水文・水資源学会誌
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22 巻, 4 号
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原著論文
  • 芳村 圭, 一柳 錦平
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 4 号 p. 262-276
    発行日: 2009/07/05
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,過去の解釈の修正を念頭に置き,東アジア域での降水d-excessが冬季において高くなるメカニズムを考察した.気象庁のアメダス再統計値・NCEP/DOEの広域大気場の再解析データ・同位体大循環モデルを用いた解析から,日本海・太平洋北西部・黄海・東シナ海などを含む東アジアに隣接する海洋一帯(「東アジア海洋域」と定義)において,洋上大気の温度が海面水温に対して著しく低くなるため,実効相対湿度(海面水温で基準化した相対湿度)が下がる.そのため,大きな動的同位体分別によって高いd-excessを持つ水蒸気が大量に大気へ供給され,日本域・朝鮮半島・中国東部において,高いd-excessをもった降水がもたらされていることがわかった.冬季における太平洋起源の水蒸気のd-excessは日本海起源のそれと同様に高いことから,過去の解釈では可能とされていた日本における降水d-excessから水蒸気の起源が日本海か太平洋かを推定することは困難である.
  • 菊地 慶太, 風間 聡
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 4 号 p. 277-285
    発行日: 2009/07/05
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    GPSを用いて2006年から2007年の冬季から春季にかけて,山岳域(宮城蔵王)における積雪深分布を観測した.山間部において積雪期から融雪期にかけて標高-積雪深分布データを得ることはこれまでほとんどなされておらず,これらのデータは,貴重である.観測には干渉測位の一つである連続キネマティック測位を用いた.この測位方法は任意点のデータを一定時間間隔で取得できるのが特徴である.位置データ補間には最近隣法,2点幾何補間法を用いた.そしてGPS測位および補間結果から地表面標高に対する詳細な積雪深分布データを得ることが出来た.測定誤差には,姿勢誤差,計算誤差,実地誤差,観測誤差がある.それらの合計は,最近隣法が0.25 m~0.41 m,2点幾何補間法が0.25 m~0.40 mである.測深棒とGPS測位による積雪深の比較では2点幾何補間法の場合,両者の差は0.34m~1.10 m,最近隣法の場合は0.12 m~0.30 mとなった.最近隣法の場合,積雪深が3 m以上であれば相対誤差は10 %以下であり良好な値が得られた.つまり雪の多い場所,特に山間部において最近隣法を用いたGPS観測は有効な手段である.
  • 松本 大毅, 広城 吉成, 神野 健二, 堤 敦
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 4 号 p. 286-293
    発行日: 2009/07/05
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    福岡市西部に位置する九州大学新キャンパス移転用地周辺では,施設園芸用水や飲料水として地下水が利用されている.新キャンパス造成工事は2000年6月より開始され,山林面積の減少による地下水涵養量の低下が地下水および湧水へ与える影響が懸念されている.そのため地下水・表流水の相互作用を把握することは,周辺地域の有効な水資源利用をおこなう上で極めて重要となる.
    本研究では,新キャンパス内に水源を持つ大原川流域の地下水・表流水の交流量を推定するために,トレーサーとしてラドンを用いた.その結果,特にS3~オコナ間ではラドンによる解析から活発な地下水・表流水の交流が起こっていることが示された.
    一方,地下水流動の数値解析によって得られた25年間の流速分布の時系列をもとに,ラグランジュ粒子追跡法によって大原川流域の集水域の推定を行い,大原川の各区間の左右岸集水域を推定することができた.
    以上のように,ラドンによって,大原川に流入する地下水の具体的な交流箇所,およびラグランジュ粒子追跡法によって,地下水が左岸,右岸のどちらから大原川に流入するのか等の結果を得ることができた. 両手法を合わせることにより,地下水・表流水のより詳細な交流解析が可能となった.
研究ノート
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