ジフェニレンエーテル構造を有する結晶性エポキシ硬化物に関して,エポキシ基の開環によって生成す
る二級水酸基の結晶化への影響を調べた。二級水酸基を持たない1,3-プロパン構造を有するエポキシ樹脂
(DGDE-C3) を合成し,それを硬化して得られる硬化物の物性を評価した。その結果,二級水酸基の濃度が
高くなるとともに,融点の上昇と結晶の融解に基づく吸熱量の増加が確認された。さらに,硬化物の密度
が高くなった。これらの結果から,硬化物の結晶化には二級水酸基による分子間の水素結合が大きく関与
しているものと考えられた。
Si ウェハを被着体とする粘着テープの剥離挙動について,密度汎関数計算( DFT) を用いて未処理の Si
ウェハの表面であるアモルファスSiO2 と粘着剤の分子間に働く力と系のエネルギーを計算し,DFT で得ら
れた結果を再現するように分子動力学計算で必要な非結合相互作用パラメータを求め,分子動力学法( MD)
による剥離挙動のシミュレーションを実施した。粘着剤分子の被着体への圧着時間や,被着体の表面粗さ
を変更して剥離シミュレーションを実施した結果,圧着時間と相関のある被着体分子と粘着剤分子が一定
の距離以内に近接している原子対の数と,被着体の表面粗さが大きくなるほど,剥離応力の最大値・剥離
エネルギーが大きくなることを明らかにした。
本研究では「コンクリート内部の含水率とコンクリート板の表面の水分量変化」と「エポキシ樹脂および
ビニルエステル樹脂の接着強度と破壊形態」の関係性を明らかにすることを目的とした。コンクリート板は
水没するとコンクリート内部の含水率が極大化し,コンクリート板の表面は乾燥しにくくなるため,樹脂の
浸透によるアンカー効果は期待できなくなる。しかし,特定の構造を持つエポキシ樹脂とアミン硬化剤の組
み合わせは,水中硬化性や水置換性を持つため,界面の水を処理でき,コンクリート表面で湿潤接着を達成
できることが知られている。一般にビニルエステル樹脂の常温硬化で使用される促進剤の配位子は水に弱い
とされている。本稿ではビニルエステル樹脂に用いられる促進剤を,水に強い配位子に置き換え,水存在下
でも機能するように調整した。結果として,ビニルエステル樹脂と水に強い配位子の組み合わせはコンクリー
ト表面での湿潤接着を実現した。