本稿は,公的な表彰・認定の取得を第三者機関による雇用主ブランディングと位置づけて,表彰・認定の取得数が採用時の人材確保と従業員の定着に与える効果を検討した.中堅・中小企業を対象とした質問票調査データを用いて統計的に分析した結果,表彰・認定の取得数が採用者の質的確保と従業員の離職率低下に貢献することが示された.大企業に比べて人材確保に劣る中小企業は第三者機関の雇用主ブランディングを活用することが有効になる.
本稿は,多様性研究における従業員の創造性喚起という問題について,近年注目されているインクルージョン風土(CI)をとりあげて個人の創造性への影響メカニズムを知覚された組織的支援(POS)の観点から検討した.日本企業の正規従業員を対象とした質問票調査のデータを用いて分析した結果,CIの影響はPOSを媒介して個人の創造性へと結びつくことが確認された.この知見は,個人の創造性喚起に有益な示唆を提供する.
本稿の目的は,異なる分野の主体が参加して公共サービスの供給を行う協働型ネットワークにおける業績管理の効果を検討することである.業績情報の活用の効果に注目して事例分析を行った結果,業績情報がネットワーク・メンバー間のコミュニケーションにおいて双方向的に活用され,かつ,業績情報の有用性が高いと認識されている場合に,ネットワークの課題・問題点についての共通認識の形成が促進されることが明らかとなった.
本研究では,両利きの経営者の存在が企業パフォーマンスに与える影響について検証する.具体的には,農業法人の経営者を対象とした質問票調査データを用いて企業パフォーマンスに対する経営者の探索姿勢2変数(新商品開発及び新市場開拓)と活用姿勢の交互作用について検討した.分析の結果,企業パフォーマンスを向上させるためには,経営者は両利きであることが望ましいが,それは探索の内容に左右されることが示された.
創造性は閉じられた主体の内面から生じるという前提から,イノベーションが天才に回収され,ブラックボックス化されてしまう.本研究では,アジャンスマン概念を用いて主体概念を解体し,研究開発者が既存秩序を内部から部分的に読み替え,同時に自ら変容することで,局所的な機会を生み出す創造性を提案する.この新しい視座を米国ゼロックス社の研究所におけ る事例分析を通して例証し,その理論的,実務的含意を議論する.