ソーシャルキャピタルの観点から,被買収企業の発明者が直面する共同発明者の変化が当該個人の研究開発生産性に与える影響を明らかにした.従来,ソーシャルキャピタルの変化によるイノベーションへの影響は十分に検証されていなかった.米国半導体産業の買収から,買収後の発明者のソーシャルキャピタルの拡張がイノベーションと正の関係にあり,さらにこの影響はパートナー及び産業が有する技術特性に左右されることが分かった.
本稿は,国内経験が長い中小企業が馴染みのない外部専門家を活用して急速に国際化する複数事例に着目し,支援に成功している専門家は先行研究で指摘されている組織慣性にいかに対処しているのかについて探索的に分析し,その支援プロセスの概念モデルを提示する.それにより支援成功のためには信頼関係が必要であり,その信頼関係構築のためには,専門家が一旦自制して相手の組織慣性に同調することが鍵となることが明らかになった.
本研究は,資源制約への対応を説明するこれまでのブリコラージュ理論を,資源そのものを解剖学的に細分化する視点と資源間関係の視点から修正し,従来は資源制約と認識される状況が実は競争優位の源泉となりうる場合があることを示す.解剖学的視点とは,既存のリソース・ベースト・ビュー(以下RBV)研究が想定する資源単位をさらに細分化することを意味し,複数の文脈からそれら個々の構成要素を再評価・認識していくことにより,これまでの暗黙的前提や資源単位の設定レベルでは見過ごされてきた潜在的かつ有力な資源の構成要素を再認識することが可能になる.また資源間関係の視点とは,ある資源において制約の源泉となる構成要素を他資源の構成要素と結合させることで代替・補完するという資源間の動学的関係の考察を意味する.
このような新たな修正を既存のブリコラージュ理論に施し,経営資源分析の新たな視座を示すことが本論の狙いである.
従来のCSR研究は,大企業を主な分析対象とし,ステークホルダー理論によって業績に貢献する過程が説明されてきた.しかし,この枠組みでは,中小企業の地域社会に対するCSR活動は慈善的活動として捉えられてしまい,業績へ貢献する過程が見えにくかった.そこで,本研究では,中小企業の地域社会に対するCSR活動をソーシャル・キャピタルの視点から捉えることで,業績に貢献する過程を明らかにすることを試みる.
ジョイント・ベンチャー(JV)の競争レスポンス・スピードについては,パートナー間の資源の補完性により速くなるとの見方と,交渉活動により遅くなるとの見方が併存する.AMCフレームワークを用い,1993年-2004年の日本の石化 産業で実施された100回余りの設備増強を分析した結果,JVは非JV企業よりもレスポンスの策定が遅いが,実行は速いことが分かった.また,それらのスピードの差はレスポンスの規模が大きいほど拡大した.