第四紀研究
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36 巻 , 1 号
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  • 沢田 順弘, 中村 唯史, 楳田 禎久, Sun Yoon, 徳岡 隆夫
    1997 年 36 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    島根県大田市東方,波根地区で得られた掘削コアの標高-13.6mには厚さ2cmのトラカイト質軽石からなるテフラ(波根軽石)が挾まれる.波根軽石は鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)より下位にある.この軽石は火山ガラス,サニディン,単斜輝石,ケルスート角閃石,黒雲母,磁鉄鉱およびごく少量の斜長石からなる.本論文では,波根軽石および欝陵島のステージIVの軽石の全岩主・微量成分組成,および火山ガラスと構成鉱物の主成分化学組成を報告した.波根軽石と日本列島近辺の第四紀後期広域テフラの全岩,火山ガラス,鉱物組み合わせを比較検討した結果,波根軽石は9,300yrs BPの噴出年代を示す欝陵隠岐テフラ(U-Oki),すなわち欝陵島のテフラU-2より下位のU-4(下部)に対比可能である.波根軽石を挾在する掘削コアの堆積物は,完新世初期の海進期のものと判断されるので,波根軽石の年代の下限は10,000yrs BPより古くはならない.軽石の産状やコア試料から推定される堆積環境,および他地域のU-Okiの産状との比較から判断して,波根軽石は海流によって運ばれ,内湾の汀線付近に漂着したものと推定される.すなわち完新世初期の海水準は軽石層の挾在深度である標高-13.6mにあったものと判断される.汀線の位置を示し,しかも噴出年代が知られている漂着軽石の存在は,海水準の相対的変動を知る上で重要であり,また古海流の推定にも貢献する.
  • 肖 〓〓, 井内 美郎, 熊井 久雄, 吉川 周作, 近藤 洋一, 劉 東生, 安 蕋生
    1997 年 36 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    琵琶湖の湖底堆積物に含まれる石英の粒度分析,酸素同位体比測定,走査型電子顕微鏡観察を行い,20μm以上の粗粒石英は琵琶湖周辺地域から河川によって運搬されたものであることを明らかにした.琵琶湖の過去145,000年間の粗粒石英堆積量の変化は,数回の増減を繰り返している.2.00g/cm2・103yrより高い値を示す4つの時期と,低い値を示す5つの時期である.高い値の時期のうち,その3つは約128,000~78,000年BPの間にあり,それぞれ約122,000,101,000,82,000年BPにピークを有する.ほかの1つは約48,000~26,000年BPにある.深海底堆積物の酸素同位体比層序との関連から見ると,粗粒石英堆積量の増加する時期は,ステージ5のサブステージ5e,5c,5a,およびステージ3にそれぞれ対比できる.一方,減少する時期はステージ6,ステージ4,ステージ2とよい対応を示す.この粗粒石英堆積量の変化は,琵琶湖周辺地域における降水量の変化と密接に関連すると考えられることから,増加する時期には降水量の増加,逆に減少する時期には降水量の減少が推定できる.なお,ステージ1に当たる時期に,粗粒石英の堆積量があまり増加していない原因は,完新世に相当するこの層が不安定な堆積様式を示すなど,いくつかの原因があると思われる.これについては今後の課題として再検討する必要がある.
  • 吾妻 崇
    1997 年 36 巻 1 号 p. 29-42
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    淡路島北部の活断層について,空中写真(縮尺約1/10,000)の判読に基づき,変位地形の記載および活動度の再評価を行った.写真判読の結果,釜口断層と蟇浦断層を新たに認め,各断層において低断層崖や水系の屈曲がみられることを明らかにした.また,当地域の活断層を3つの断層系(淡路島東縁断層系・西縁断層系・横断断層系)に分類した.楠本断層と野田尾断層では,山麓線より平野側に低断層崖が存在する.1995年以前には野島断層に沿ってそのような低断層崖はみられず,1995年以前の活動(約2,000年前)により形成された低断層崖は侵食され消失したと考えられる.断層の活動度は,断層を横切る水系の屈曲量(D,単位m)と断層よりも上流の長さ(L,単位m)を楠本・東浦・野田尾・釜口・野島断層について調べ,関係式D=aL(松田,1975)のaの値から評価した.その結果,東縁断層系では楠本断層よりも東浦断層の方が活動度が大きいこと,西縁の野島断層の活動度は東浦断層に匹敵することが明らかになった.今回新たに認められた釜口断層bは逆向き低断層崖と考えられ,東側の海底には逆断層の存在が推定される.淡路島横断断層系では,横ずれ変位地形は認められず,西縁断層系の隆起側花崗岩類ブロックの移動に関係した逆断層的な変形が段丘面にみられる.
  • ディン ニザム, 吉田 充夫
    1997 年 36 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    アトック盆地ハロ川流域に分布する後期更新世のレス・古土壌堆積物(約130~16ka)の層序を検討し,篩い法および遠心分離沈殿法による粒度分析を行い,これらの結果から古気候解析を行った.本レス・古土壌堆積物は7層準に古土壌を挾む(上位よりPS-1~PS-7と命名)厚いレス堆積物より構成されている.粒度組成の特徴は,レスと古土壌で明瞭な差異を呈し,レスは一般に淘汰度が良く,unimodal,leptokurtic,negatively-skewedの組成を示すのに対し,古土壌は淘汰度がやや不良で,顕著なbimodal組成の傾向を示す.また,レスは相対的に細粒でシルト質成分に富むのに対し,古土壌は砂質成分に富む組成を示す.ハロ川のレス・古土壌堆積物の粒度組成(モード,Median粒径,シルト成分含有量,砂質成分含有量)の層序変化を検討したところ,PS-4古土壌層を境にして下部レス層と上部レス層に大局的に区分できることが明らかになった.下部レス層は砂質成分に富み,Median粒径が不規則に変化し,比較的粗粒であるのに対し,上部レス層はシルト質成分に富み,Median粒径が相対的に安定し,細粒である.また,モード組成の変化に注目すると,各古土壌層を境にしてレス堆積物の粒度組成に周期的な上方細粒化の傾向が認められる(図6).
    下部レス層から上部レス層への粒度組成変化,特にシルト含有量の変化とMedian粒径の変化は,後期更新世における本地方の内陸性気候の変化を示している可能性がある.すなわち,レスを形成した南アジア・モンスーン気候の変化がレスの粒度組成に反映していると考えることができる.中国黄土高原でのモデルを援用するならば,下部レス層の時代は夏季モンスーンが卓越していたのに対し,上部レス層の時代は冬季モンスーンが支配的であったと解釈される.この下部から上部への気候の変化は,北部パキスタンにおける最終間氷期から最終氷期への移行を示すものかもしれない.
  • 藤根 久, 小坂 和夫
    1997 年 36 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    生駒山地西麓地域(東大阪市河内地域)から産出する縄文時代後期および晩期の土器の中には,その胎土が暗褐色~茶褐色を呈し,角閃石類を多量に含むという特徴を有する土器群があることが知られている.これらの特徴を有する土器は,“河内の土器”と一般的に呼称されており,他地域の土器とはもちろん,この地域のほかの土器とも容易に識別される.
    これらの土器について,土器薄片を作成し,偏光顕微鏡下において観察と記載とを行った.その結果,(1)これらの胎土中の粒子の大きさ分布は5μmから250μmの範囲で,破砕物が一般的に示すフラクタル性(スケーリング則)を有すること,(2)粘土の質・量とも断層内物質の一般的特徴を有すること,(3)粘土は一般的に用いられていたものとは異なり,接着性が非常に高い特異なものであることが明らかになった.さらに,鉱物・岩石片からなる粒子には,破片状の尖った外形を呈するものが多く,断層岩に特徴的な粒内微小断層や微角礫状組織あるいはカタクラサイト状組織を呈するものもあり,顕著な不連続的波動消光や双晶面のたわみ・キングバンドや機械的双晶という変形岩・断層岩を特徴付ける組織が多いこと,が明らかになった.以上のような土器胎土の特徴から,その材料として断層内物質が用いられた可能性がきわめて大きいと考えられ,胎土材料としてほかの材料を考えることは困難である.その産地としては,岩石学的・地質学的特徴から生駒山地西縁を南北に走る生駒断層の破砕帯が最も可能性が高いものとしてあげられる.
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