石狩湾岸の石狩町樽川, 同町花畔, 並びに札幌市屯田における4地点より得られたボーリングコアの花粉分析の結果, 新たに, 7花粉帯が識別された. 分析に用いた試料は, 深度130~200mに達するほぼ連続したコアから得た. 各花粉帯とも, 亜寒帯性の針葉樹花粉が非常に多く検出され, 現在よりも, 寒冷な気候を示している.
最も古い Zone Iでは,
Picea, Larix, Abies などの亜寒帯性の針葉樹が優勢である. 特に, 北海道では絶滅種である
Larix が, この Zone の上部に多く検出された. この時代は現在と比べ, 年平均気温で約8℃低かったと考えられる. 全層中最も寒冷な時代である.
Zone IIでは,
Picea, Abies のほか, Zone Iの
Larix に代り, やはり北海道では, 現在天然分布しない
Tsuga が優勢となる. 前層に比べ幾分温暖化し, かつ, 冬期に乾燥する気候に移行した. 時代は, I, IIともに, 31,000年より古く, 主ウルム氷期以前の堆積物と考えられる.
Zone IIIは,
14C値 (30,000y. B. P.) からみて, 主ウルム氷期の初期に対比される. その植生は,
Picea, Abies, Betula が主で, これに僅かに
Larix, Tsuga を伴う. 現在より約6℃低温であった.
Zone IVは, 2つの
14C値 (26,000y. B. P., 29,000y. B. P.) に挾まれる時代である. Zone I, II, IIIに比べての
Picea の減少と,
Corylus, Ulmus, Juglans といった温帯性広葉樹の増加から, 一時的に温暖化したと考えられる. Zone VIIの最上部を除き, 全層中, 最も温暖な時代である. 気温は, 年平均で現在より約4℃低かった.
Zone Vでは, 再び
Picea が増加し, 広葉樹は減少する. その樹種構成は, Zone IIIとよく似ており, Zone IVの時代より再び寒冷化した.
Zone VIでは,
Larix が再び増加し, その植生は, Zone Iに似ている. 現在の石狩に比べ, 年平均気温で, 6~7℃低温であった. Zone Vの下底が約26,000年前であり, 従って, Zone V,
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