第四紀研究
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50 巻, 1 号
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2009年度日本第四紀学会賞受賞記念論文
  • 町田 洋
    2011 年 50 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    過去50年余り続けてきた私の研究を振り返ってみる.現在を理解するために,過去の年代やイベントに興味をもち,新しい時代から古い時代へ,また局地的から次第に広い地域の現象に,とくに山地浸食からテフラを使って火山活動史,そして広く第四紀の環境変化史へと焦点を移していった.その間,いくつかの「出会い」が研究を進める契機となった.テフラ,とくに広域テフラとの出会いと,研究のパートナーとしての新井房夫さんとの出会いは重要であった.テフラは,従来多様な問題でよく研究されてきたが,さらに未知の分野を拓く能力を秘めている.また第四紀や地球科学,および関連する環境問題を理解・発展させるには,広く社会に科学を普及し,参加を呼び掛けたい.
論説
  • 田力 正好, 高田 圭太, 古澤 明, 須貝 俊彦
    2011 年 50 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    利根川支流の鏑川流域における中位段丘面構成層の堆積年代を明らかにするため,被覆層を連続採取し,クリプトテフラの検出を試みた.そのうち,いくつかの層準で,角閃石とカミングトン閃石の屈折率,カミングトン閃石の主成分化学組成などの岩石学的特徴を記載した.その結果と,長野県北部の妙高火山群の1つである飯縄火山付近の露頭における飯縄上樽テフラ層,飯縄西山テフラ層の岩石学的特徴とを比較した.その結果,鏑川流域の中位段丘面を覆う細粒堆積物の最下部付近に,飯縄上樽テフラ,飯縄西山テフラの可能性が高いテフラが検出された.このことにより,鏑川流域の中位段丘は酸素同位体ステージ6に形成された堆積段丘である可能性が高いことが示された.本稿で飯縄上樽テフラが確認された地点は,これまで指摘されていた飯縄上樽テフラの分布域から南へ大きく外れている.これは飯縄上樽テフラが関東北部~東北南部にも広く降灰した可能性を示し,この地域の中期更新世の指標テフラとして,飯縄上樽テフラが広く利用できることを示す.
  • 小滝 篤夫, 加藤 茂弘, 木谷 幹一
    2011 年 50 巻 1 号 p. 35-48
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    京都府南丹市の神吉盆地で掘削された70 m長のボーリングコアの姶良Tnテフラ(AT)降灰層準や大山生竹テフラ(DNP)より下位の層準から,BY116, BY172, BY186, BY189, BY478の5層の結晶質テフラと,BY440という1層のガラス質テフラを記載した.このうちBY186,BY189,BY478は,苦鉄質鉱物の構成比,重鉱物の屈折率,普通角閃石や斜方輝石の化学組成などがよく似ていることから,それぞれ大山最下部火山灰層中のhpm1, gpm, cpmに対比された.また,火山ガラスの主成分組成の一致から,BY440は琵琶湖高島沖ボーリングコア中のBT72テフラに対比されることが確認された.AT, DNP, hpm1, BT72の推定噴出年代に基づき,堆積速度を一定と仮定すると,BY478すなわちcpmの噴出年代は約37~40万年前であり,神吉盆地の中部更新統基底の年代は約47~55万年前と推定される.
  • 村田 昌則, 鈴木 毅彦
    2011 年 50 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    火山ガラスと斜方輝石の主成分化学組成および屈折率に基づき,白河火砕流堆積物群とそれに伴う降下テフラの対比を試み,その結果に基づいて白河火砕流堆積物群の層序の再検討を行った.芦野火砕流堆積物は,銚子地域犬吠層群小浜層中に挟在する降下テフラOb5cと対比される可能性が高い.また,会津若松市赤井において芦野火砕流堆積物の下位に位置する赤井火砕流堆積物は,Ob5cの約4.8 m下位にある降下テフラOb5aU3と対比される可能性が高い.犬吠層群小浜層中に示される石灰質ナンノ化石基準面から,これらの火砕流堆積物の噴出年代はそれぞれ1.27~1.45 Maの間,1.45~1.51 Maの間と推定できる.隈戸火砕流堆積物がOb5cの約10.6 m下位に位置するSr-Kmdテフラ(1.51 Ma)と対比されていることから,会津若松市赤井に産出する火砕流堆積物の層位は,芦野火砕流堆積物と隈戸火砕流堆積物の間に位置すると考えられる.
短報
  • 佐藤 裕司, 鈴木 茂之, 松下 まり子, 百原 新, 植田 弥生, 加藤 茂弘, 前田 保夫
    2011 年 50 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海中部・出崎海岸(岡山県玉野市)の埋没泥炭層について,その堆積環境を再検討し,完新世の相対的海水準変動との関係を考察した.泥炭層は,完新世中期のおもに約7,000~6,600 cal BPの間に,塩性湿地で形成された.この時期は,瀬戸内海沿岸域における完新世の相対的高海水準期に相当し,泥炭層は約7,000 cal BPに海水準上昇が鈍化する一方で,当該地域に及んだ海進に伴って形成されはじめた.泥炭層は高潮位面と最高潮位面との間で形成されたと考えられ,当時の潮位差が現在と同程度であったとすれば,泥炭層形成期間中の約400年間に相対的海水準は0.27~1.27 m以上(妥当な最大値は0.5~0.7 m)上昇し,約6,700~6,600 cal BPに最高位まで達したと推定される.調査地域における局地的な沈降量を考慮しても,この間の海水準上昇はユースタティックな要因によると考えられる.
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