経済学において「競争」というと完全競争がまず浮かぶ.その後,その批判から完全競争の仮定を緩めた不完全競争の分析が考えられる.本稿ではまずそれらの流れを紹介する.またその後それらを踏まえて,競争に関連する研究がどのような設定で行われてきたかについて紹介していく.具体的には収入最大化,混合寡占,そしてオークションに触れる.
企業は,さまざまな戦略的価格の設定をも通じて他者と競争 する.競争政策は,略奪的価格や再販売価格拘束を違法とすることによって,実質的競争を確保しようとしているが,日本の判例実務では,戦略的価格設定が実は競争を促進し,効率性を改善する可能性があることが軽視される場合がある反面,政府による独占権付与や公的支援がある公的企業がそれらを有利に活用して戦略的価格を設定し,それらのない民間企業と競争することで競争を阻害するケースに対して適切に是正を行わないこともある.これらの実態を法と経済学的に分析する.
ソフトウエア企業14,522社を対象に生命表分析を行なった結果,個体群密度が競争を通じて組織の死亡率を高める効果は,東京ならびに大阪とそれ以外の府県との比較では現れるものの,大多数の府県間の比較では認められなかった.また,東京中心部においてはむしろ,密度の高さが死亡率を低める効果が観察された.以上の結果から,組織の密集の程度が競争を生むかどうかは,集積する地域規模の大小に依存するものと考えられる.
生育・生存・繁殖などに必要な資源を利用している個体同士は,同種でも異種でも他の存在は互いにマイナスの影響を与える.これを競争と呼ぶ.生態学および進化生物学において,競争は生物界をつくり上げてきた基本的なプロセスである.進化において,異なるタイプの生物に生じる競争は自然淘汰および性淘汰の形をとって適応性をもたらす.それらのはたらき方や,細胞レベルの進化である発ガン過程について述べる.
本論では,組織メンバーによる知識変換のもつ影響力を,ネットワークデータを用いて定量的に評価する手法を提案する.同手法を適用した実証分析から,ゲートキーパーとトランスフォーマーはそれぞれ異なった知識変換の影響力を有していることが明らかになり,知識変換の役割分担仮説が導かれた.
組織変革に関する研究では,変革過程についての段階モデルが提示されている.それらの研究では,変革過程で発生する問題や解決策が提出されているが,部門間の調整の視点からの分析はあまり行われていない.本稿では,カルビーが生産・流通プロセスを変革した事例を取り上げ,変革過程を2段階に分けて,各段階で発生する問題を解決し,パフォーマンスのトレード・オフを克服する上で,有効な部門間の調整手段を明らかにする.
本稿は岡山ジーンズ産業集積を対象とし,集積内ネットワークのメカニズムを分析したものである.同集積内ネットワークにおいては,部分ネットワークにおける自社ブランド企業と専門企業との密接な相互作用を通じて市場ニーズにあった製品を柔軟に提供する一方で,全体ネットワークによって集積全体としての生産規模を確保している.以上を踏まえ,本稿では,産業集積の優位性を存続させる要因について仮説的に提示した.