ネットワークは組織の壁を越えて多様な情報を結合させる.情報には共有することで価値が高まる,限界費用がゼロに近いなど,重要な側面で物財とは異なる特性があり,情報価値の生産をめぐる協働構造に特徴を与えている.市場面で非貨幣的な誘因にもとづく協働が現れる一方で,組織面では企業間連携の重要性を増大させるなど,あらゆる面で変化をおこしつつあって,市場対組織という対比軸を無意識化させつつある.場の概念などで統合化の可能性を探るべきだ.
既存の競争研究は,競争を構造として捉える研究と,プロセスとして捉えるそれとに分類でき,さらにそれぞれの研究は,いくつかの分析レベルに分けられる.構造としての競争研究からは,競争は回避すべきものという含意が導出されるのに対し,プロセスとしての競争研究からは,競争は参加すべきものという含意が導かれる.今後は,競争をプロセスとして捉える立場に立った,産業もしくは行動-反応レベルの研究が期待される.
能力主義や成果主義の人事施策を実施していくうえで,公正で透明性の高い評価を実施していくことは不可欠である.しかし,人事評価は従業員から不満をもたれ,その納得度が疑問視されることも多い.本研究では,20,761名の組合員から得られた調査結果ならびに,東海地域の製造業を中心とした企業に勤める従業員1,823名から得られた調査結果を分析し,どのような要因が人事評価の納得度を規定しているかを検討する.
本論で試みることは,新しい人材マネジメントモデルを考えるにあたって,必要な論点の整理である.そして,そうした作業を行うにあたって,これまで議論されてきた内部労働市場を再び積極的な人材マネジメントモデルの原型として考えてみたい.いいかえれば,外部市場にたよらず,企業や組織がみずからの人材のマネジメントを自分の手で行うことの意義と効用を考える.私の希望は,そうした議論のなかから,今の人材マネジメント実務でみられる動きに関して議論がおこり,今後の流れがもう一回理論的な立場から考え直され,新しい人材マネジメントへの議論が起こることである.
本論文はファインセラミックス産業を題材に,その発展過程を行為システムの視点から分析するものである.この産業は1981年より技術政策の対象とされ,現在では2兆円産業に迫る成長を遂げた.しかし,その過程を複数主体の行為システムと把握すれば,そこには政策を指標とした複数の企業の資源の集中によって間隙が発生し,その間隙に位置した企業によってこの産業の発展がもたらされたというメカニズムが浮かび上がる.
本稿は,企業が中心となって設立したNPOにおける協働型の社会貢献活動事例をもとに,企業とNPOの関係,企業社会貢献活動の意義,課題,および営利活動との関係を考察するものである.社会貢献活動の結果,社会および企業に対して生じる影響を,ステイクホルダーと資源・能力の側面から分析するとともに,協働促進要因を抽出し協働型パートナーシップが持つ課題を検討している.NPOにおける企業間協働による社会貢献活動は,社会および企業に対して大きな影響を与え,両者を活性化させる可能性を持つ新しい連携の形である.
日本の製造業が何を造るかを問われるようになり,その目標としてMPUに特化したインテルが挙げられることが多い.確かにMPUは創知の産物で,インテルはそれを戦略部品として仕立てあげたことは日本企業の見習うべき点である.しかし,それ以上にインテルがその戦略部品の地位を守るため政府の力を最大限引き出し,自らもとった手段が注目されるべきである.グローブが偏執狂といった,その意味と現実が再吟味されるべきだ.