組織科学
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31 巻, 3 号
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特集
  • ――「不可能なシステム」としての劇団――
    佐藤 郁哉
    1998 年 31 巻 3 号 p. 4-15
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー
     ある種のアート組織は,個性と個人レベルの業績を何よりも強調する芸術活動をチームワークを重視する組織という器の中で行なわざるを得ないという点で,根本的な矛盾を内包するシステムである.本論文では,この「不可能なシステム」としての芸術団体の特質について,日本の現代演劇系の劇団の事例を通して検討する.日本の劇団が抱えるさまざまなレベルとタイプの葛藤やディレンマについては,組織環境と組織構造・組織過程をめぐる問題という文脈だけでなく,組織体および組織フィールド・レベルでのアイデンティティの拡散に由来する問題として把握可能であることが示される.
  • 渥美 公秀
    1998 年 31 巻 3 号 p. 27-35
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー
     ボランティア社会の行方を原理的に問い,ボランティア社会の彼方に開ける多様な世界を素描する.公共性を超越的規範とする社会が,公共性に資するとされるボランティア活動を経由し,ボランティア社会への移行を完了した時には,究極的な目的としての公共性が消失しているという逆説的な展開から,生生流転する超越性のもとで展開する振る舞い=集合的即興ゲームの概略を述べる.
  • 耳塚 寛明
    1998 年 31 巻 3 号 p. 36-44
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー
     学校はどんな組織かという問いに対する社会学的・古典的回答は,これを官僚制モデルによって把握しようとするものだった.学校における職位の階梯や権限の階層化,教職員の専門的訓練の存在,また生徒の学習活動や行動の標準化・特化の存在は,学校を官僚制組織として描くことの妥当性を示唆している.しかし学校は合理的・目標志向的公式組織(官僚制モデル)から逸脱したユニークな組織でもある.Weick, K.の学校に対するloosely coupled system論の適用や,Meyer, W.による合理化された神話としての学校組織の指摘は,いずれも官僚制モデルでは説明し得ない学校の存立基盤=疑似合理性を説明することに成功している.
  • 佐々木 晴夫
    1998 年 31 巻 3 号 p. 45-51
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー
     平成9年12月の行政改革会議の最終報告は,昭和27年以来殆ど固定化してきた中央省庁の関係に変更を迫るものではあるが,幾つかの問題がある.本稿はその問題点の掘り下げを行ったものである.第一に中央省庁を「大ぐくり」にすることがセクショナリズムを減らすことにつながるかは疑問であり,第二に内閣総理大臣および内閣の権限強化の提案についても現状をどこまで変えられるか疑問である.第三に各省から実施機能を分離してこれを独立行政法人にすることについてはわが国の硬直的な公務員制度や会計制度の変更が必要である.第四に事務整理や地方分権についての具体的提案がなく,第五に郵政事業をかつて否定された国営の公社にすることも疑問である.
  • ――とくに官民協働型まちづくりシステムについて――
    田中 豊治
    1998 年 31 巻 3 号 p. 52-60
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー
     地方分権とはこれまでの国家中央集権型システムから自治体分権型システムヘの転換を図り,地域間・自治体間・市民間能力競争の時代に入るということである.この分権型社会においては行政と議会・市民・団体・企業などの複合的主体の合意形成によってまちづくり政策を推進する.さらに市民参加のニーズが高まりつつある現在,自治体では市民参加型行政組織への自己変革を迫られている.そこで環境変化への適合(再編成)過程を,最近の地方分権時代に相応しい官民協働型まちづくりシステムを中心に考察する.
自由論題
  • ――製造企業A社の組織の実証研究――
    矢野 正晴
    1998 年 31 巻 3 号 p. 61-73
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー
     企業の研究開発チームおよび個人の独創性を約1,000名の企業内アンケートによる投票で測定した.その結果から,従来の尺度である特許出願数や論文数と得票結果とは相関が低いこと,個人の特性とは別のチーム特性としての独創性が存在すること,および,「チームの構成メンバーの異質性」(多様な知識・考え方,海外や大学との接触,異分野経験,および多様な性格・個性)と「異質性取り込みなどのリーダーのチームマネジメント」(異質性取り込みのチームマネジメント,および組織間連携)がチームの独創性につながること,の3点を明らかにする.
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