フランチャイズ組織の存在理由について,新たな視角から考察する.本稿では,フランチャイズ組織がモジュラー型と統合型の2タイプにモデル的に分類しうることを提起し,モジュラー型フランチャイズ組織においては,本部だけでなく,加盟店が開発行為の一翼を担っている事実に注目する.現在,フランチャイズ組織は,このような分権的進化の仕組みを内包するモジュラー型と,進化の主な担い手が本部である統合型とが併存する状態にある.本稿は,フランチャイズ組織の垂直分離的な性格が強く表れるモジュラー型の理解を通じて,システムのダイナミックな進化の観点からみたフランチャイズ組織の存在理由を主張する.
本稿は,大手電子部品メーカーの国内における成長とその後の東アジアへの海外生産シフトの過程で,同社が事業拠点を展開した地域においていかに産業集積が形成され,それがどのような構造調整を経てきたのかということを明らかにする.
目的は2つある.第一は電子機械産業の海外生産シフトが進む中で,国内の産業集積地域における空洞化の状況を把握するとともに,産業集積内に見られる比較優位分野への調整の方向性を明らかにすることである.第二はこのような比較優位分野への構造調整を可能にさせている条件を,その地域における過去の経路依存性,具体的には地域に形成されてきた生産分業の構造や技術の蓄積や継承性などの視点から明らかにすることである.
企業者の前職の共通性や人間関係の面に注目することによって,企業者が知識・技能・洞察力・感性・経営構想力および人間関係能力といった個人的能力を進化させていった一面が理解される.これらの資質と組織能力および戦略的訴求力・行動力との間の相互規定的循環によって主体内部の各レベル間の動態的変化が進化的に展開され,また客体的条件との相互規定的循環によって「革新」を生む主体的条件の成熟をみたと考えられる.
本稿では,戦後日本における企業システムの形成・発展過程について,企業の安定性という視点から検討することを試みる.日本の企業システムの特徴が企業とステイクホルダーとの長期的関係にあるとすれば,そのようなシステムの発展・形成過程の背後には企業の存在の安定化があると考えられる.本稿ではまず企業の安定性の変化を把握した上で,労働システムと企業年金システムという二つのシステムを取り上げてこの点を検討する.
本稿では,日米のセメント産業の比較を通じて,技術転換に対する既存企業の適応力に関する日米間の差を説明するためのメカニズムを提示する.既存企業が技術転換に適応できずに競争力を低下させる米国の事例と同じ産業に関して,日本の場合では既存企業が技術転換に適応し競争力を維持している.既存の議論とは異なる「創発的に形成される技術環境」という“産業レベルの視点”を用いることで,日米間のこのような差を説明する.
本稿では,食品スーパー業界において,競争優位に貢献するノウハウをあえて同業者に公開することによって得られるいくつかのプラスの効果を明らかにした.関西スーパーが獲得した「価格交渉力」「資源吸引」「専用機器開発」という3つの効果は,先行研究が指摘していなかったものである.以上の発見に加えて,本稿では,このノウハウ公開が成立した要因についても示唆した.