水文・水資源学会誌
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17 巻, 4 号
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original research article
  • 工藤 勝弘, 河上 智行, 山田 正
    2004 年 17 巻 4 号 p. 331-342
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/27
    ジャーナル フリー
    安全な水おいしい水への要望の高まりとともに水道水源となっているダム貯水池の水質保全が大きな課題となっている.特にアオコや淡水赤潮など植物プランクトンの発生に伴う富栄養化問題は発生する植物プランクトンの種類や量によって具体的な利水障害の内容や程度が異なり,社会的な影響が大きいことから対策が急務となっている.その代表的な水質問題として上水道のカビ臭問題がある.原因となるカビ臭物質は,放線菌の他,貯水池で発生する特定の植物プランクトンによって生産されることが知られている.水資源機構が管理するダムにおいても1984年から1990年にかけてカビ臭問題が集中的に発生した.原因は藍藻類のPhormidiumが生産する2-MIBであった.水資源機構ではカビ臭問題が発生した4つのダム貯水池においてカビ臭の発生期におよそ週2回の頻度でPhormidiumとカビ臭に関する詳細な調査を行い,2-MIB濃度とカビ臭の閾値との関係や生産された2-MIBの多くが水中に移行していることなど,現場での貴重な知見を得ることができた.
  • 西岡 昌秋, 宝 馨
    2004 年 17 巻 4 号 p. 343-353
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,時系列の傾向変動を解析する手法の一つであるMann-Kendall検定の水文時系列への適用可能性を調べた.日雨量,無降雨継続時間,降雨継続時間の独立性を仮定できる日雨量の模擬発生手法を提案し,発生した系列から長期の閾値超過系列,年最大日雨量系列および年雨量系列を抽出した.これらの系列に対してMann-Kendall検定を適用し,傾向変動を把握するために必要なデータの年数と増加率との関係を調べた.この結果,雨量の経年的な傾向変動を検出するためには,毎年最大値系列(annual maximum series, AMS)では不十分であり,年降雨量または日雨量の閾値超過系列(peaks-over-threshold series, POT)を用いることが良いことが示された.特にPOTは,年降雨量系列よりも短い年数で傾向変動を検出できる可能性がある.日雨量が100年間で25%増加する系列の場合,95%の確からしさで傾向変動をもつと判断するためには,110年間の年雨量データが必要であること,10%増加する系列の場合は,160年から180年のデータが必要であることが示された.
  • -非定常数値解析モデルの改良-
    串山 宏太郎, 神岡 誠司, 山田 正
    2004 年 17 巻 4 号 p. 354-367
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/27
    ジャーナル フリー
    大都市での下水道雨水対策では,今後長大伏越し管路の増加が予想される.本研究では,管内空気の排出現象を定量評価し噴出する空気を安全に処理する空気抜き開口施設規模の検討を行うため,水と空気の気液二相流状態を対象とした数値解析モデルを非定常解析モデルとして提案した.従来確立されている水だけの管路非定常解析モデルに管内空気の状態を組み込み,水理模型実験で得られた知見から流入人孔地点で管内空気の排出を妨げる遮蔽効果を仮定して解析モデルを改良した.伏越し管路と人孔接合部に開口率をパラメータに設定し流入人孔形式別に開口率を水理模型実験により決定した.また,中間人孔がある場合についても水理模型実験との比較検討を行い一般系管路に関するモデル構築の提案をおこなった.
  • 朴 珍赫, 小尻 利治, 友杉 邦雄
    2004 年 17 巻 4 号 p. 368-380
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/27
    ジャーナル フリー
    従来の河川水文学分野の研究の主対象は個々の流域の気候,地形などの自然的な因子の分析を通した流域内の降雨―流出現象の究明に集中されてきた.一方,近年,全世界的にGIS及びRSデータなどデジタル情報の構築が進んでおり,従来の集中型モデルよりも流域内の諸量の空間的な変動を考慮できるメッシュで構成された分布型モデルの活用度が高まっている.この分布型流出モデルによって,各流域間の流出場と降雨―流出の時空間的特性のより詳細な比較が可能となる.
    本研究では,流出特性をより詳細に把握できるGISに基づいた分布型流出モデルを構築し,階層分析法(AHP)を応用して流出に影響を及ぼす気候及び流出場の類似性の比較研究を通して,各流域の特性を総合的に比較できる比較手法を開発し,その手法に基づく比較水文学を提案するものである.対象流域としては,アジア・太平洋地域の3流域を選定し,比較研究を行う.
  • 任 永懐, 佐藤 政良, 楊 継富, 郭 宗信, 佐久間 泰一
    2004 年 17 巻 4 号 p. 381-391
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/27
    ジャーナル フリー
    中国華北平原における水資源不足問題の解決は急務で,最大の用水部門である農業の節水灌漑が求められる.本研究は,華北地域の石津灌区を対象に,水源から末端の耕地まで,灌漑管理の規則と実態を詳細に調べ,節水効果の視点から水管理システムを分析した.その結果,以下のことが明らかになった. (1)水利費は基本的に従量制であるが,水管理を担当する管理局は独立採算であること,各村では面積割り賦課になっていることから,管理局および農民のいずれにとっても節水動機が働きにくい. (2)水利費は現在でも十分に高いものの,灌漑実績は適正用水量を大きく超えていることから,水価の上昇によって単純に節水効果が発現するとはいえない. (3)つぶれ地と水管理労働のコストという視点から,当地区では,斗渠の増設による耕区長辺長の短縮が節水対策としての現実的な方法である.
technical note
commentary article
  • —多層植被モデルを題材として—
    小松 光
    2004 年 17 巻 4 号 p. 401-413
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/27
    ジャーナル フリー
    現在使われている数値モデルの大部分は複雑な構造を持っているため,数値モデルの利用において,調査すべき条件が膨大となる,また,プログラムのチェックが難しくなる,という困難が生じる.こうした困難の軽減に,数値モデルの無次元化が役立つ.本稿は,数値モデルをより有効に利用できる環境を整えることを目的として,これらの困難が具体的にどのようなもので,数値モデルの無次元化によってこれらの困難がどのように軽減されるのかについて,多層植被モデルを実例にとって解説した.
technical report
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