2003年3月,第3回世界水フォーラムが琵琶湖淀川流域府県を主催会場として開催されることになり,21世紀の淡水資源問題をめぐる我が国のイニシアティブに対する期待が高まっている.「人のための水」,「食料のための水」,「水と自然」,「川の水」,「水と国家主権」などの課題群について議論され,2000年3月の第2回フォーラム(ハーグ)で採択された「世界水ビジョン」については,今度はそれを実現するための財政支援や技術的対応の枠組みが重要な議題になるはずである.一方,ビジョンの重要な主張であった「水の経済財化」や「水事業民営化」などに関しては,世界銀行や国連機関の認識と環境NGOや人権NGOの認識との間の深い溝がそれはそのまま積み残しとなっており,厳しいやりとりが展開するものと予想される.また,[人],「自然」,「川」,「主権」,「流域」などの課題全が含まれて一つのシステムを構成する統合的なビジョンのあり方に関しても必ずしも十分な議論が行われたとは思えない.たとえば,世界の大多数の湖沼がかかえる開発と保全の極めて厳しい競合状態については関係機関の連携を含めて積み残しの課題であり,問題解決の展望を示す踏み込んだ議論が期待される.
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