末梢白血球より, ゲノムDNAを抽出し, シトクロームP450 1A1(CYP 1A1)exon 7の遺伝子多型, グルタチオンS-トランスフェラーゼM1(GSTM1)遺伝子欠損型と肺癌, 口腔癌, 尿路上皮癌との関連性についてPolymerase chain reaction(PCR)法を用いて解析した. CYP 1A1のVal/-Val型は, 健常者群で88例中5例(5.6%)に対し, 肺癌患者群33例中1例(3.0%, [
P>0.05], オッズ比0.52[Ile/Ile + Ile/Val as base line], 95%信頼区間:0.21-17.3), 口腔癌患者群32例中4例(12.4%, [
P>0.05], オッズ比2.37, 95%信頼区間:0.60-9.30), 尿路上皮癌患者群85例中4例(4.8%, [
P>0.05], オッズ比0.82, 95%信頼区間:0.21-3, 16)であった. GSTM1欠損型の頻度は, 健常者群で39.8%に対し, 肺癌患者群45.5%, 口腔癌患者群50%, 尿路上皮癌患者群61.2%であった. GSTM1欠損型の頻度は, 尿路上皮癌患者群で統計学的に有意な増加(
P<0.05)が認められた(オッズ比:2.38, 95%信頼区間:1.28-4.34). CYP 1A1とGSTM1の遺伝子型を組み合わせて解析した結果, CYP 1A1 Val/Val型でかつ, GSTM1欠損型のオッズ比は肺癌患者群で1.42(95%信頼区間:0.12-16.8), 口腔癌患者群3.64(95%信頼区間:0.47-27.9), 尿路上皮癌患者群1.02(95%信頼区間:0.14-7.53)であった. 今回の実験結果から, GSTM1遺伝子欠損型が, 尿路上皮癌の遺伝的背景となっている可能性が明らかとなった.
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