Granier法を用いて樹液流速(
u)を長期測定することの妥当性と問題点について検討するために, アカマツ(
Pinus densiflora Sieb. et Zucc.)を試験木に選定し, 通年の観測を実施した. その結果, センサー間の温度差(Δ
T)は,
uの日変化及び季節変化を良好に反映していた. しかし,
uの日最小時に観測されるΔ
Tの日最大値(Δ
TMAX)には, 長期的な減少傾向が認められた. この減少傾向は, Δ
Tの年間の最大値をΔ
T0(
u=0の場合のΔ
T)として計算すると, 大きな測定誤差をもたらすことを意味する. そこで, 実用的なΔ
T0の決定法を検討した結果, Δ
TMAXをΔ
T0とする方法が妥当であると判断された. このΔ
T0の決定法を利用したGranier法によるuは, ヒートパルス法によって得られた値と良く一致した. さらに, Granier法を用いて評価した試験木の日蒸散量は, 既往の測定結果と良い対応を示した. 以上のことからΔ
TMAXの変動傾向を考慮すれば, Granier法は
uの長期測定に対して有効な方法であることが結論された.
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