病院看護部長の倫理課題48事例を『静かなリーダーシップ』(Badaracco, 2002)の考え方に依拠して分析した結果,「現実を理解する」「時間を使う」「規則を曲げる」「妥協点を探す」「ケアする」の5つのリーダーシップ行動を見出した.管理者には,倫理原則に基づき確固たる姿勢で倫理課題に臨むことが求められてきたが,日常の現場では,より柔軟で実際的なリーダーシップ行動がとられ,機能していることが明らかになった.
日本においては,組織倫理に関する実証研究や経験的データの蓄積が絶対的に不足している.本稿の目的は,この種の先行研究の成果を,組織における個人の倫理的意思決定モデルとの関連において位置づけ整理し,組織倫理に関する将来の実証研究の手がかりを提供することにある.
本稿では,従来の正統的ビジネス・エシックス研究としての規範理論・制度化の限界を指摘し,ヨーロッパ社会哲学・思想を土台にするアプローチを提唱する.具体的には,現象学・社会的構築主義・ハーバーマス・フーコーの方法論による実践診断理論の必要性を説く.実践診断を導く包括概念としてcollective myopia(集合近眼)を提唱する.さらに,組織の現象 学・社会的構築主義的エピステモロジーと規範によるコントロールについても言及する.
善良な個人から構成される企業でも,組織の中で個人は不正にかかわる可能性がある.それを防止するには,企業それ自体が社会からの信頼や利害関係者からの支持を得られるような倫理的行動をとる必要がある.企業の倫理的行動には,経営者の積極的関与による企業倫理の制度化が不可欠である.経営者にそうした行動をもたらすものとして,コーポレート・ガバナンスがあり,それは株主などの利害関係者が経営者に対して働きかけを行なうものである.
社会学的リスク論の知見を用い,リスク社会化が経営組織に与える影響について考察する.組織が「構造」水準のリスク観察への対応を余儀なくされているなかで,コーポレート・ガバナンスを,外部からのリスク観察の組織への再参入プロセスとして位置づける.さらに,意思決定システムとしての組織の根源的な閉鎖性ゆえに,コーポレート・ガバナンスによる開放性の追求が招きうるアポリアを指摘し,ありうべき対処策を示唆する.
本稿では,これまでコンビニエンス・ストアの成功要因として信じられてきたものの実際の効果について検証した.「トップと店舗指導員が行う直接対話の頻度」や「ドミナント出店」といったこれまでコンビニの成功要因として語られてきた活動は実際には店舗業績(店舗平均日販)と関係がなかった.以上の発見に加えて,本稿では,大手チェーンが規模優位を発揮して,高日販を実現している可能性を示唆した.