本稿は経営学研究における定量的研究のレビューである.2020年に経営学総合誌のトップジャーナルに掲載された170本のうち,実世界のデータに対して定量的分析手法を用いている研究はおよそ70 パーセントであり,定量的研究は経営学研究における主流な研究方法である.分析手法は,データと分析目的に応じて多様な形態を取る.また,多くの論文において内生性への対応を行っており,経営学で内生性は当然に考慮されるべき事項といえる.
『組織科学』におけるEisenhardt(1989a)の引用のされ方,具体的にはEisenhardt(1989a)の趣旨とは異なる方法をサポートするためにEisenhardt(1989a)が引用されている現状に鑑み,既に古典的定番となっているEisenhardtメソッドのコアとなる要素として,⑴RQの設定と,⑵理論的サンプリング,⑶トライアンギュレーション,⑷説明の構築,を詳細にレビューした.
本稿ではまず,理論の精緻化に長けた方法としてシミュレーションがあること,特にエージェント・ベース・シミュレーションはミクロとマクロを行き来する特徴を持つことを指摘する.また,シミュレーションが,事例研究やサーベイ調査,実験等の他の手法と相互補完的であるとし,これらの手法を組み合わせた研究事例を紹介する.最後に,シミュレーションを用いた経営組織研究に踏み出すための一歩として何が考えられるかを述べる.
機械学習をどのように活用すれば社会科学を発展させることができるのか.この問いを検討するため,本稿は現実の説明に向けた機械学習と,現実の制御に向けた機械学習の活用方法の2つの観点から既存研究を概観する.とりわけ,現実の制御に関する既存研究を,対象の制御形態としての最適化と拡張の観点から整理する.
本稿は,広範な開発業務の外部委託に焦点を当て,鉄道車両開発を素材に,高いプロジェクトの満足度の実現に効果的なユーザーのマネジメント行動を分析し,その背後にある知識マネジメントについて考察した.その結果,効果的にマネジメントしているユーザーは,従来メーカーが保持すべきとされてきた統合知識や部品知識を活用しながら設計統合化に深く関与し,開発の主導権を確保していることが明らかになった.