米国意匠特許データを用いたネットワーク分析により,デザイン重視のコンシューマーエレクトロニクス企業2社の意匠創作ネットワークを比較した.その結果,デザイン戦略の違いで組織設計が異なる可能性が示唆された.製品群で一貫したデザインを目指す場合,組織の規模を管理してネットワーク密度を高めることで,デザイン言語など暗黙知の共有と実践が容易になる.他方,開発生産性あるいは製品の個性を重視する場合,ネットワーク密度を低く抑え,プロジェクトの独立性を維持する組織設計が有効となる.
社会活動団体の説得によって新行動が諸企業に普及することで新たな市場カテゴリが形成されることがある.既存研究は説得戦略の経路を議論してきたが,戦略内容について論じてこなかった.産業の周辺に位置する社会活動団体にとって適切な内容を事前に決めるのは難しい.社会活動団体は,自らの行為に対する企業とその主要ステークホルダーの反応から学ぶことで企業への説得戦略の内容を修正していくという仮説を本稿では提案する.
本論文は,近年の先行者優位の議論が,環境決定論的-企業適応的文脈に進んでいることを指摘し,先行者優位の議論に対して加藤(2011)の〈技術システムの構造化理論〉による接近を試みる.電動アシスト自転車の市場創造プロセスを探索することで,構造形成に携わった先行企業と,構造を所与として受け入れた後発企業では構造から受ける影響が異なることを示す.また,先行者優位の議論は非市場戦略の領域にも論点があることを示す.
本研究ではフリーミアム型コンテンツ産業の例としてモバイルゲームをとりあげ,そこでは多数の製品を出す分散型と,一つの製品に集中する集中型の二つの戦略が存在することを示した.当たり外れの多いコンテンツ産業において一つの製品に集中する戦略は異例であり,ネットワーク効果が働くフリーミアムならではの新しい戦略と考えられる.
非常に新規性の高い事業は,計画段階で予期できなかった社会的・法的問題に直面することがある.企業家は社会からの批判に反論し,法制度の専門職に対して新事業の正当性を主張する必要がある.本論文は,サービスの無料提供が,社会的正当化の文脈においても有効な施策であることを論ずる.サービスを無料で提供することで事業計画が過剰に難しくなることを防ぎ,企業家が対応すべき問題を明確にする効果がある.