これまでブランドを研究対象としてきたのが主にマーケティングの分野だったこともあり,ブランド戦略の研究は経営戦略論の中で比較的関心の低いものだった.しかし,市場と組織の接点であるブランドの戦略を策定し実行することは,ポーターの競争戦略論に基づく「外から内」の え方と資源ベースの戦略論に基づく「内から外」の え方との間に生じる対立を弁証法的に綜合する作業と捉えることができる.戦略家が直面する矛盾やジレンマを乗り越えるために,ブランド戦略が広く経営戦略論の中で研究されることの意義について議論する.
本小論の目的は,組織的知識創造が対立やズレを原動力にした形式知と暗黙知の対話から生じる弁証法的発展のプロセスであることを,集団における知識創造に焦点を当てて,データに基づいて示そうとするものである.
この論文では,人材マネジメント論が前提として置く人材像を,タスク処理型の人材から,より知的創造型の貢献を行う人材に切り替えていくことを主張し,そうした場合の人材マネジメントモデルが,どのような要素から成り立つのかについてのスケッチを行った.知的創造型人材への関心は,人材が価値を生み出し,企業に価値を提供するプロセスの根幹を,これまでのように,与えられた課題やタスクを処理する過程ではなく,人材が「 える」ことを基礎とする知的創造過程であるとする立場から発生する.従来人材マネジメント論のなかに明確に位置付けられていなかった,知的創造による貢献を えることで,人材が企業に価値を提供する過程がより明確に捉えられ,また,人材マネジメントが,企業の競争力に貢献するメカニズムを議論できる理論的枠組みの構築できる可能性が高まる.
多国籍企業はその戦略課題を,自国の優位性に基づくグローバル戦略から世界中に分散するナレッジをフルに活用したグローバル規模の競争優位の構築へとシフトしつつある.本論ではその最も顕著な例としてグローバルR&D戦略を取り上げ,グローバル規模のナレッジのアクセス・移転・活用を可能にする要件を探った.そして,柔軟かつダイナミックなネットワーク構造戦略ないし能力構築戦略が成功への第一歩であると論じている.
組織には知識創造に対する様々な障害がある.知識創造理論の実践が難しい原因もそこにある.とりわけ組織内にお互いにケアしあう良好な社会関係が存在しなければ,知識創造は決して実現しえない.したがって,知識創造を目指すならば,第一に組織内に知識創造を促進するイネーブリング・コンディションを創造する必要がある.とりわけ知識ビジョンの浸透,会話のマネジメント,知識アクティビストの動員が重要である.
企業間関係における協調をとりあげる研究は多いものの,協調の源泉について検証している研究は少ない.本稿では,日本自動車産業における部品メーカーの協調性の源泉として,自動車メーカーへの信頼と自動車メーカーからのパワーを想定し,協調性との関係を仮説化して実証的に検証した.その結果,ある種の信頼(関係的信頼)とパワーの直接行使が,協調性にプラスの影響を与えていることが明らかになった.
女性従業員109名へのインタビューを基に,一般職と総合職の仕事と家庭の両立および技能形成を比較した.一般職と総合職とでは,仕事と家庭を両立させるかどうかについて,入社時の意識が異なるのみならず,結婚・出産後の実際の選択も異なる.一方,一般職と総合職の形成する技能の内容は異なるが,共にO JTや異動を通じた技能形成が就業継続要因である.以上の分析結果から,コース別雇用管理制度の具体的な改善策を提案する.