琵琶湖の湖底堆積物に含まれる石英の粒度分析,酸素同位体比測定,走査型電子顕微鏡観察を行い,20μm以上の粗粒石英は琵琶湖周辺地域から河川によって運搬されたものであることを明らかにした.琵琶湖の過去145,000年間の粗粒石英堆積量の変化は,数回の増減を繰り返している.2.00g/cm
2・10
3yrより高い値を示す4つの時期と,低い値を示す5つの時期である.高い値の時期のうち,その3つは約128,000~78,000年BPの間にあり,それぞれ約122,000,101,000,82,000年BPにピークを有する.ほかの1つは約48,000~26,000年BPにある.深海底堆積物の酸素同位体比層序との関連から見ると,粗粒石英堆積量の増加する時期は,ステージ5のサブステージ5e,5c,5a,およびステージ3にそれぞれ対比できる.一方,減少する時期はステージ6,ステージ4,ステージ2とよい対応を示す.この粗粒石英堆積量の変化は,琵琶湖周辺地域における降水量の変化と密接に関連すると考えられることから,増加する時期には降水量の増加,逆に減少する時期には降水量の減少が推定できる.なお,ステージ1に当たる時期に,粗粒石英の堆積量があまり増加していない原因は,完新世に相当するこの層が不安定な堆積様式を示すなど,いくつかの原因があると思われる.これについては今後の課題として再検討する必要がある.
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