第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
49 巻 , 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
「古環境変動の解明へ貢献する湖沼堆積物の役割」特集号
  • 里口 保文, 竹村 恵二, 公文 富士夫, 井内 美郎, 高原 光
    2010 年 49 巻 3 号 p. 83-84
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
  • 里口 保文
    2010 年 49 巻 3 号 p. 85-99
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    人間を含めた陸上生物に対して影響を与えてきた陸域の環境変動を理解するためには,陸域において安定的に細粒砕屑物をためる湖沼環境の堆積物を対象とする研究を行う必要がある.さらに,その研究を百万年オーダーで行うためには,その対象となりうる長期にわたって湖沼環境を保った湖を対象とする必要がある.従来,湖を対象とした長時間スケールの研究は琵琶湖やバイカル湖で多かったが,近年にはICDPなどにより世界の多くの湖で行われつつある.本論では,詳しい研究が行われてきた琵琶湖を対象に,これまでの層序学的研究をまとめ,深層ボーリングコアの記載と物理探査データから,過去の堆積速度変化について検討した.その結果,琵琶湖の南湖地域と北湖地域の堆積速度は,Kb-Ksテフラ降灰時期(60~45万年前)付近まではほぼ同様であったが,それ以降には北湖側で速くなった.また,北湖地域にある中央撓曲は約44万年前までに存在していたことを明らかにした.また,琵琶湖がある場所の約44万年前と約90万年前の古地形を検討した.
  • 檀原 徹, 山下 透, 岩野 英樹, 竹村 恵二, 林田 明
    2010 年 49 巻 3 号 p. 101-119
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1982~1983年にかけて,琵琶湖1400 mコアとして掘削された湖底面から基盤までの堆積物(上位よりT層,S層,R層)の編年を再検討した.堆積物に挟まれる火山灰についての既存のフィッション・トラック(FT)年代データでは,800 mの厚みをもつ湖底堆積物は200万年前からのもので,S層に不連続があるとされた.しかし,既報FTデータには,(1)238Uの自発核分裂壊変定数,(2)熱中性子線量測定,(3)FTの検出効率に関する重要な問題点が含まれている.これらの問題を解決する最近の研究に基づき,8枚の火山灰の既報FT年代値は約40%若く再較正された.深度635.1 mのテフラ試料(B943-3)に最新のFT年代測定を実施し,1.00±0.08 Maの結果を得た.この値は再較正年代と一致する.コアから採取した55層準の試料について,火山灰分析も行った.全鉱物組成,重鉱物組成,火山ガラス形態分類,火山ガラス屈折率,斜方輝石および角閃石屈折率の系統的な記載岩石学的分析に基づき,12層準はテフラでないことが明らかにされ,T層の中に広域テフラ13層準(K-Ah, U-Oki, DSs, AT, SI, DNP, Aso-4, K-Tz, Ata, Ata-Th, Aso-1, Tky-Ng1, Kkt)を含む38試料がテフラと認定された.S層からは今熊IIテフラが見つかり,R層のB943-3は1 Maの猪牟田ピンクテフラに対比された.新しく得たFT年代と広域テフラとの対比から,堆積物の磁気層序が単純に説明できた.堆積物上部469 m厚の正磁極帯はブルネ・クロノゾーン,その下位が604 mと639 m間のハラミヨ・サブクロンを含む松山クロノゾーンに対比される.694 mの正磁極帯はコブマウンテン・サブクロンの可能性がある.再較正されたFT年代値だけでは制約は弱いが,広域テフラや磁気層序境界の年代から,R層,S層およびT層は有意な不連続を伴わず,ほぼ一定の堆積速度で連続的に堆積したものであると示唆される.
  • 増田 富士雄, 齋藤 有, 里口 保文
    2010 年 49 巻 3 号 p. 121-131
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    琵琶湖南湖の東岸,琵琶湖博物館のある烏丸半島で掘削された「烏丸地区深層ボーリング(烏丸ボーリング)」の基盤地形上での位置についての再考と,基盤直上から上位へ,長さ62 m(掘削深度842~904 m)の部分,すなわち180万~190万年前から約170万年前頃の地層の堆積相解析を行った.その結果,烏丸コアの掘削地点の東方の野洲川・草津川平野の地下に,琵琶湖堆積物の基盤地形上の大きな河谷(主谷)が存在している可能性を述べた.そして,烏丸コアの最下部が示す堆積環境は,河川の支谷の扇状地あるいは谷壁に発達した崖錐であった場所に,主谷から天然ダム湖の水位が上昇してきて,水位変動をしながらも,そこが浅く狭い湖からより深い広い湖に次第に変化していった.また,この結論は,琵琶湖の起源に関する情報が掘削地点の東方の主谷を埋積した堆積物に残されている可能性を示している.
  • 奥田 昌明, 中川 毅, 竹村 恵二
    2010 年 49 巻 3 号 p. 133-146
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    日本列島で数十万年の時間尺度をもつ湖沼堆積物はいくつかあるが,連続性と編年確度に優れた地点は今のところ琵琶湖である.その上部粘土層から得られた花粉データは過去43万年を包含しているが,常緑広葉樹の多産はMIS 1とMIS 11に限られ,間氷期の指標としては使いにくい.この原因は冬季気温が間氷期ごとに異なることによると思われる.氷期と(亜)間氷期の指標としては,むしろ亜寒帯性針葉樹と温帯性針葉樹が好適であり,両者の花粉比をとると万年スケールで海洋酸素同位体比曲線とよく合うことから,中期更新世の湖沼堆積物に対する編年手段として期待される.花粉がもつ長期スケールの古気候情報を取り出す手段としては,モダンアナログ法(MAT)が有望である.絶滅種の影響は1 Ma以降であれば比較的小さい.数十万年スケールのMAT法の適用例である琵琶湖の結果を,初学者向けに概説した.また,花粉に基づく長期スケールの古気候復元法に関する現状の課題および解決案を示した.
  • 竹村 恵二, 岩部 智紗, 林田 明, 檀原 徹, 北川 浩之, 原口 強, 佐藤 智之, 石川 尚人
    2010 年 49 巻 3 号 p. 147-160
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    2007年の6地点のピストンコア試料と,2008年2地点のボーリング試料から得られた火山灰編年による過去5万年間の琵琶湖の堆積物層序を明らかにし,従来得られていたコアの情報も含めて,琵琶湖におけるマルチサイト間での相違についても議論した.琵琶湖北湖では,南北の湖盆とその間の鞍部とに区分された湖底地形区分と対応して,北湖南部湖盆で平均的な堆積速度は1 m/kyrsを超え,鞍部で0.3~0.4 m/kyrsとなる.北湖北部湖盆の東部にあたる長浜沖では,水深40 mを境に堆積速度の様相が変化することが明らかになった.また,地形的鞍部における南北方向の堆積速度の相違は,湖岸からの堆積物供給量に左右されている可能性がある.
  • 齋藤 めぐみ, 林 辰弥
    2010 年 49 巻 3 号 p. 161-171
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    珪藻化石の個体サイズについて,分類学,生態学,古環境学の視点から議論した.珪藻の個体サイズは,無性増殖によって減少し,有性生殖によって回復する.一方で,個体サイズは環境要因にも影響され,その地質学的な時間スケールでの変化は,環境変化に対する珪藻と生態系全体の応答や生存戦略の進化の面で注目される.琵琶湖湖底ボーリングコアの解析結果によれば,Stephanodiscus suzukiiの個体サイズは完新世よりも約2~1万年前の退氷期に大きかった.また,珪藻の個体サイズに強く影響すると考えられる有性生殖の頻度は,Aulacoseira nipponicaではとくに退氷期において,それ以前以後と比べ数十倍にもなった.珪藻化石において古環境復元の指標を確立するためには,まず,このような変化を記載し,他の指標から推定された環境の変化と照らし合わせて,生態系の変化を議論していくことが必要だろう.
  • 井上 淳, 北 瀬(村 上) 晶 子
    2010 年 49 巻 3 号 p. 173-180
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    後氷期は,人類の文化・文明が発展するとともに,人が地域環境・地球環境に大きな影響を与えるようになった時代である.人の文化の発展,環境への影響の拡大には,火の利用法の発展が背景にある.湖沼などの堆積物には,こうした火の使用によって生成された微粒子が含まれる.堆積物中の微粒炭は,必ずしも人為的な火を示すものではないが,花粉分析など他の分析結果や歴史的な背景に基づいて,しばしば人為的な火の痕跡として認めることができる.球状炭化粒子は産業活動に伴う化石燃料燃焼によって生成され,19世紀以降の堆積物にのみ含まれる.これらの粒子は単独で,あるいはその他の指標を加味することにより,過去の人類の火の使用を示す.また,燃焼に伴い生成されるこれら微粒子の違いは,火の目的や性質の違いを反映している.これらの微粒子は人類がいつ頃からさまざまなスケールの環境に影響を与えはじめたのか,また人類が環境に影響を与えはじめた時代を地質学的に設定する上で重要な役割を果たすだろう.
  • 高原 光
    2010 年 49 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 2010/06/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    生態系の変化にはさまざまな現象があり,それらに特有な空間スケールと,それらが起こる頻度に関連した時間スケールがある.古生態学的研究を進めるには,目的に応じて,それに適した両スケールを考える必要がある.時間スケールについては,最終氷期において,千年スケールで起こったDansgaad-Oeschgerサイクルのような急激な気候変動に対する植生の応答関係を,時間分解能の高い研究によって解明することができる例を示した.空間スケールについては,琵琶湖のような大規模な堆積盆は広域のスケールでの植生復元を,森林内凹地(forest hollow)のように小規模な堆積盆では林分規模での植生復元に適していることを示した.さらに,複数地点の堆積盆における堆積物の分析によって,古植生の空間的な配置パターンを解明できることを紹介した.
feedback
Top