小長梁遺跡の1.36Maとされる層準の堆積物から,篩による水洗法で得た小型哺乳類化石のうち,本論文ではトガリネズミ形目と兎目の化石を系統分類学的に記載した.トガリネズミ形目の化石は歯の形態の詳しい比較から,トガリネズミ科トガリネズミ亜科のトガリネズミ族に属することが明らかになった.この族を構成する多くの属のうち,アジアの鮮新統と更新統から知られる属と比較すると,今回の化石は
Sorexに属することがわかったが,標本の不完全さから種の同定は行なえなかった.兎目の化石は,すべてナキウサギ科に属し,それらは大きさが明らかに異なる2種類に分類できる.中国の鮮新統や更新統から知られるナキウサギ科の属は
Ochotonaと
Ochotonoidesのみで,今回の化石のうち小型の種類は形態や大きさから,
Ochotonaに属する.中国の鮮新世とそれ以降現在までの時期の多くの
Ochotonaの種と比較した結果,小型の種類は絶滅種の
O. youngiに同定にできた.一方,大型の種類は標本が不十分で,
Ochotona or
Ochotonoides sp.とするにとどめた.
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