善を認めた.この結果より,ヒトの自己免疫性疾患への応用が可能であり疾患治療の新しい戦略が見込まれる.
  • 相澤 志保子, 早川 智
    2012 年 35 巻 4 号 p. 344b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】原因不明の不育症には免疫の関与が推定され,ステロイドや免疫グロブリン,抗サイトカイン療法が有効とする報告もあるが,エビデンスは確立していない.我々はマウスモデルを用いて,アレルギーや自己免疫性疾患に対し有効性が報告されている寄生虫由来免疫調節物質ならびに不育症患者に処方されることの多い漢方薬の効果と作用機序を検討した.
    【方法】施設内動物実験委員会の承認を得て,犬糸状虫由来のリコンビナントタンパク(rDiAg)を6週齢のCBA/Jメスマウスに投与した.漢方薬の検討では,0.5%当帰芍薬散または0.7%柴苓湯加飼料,対照群には無添加飼料を自由摂取させた.DBA/2Jオスマウスと交配し妊娠7日もしくは14日に解剖し免疫学的解析を行った.
    【成績】PBS群の流産率42.9%に対して,rDiAg投与群では11.1%と改善した.また,対照飼料群43.4%に対して当芍群は52.3%,柴苓湯群は14.6%と後者のみ有意に治療効果がみられた.rDiAg投与群では母獣血清中のIL-4, IL-23, TNF-αが有意に低下したが,漢方薬投与群においては一定の傾向を認めなかった.
    【結論】安全性,メカニズムなどさらに検討が必要であるが,rDiAgが原因不明の不育症における新たな治療法となる可能性がある.また,今回の実験系では柴苓湯が有効であったが,メカニズムについては異なった機序を介する可能性がある.
  • 伊藤 直香, 下条 直樹, 藤澤 隆夫, 岩田 力
    2012 年 35 巻 4 号 p. 345a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】厚労科研「食物アレルギーにおける経口免疫療法の確立と治癒メカニズムの解明に関する研究」(研究代表者 岩田力)による経口免疫療法多施設ランダム化比較対照試験(RCT)の経過について報告する.【方法】対象は二重盲検食物負荷試験にて確定診断され,症状誘発閾値が卵白換算4 g以下であった5-15歳の鶏卵アレルギーの児.治療群,対照群(除去食群)にランダム化割付し,治療群は閾値以下の量から卵白を毎日3-5回漸増摂取,鶏卵1個分60 gまで増量し,以後維持療法を継続した.割付3ヵ月後の負荷試験にて治療群と対照群を比較,その後,対照群も本療法を開始.両群で本療法前後の臨床的,免疫学的変化を検討した.【結果】9施設より45症例(平均7.5歳,閾値中央値0.8 g)が進行中.割付3ヵ月後の治療群と対照群の比較では,治療群のみで,有意な症状誘発閾値の上昇,特異的IgG, IgG4, IgAの上昇,皮膚反応の低下,好塩基球活性化反応の低下,特異的IgEの低下を認めた.本療法により36例(84%)が治療開始後数週間で目標量の60 gまで到達した.治療中の副反応により5例が中止し,39例は維持療法を継続中である.当日は,その後の臨床的,免疫学的変化を検討した結果も加えて報告する.
  • Tadao Okamoto, Yumiko Wada, Tim Bourne, Gianluca Fossati, Andrew Nesbi ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 345b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Certolizumab Pegol(CZP)は,関節リウマチに対する日本の臨床試験において,投与開始1週後から有効性を発現することが示された新規TNF阻害薬である.CZPは,Polyethylene glycol (PEG)化,Fc-free,一価であり,特徴的な構造を有している.なお,Fc-freeであるため,CZPは抗体依存性細胞傷害活性および補体依存性細胞傷害活性を示さない.
      今回,in vitroでの各種生物活性について,CZPと従来型TNF阻害薬であるinfliximab (IFX), adalimumab (ADA), golimumab (GLM)およびetanercept (ETA)と比較検討した.
      TNF-α中和活性の強さは,ETA>CZP>GLM>ADA>IFXであった.LPS刺激によるIL-1β産生抑制活性の強さは,CZP>GLM≒ADA>IFXであり,ETAによる抑制は完全でなかった.CZP以外のTNF阻害薬は,単球およびリンパ球に対し同程度にアポトーシスを誘導したが,CZPは全く誘導しなかった.
      以上より,in vitroでの各種生物活性において,CZPは従来型TNF阻害薬と共通の生物活性を示す一方,臨床的関連性は明確ではないが,従来型TNF阻害薬とは異なる興味深い生物活性を示すことが明らかになった.
  • Tadao Okamoto, Yumiko Wada, Tim Bourne, Gianluca Fossati, Alistair Hen ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 346a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    新規TNF阻害薬Certolizumab Pegol(CZP)の3つの構造的特徴(Polyethylene glycol: PEG)化,Fc-free,一価)に基づく生物学的機能について検討した.
    【PEG化】
    ・PEGの炎症組織への集積性に及ぼす影響:Adalimumab(ADA), infliximab(IFX)と比べ,CZPはコラーゲン関節炎モデルの炎症部位へ,速やかに,有意に高く,持続的に集積した.このCZPの集積性の高さは,関節炎の重症度と相関した.
    ・PEGの肥満細胞からの脱顆粒に及ぼす影響:Compound 48/80刺激による肥満細胞からの脱顆粒に対し,投与部位での想定濃度で,PEG及びCZPは有意に強い抑制効果を示した.
    【Fc-free】
    Fc-freeの胎盤通過に及ぼす影響:妊娠ラットに完全型抗体とPEG化Fab‘を投与した.胎児への移行性は,完全型抗体(15.2%)に比べ,PEG化Fab‘(0.12%)で非常に低かった.
    【一価】
    一価の免疫複合体形成に及ぼす影響:二価のIFXとADAは,TNF-αと大きい複合体を形成した.この大きい複合体は好中球の脱顆粒やO2産生を引き起こした.一方,一価のCZPはTNF-αと小さい複合体を形成したが,これは好中球の脱顆粒やO2産生を殆ど起こさなかった.
    以上より,CZPの3つの構造的特徴は,従来型TNF阻害薬とは異なる生物学的特長を賦与している可能性が示された.
  • 久保 智史, 山岡 邦宏, 岩田 慈, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 346b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】サイトカインは細胞内においてJAKとその下流で転写因子Statを活性化する.JAK阻害薬tofacitinib(tofa)は関節リウマチを対象とした臨床試験において高い治療効果が報告され,新たな免疫修飾薬として注目されている.しかしながら抗原提示細胞に対するtofaの作用は未知であり,ヒトの樹状細胞(DC)に対するtofaの作用について検討した.
    【方法】ヒト単球由来DC(MoDC)とヒト末梢血由来CD4+T細胞を用い,MoDCの成熟化,T cell刺激能を検討した.
    【結果】tofaはリポポリサッカライド刺激によるMoDCの共刺激分子(CD80/CD86)の発現と炎症性サイトカイン(IL-1β, TNFα, IL-6)産生を濃度依存的に抑制した.この効果は他のキナーゼ阻害薬ではみられなかった.一方で,tofaはMoDC上のMHC-class II発現には影響を与えなかった.また,tofaはMoDCからのTGF-β産生には影響を与えず,免疫寛容を誘導するIndoleamine 2,3-Dioxygenase(IDO)発現を増加させた.さらにtofaにて前処置を行ったDCとCD4+T細胞の共培養によりT細胞の増殖とIFNγ産生が抑制された.
    【結語】我々はJAK阻害薬であるtofaのT細胞を介した滑膜炎の改善を報告してきたが,今回,tofaは自然免疫の主役であるDCに直接作用し,細胞表面分子やサイトカイン産生を抑制するだけでなく,DCを介したT細胞増殖を抑制し,免疫寛容を導く可能性が示された.
  • 西山 信吾, 松尾 崇史, 辻 英輝, 吉藤 元, 山川 範之, 中嶋 蘭, 橋本 求, 井村 嘉孝, 湯川 尚一郎, 大村 浩一郎, 藤井 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 347a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【症例】30歳女性.【主訴】口渇,多飲,多尿.【現病歴】1996年にGranulomatosis with polyangiitis(GPA)発症.その後眼窩,尿道,肺病変も認めた.プレドニゾロン(PSL)大量療法,シクロホスファミドで治療されたが,出血性膀胱炎が出現した.その後再燃を繰り返し,ステロイド増量に加えてメトトレキサート,シクロスポリン,インフリキシマブなどが用いられたが,長期寛解維持が困難であった.2009年にリツキシマブ(600 mg×4回)を投与し,血中B細胞の消失とともに上気道・肺病変は寛解した.しかし2011年12月よりPR3-ANCAの上昇とともに眼窩・上気道・肺病変が再燃した.PSLを増量(9.5→15 mg/日)後PR3-ANCAは低下したが,翌年1月に口渇,多飲,多尿が出現,尿量は6000 ml/日を超え,臨床症状から尿崩症が疑われた.入院後,水制限試験.バゾプレシン負荷試験の結果より,中枢性尿崩症と診断された.頭部MRIで下垂体腫大を認め,原疾患による尿崩症としてPSLを増量(50 mg/日)し,リツキシマブを再投与した.その後下垂体,肺陰影の縮小を認めるも尿量には十分な改善なく,デスモプレシン点鼻薬の開始・継続が必要であった.【考察】GPAに合併した尿崩症はまれであるが難治性である.GPAに合併した尿崩症の病態や治療に関し,文献的考察も含めて報告する.
  • 竹内 孝男, 早石 雅宥, 葉山 悦伸, 早石 泰久, 濱田 泰彦, 中川 一刀, 堀木 篤, 山﨑 惠司, 曽我 良平, 早 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 347b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      インフリキシマブ(IFX)投与中に胃癌を発症したRAの2症例を経験した.[症例1]女性.64歳でRA発症.2006年2月(65歳)よりIFXを開始.2011年1月に胃部不快感を訴えられ,諸検査を施行.胃癌の合併を確診(poorly differentiated type adenocarcinoma: signet ring cell carcinoma)し,内視鏡的胃切除術を施行.IFX投与続行.[症例2]男性.55歳でRA発症.2008年8月(65歳)よりIFXを開始.2012年4月に胃重感,食欲不振,時に嘔吐を訴えられ,諸検査施行.胃癌の合併を確診(poorly differentiated type adenocarcinoma: signet ring cell carcinoma)し,胃空腸吻合術を施行.肝転移も認めた.IFX投与を中止.[考察]IFX市販後調査では,胃癌発症率の増加は報告されていない.生物学的製剤投与後長期の悪性腫瘍発症率についてのデータは現在針谷正祥教授らによるSECURE研究によって進められつつある.当院での2例は,IFXの投与4~5年目に,同じtypeの胃癌を発症したことで興味深く,若干の文献的考察を行ってみたい.なお,生物学的製剤投与中のRA症例で持続的な上部消化器症状を訴えられた時には,上部消化管内視鏡および胃生検を行う必要があることを強調したい.
  • 杉崎 良親, 相川 崇史, 石原 義恕, 安田 勝彦, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 348a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】
    これまで生物学的製剤使用中の有害事象症例報告は多数なされており,特に肺においては感染症を筆頭に多くの有害事象症例が報告されている.今回,我々は当院で生物学的製剤投与中に重篤な肺有害事象を2例相次いで経験したため,文献的考察を含めてこれを報告する.
    【症例1】
    60歳女性.平成13年RA発症.平成22年よりMTX 8 mg/週・PSL 3 mg/日内服継続しながらエタネルセプト導入.外来ではCRP 0.3~0.5 mg/dl,疼痛関節・腫脹関節0で経過していたが,平成23年8月外来定期受診時CRP: 5.4 mg/dlと上昇.胸部X線上右肺野に浸潤影認めたため自覚症状ないものの肺炎を疑い緊急入院.直後より抗生剤投与も効果なく疾患鑑別目的に気管支鏡施行した所リンパ球優位の所見あり特発性器質化肺炎(COP)と診断,PSL 30 mg投与で画像所見の改善を認め現在加療継続中.
    【症例2】57歳男性.平成19年4月RA発症.発症後よりMTX 6 mg/週投与も2次無効のため翌年12月よりアダリムマブ導入.以降2年以上にわたり臨床的寛解状態で経過していたが,平成23年8月頃より右肩痛発症.血清学的所見上も異常なく経過観察されていたが,10月血液検査上CRP上昇認めたため胸部X線施行したところ右胸水所見あり.胸腔穿刺上淡血性胸水.穿刺後CTで右下肺に腫瘤影認め肺悪性腫瘍疑いで専門施設転院となり肺小細胞癌と診断され現在加療中.
  • 樋野 尚一, 李 進海, 田崎 知江美, 井上 明日圭, 湯本 妙子, 岩永 智陽, 志賀 俊彦, 朝戸 佳世, 矢野 智洋, 岸本 和也, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 348b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      症例1は36歳,女性.平成20年10月,シェーグレン症候群(SjS)と診断され通院中であった.平成21年8月,下腿浮腫と胸水貯留が出現し,血清アルブミン(Alb)0.8 g/dlと低下を認めた.99 mTc-HSAシンチグラフィーで結腸内にRI分布を認め,便中α1アンチトリプシンクリアランス236 ml/日と上昇が認められ,PLGEと診断した.症例2は65歳,女性.平成19年,人間ドッグで血清Alb 2.8 g/dlと低下を指摘されていた.平成23年10月より下腿浮腫が増悪し,血清Alb 1.0 g/dlと低下を認めた.99 mTc-HSAシンチグラフィーで空腸内にRI分布が認められ,便中α1アンチトリプシンクリアランス232 ml/日と上昇を認めた.ダブルバルーン小腸内視鏡で肉眼的に異常は認めず,空腸ランダム生検で間質浮腫,毛細管拡張,リンパ管拡張が認められた.抗SS-A/Ro抗体陽性,シルマーテスト陽性,口唇生検からSjSに合併したPLGEと診断した.症例3は,58歳男性.平成23年9月,健診で血清Alb 3.5 g/dlと低下を指摘された.その後,低アルブミン血症が増悪し,下腿浮腫や腹水貯留が認められた.抗SS-A/Ro抗体および抗SS-B/La抗体陽性,シルマーテスト陽性,99 mTc-HSAシンチグラフィーで小腸と結腸内へRI分布が認められ,SjSに合併したPLGEと診断した.PLGEは消化管より血清蛋白が漏出し低蛋白血症が生じる症候群で,様々な疾患が原因となる.SjSに合併したPLGEの症例報告は稀であるが,今回我々は3例を経験し文献的考察を含め報告する.
  • 石津 桃, 角田 慎一郎, 古川 哲也, 吉川 卓宏, 藤田 計行, 片嶋 有希, 佐藤 ちえり, 斉藤 篤史, 西岡 亜紀, 関口 昌弘, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 349a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は39歳,女性.1993年SLE発症しPSL 30 mg/dayより開始.以降,PSL 10 mgまで漸減し外来診察されていた.2012年2月(妊娠24週 0経妊0経産),尿蛋白定性(3+),高血圧,下腿浮腫を認め妊娠高血圧症のため当院産科に入院となった.入院時,1日尿蛋白1.6 gであったが,安静,腎炎食のみで,1日尿蛋白1g程度に減少したため退院となった.その後,妊娠34週に心窩部痛を自覚し来院,AST 324, ALT 156, PLT 6.9万などの血液検査値異常を認めHELLP症候群と診断,緊急帝王切開術を施行し児(1722 g, Apgar 6/8)を娩出した.児を娩出後も高血圧が持続,1日尿蛋白3.2g,抗dsDNA抗体高値,補体C3 46, C4 9, CH50 15.1と低下を認めたためSLEの増悪と診断し,血漿交換療法,免疫吸着療法,メチルプレドニゾロンパルス(mPSL 500 mg/day,3日間投与,後療法PSL 30 mg/day)を施行した.さらに,アンジオテンシン・受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬の併用で血圧は安定し,血液・尿検査所見,全身状態も改善した.【考察】SLE合併妊娠は,高血圧症,腎症,SLE再燃などのリスクがあるとされ,また,HELLP症候群の発症も報告されているがその病態についての報告は少ない.本症例では,血性ADAMTS13の活性の低下はなく,VW因子量の増加を認めたため,非定型血栓性微小血管障害をおこしたと考えられる.
  • 山口 眞由子, 孫 瑛洙, 堀田 雅章, 田中 晶大, 嶋元 佳子, 西澤 徹, 安室 秀樹, 宮地 理彦, 尾崎 吉郎, 伊藤 量基, 野 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 349b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      72歳,男性.平成23年8月上旬より手関節,足関節などに急性多関節痛出現.同年10月より38度後半の発熱が持続し近医受診.抗核抗体およびRF陽性にて膠原病疑いのもと同年10月当科紹介受診.左頚部の腫脹発赤と倦怠感みられ,精査入院.頚部腫瘤が急速進行性に増悪し,CTにて多発性リンパ節腫大(両側頚部・耳下腺・顎下腺周囲・縦隔・腹腔動脈周囲)を認めた.その後汎血球減少,LDH1565IU/l, sIL-2R 3960 u/ml,意識障害を認め,DIC・悪性リンパ腫疑いにて当院血液内科へ転科.リンパ生検にて,壊死性リンパ節所見を認め菊池病と診断.血球貪食症候群の中枢神経病変による意識障害と考えステロイド髄腔内注射,ステロイド内服(1 mg/kg)開始し速やかに改善.数日後よりステロイド性せん妄と考えられる精神症状を認め,ステロイドは5日間で中止したが,リンパ節腫大は経時的に縮小し全身状態も改善したために退院.病状安定していたが,平成24年3月より発熱,全身の皮膚紅斑出現.血液検査にて汎血球減少・抗ds-DNA抗体陽性所見および関節痛などより全身性エリテマトーデスと診断.ステロイド加療にて速やかに治療反応している.意識障害を併発した菊池病の診断後に全身性エリテマトーデスを発症した症例を経験した.文献的考察を加え報告する.
  • 関口 昌弘, 北野 将康, 松井 聖, 橋本 英雄, 並木 充夫, 島岡 康則, 前田 恵治, 中谷 晃之, 吉井 一郎, 柏木 聡, 南平 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 350a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】RA患者に対する1st-biologicsとしてのABTの臨床成績を多施設共同で検討する.
    【方法】関西地区を中心に35施設が参加するABROAD試験に登録された生物製剤未投与RA患者160例のうち24週以上経過した43例について有効性を評価した.【結果】SDAIの0,4,12,24週の平均値の推移は27.1→16.3→12.4→10.1と4週時で有意に低下し,以後経時的に改善した.CRP, MMP-3の0, 4, 12, 24週の平均値の推移はCRP (2.04→1.04→0.96→0.9),MMP-3 (217.1→156.7→130.0→113.2)といずれも4週時において有意に低下した.24週時点でSDAI, DAS28-CRPに基づく低疾患活動性(LDA),臨床的寛解(CR)に到達した症例はSDAI (LDA: 61.7%,CR: 11.9%), DAS28-CRP (LDA: 53.5%, CR:39.5%)であった.さらに高炎症反応群(治療前CRP≧2 mg/dl)および低炎症反応群(治療前CRP<2 mg/dl)における24週時点のSDAIによる低疾患活動性の達成割合は両群とも64.3%に達し,治療前の炎症反応が高い症例でも優れた有効性を認めた.またステロイドの平均投与量の推移は0,12,24週で3.27→2.73→2.07 mg(PSL換算)と12週以降,有意に投与量が減少した.【結語】1st-biologicsとしてのABTは高い有効性が示された.投与4週時点で有意な疾患活動性の改善が認められたことより,1st-biologicsで使用すれば効果発現の時期もTNF阻害剤と遜色がないことが示唆された.
  • 河本 敏雄, 蛭間 香織, 松下 雅和, 李 鍾碩, 天野 浩文, 山路 健, 田村 直人, 髙崎 芳成
    2012 年 35 巻 4 号 p. 350b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【症例】28歳女性
    【現病歴】2010年12月頃より微熱,頭痛が出現し,市販薬で経過観察していた.その後,2011年1月より両側眼瞼浮腫が出現し,徐々に増悪していた.他院で血液検査の異常を指摘されて,2011年6月当科紹介受診となった.関節炎,白血球・血小板減少,抗カルジオリピン抗体陽性,抗核抗体陽性よりSLEと診断した.
    【入院後経過】入院時,両眼瞼浮腫が著明であり,血中アルブミン値は1.8 g/dlと著明に低下していた.CT上で胸腹水貯留を認めた.蛋白漏出シンチグラムフィーを施行し,蛋白漏出胃腸症と診断した.また,右側優位の胸水は,滲出性であり,SLEに伴う漿膜炎と考えた.プレドニゾロン(PSL)40 m/日投与するも効果不十分であり,ステロイドパルス療法を施行後,眼瞼浮腫や全身の浮腫,また胸腹水は消失し,蛋白漏出シンチグラフィーで異常集積の消失を認めた.その後,アザチオプリンを追加投与しながらPSLを漸減し,血清中の補体は上昇傾向を認め,退院となった.
    【考察】本症例は,初発症状として著明な眼瞼浮腫を認め,腎症は認めず,蛋白漏出性胃腸症を伴うSLEの初発症状と考えられた.当科で認めた蛋白漏出性胃腸症は過去20年で8症例あり,6例がSLE,1例がMCTD,1例がSjSであった.文献的な考察を含めて,報告する.
  • 杉本 郁, 村山 豪, 山田 理沙, 根本 卓也, 安藤 誠一郎, 河本 敏雄, 草生 真規雄, 小笠原 倫大, 山路 健, 髙 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 351a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    (目的)自己免疫性血小板減少症AIPはSLEの合併症状としてしばしば併発し,重症例では深部出血のリスクを伴うため速やかに改善を図る必要がある.血漿交換療法はSLEや他の自己免疫性疾患の治療に用いられるが,AIPに対する臨床効果については,これまでは奏効症例の報告が中心であり,治療効果については未確定な部分が大きい.今回我々はSLEに合併したAIPに対する血漿交換療法の治療効果について検討した.
    (方法)過去10年間に当院で加療されたSLE患者でAIPに因ると考えられる血小板減少症(≧10万/μL)を合併したSLEに対し,ステロイド療法と血漿交換療法にて加療された19例を対象に後ろ向きに検討した.
    全例で血小板表面IgG(PA-IgG)陽性で,経過中に抗リン脂質抗体症候群や血栓性血小板減少症の診断基準を満たした症例や,経過から薬剤性血小板減少症が疑われた症例等は除外された.導入時及び導入後1~2ヶ月の時点での血小板数等の検査所見や,ステロイド投与量などを評価した.
    (結果)9例で減少症の改善が認められステロイドの維持・減量が可能であった[有効群].10例でステロイドの増量や大量γグロブリン療法等の追加治療を必要とした[無効群].導入時血小板数・PA-IgG値や年齢など,両群間に有意差は認めなかったが,有効群では有意に抗リン脂質抗体が陽性であった(7/9 vs 1/10 p<0.05).特に抗リン脂質抗体陽性の自己免疫性血小板減少症に対する血漿交換療法の有用性が示唆された.
  • 河野 典子, 吉村 英晃, 堀田 雅章, 田中 晶大, 嶋元 佳子, 安室 秀樹, 西澤 徹, 孫 瑛洙, 尾崎 吉郎, 伊藤 量基, 野村 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 351b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【症例】69歳,女性.以前より全身性エリテマトーデス(SLE)にて近医通院中の患者.プレドニゾロン(PSL)少量内服にて経過みられていたが,某年9月から内服自己中断していた.高度の全身倦怠感により,11月初旬に前医へ救急搬送された.高度貧血(Hb 2.0 g/dL)と血小板減少(2.3万/uL)を認め,当院へ転院となる.転院時には,他のSLEの各症状などに明らかな増悪は認めなかった.貧血は,直接Coombs試験陽性で不規則抗体が検出されたが,転院前及び転院後経過中に血液検査上,溶血所見は認めなかったこと,症状として黒色便の訴えや血液検査上の鉄欠乏あったため,消化管出血によるものと考えられ,輸血と保存的治療にて改善した.(患者希望で内視鏡的検索は未施行.)
      しかし血小板減少は,メチルプレドニゾロン(mPSL)パルス(1 g/body)を2回施行,PSL(1 mg/kg)投与にも反応認めず1.0万/uL以下で遷延し,ステロイド抵抗性であった.そのためロミプロスチムを1 μg/kgから開始し,3 μg/kgに漸増したところ,血小板値の回復を認めた.その後,5ヶ月で休薬としたが,血小板数は正常値を維持している.
    【考察】SLEに合併したステロイド不応性血小板減少症に対して,ロミプロスチムの有効性を確認できた症例を経験した.また,同剤の休薬でも病状が安定していることもあり,SLEにおける治療選択となりうることが示唆される.
  • 吉岡 耕平, 西小森 隆太, 日衛嶋 栄太郎, 阿部 純也, 酒井 秀政, 高岡 優貴, 井澤 和司, 河合 朋樹, 八角 高裕, 平家 俊 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 352a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      高IgD症候群(Hyperimmunogloblinemia D and periodic fever syndrome; HIDS)は,主に乳児期に発症し,繰り返す発熱に皮疹・腹部症状・関節症状等を伴う常染色体劣性の自己炎症症候群である.当院にてHIDS患者にアナキンラを投与した症例を経験したので報告する.11歳男児,生下時よりCRP上昇を伴う腹部膨満,哺乳不良,下痢など消化器症状,発熱を繰り返していた.4ヶ月時,左手関節,右肘関節に関節腫脹を認め,7ヶ月時からプレドニン内服を開始し,11ヶ月時からメソトレキセートを併用した.その後も発熱と消化器症状,関節症状の増悪を繰り返しシクロスポリン,セルセプト,タクロリムスなどを併用するが改善せず,5歳時に下肢関節症状の悪化により歩行不能となった.8歳時からトシリズマブ投与を開始するも関節症状の悪化のためプレドニン減量できず,持続する炎症の精査結果として尿中メバロン酸高値,メバロン酸キナーゼ活性低値を認め,またMVK遺伝子にてp.Gly326Argホモが同定されHIDSと診断された.胸部画像で間質性肺炎像を認めトシリズマブによる悪化も考慮され中止された.11歳時よりプレドニン内服に併用してアナキンラ投与を開始している.希少疾患であるHIDSに対する抗Il-1β療法の報告は少なく,本症例の臨床経過と共に治療の結果を併せて報告する.
  • 林 宏明, 笹岡 俊輔, 守田 吉孝, 藤本 亘
    2012 年 35 巻 4 号 p. 352b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      後天性表皮水疱症は表皮基底膜部に存在する・型コラーゲンに対する自己抗体によって発症する自己免疫性表皮下水疱症で古典型(機械的水疱型)と炎症型に大別される.既存治療に抵抗した古典型後天性表皮水疱症の2症例に対してリツキシマブ療法(375 mg/m2/2週×4回)を施行した.症例1:60歳男性.症例2:70歳男性.2症例とも口腔内にびらん,手指,足,肘などの外的刺激を受ける部位に水疱,びらんを認めた.リツキシマブ療法を施行したところ,抗・型コラーゲン抗体価(ELISA)は経時的に減少し,症例1では67週後,106.3から20.0に,症例2では37週後の時点で125.4から26.5にまで低下したが,2症例とも臨床症状の改善は非常に緩徐であった.リツキシマブ療法後の血清中のAPRIL濃度は大きな増減はなかったものの,BAFF濃度は症例1で1050 pg/mLから1768 pg/mLに,症例2で1763 pg/mLが3622 pg/mLにまで増加していた.2症例とも抗体価の低下に比べて臨床症状の改善が乏しいのは,古典型後天性表皮水疱症においては低力価の抗体が・型コラーゲンに強い親和性をもち,・型コラーゲンの表皮真皮接着能の回復が長期にわたり阻害されるためと考察した.自己免疫性水疱症に対するB細胞除去療法の至適投与プロトコールの確立に向けて,自験例の病因抗体や各種バイオマーカーの推移,臨床経過は非常に貴重と考えられ,詳細に報告する.
  • 久保 智史, 齋藤 和義, 平田 信太郎, 福與 俊介, 山岡 邦宏, 澤向 範文, 名和田 雅夫, 岩田 慈, 水野 泰志, 田中 良哉
    2012 年 35 巻 4 号 p. 353a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】CTLA4-IgであるABTは,抗原提示細胞上の共刺激分子と結合しT細胞活性化を障害する生物学的製剤である.本邦においても2010年からRAに対して使用可能となった.本研究では日本人RA患者50名を対象にABTの関節破壊抑制効果および臨床効果を評価した.
    【方法】対象は既存の抗リウマチ薬を使用してもコントロール不良のRA患者でABT開始し24週経過した50例.主要評価項目は関節破壊の指標である関節X線所見modified total Sharp score(mTSS)の年間進行度(ΔTSS).副次評価項目は疾患活動性(SDAI/DAS28),日常機能評価(HAQ)および臨床検査値の変化.
    【結果】患者背景:平均年齢62.0歳,平均罹病期間10.0年,bio naive 58.0%,メソトレキサート併用74.0%,ステロイド併用34.0%, SDAI 31.1, DAS28(ESR)5.8, mTSS 60.1, HAQ 1.5, CRP 2.1 mg/dl, ESR 53.1 mm/h, MMP-3 215.5 ng/ml
    (1)主要評価項目:ΔTSSは7.1から1.8へ有意に減少.76.0%が構造的寛解(ΔTSS<0.5)を達成
    (2)副次評価項目:継続率は80.0%, SDAI 14.5, DAS28(ESR)4.2, HAQ 1.3, CRP 0.9 mg/dl, ESR 43.0 mm/h, MMP-3 152.1 ng/mlと改善
    (3)ΔTSSに影響する予測因子としてCRPが抽出され,0週のCRP<1.5 mg/dlの群では88%で構造的寛解を達成した.
    【結語】ABTは本邦の日常診療においても良好な効果と安全性を持つことが示された.また,ABTは他の炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤に匹敵する関節破壊抑制効果を有すると考えられた.
  • 坪内 康則, 河野 正孝, 山本 相浩, 妹尾 高宏, 川人 豊
    2012 年 35 巻 4 号 p. 353b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】ループス腎炎に対するステロイド,免疫抑制剤併用療法は有用である.欧米では積極的に免疫抑制剤を併用しステロイドを早期から速いペースで減量するのが主流になりつつある.過去の本学会においてミゾリビンの短期使用成績を報告したが,今回281施設950例の市販後全例調査成績結果がまとまったので,自験例と合わせて3年間の長期使用成績について報告する.【方法】ステロイド,ミゾリビン併用のループス腎炎37例を対象とした.治療効果は有用度,尿蛋白,血清アルブミン,BUN,クレアチニン,抗dsDNA抗体,血清補体価,血球等で評価した.【結果】3年後継続症例は26例で継続率70%であった.有害事象,効果不十分による中止を3例ずつ認めたが重篤な有害事象はなかった.最初の1年間で各パラメーターの改善を認め,3年間概ね維持された.3年継続症例は全例有用であった.ステロイドは初期量の約半量に減量できた.【結論】活動性が高いループス腎炎では血球減少のため免疫抑制剤が使用困難な場合がある.ループス腎炎が若年者に多い疾患であることから,長期使用の影響も懸念される.ループス腎炎に対して保険適応がある免疫抑制剤はミゾリビンとタクロリムスのみである.ミゾリビンは新規合成系のIMPDHのみを阻害しリンパ球以外への影響が少ないことから骨髄抑制が少ない.また核酸内に取り込まれず動物実験で催腫瘍性を認めない.以上より長期使用に適した免疫抑制剤と考えられる.
  • 池田 圭吾, 平井 琢也, 蛭間 香織, 森本 真司, 髙崎 芳成, 関川 巖
    2012 年 35 巻 4 号 p. 354a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Disease modifying anti-rheumatoid drugs (DMARDs), mizoribine (MZR) monotherapy or combined therapy with methotrexate (MTX) and infliximab have been reported the efficacy in treatment of rheumatoid arthritis (RA). In the other hand, MZR intermittent therapy is inexpensive comparing with biologics. Based on those reports and economic benefit, we conducted a prospective study of twenty-three RA patients with an inadequate response to various combination therapies of MTX, other DMARDs and biologics. Although different amount of MTX and various combination of other DMARDs such as salazosulfapyridine, steroid and biologics (infliximab and etanercept) had been used, low-dose MZR (100 to 400 mg/week) synchronized MTX therapy significantly improved and achieved remission as measured by DAS28-CRP, DAS28-ESR, SDAI and CDAI at 24 weeks after loading. At week 48, remission was maintained and there were no adverse events through this study. Those preliminary results suggest that low-dose MZR synchronized MTX therapy is well tolerated and provides both clinical and economic benefits in patients with relapsing uncontrolled RA independently of concurrent medication including biologics.
  • 山本 元久, 清水 悠以, 苗代 康可, 田邉谷 徹也, 矢島 秀教, 須藤 豪太, 松井 美琴子, 鈴木 知佐子, 高橋 裕樹, 今井 浩 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 354b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】IgG4関連ミクリッツ病(IgG4-MD)の自然経過はまだ不明な点が多く,治療による唾液分泌量増加と関連する因子もわかっていない.そこで今回,IgG4-MDにおけるステロイド治療による唾液改善量と相関する因子を後向きに検討した.
    【方法】IgG4-MD26例のステロイド治療前後の唾液分泌量(唾液改善量)をサクソンテストで評価し,唾液改善量と発症から治療開始までの年数(罹患年数),治療前唾液分泌量との関連を解析した.次に治療開始前に生検された顎下腺組織における腺房,線維化病変,リンパ瀘胞の面積を計測し,各々の標本中の割合を算出し,唾液改善量,治療前唾液分泌量及び罹患年数との関連性を検討した.
    【結果】罹病期間が2年を経過すると,有意に唾液改善量が低下した(p<0.05).また罹病期間と治療前唾液分泌量,唾液改善量と治療前唾液分泌量に低い正の相関(共にr=0.23)を認めた.唾液改善量は各組織学的因子との間に相関がみられた(腺房:r=0.29,線維化:r=−0.23,リンパ瀘胞:r=−0.31).また各組織学的因子間にも互いに相関関係を認めた(腺房とリンパ瀘胞:r=−0.23,腺房と線維化:r=−0.42,線維化とリンパ瀘胞:r=0.30).
    【結論】IgG4-MDでは,治療介入が遅れると唾液分泌の改善効果が低下する可能性が示された.また唾液改善量は,治療開始前の唾液腺組織中の残存腺房,線維化,リンパ瀘胞の程度と関連していた.
  • 山内 尚文, 西里 卓次, 長町 康弘, 猪股 英俊, 村松 博士, 岡本 哲郎, 田中 信悟, 野澤 えり, 小山 隆三, 井原 康二
    2012 年 35 巻 4 号 p. 355a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は44歳男性.平成13年,潰瘍性大腸炎(UC)を発症(全結腸型,軽症),当院外来でmesalazineを投与されていた.平成21年1月より,両手関節の疼痛が出現,リウマチ因子,抗CCP抗体は陰性で,UC関連の関節炎と診断され,NSAIDと少量ステロイドの投与により症状は軽快していた.平成22年9月より,両手関節,両手指MP・PIP関節,両股関節,両肩関節に疼痛が出現した.腹部症状の増悪はなかった.下部消化管内視鏡検査では,直腸からS状結腸にかけて,血管透見像の消失,微細顆粒状の粘膜,膿性粘液の付着した多発性の小びらんが認められた.ステロイド増量でも症状の改善がみられないため,平成23年1月より,インフリキシマブ5 mg/kgを0,2,6週,以後8週間隔で投与した.投与9ヶ月後には,腫脹および圧痛関節はほぼ消失し,Clinical Activity Index (CAI)は,5から1に低下した.内視鏡所見(Matts分類)では,インフリキシマブ投与前後で,grade 3から1に改善していた.UCの腸管外合併症としての関節病変の頻度は,6-26%と報告されており,治療としては,これまでNSAIDやステロイドが用いられてきた.最近,従来の治療に抵抗性のUCに対してインフリキシマブの投与が認可され,その有効例が増加しているが,関節症状に対する報告例は少ない.本症例では,難治性の関節炎が著明に改善し,インフリキシマブが腸管病変のみならずUC関連関節炎に対しても有効であることが確認された.
  • 中村 浩士, 福田 聖子, 久保 誠
    2012 年 35 巻 4 号 p. 355b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      ウイルス性心筋炎に対するステロイド治療の是非に関して見解は定まっていない.最近の報告では副腎皮質ステロイドはグルココルチコイド受容体を介して心筋保護的に作用することが報告されている.そこでマウスウイルス性心筋炎モデルを用いてdexamethasoneの効果を詳細に検討した.3週令♂A/Jマウスにcoxsackievirus B3 (CVB3) 2×104 PFUを腹腔内投与し心筋炎を作成した.CVB3のみを投与した群(CVB3群),dexamethasone 0.15 ml/日を5日間投与した後,6日目にCVB3を投与した群(DEX-pre/CVB3群),CVB3を投与した後,dexamethasone 0.15 ml/日を5日間投与した群(DEX-post/CVB3群)の3群を作成した.14日後にマウスの心筋を採取し,左室内径,壁厚,ウイルス力価(TCID50)を測定し,それぞれ3群間を比較した.またCOX-2阻害実験として,NS-398のみを投与した群,NS-398とCVB3を投与した群(NS-398/CVB3),CVB3のみを投与した群,NS-398とCVB3を接種しdexamethasone連日投与した群(NS-398/DEX-pre/CVB3 & NS-398/DEX-post/CVB3)の生存分析を行った.CVB3群は,左室内径の拡張と壁厚の減少,ウイルス力価の上昇を認めたが,DEX-pre/CVB3, DEX-post/CVB3群においてはその変化は有意に抑制されていた.NS-398を用いた阻害実験ではウイルス接種と共にNS-398を使用した群の方が全例とも超早期に死亡したがdexamethasoneの早期投与により生存率を有意に改善した.以上より,マウスウイルス性心筋炎においてdexamethasone早期投与はウイルス性心筋炎の治療に有効であり,その一因としてCOX-2が心筋保護的に作用している可能性が示唆された.
  • 渡邊 直熙, 古田 隆久, 平山 謙二
    2012 年 35 巻 4 号 p. 356a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      マラリアとデング熱は血管内病原体による熱帯病である.我々はこれらの疾患とVEGFの関係を検討した.国内で三日熱マラリアまたは熱帯熱マラリアと診断された患者血清中のVEGFおよびsVEGFR-2の値は健常人に比べ有意な上昇をみた.ヒトマスト細胞株をマラリア原虫抗原で刺激するとVEGFの放出がみられた.同様の結果はネズミマラリアの実験でもみられ,マスト細胞由来VEGFによる感染防御が示唆された.デングウイルスによる疾患はその重症度からデング熱(DF),デング出血熱(DHF),そしてデングショック症候群(DSS)に分類される.とりわけ後二者には血管透過性亢進という共通点がある.ベトナムの感染児の血清中VEGF値はDHFで有意に増加し,DSSでさらに増加をみた.マスト細胞特異酵素トリプターゼとキマーゼの血清値は,DFでは健常児と同等だが,DHFとDSSでは有意な増加をみた.トリプターゼ,キマーゼ,VEGFの値はDHFとDSSで病態の回復に伴って正常化した.ヒトマスト細胞株を抗体存在下にデングウイルスで刺激するとVEGFの産生がみられた.マスト細胞の増殖や活性化に関与があるIL-9やIL-17もDHFとDSSで有意に高値を示した.以上のことから,デングウイルス感染による病態の重症化やマラリアではVEGFの関与があり,それはマスト細胞に由来することが示唆される.
  • 粟屋 昭
    2012 年 35 巻 4 号 p. 356b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      著者は2003年から全身性血管炎・KDはPID (Pollen-Induced Diseases)の1つであり,同時に起こるBCG接種跡腫脹の症状も勘案して,「花粉被曝→免疫→花粉再感作→遅延型過敏反応のゆっくりとした亢進→全身性血管炎発症」の過程を経る疾患であろうと提唱してきており(The Open Allergy Journal, 2012, 5, 1-10, Biomedicine & Pharmacotherapy, 58(2): 136-140, 2004),インフルエンザ流行期に発症が抑制される知見も報告してきた.KDのような重症の疾患に似た疾患また,軽症の疾患の中に,花粉飛散数と連動する疾患を掘り起こす検討を行ってきた.[方法・結果・考察]KD全国調査および東京都定点週報と花粉情報dataを解析した.2011年の花粉飛散数は過去最大であった2005年の93%であった.10年,11年のKD,EIおよび手足口病(HFMD)の患者数は,それぞれ89→124, 2929→3588, 6257→14076と,花粉増加に伴って増大した.09年,10年の発症年齢分布のpeakがKDは最も幼若の0~1歳児で,HFMDは1~2歳児であるのに対して,EIは4~5歳児であった.年間発症patternはEIがKDとほぼ同時期,年間2回の大小の山があるのに対して,HFMDはEIの発症減少期に,発症増大が始まった.2月,3月のEI患者数は4月の花粉飛散数と相関係数が大きかった.EIを発症する幼児はKDやHFMD罹患歴のない子であるか臨床疫学検討を要するが,他2疾患より経年的な花粉被曝等による緩徐な免疫学習が必要で発症までに時間がかかるのかもしれない.
  • 村瀬 絢子, 石黒 精, 伊藤 秀一, 小野山 陽祐, 山田 登紀子, 野村 あかり, 宮城 なつき, 益田 博司, 余谷 暢之, 小穴 愼 ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 357a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】Castleman病は原因不明のリンパ増殖性疾患であり,病理所見からhyaline vascular typeとplasma cell typeとに分類される.小児のCastleman病はまれであり,乳児期発症のplasma cell typeの報告例はこれまでにない.われわれは生後10か月で発症したplasma cell typeのCastleman病の一例を経験したので報告する.【症例】10か月女児.4日間続く発熱で近医を受診.両側頚部リンパ節腫脹,発疹を指摘され当院を紹介された.血液検査で左方移動を伴うWBC, CRPの高値,血沈亢進が認められた.当初,化膿性頸部リンパ節炎が疑われたが抗菌薬は無効であった.その後,不全型川崎病が疑われ,免疫グロブリン静注療法(2 g/kg)を3回受けたが,治療不応であった.HIV, HHV-8は陰性で,ウイルス性疾患は除外された.JIAやシェーグレンは臨床的に否定的であった.頚部リンパ節生検にて濾胞間にCD138陽性の形質細胞を認め,plasma cell typeのCastleman病と診断した.血中IL-6は軽度上昇していた.Gaシンチで両側頚部に強い集積を認め,unicentric Castleman病と診断した.抗好中球抗体陽性の好中球減少がみられた.プレドニゾロン2 mg/kg/dayにて治療を開始したところ,発熱,頚部リンパ節腫脹は改善し,炎症反応も正常化した.15日間使用後,ステロイドを漸減,中止した.【考察】本症例は乳幼児であるが,臨床症状と病理所見からCastleman病と診断した.既報告の低年齢児例を含め考察する.
  • 高田 英俊, 野崎 高史, 石村 匡崇, 井原 健二, 今井 耕輔, 森尾 友宏, 小林 正夫, 野々山 恵章, 原 寿郎
    2012 年 35 巻 4 号 p. 357b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      平成20年度に行った原発性免疫不全症候群全国疫学調査結果に関して,内分泌疾患合併例の二次調査結果をまとめた.内分泌疾患合併例は49例報告された.原発性免疫不全症患者若年人口における,各内分泌疾患の有病率は一般若年人口における有病率より極めて高率であった.自己免疫性(1型糖尿病,橋本病),非自己免疫性(橋本病以外の甲状腺機能低下症,成長ホルモン分泌不全症,性腺機能低下症)内分泌疾患のいずれにおいても一般若年人口と比較して発症頻度が高いことが判明した.IPEX症候群の1型糖尿病合併率は33.3%で,70%以上という欧米の報告よりも低かった.またXLA, CGD, IgGサブクラス欠損症で甲状腺機能低下症,高IgE症候群,CGDで成長ホルモン分泌不全症,先天性無ガンマグロブリン血症,高IgE症候群で性腺機能低下症の合併例が新規に報告された.内分泌疾患は補充療法など治療可能な疾患も多いが,治療開始時期が重要であり,見逃してはならない重要な合併症である.
  • 紙谷 万里子, 石黒 精, 堀内 清華, 余谷 暢之, 永井 章, 新井 勝大, 堀川 玲子, 河合 利尚, 渡辺 信之, 小野寺 雅史
    2012 年 35 巻 4 号 p. 358a
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景】IPEX (immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, and X-linked)症候群は1型糖尿病や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常,難治性下痢,易感染性などを主症状とし,転写因子forkhead box P3(FOXP3)遺伝子の変異による制御性T細胞の欠損や機能低下を原因とするX連鎖性の原発性免疫不全症である.今回,1型糖尿病,甲状腺機能低下症に難治性下痢を合併し,IPEX症候群と考えられた女児例を経験したので報告する.【症例】12歳女児 10歳時から下痢が遷延化し,著明なるいそうが認められた.12歳時に行われた消化管内視鏡所見と病理所見からクローン病と診断され,5-アミノサリチル酸製剤に加えてプレドニゾロン,アザチオプリン,インフリキシマブによる治療を要した.その結果,便性の改善ならびに炎症反応の低下など一定の治療効果が認められたが,プレドニゾロンの減量により下痢が増悪して体重も減少し,治療法の選択に難渋した.患児は2歳時に1型糖尿病を,3歳時に甲状腺機能低下症を発症しており,難治性腸炎とあわせてIPEX症候群でみられる臨床像を呈していた.ただ,本症例ではCD4+CD25+T細胞中のFoxp3の発現は低下していたがFOXP3遺伝子には異常を認めなかった.【考察】FOXP3遺伝子に変異のないIPEX症候群例では易感染性を認める場合が多いとされているが,本症例では反復する細菌感染は認められなかった.過去の文献的考察も含めて報告する.
  • 井澤 和司, 土方 敦司, 西小森 隆太, 小原 收, 斎藤 潤, 吉岡 耕平, 堀 雅之, 日衛嶋 栄太郎, 中川 権史, 小田 紘嗣, ...
    2012 年 35 巻 4 号 p. 358b
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)は細胞内のパターン認識受容体として自然免疫に関わるNLRP3遺伝子(蛋白Cryopyrin)の異常に基づく周期熱症候群である.本疾患群には,家族性寒冷蕁麻疹(familial cold autoinflammatory syndrome, FCAS),Muckle-Wells症候群(MWS),CINCA症候群(chronic infantile neurologic cutaneous articular syndrome)が含まれる.軽症型のFCASから最重症であるCINCA症候群へと一連の疾患群として捉えることができる.CAPSは常染色体優性遺伝と考えられているが,特にCINCA症候群おいては弧発症例が多い.
    最近,我々はダイレクトシーケンスにて変異陰性のCINCA症候群の約70%がNLRP3体細胞モザイクで発症することを国際多施設共同研究で示した.CINCA症候群以外のCAPSにおいてもNLRP3体細胞モザイクが病因となる可能性が推定され,検査を施行したところ,最近2例のMWSにおいてNLRP3体細胞モザイクを認めた.症例1は12歳男児で変異アリル率,35.1%のp.Ile334Val変異を認めた.両親の検索において同変異を認めず,de novo変異であると考えられた.症例2は15歳女児で変異アリル率,約5.6%のp.Glu567Lys変異を認めた.両親の検索は未施行である.臨床的にMWSが疑われる症例においてもダイレクトシーケンスにおいてNLRP3変異が認められない際にはNLRP3体細胞モザイクの検索が必要と考えられた.
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