重症心筋虚血時の心室性不整脈と伝導不均一性にリドカインとジルチアゼムが及ぼす影響を検討した.成犬をA, B, Cの3群に分け, それぞれ生理食塩水, リドカイン, ジルチアゼムを虚血前より持続投与し, 虚血はretrograde blood flow法を行った.B群では, 10連発以上の期外収縮からなる心室頻拍, 心室細動の発生率がB群に比べ高頻度であったが, C群では変化を認めなかった.伝導遅延不均一性の最高値を心外膜, 心内膜, 心筋層内で検討したが, 3群間に有意差はなかった.その最高値までの到達時間は, A群と比べ, B群が心外膜, 心筋層内で短縮し, C群が心内膜で延長していた.これらの結果より, リドカインは, 急速に心外膜, 心筋層内での伝導不均一性を進行させるため, 虚血による不整脈を増悪し, ジルチアゼムは心内膜での進行を遅らせるが, 心外膜, 心筋層内では影響を及ぼさず, 不整脈の発生にも影響しないことが示唆された.
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