Journal of UOEH
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20 巻, 4 号
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  • ―組織修復マーカーとしての17-ケトステロイド硫酸抱合体―
    西風 脩, 古屋 悦子
    原稿種別: 特別掲載
    1998 年20 巻4 号 p. 273-295
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    今日までのストレス科学はコルチゾール(17-OHCS: 17α-ヒドロキシコルチコステロイド), カテコールアミンに重きをおいたものが多く, これらは生物学的場よりすれば摩耗(H.Selye)の研究に属する.しかし, 生物はエネルギー変換のもと摩耗と修復の動的平衡の下に生を営むものであり, 生体の適応能把握は少なかれ, 上記陰陽両面より行うべきものとの視点から, 我々は17-OHCSを摩耗関連物質と捉え, 修復関連物質を他にもとめ, 17-ケトステロイド硫酸抱合体(17-KS-S)にそれを見出した.言い換えれば, それによりストレスにのみ重きをおいた今日までのストレス研究において摩耗より修復に至る経過観察を可能なものとし, ひと適応能把握に17-KS-S, 17-OHCS両者の同時測定が重要とした.我々はまた17-KS-Sの起源を副腎皮質デヒドロエピアンドロステロン硫酸抱合体(DHEA-S)にあることを見出し, ストレスはCRH, ACTH, カテコールアミン, コルチゾール(17-OHCS)の産生・分泌にはじまり, 同化因子としてのインスリンの分泌がそれに続き, その産生エネルギーをDHEA(17-KS-S)が利用, 組織をして修復に導くものと捉えている.上記ホルモンの均衡のとれた分泌は健康的な生活様式下にある健常生体に見出され, それらの破綻は17-KS-Sを低下に導く.ここに, 生物学的に相互に相反する作用を有する17-KS-S, 17-OHCSに立脚し, 特にひとの心と体の接点にある17-KS-S(脳においてDHEAよりDHEA-Sの産生, 神経細胞の機能維持に関与)を中心に研究をすすめることが重要とされた.
  • 蜂須賀 研二, 佐伯 覚, 緒方 甫, 中原 佳代子, 花田 陽子
    原稿種別: 原著
    1998 年20 巻4 号 p. 297-306
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    我々は授産施設と福祉工場で働く障害者の身体機能障害を評価し, これらの評価が産業医学的立場から健康管理活動に有用であるか否かを明らかにすることにした. 対象は福岡コロニーに勤務する身体障害121名と, なのみ工芸で働く精神薄弱35名であり, Barthel Index自己評価表, Frenchay Activities Index自己評価表, 日常生活満足度評価表を用いて, 日常生活動作, ライフスタイル, 主観的領域のQOLを評価した. 福岡コロニー勤務者は日常生活動作は自立しており, なのみ工芸勤務者よりもセルフケア能力は高いが移動能力は低く, ライフスタイルはより活動的であるが, 日常生活に関する4項目の満足度は低かった. これらの結果は働く障害者の特性を良く表現しており, 障害に関して産業医学的に重要な情報が得られ, これらの身体機能障害評価は産業医活動を行う上で有用であることが示された.
  • 晏 穎, 東 監, 谷本 昭英, 深町 幸代, 伊藤 英明, 安部 哲哉, 東 胤昭
    原稿種別: 原著
    1998 年20 巻4 号 p. 307-314
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    近交系の発癌耐性ラット(DRH)は, 発癌感受性である呑竜ラットから単離・樹立され, 3'-メチル-DABやアセチルアミノフルオレンなどによる肝癌の発生は著しく抑制されている. 代謝系の抑制による可能性の有無を調べるため, 上記の肝化学発癌物質とは代謝的活性化の全く異なるN-ニトロソジメチルアミンを用いて両ラットで発癌実験を行った. N-ニトロソジメチルアミンを離乳直後の雄ラットの腹腔内に1回(10 mg/kg)投与し, 1年後での発癌状態を調べた. 11匹の呑竜ラットで5匹に肉眼的に検出できる腫瘍が認められた. 4匹の呑竜ラットで9肝癌と, 他の1匹では膀胱癌が存在し、病理組織学的にも確認した. これに反し, 10匹のDRHラットでは肝および他の臓器で肉眼的に識別できるような腫瘍は皆無であった。これらの結果およびDNA付加体の分析を初めとするこれまでの知見からDRHと呑竜ラットにおける化学物質による発癌感受性の差異は代謝的活性化の段階以外の機序による可能性が高いことを示唆している.
  • 余 争平, 井料 佳久, 松岡 雅人, 伊規須 英輝
    原稿種別: 原著
    1998 年20 巻4 号 p. 315-322
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    ペンタクロロフェノール(PCP)は, ラット肝臓より得たミトコンドリアで酸素消費増加と呼吸調節比(RCR)低下をもたらした. これらのPCPの効果は, 1mMのL-カルニチンによって抑制されたが, D-カルニチンは無効であった. これと対照的に, ペンチレンテトラゾール(PTZ)は, 状態4呼吸時に150mMまで加えても, 酸素消費を亢進させなかった. ミトコンドリアを3.3mMのPTZとインキュベートすると, 酸素消費, RCR, ADP/O比いずれも低下した. しかも, これらは高濃度(20mM以下)のL-カルニチンによって抑制され得なかった. すなわち, L-カルニチンはPCPの影響に対しては明確な保護効果を示したが, PTZの作用からミトコンドリアを保護することはなかった. PTZ誘発けいれんにおけるカルニチンの抗けいれん作用は, ミトコンドリア保護によるのではない可能性が考えられる.
  • ―帰国子女の意識調査をとおして―
    坂本 洋子
    原稿種別: 原著
    1998 年20 巻4 号 p. 323-337
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    著者は十数年間帰国子女教育に携わり, 通算950名程の帰国生徒と接してきた. 英国からの帰国生徒は, 他国からの帰国生徒には見られない独特の雰囲気や優れた特質を有し, 卒後進路の発展性が非常に高いように思われた. それは個人要因による単なる偶然なのか, 英国の教育や学校文化, 社会文化の影響なのかを調査し, 結果を解析, 検討したので報告する. 因子分析により6因子が抽出されたが, 英国からの帰国生徒は, 「責任感に関する因子」と「自立自主性を示す因子」と「躾や規律に関する因子」の3因子において, 他の帰国生徒との間に有意差が認められた. 他の解析手法からも同様の結果が得られた。英国の学校教育は日本のように単線教育ではなく, 複線型学校体系を有している. また英国の学校教育の二大特色である, 生徒の能力と進度に合わせた教育の個人主義と, 中央からあまり拘束されない教育の分権主義について, 帰国生徒の記述した体験を基に考察した.
  • 安部 治彦, 沼田 哲也, 花田 秀幸, 合志 清隆, 中島 康秀
    原稿種別: 症例報告
    1998 年20 巻4 号 p. 339-343
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    塩酸ピルメノールは, 上室性・心室性頻脈性不整脈に対する新しい経口抗不整脈剤である. 我々は, 他剤抵抗性の発作性心房細動を有する女性患者に対し, 塩酸ピルメノール経口投与を行ったが, 投与後初期に著明な心電図上QT延長とT波の陰転化を再現性をもって来たした稀な症例を経験した. 塩酸ピルメノールの血中濃度は治療濃度以下であり, リンパ球刺激試験は陽性であった. 塩酸ピルメノール経口投与後初期に著明なQT延長とT波の陰転化を心電図上来たす機序として, 本症例の場合, 塩酸ピルメノールの濃度依存性の直接作用より, 何らかの免疫学的機序の関与が示唆された.
  • 大西 晃生, 楢崎 修, 花井 敏男
    原稿種別: 症例報告
    1998 年20 巻4 号 p. 345-352
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    両親がいとこ同士で, 腓腹神経にユニークな髄鞘異常を呈し, 文献上稀な常染色体劣性遺伝の運動感覚性ニューロパチー(HMSN)の3歳女児例を報告する. 臨床像は通常のHMSNⅠ型と同様であったが, 腓腹神経の組織学的所見で髄鞘塊が軸索内でなく外側のシュワン細胞原形質内に突出するいわゆるexcessive myelin outfoldingが認められた. 腓腹神経の有髄, 無髄線維数はともに対照より低値を示した. 近年本例のような症例はHMSN4BまたはCMT4Bと呼ばれ, その発症責任遺伝子解析が現在進行中である.
  • グウェン アイン ルオン, 松田 晋哉
    原稿種別: 報告
    1998 年20 巻4 号 p. 353-360
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    この報告において, 著者らはベトナムの炭坑労働者におけるじん肺問題の現状について紹介している. 石炭はベトナムにとって最も重要な輸出品であることから, 近年その産出活動が強化されてきた. しかしながら, 経済発展への強いインセンティブのために, 労働者の健康問題は必ずしも最も重要なものと考えられているわけではない. ベトナムにおける炭坑労働者の労働条件は劣悪であり, 健康保護対策も十分には実行されていない. 情報システムが未整備であるために, 公式統計は実態を過小報告している. じん肺の情報システムを構築するために必要な財政的負担の大きさを考慮すると, 現状を明らかにするための疫学的調査を行うことがもっとも効率的な方法である. また, 疫学的調査を国際協力の枠組みの中で行うことは, 疫学に関する基礎的知識と技術を先進国からベトナムに対して移転するためにも有用であると考えられる.
  • 有働 武三
    原稿種別: 論説
    1998 年20 巻4 号 p. 361-368
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    医療手段, 医療技術の進歩はさまざまな様相で院内生息菌の適応的な進化を促し, 入院患者の個々の基礎疾患に起因した病態の感染に対する抵抗性にも多様な修飾をみるにいたり, さらには各種医療器材を含む入院患者周辺環境における予期せぬ汚染源, 汚染経路, 汚染菌種などに原因した院内感染例が次第に特徴的となりつつある. こうした医療環境の今日的な状況を的確に認知し, 適切な対策を施すための責任と努力がいま医療人に対する課題として問われている. 医療手段や医療技術の進歩によってもたらされる院内感染に対するさまざまな対策活動には必然的に高度な知識や技術が求められる. そうした活動を支える一助として, 今日の医療環境における保健・衛生学的側面に触れた.
  • 1998 年20 巻4 号 p. 369-377
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
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