Journal of UOEH
Online ISSN : 2187-2864
Print ISSN : 0387-821X
ISSN-L : 0387-821X
24 巻, 3 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 荻ノ沢 泰司, 安部 治彦
    原稿種別: 総説
    2002 年24 巻3 号 p. 239-247
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    植え込み型除細動器(ICD)の心臓突然死予防効果については多くの大規模臨床試験においてその有用性が証明されている. また, lCD本体の小型化により, ペースメーカーとほぼ同様の手術手技による植え込み手術が可能となり, その適応が拡大されるとともに, 植え込み件数は年々増加の一途をたどっている. 心房リードを用いた第5世代のdual chamber ICDにより, 上室性不整脈に対する誤作動の減少が期待されている. 欧米では心不全に対する両心室ペーシング機能を備えたICDなど様々な機能の統合化された機種が開発され, その有用性が検討されている. しかしながら, 一方ではICDには誤作動の問題・植え込み患者の精神的負担や社会復帰等の問題が今後の課題として残されている.
  • 吉井 千春, 安西 崇, 矢寺 和博, 川尻 龍典, 中島 康秀, 城戸 優光
    原稿種別: 原著
    2002 年24 巻3 号 p. 249-255
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    当教室と株式会社京都科学で共同開発した肺音聴診シミュレータ "Mr. Lung" を実際の医学教育で使用し, 教育効果を確認した. 対象は産業医科大学医学部5年生100名. 臨床実習でローテートしてきた学生に対し, 90分間の肺音聴診教育を行った. 最初に肺音分類の概説を行った後, 3症例についてシミュレータに聴診器をあてて聴診し, 肺音の「異常の部位・種類」を解答させ, 解答の解説と鑑別方法を説明した. また聴診教育の前後で5段階法による聴診能力の自己評価を行った. その結果, 聴診の正答率は, 呼吸音の左右差; 36.9%, coarse crackles; 52.5%, fine crackles; 34.1%, wheezes; 69.2%, rhonchi; 62.1%, stridor; 22.2%であった. また聴診能力自己評価はすべての項目において講義後に有意に高得点を示した. 学生の肺音聴診能力は教育者側の予想以上に悪く, シミュレータを用いた繰り返しの聴診教育が必要と考えられた.
  • 劔 陽子, 山本 美江子, 松田 晋哉
    原稿種別: 原著
    2002 年24 巻3 号 p. 257-269
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    中学・高校生に対し効果的な性教育を行うこと, 継続的にピア・エデュケーションを実施することとともに, 医学生がヘルスプロモーションに関する実践能力を修得することを目的として, 毎年産業医科大学医学部で行われる公衆衛生学の学外実習の機会を利用した, ピア・エデュケーションによる性教育を実施した. 事前アンケート結果に基づいて, 中学・高校においてピア・エデュケーションを計画・実施した. 事後アンケートでは高校生, 中学生の90%以上が大学生のカウンセラーと話すことに「興味が持てた」「まあまあ興味が持てた」と肯定的に答えていた. 大学生からは, ヘルスプロモーションの技法の修得や自己効力感の増大を示唆するような感想が寄せられた. 今後は毎年行われる学外実習の機会を利用することで, 継続的にピア・エデュケーションによる性教育を行っていき, 行動変容につながるかどうかなど, 長期的な効果を見ていく必要がある.
  • 黒田 嘉紀, 笛田 由紀子, 合志 清隆, 中尾 裕之, 今井 博久, 加藤 貴彦
    原稿種別: 総説
    2002 年24 巻3 号 p. 271-280
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    1992年に某工場作業員がジクロロプロパノールの貯蔵タンク清掃作業中に溶剤に暴露され, 劇症肝炎を発症しわずか5日で死亡した症例が報告された. この作業員の血液から, ジクロロプロパノールの異性体である2,3-ジクロロ-1-プロパノール(DC1P)と1,3-ジクロロ-2-プロパノール(DC2P)が検出され, ジクロロプロパノールの中毒と診断された. しかし, ジクロロプロパノールについての詳細な報告がないため, 我々はジクロロプロパノールの毒性について, ラットを用いて種々の実験を行い以下の結果を得た. 1)1×LD50量(ラットの経口LD50=0.149mg/kg)において白血球数と血小板数の著しい減少, プロトロンビン時間と活性化部分トロンボプラスチン時間の延長, フィブリノーゲン濃度の減少を認めた. 2)1/2×LD50量において血清AST・ALTの著しい増加と病理組織学的に肝細胞壊死を認めた. さらに, 1×LD50量で肝組織における過酸化脂質量の増加, 還元型グルタチオン量の減少とグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性の低下を認め, ジクロロプロパノールの肝毒性にフリーラジカルの関与が推測された. 3)1/2×LD50量において海馬CA1領野の脱抑制が見られた. これらの結果を踏まえ, ジクロロプロパノールの毒性について概説した.
  • 酒井 昭典, 田中 伸哉, 阪田 武志, 綿貫 誠, 善家 深雪, 中村 利孝
    原稿種別: 総説
    2002 年24 巻3 号 p. 281-287
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    力学的負荷の消失が骨量減少を引き起こし, その後に再荷重すると, いったん減少した骨量が回復することが知られている. 力学的負荷の要請に呼応して, 骨量と骨構造は変化する. 骨組織における力学的刺激の感知から骨形成と骨吸収反応に至る過程におけるシグナル伝達には, 未だ不明な点が多い. 力学的負荷の増加に応答する正の骨量調節因子として一酸化窒素が, 力学的負荷の減少に応答する負の骨量調節因子としてp53が重要な役割を担っている. 力学的負荷の増減による骨量の調節機構を明らかにすることは, 宇宙飛行や長期臥床などによる微小重力環境への適応を模索する点で意義があるばかりか, 炎症性および代謝性骨疾患の病態解明の有力な手がかりになると思われる.
  • 黒田 悦史, 山下 優毅
    原稿種別: 総説
    2002 年24 巻3 号 p. 289-299
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジン(PG)は, 種々の細胞から産生されるアラキドン酸代謝物であり, 生体のホメオスタシスの維持や病態形成に密接に関わっている生理活性脂質である. その一つであるPGE2は, 細胞膜リン脂質からホスホリパーゼA2(PLA2), シクロオキシゲナーゼ(COX), PGE合成酵素を経て産生され, 免疫系においては主にマクロファージ, 樹状細胞のような抗原提示細胞から産生される. PGE2は様々な免疫担当細胞の活性化を制御しているが, その主な作用機序はアデニル酸シクラーゼを介した細胞内cAMPの上昇によるものであり, サイトカイン, ケモカインの産生, さらにはサイトカイン受容体および細胞表面抗原の発現制御と幅広く作用する. また, その作用は主にTh1タイプの免疫反応の抑制に関与しており, Th1/Th2バランスと免疫疾患との関わりにも注目されている.
  • 鬼頭 知宏, 横田 晃
    原稿種別: 総説
    2002 年24 巻3 号 p. 301-311
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    現在の悪性グリオーマの治療は手術療法を基本として, 放射線療法, 化学療法といった補助療法が中心に行われている. しかし, これらの集学的治療を駆使しても生存率は20年前とほとんど変わっていない. 新しいグリオーマの補助療法の手段として免疫療法が以前より注目されているが, 初期の免疫療法はいずれも失敗に終わっている. これには, 血液脳関門の存在や強力な抗原提示細胞である樹状細胞が脳には分布しないことなど, 脳内の免疫学的特性あるいは免疫監視機構から逃れる手段を多数持つグリオーマの免疫生物学的性質が関与していると思われる. しかし, 今日の免疫学や分子生物学の進歩が, 免疫遺伝子療法や樹状細胞療法といった, これらの問題を克服すべく新しい免疫療法の方向性を見出した. まだ臨床での成功例は少なく, 副作用などの問題も山積しているが, 将来的に免疫療法がグリオーマの治療戦略に重要な役割を果たすと考えられる.
  • 生嶋 美春, 石原 逸子, 川本 利恵子
    原稿種別: 論説
    2002 年24 巻3 号 p. 313-325
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    我が国の産業保健分野に従事している看護職は, 健康管理関連業務を通して専門職としての役割を果たしてきたが, 役割やその職務範囲は今も検討されている. その教育カリキュラムは産業看護の専門性を系統的に構築されておらず, 大学院の教育課程を含めて検討されている. そこで, 本稿では, 産業保健師を対象に専門職として必要な, 知識・能力について意識調査を行い, 米国の産業看護職の職務と教育の現状も参考に, 大学院の教育課程案について提言した. 意識調査の結果, 産業看護専門職として必要なのは, 看護職としての基礎的な知識・能力の他に, メンタルヘルスと情報処理に関する内容とマネージメント能力であった. 米国では, 産業看護職の役割範囲を化学物質の生態影響を企業内の暴露だけでなく地域まで広げ, 産業・環境・保健・看護をコアカリキュラムとして, 疫学, 統計学, 中毒学, 労働衛生, 安全管理, 人間工学, 経営管理, 研究および公衆衛生政策などが修士課程の教育に導入されていた.
  • 筒井 隆夫, 堀江 正知, 加地 浩
    原稿種別: 調査報告
    2002 年24 巻3 号 p. 327-336
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    中途障害者の復職に関する産業医の役割について文献的に調査した. その結果, 産業医は障害発生後, なるべく早期より医療関係者と連携して障害や産業医学的な情報を交換し, 復職時には障害が業務に与える影響の評価や適正配置など産業医学的な判断や指導を行う必要があると考えた. また, 約500万人規模のF県下の障害者雇用, 福祉, 医療に関係する15の機関・施設に対し聞き取り調査を行った. 中途障害者の復職を支援する機関・施設は多数存在したが, F県の場合, 就労面では地域障害者職業センターが, 福祉面では保健福祉センターが主要な相談窓口になっていた. ただし, 一部のサービスは失業者に限定されており, 復職希望者が利用できないものも存在した. 中途障害者の復職を成功させるには, 産業医はこれらの機関と積極的に連携し社会的資源を活用する必要があると考えた.
  • 荻ノ沢 泰司, 安部 治彦, 鈴木 義之, 岡崎 昌博, 中島 康秀
    原稿種別: 症例報告
    2002 年24 巻3 号 p. 337-343
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    多剤抵抗性の難治性心室頻拍(VT)・細動(VF)にべプリジルが著効を示した虚血性心筋症の一例を経験した. 症例は68歳男性. 冠動脈造影にて虚血性心筋症と診断. VT・VFが頻発するため, アミオダロン内服及びニフェカラント持続静注, 及び植え込み型除細動器(ICD)植え込み術施行. 持続性VTが再発するためベプリジル内服投与をしたところ, VT・VFの再発は抑制され, ニフェカラント持続静注からの離脱が可能となった. ICDとベプリジルによる致死的心室性不整脈の停止と予防, さらにペーシングによるベプリジルのQT延長作用によるTorsades de Pointesの抑止という治療(hybrid therapy)が有用であった症例と考えられた.
  • 産業医科大学
    原稿種別: 報告
    2002 年24 巻3 号 p. 345-358
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
  • 産業医科大学
    2002 年24 巻3 号 p. 359-
    発行日: 2002/09/01
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
feedback
Top