本研究ではイノベーションでユーザーが重要な役割を演じる条件を「情報の粘着性(stickiness of information)」という視点から明らかにする.「情報の粘着性」という概念は近年,提唱されたものであり,体系的に収集されたデータをベースに議論が展開されることはこれまでほとんどなかった.その意味で本研究は,「情報の粘着性仮説」を概念的議論から経験的調査をもとにした議論へと橋渡しする試みであると言える.また,本稿ではこの仮説から引き出される実践的インプリケーションについても経験的調査の結果をベースに議論する.