化学安定性及び低表面自由エネルギーを有するフッ素ポリマー材料が注目されている。一方で,剛直な
立方体型の無機骨格に有機置換基が配置されている構造を有するため,かご型シルセスキオキサンは有機
無機ハイブリッド材料のナノビルディングブロックとして盛んに研究されている。その中に,フッ素置換
した完全縮合かご型シルセスキオキサン( F-CC-POSS) は一般的なフッ素ポリマーと同様に表面自由エネル
ギーが低いことが知られている。しかし,対称性の高いF-CC-POSS は結晶性が高く導入したポリマーマト
リクス中で凝集する傾向がある。これに対してF-CC-POSS の頂点の一つが欠損した不完全縮合POSS は結
晶性がより低いことが知られている。そこで本研究ではF-CC-POSS の頂点の一つが欠損したトリフルオロ
プロピル基置換不完全縮合POSS(TFP-IC-POSS) の欠損部位にリンカーの長さが異なるトリメトキシシリ
ル基を導入した3 種類のシランカップリング剤を合成した。得られたトリメトキシシリル基置換TFP-ICPOSS
を加水分解・縮合させることでシルセスキオキサン材料( TFP-IC-POSSs@SSQs) を作成し,FT-IR に
よる構造解析,熱特性,および走査プローブ顕微鏡(SPM) を用いた表面力学特性を評価した。その結果,
リンカーの長さはTFP-IC-POSSs@SSQs の構造及び物性に大きな影響を与えることを明らかにした。
* 京
一液加熱硬化型エポキシ樹脂接着剤を用いたアルミニウム合金 A2017-T3 接着継手のモードⅠおよびモード
Ⅱ繰返し荷重下における疲労き裂伝ぱ試験を行った。疲労き裂伝ぱ速度に及ぼす被着材の陽極酸化処理の影
響について,エネルギー解放率範囲ΔG との関係から検討した。陽極酸化処理を施すことでき裂の伝ぱ機構
が変化し,伝ぱ経路が界面あるいは擬界面から接着剤中を伝ぱする凝集破壊となった。このため,き裂伝ぱ
抵抗を高める結果となったが,このき裂伝ぱ抵抗の増加はモードⅠにおいて特に顕著であった。また,モー
ドⅠき裂伝ぱ挙動におよぼす湿潤環境の影響を調査した。接着した試験片を精製水中に所定の条件下で浸漬
後,き裂面に水分を供給しながらき裂伝ぱ試験を行った場合,き裂伝ぱ速度が実験室環境下に比べて著しく
高くなることが分かった。しかしながら,き裂長さの増加とともに,腐食生成物の破面への付着が生じるため,
伝ぱ速度は急激に低下した。