組織科学
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33 巻, 3 号
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特集
  • 村田 晴夫
    2000 年 33 巻 3 号 p. 4-13
    発行日: 2000年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     組織の知的活動に先立って,あるいはそれに付随して,組織の情緒的活動があるであろう.それは審美的感情を含む.そして美的直観はものごとの全体像を把握せしめる力をもつ.それは想像力に立脚すると同時に,組織の創造力を産み出す力に関わっている.創造力はまた意志の力に関わっており,組織の価値観に関わっている.人間と組織,組織と社会,組織と自然,これらの関わりにおいて欲求と価値の問題が錯綜する.組織の発展と調和の問題として「知」「情」「意」の領域が開かれ,組織における真・善・美が問われなければならない.
  • ――創発する現実世界の組織化――
    クラウス オットー シャーマー, 露木 恵美子
    2000 年 33 巻 3 号 p. 14-29
    発行日: 2000年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     1990年代は,形式知と暗黙知という「2つのタイプの知識」の相互作用をめぐってナレッジ・マネジメントに関する議論が行われてきた.本稿では,次の段階として,暗黙知を更に「身体化された暗黙知」と「身体化される以前の暗黙知」の2つに分け,後者を審美性に関係のある「自己超越知」と名づける.自己超越知は,将来にわたって最も意味のある競争優位の源泉となる知識である.
  • ――美の基礎論――
    西山 賢一
    2000 年 33 巻 3 号 p. 30-39
    発行日: 2000年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     中井正一にしたがって,美を本当の自分にめぐり合うことだととらえる.組織における美の基礎論は,組織を内部から見る視点を要求するので,第3世代のシステム論であるオートポイエーシスの理論が必要になる.組織はコーディネーションとインセンティブを柱にしているが,その柱はメンバーの利己主義と共生に支えられている.メンバーの美の体験は,利己主義と共生の基礎にある,生命に共通の論理である,主語論理と述語論理を十全に繰り広げることで可能になる.
  • ――倫理法令遵守マネジメント・システムの構築――
    髙 巖
    2000 年 33 巻 3 号 p. 40-51
    発行日: 2000年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     倫理法令遵守への取り組みを促すための規格,ECS2000が1999年5月に発行された.それは,組織の中に不正を強要する暗黙の圧力が働いていること,企業文化変革論が優勢なこと,倫理を取り巻く法社会制度が大きく変化していること,倫理ディスクロージャーが進んでいないことなどから,麗澤経済研究センター「企業倫理研究プロジェクト」が中心となって作成した新規格である.その現状と課題を本稿は論じていく.
  • ――組織における美と倫理――
    庭本 佳和
    2000 年 33 巻 3 号 p. 52-61
    発行日: 2000年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     大きな社会変動をもたらす情報化(ネットワーク化),グ口ーバル化,エコロジカル化は,社会に新たな意味を浮上させる動きと連動しているが,その根底には生命の意味の社会的組み込みの力が働いている.組織の美しさとは社会的意味の組織的反映だが,企業目的と経営目的が乖離しやすい現代企業は,これを経営に組み込むことは難しい.生命システムとして捉えることによって,その可能性を探ってみた.
自由論題
  • 辻 洋一郎
    2000 年 33 巻 3 号 p. 62-75
    発行日: 2000年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     エレクトロニクス産業の新製品開発競争が激化するなかで,自社技術を特許で保護し差別化を図ることが重要になりつつある.本稿では,特許戦略に優れているといわれるキヤノンのインクジェットプリンタ開発における組織行動を特許データを基に分析する.前半では,他社重要特許を牽制しつつ自社特許の出願を効果的に進め,体系的な特許群を構築することで競争優位を確保する戦略的な特許出願行動を明らかにする.後半では,この行動が従来の「製品開発→特許出願」という受動的プロセスとは逆の,「特許取得計画→製品開発」という能動的プロセスに基づくものであることを指摘する.最後に,こうした戦略を下支えする組織的機能として特許部門に注目して議論する.
  • ――日系電気機械メーカーの在アジア現地生産活動が国内生産活動と雇用に与える影響――
    天野 倫文
    2000 年 33 巻 3 号 p. 76-96
    発行日: 2000年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     本稿は企業の国際分業行動を分析枠組みとして,現地生産移管が国内転換行動を喚起する可能性について探求した.これまで現地生産活動と国内生産活動や雇用の関係については,現地生産活動が国内生産活動と雇用の減少をもたらすとされてきたが,本稿はこうした「空洞化論」の一面性を指摘し,「現地生産移管が中間財の輸出誘発効果による『誘発型転換行動』と,新製品や新規事業に向けた『自発型転換行動』を喚起する可能性がある」という仮説を導出した.そしてこの仮説を検証するために定量・定性的な分析を行った.その結果,(1)現地生産移管は誘発型転換行動を誘引すること,(2)現地生産移管が自発型転換行動を喚起する可能性は,企業の技術スラックの蓄積・開発の程度や,組織的な誘導・調整力などに影響を受けること,(3)従業員の労働組合を通じた企業への牽制や,内発的な動機形成は,組織的コミットメントを生成し,転換行動全体を下支えすることなどが明らかになった.
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