河川による都市暑熱環境の緩和効果について,実測データを基にその物理的なメカニズムを議論した.河川上では海風の進入に伴い,水面からの加熱よりも大きな鉛直上向きの顕熱輸送が見られ,河川上の気温は市街地よりもさらに低温となった.乱流変動の
4象限解析により,この上向きの熱輸送は上空からの冷気の下降によるものであることが明らかとなった.上空の低温の空気塊が,河川において都市キャノピー内に取り込まれていることが示された.
水深が深ければ日中の水温は気温より低温となり,河川水面での顕熱輸送は下向き(大気を冷却)となる.一方,浅い水面では水温が気温よりも高温となる.夜間はこの水温と気温の差が日中とは逆になる.これらは日中の正味放射の大部分が貯熱に配分されるためである.河川を活用して暑熱環境の改善をはかる場合は,効果を得る時間帯(昼か夜)により適切な水深が異なることに注意が必要である.
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