第四紀研究
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46 巻 , 2 号
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論説
  • 副田 宜男, 宮内 崇裕
    2007 年 46 巻 2 号 p. 83-102
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/06/19
    ジャーナル フリー
    第四紀後期河成面の変位様式の解析に基づき,東北日本内弧の上部地殻の短縮による活構造の進行と,出羽丘陵の隆起過程を考察した.雄物川および岩見川流域の河成段丘面群のうち,M1面とされた地形面は洞爺火山灰(Toya)との層位関係などから,最終間氷期最盛期(125ka)に対比される.M1面の高度分布から推定される出羽丘陵の第四紀後期における平均隆起速度は最大0.5mm/yr, 横手盆地西縁で0.1mm/yrである.実際の地表変形をもとに地下の断層形状と変位量を検討した結果,北由利断層群から地震発生層下限まで延びる2つのランプを有する東傾斜の逆断層が導かれ,断層折れ曲がり褶曲の成長に伴う出羽丘陵の隆起が示された.求められた水平歪速度(6.6×10-8/年)は,出羽丘陵が第四紀後期も強短縮の場にあることを示す.また,浅部において断層面上のすべりが大きく減衰するという計算結果は,断層の深部と浅部で地殻短縮のプロセスに違いがあることを示唆する.
  • 能美 仁博, 横山 祐典, 三浦 英樹, 大河内 直彦
    2007 年 46 巻 2 号 p. 103-117
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/06/19
    ジャーナル フリー
    南極氷床が最終氷期以降の突然かつ大規模な海水準上昇の起源の一つであるかを検証するために,南極半島周辺海域の3地点における氷山由来の砂礫(IRD)と陸源粒子の起源および堆積量の変動を復元した.表層堆積物の分析から,K2O/Na2O比は南極半島とウェッデル海沿岸起源の物質で異なる値を示し,その空間分布は表層海流と対応していることが明らかになった.その時代変化を検討した結果,現在では周南極海流の通過域であるGC1802コア採取地点の19~8ka間に,ウェッデル海沿岸起源の物質が卓越する変化が認められるが,他の2地点では過去2.5万年間において粒子の起源に著しい変化はなかった.今回のIRD分析および先行研究との比較から,南極半島起源のIRDは25~17kaに特に多く,17ka以降は少なくなることがわかった.また,15~12kaにはウェッデル海沿岸および南極半島起源のIRDの極大が認められた.
  • 高清水 康博, 嵯峨山 積, 仁科 健二, 岡 孝雄, 中村 有吾, 西村 裕一
    2007 年 46 巻 2 号 p. 119-130
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/06/19
    ジャーナル フリー
    北海道胆振海岸東部において,津波災害の履歴を知るために津波堆積物の調査を行った.その結果,地層中に17世紀のイベント堆積物が挟在することが明らかになった.この砂質堆積物は泥炭層に上下を挟まれ,海岸線に沿って平行に分布し,層厚は数cmで海側から陸側へ次第に薄くなって消滅する.内陸側へ約1~2kmの範囲まで分布し,最高で現標高8mの地点まで分布する.粒度組成は,海側では砂質,陸側では泥質になる.層厚は,局所的な地形の起伏にコントロールされ,凹地で厚く堆積している.さらに,海~汽水生の珪藻化石が含まれており,珪藻化石全体に占める海~汽水生の割合は,海側で高く陸側で低くなる.これらの特徴は,このイベント堆積物が津波によって形成されたことを示している.この津波のトリガーは不明だが,今後さらに検討される必要がある.
  • 竹下 欣宏, 三宅 康幸, 酒井 潤一
    2007 年 46 巻 2 号 p. 131-146
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/06/19
    ジャーナル フリー
    長野県中部松本盆地の南縁部には,梨ノ木礫層と呼ばれる陸成堆積物が分布している.梨ノ木礫層は盆地内部を埋積した最初の堆積物とされ,その堆積年代は松本盆地の形成過程を検討する上で注目されてきたが,確定していなかった.そこで,梨ノ木礫層と同礫層を整合に覆う梨ノ木ローム層中に挟在する10層のテフラを記載し,年代の明らかな古期御岳火山テフラとの対比を検討した.その結果,10層のテフラのうちには古期御岳火山テフラと明確に対比できるものがあり,梨ノ木礫層の堆積は約0.78Maには始まり,約0.64Maまでには終了したことが示された.
    さらに,テフラ対比により梨ノ木礫層は,上総層群・国本層上部~長南層もしくは笠森層基底部に対比され,MIS 19~17もしくは16の堆積物であることが明らかになった.これにより,梨ノ木礫層は単一の氷期-間氷期サイクル間の堆積物ではないことが示され,松本盆地と飛騨山脈の地形コントラストの顕在化により形成された堆積物と推定された.
総説
  • 植村 立
    2007 年 46 巻 2 号 p. 147-164
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/06/19
    ジャーナル フリー
    最終氷期において,グリーンランドと南極で数千年周期の気候変動の位相が異なっていたことが,氷床コアなどの解析によって明らかになった.このような変動のメカニズムを理解するためには,過去の気候を正確に復元する必要がある.極域氷床コアから過去の気温変動を推定するには,掘削点における降水の安定同位体比を気温に校正する必要があり,それには現在の観測による地域的な両者の相関関係が用いられてきた.ところが,掘削孔内温度の解析や気泡空気の同位体分析といった新しい手法により,グリーンランド内陸においては,従来の手法が実際の気温変動を約半分に推定することがわかってきた.この過小評価の有力な原因は,降雪量の季節変動パターンの変化である.また,降水の同位体比は,水蒸気が蒸発した海域の表面水温の影響も受ける.近年,極域氷床コアのd-excess(水の水素と酸素安定同位体比を組み合わせた指標)を用いて,水蒸気が蒸発した海域の古環境復元が行われている.この水蒸気の起源海域の変動を考慮すると,水同位体比の変動から推定される気温変動の波形が変化する可能性がある.
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