日本の上場企業のデータを用いて余剰資源がR&D活動やベンチャー投資に与える影響を実証した.分析結果からは,(1)余剰はR&D活動やベンチャー投資を促進するが,その関係は一部非線形であること,(2)R&D支出の増大は非主力製品分野への資源配分比率を減少させること,(3)外国人株主比率はR&D支出を増大させるが,その効果は低減すること,(4)高い利益率はR&D活動への支出やベンチャー投資を抑制させることが示された.
技術移転機関(TLO)を組織構造に基づいて3タイプに分類し,その違いが大学の技術移転パフォーマンスに与える影響を分析した.大学と別の法人として設立される外部型と,大学組織の一部である内部型との比較では,前者を利用する大学の方が特許ライセンス収入は高かった.特定の大学と提携する外部一体型と,複数大学のハブとして活動する外部広域型との比較では,小規模な大学ほど前者を用いる利点が大きかった.
近年,大学等の研究機関から研究者がチーム単位で国内外の他の研究機関へ移動するケースが増加傾向にある.人材の組織内あるいは組織間移動に関する研究は多いが,組織間移動の形態(個人移動,チーム単位移動)に着目した研究は少ない.本研究は,大学等の研究機関に所属する研究者が海外の研究機関に移動する際におけるチームでの移動の決定要因を,研究者のインフォーマル及びフォーマルなネットワークの観点から明らかにする.
本稿の目的は,イノベーションをめざす産学連携における大学の関与のあり方について包括的に考察することにある.本稿では,2000年における『組織科学』の産学連携特集号と比較しながら,現在の産学連携における大学の関与について検討した.文献研究および事例研究の結果として,大学組織と個人研究者とのコンフリクト,上場した大学発ベンチャーにおける大学の関与の多様性,社会性概念の出現というリサーチトピックを提示した.
ビジネスモデルの逸脱的変化を巡る先行研究では,ビジネスモデルの慣性が前提に置かれることで,一時的な変化プロセスが注目され,継続的な変化プロセスは看過されてきた.この間隙を埋めるべく,支配的なビジネスモデルからの逸脱を継続的に果たした事例を対象とした経時的事例分析を行う.この分析からは,慣性をもたらすと考えられてきた要因によって逸脱的な局所変化が誘発・波及・増幅されていくダイナミクスが明らかとなる.
計画的行動理論に基づく起業意思形成モデルを,学生の起業意識調査GUESSS2018年版のデータによって検証した.起業への態度,自己効力感が起業意思を高め,その2つには交互作用も見られた.どちらかが高まると,もう片方のインパクトを増大させて起業意思がさらに高まる.起業家教育と起業を後押しする大学の環境も起業意思を高める.海外の先行研究で検証されてきた要因を,同調査で起業意思が最下位となった日本でも確認できた.