本論では,秋田県沿岸南部のにかほ市および中部の潟上市の沖積低地から見出されたイベント堆積物について報告する.
それぞれの地域で採取されたボーリングコア試料からは,沖積低地に堆積したシルト層や泥炭を主体とした細粒堆積物中に,砂を主体とした粗粒堆積物が3層準に挟まれることがわかった.これら粗粒堆積物は,基底面が侵食面を呈すること,侵食面直上の堆積物中にリップアップクラストがみられること,内部に斜交層理等の堆積構造がみられることなどから,ある程度強い水流を伴ったイベント堆積物と解釈される.イベント堆積物の形成年代は,
14C年代測定値から13〜14世紀頃,8〜9世紀頃,紀元前後と推定される.
イベント堆積物は,調査地点の周辺に大規模な河川が存在しないことから,洪水堆積物の可能性は低い.また,海岸線からもある程度距離が離れていることから,現時点では津波堆積物の可能性が高いと考える.
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