第四紀研究
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38 巻 , 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 佐瀬 隆, 細野 衛
    1999 年 38 巻 5 号 p. 353-364
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    八戸市天狗岱に位置するテフラ-土壌累積層について,最終間氷期以降の土壌層の植物珪酸体分析を行った.その植物珪酸体群集は,氷期-間氷期サイクルに対応する変動を示し,植物珪酸体分析がテフラ-土壌累積層に記録された環境変動を解読する有効な方法になることが確かめられた.最終氷期の土壌層は,イチゴツナギ亜科起源,針葉樹起源の珪酸体が優勢な寒冷な気候を示す珪酸体群集で特徴づけられた.また,最終間氷期の土壌層では,酸素同位体比ステージ(δ18O stage)5a,5b,5eに対応する珪酸体群集の明瞭な変動がとらえられた.ステージ5aの土壌層の珪酸体群集は,ササ属起源と広葉樹起源の珪酸体が優勢で,前後の時代より温暖な気候を指示した.ステージ5bの土壌層では,イチゴツナギ亜科起源と針葉樹起源の珪酸体の頻度が相対的に高く,最終間氷期内の一つの寒冷期を示した.さらに,ステージ5eの土壌層の珪酸体群集は,メダケ属起源の珪酸体が優勢であり,完新世より温暖な気候が推定された.
  • 高地 セリア好美, 井上 克弘
    1999 年 38 巻 5 号 p. 365-375
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北上山地尾根沿いには,約350haに及ぶ風食荒廃地が存在しており,特に,風上である西向き斜面に多く見られる.風食荒廃地周辺の表層は,角礫層上に更新世の秋田-駒ヶ岳起源の秋田-駒ケ岳-gと柳沢浮石,そして完新世の十和田火山起源の中掫浮石と岩手山起源の岩手-bの各テフラを母材とする土壌の累積層からなり,草地・二次林域ではこれを風積土層が覆う.当地域はかつて天然ブナ(Fagus crenata)林に被われていたが,馬や牛の飼育のために皆伐され,それが土壌荒廃の引き金となったと思われる.その後,不十分な管理もしくは放置により,森林の保護を失った土壌は氷河期的な厳しい環境にさらされて,凍結,融解を繰り返し,風食と雨滴浸食により土壌荒廃が進んだ.調査地域の土壌はアロフェン質であり,その土壌特性は浸食を著しく促進させた.埋没A層の14C年代値によると,土壌荒廃は江戸時代(270±80yrs BP)から明治時代(100±70yrs BP)に始まったと推定される.厳しい環境下における森林伐採後の不適切な管理が,荒廃を進ませたのである.北上山地における土壌荒廃は,厳しい気候,土壌特性,そして人為的活動の相互作用の結果である.
  • 峯本 須美代, 兵頭 政幸, 成瀬 敏郎
    1999 年 38 巻 5 号 p. 377-386
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海東部における湿原堆積物の定方位試料から25~16kaの地磁気永年変化記録を得た.完新世の地磁気永年変化データと合わせてプロットすると,これまで報告されていた完新世以前から7.5kaまで継続する長期の偏角西振りの開始時期は16ka以降であること,およびその西振り期間は4,000年以上,8,500年以下であることがわかった.期間25~16kaの偏角は,東振りが卓越している.特に24~19.5kaの間は,西振り偏角が観測されていない。期間25~16kaの伏角は,完新世に比べやや低伏角で,変動幅が小さい.地磁気ベクトルの運動は,約18ka以前は大きな時計回り回転が卓越し,それ以降は半時計回りが卓越する.最終氷期の地磁気永年変化の多くの特徴は,年代決定に使える可能性がある.
  • 池田 明洋, 落合 浩志, 小泉 格
    1999 年 38 巻 5 号 p. 387-399
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    アジアモンスーンと熱塩ベルトコンベア循環,そしてホモサピエンスのウォレス線越えを調べるために,ジャワ島南方沖から採取された海底堆積物に含まれる珪藻群集・有孔虫殻の酸素同位体比・鉱物組成などを分析して,海流系の変遷を復元した.その結果,次のことが明らかになった.(1)(亜)氷期には西オーストラリア海流が強化されて,熱帯域と亜熱帯域の境界域は低緯度域へ移動したこと.(2)間氷期には赤道反流が強化されて,境界域は高緯度域へ移動したこと.(3)ジャワ沿岸流は北西モンスーンの影響を受けて,酸素同位体比ステージ区分の4後期から3初期(6.5万~5万年前)に強化されたこと.(4)熱塩ベルトコンベア循環の一部であるインドネシア通過流が弱体化したステージ3から2にかけての時期(3万~2万年前)に,ジャワ島沿岸域の湧昇流は強化されたが,ベルトコンベアが稼働すると,インドネシア通過流は水温躍層水を西方へ移動させるために,湧昇流の活動が低下したこと.(5)ホモサピエンスは,北西モンスーンの影響を受けてジャワ沿岸流の東流が強化されはじめた6.5万年前から東流が停止した5万年前までの間に,ウォレス線を越えた可能性が高いこと.
  • 佐藤 裕司, 加藤 茂弘, 井上 史章, 兵頭 政幸
    1999 年 38 巻 5 号 p. 401-410
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    兵庫県,播磨平野東部の加古川市都台において,海成粘土を挾む段丘堆積層を新たに見いだし,層相からI~IVの4つの堆積ユニットに区分した.珪藻分析の結果からみた堆積環境は,ユニットIが淡水成,ユニットII・IIIが海成または汽水成,ユニットIVが陸成で,段丘堆積層は海進・海退の1サイクルを示す.ユニットIII中に挾在する加古川火山灰は,岩石記載的特徴の一致から,大阪平野地下のMall(2)層中の甲子園浜I火山灰や,215kaに降下したと推定される琵琶湖高島沖ボーリングコア中のBT51火山灰に対比された.したがって,段丘堆積層のユニットII・IIIはMall(2)層に対比でき,酸素同位体ステージ7.3における相対的高海面期に堆積した可能性が高い.また,層相と珪藻遺骸群集の種組成に基づいて,火山灰層準が旧汀線と認定され,当時の汀線高度が現在の海抜約44mにあることがわかった.この旧汀線高度と加古川火山灰の推定降下年代から,当地点における215ka以降の平均隆起速度は0.2~0.3mm/年と推定される.
  • 加藤 茂弘, 佐藤 裕司, 松原 尚志, 兵頭 政幸, 檀原 徹
    1999 年 38 巻 5 号 p. 411-417
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    六甲山地西麓に分布する明美累層高塚山部層に挾在する高塚山火山灰層から0.41±0.12Maのフィッション・トラック年代を得た.高塚山火山灰層の岩石記載的特徴は,大阪層群のMa9層最下部に挾まれる港島II火山灰層のそれにほぼ一致し,両火山灰層の対比を支持する.さらに高塚山火山灰層は,岩石記載的特徴と降下年代の類似性から,約0.39Maに噴出したと推定される琵琶湖高島沖ボーリングコアのBT76火山灰層に対比される可能性が高い.高塚山火山灰層の年代と対比結果から,高塚山部層に挾在する海成層は大阪層群のMa9層に対比でき,酸素同位体比ステージ11に相当する時代に堆積したと考えられる.
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