第四紀研究
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49 巻, 2 号
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論説
  • 吉田 英嗣, 須貝 俊彦, 大森 博雄
    2010 年 49 巻 2 号 p. 55-67
    発行日: 2010/04/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    火山麓に分布する流れ山は,大規模山体崩壊が過去に発生した証拠として,また,岩屑なだれのメカニズムを推察するうえで,重要な研究対象とされてきた.本研究では,流れ山地形がなお崩壊や岩屑なだれに関して地形学的に重要な情報を提供してくれるものと捉え,岩屑なだれの流下方向における流れ山の分布様式を検討し,流れ山地形に新たな地形学的意義を与えることを試みた.研究対象は,日本における4つの岩屑なだれが形成した流れ山であり,これら岩屑なだれは山麓に拡散した典型例とみなされる.空中写真判読により抽出した流れ山の数は,尻別火山の172,有珠火山の262,岩木火山の200,那須火山の643であり,GISを用いて流れ山の形態データを取得した.
    いずれの事例も,流れ山地形は山麓の下部斜面から平地にかけて緩やかな斜面として存在する.そして,流れ山のサイズは下流方向に減少する傾向が認められる.この減少傾向は,流れ山のサイズと給源からの距離との回帰分析によれば,指数関数で近似しうる.まず,回帰関数は,距離ゼロ(給源)における流れ山のサイズが崩壊の体積に規定されていることを示している.すなわち,崩壊の規模に応じて,崩壊部に発生する初期段階での割れ目の大きさが決まるらしい.他方,流れ山のサイズの減少割合は,等価摩擦係数の逆数で示されるような岩屑なだれの流動性に規定されていると考えられる.換言すれば,流動性の小さい岩屑なだれでは流れ山が急速に縮小するのに対し,大きい岩屑なだれでは緩やかである.以上の検討により,流れ山のサイズと給源からの距離との関係は,火山体ならびに岩屑なだれの流動特性を反映していることが明らかとなった.
雑録
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