第四紀研究
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49 巻, 6 号
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2008年度日本第四紀学会学術賞受賞記念論文
  • 横山 祐典
    2010 年 49 巻 6 号 p. 337-356
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    海水準の変動は,第四紀の特徴である氷期—間氷期の環境変動を復元することのできる優れた指標である.海水準変動の研究をもとに,地球の近過去の中で最も大きな環境変動である,氷期から間氷期への移行期の気候変動について概観する.特に,最終氷期から現在の間氷期への変遷期と,一つ前の氷期から最終間氷期への変遷期について論ずる.なかでも地球の公転軌道要素,大気中の温室効果ガス,高緯度氷床量といった3つの主要な構成要素の変化の相互関係を中心に議論する.
論説
  • 田村 亨, 小玉 芳敬, 齋藤 有, 渡辺 和明, 山口 直文, 松本 弾
    2010 年 49 巻 6 号 p. 357-367
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    日本海側を中心に発達する日本列島の完新世海岸砂丘の層序は,砂丘の非活動期に形成されたと考えられるクロスナ層を鍵に,各地の間で対比され,過去の気候変動や人間活動の影響が指摘されてきた.しかし,露頭調査と,遺物やクロスナ層の年代に頼る手法の限界から,1980年代以降,大きな研究の進展は認められなかった.鳥取砂丘において地中レーダ探査を行ったところ,最大25 mの深度まで砂丘堆積物の内部構造が明らかになった.探査断面では,砂丘堆積物のフォーセット層理や海浜堆積物の層理,再活動面,侵食面,フォーセット基底面のユニット境界,古砂丘を覆うローム層,および地下水面が認められた.これらの内部構造は,おもに北西~北北西よりの秋~冬季の卓越風による砂丘の移動と堆積を明らかにしている.地中レーダ断面で明らかになる層序と年代測定との組み合わせにより,日本各地の海岸砂丘の詳細な発達過程が明らかになる見込みがある.
  • 伊藤 拓馬, 谷澤 新司, 公文 富士夫, 飯島 耕一, 坂本 竜彦
    2010 年 49 巻 6 号 p. 369-382
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    長野市信更町に分布する高野層のボーリングコア(TKN-2004)について,14~4万年前までの化学組成に基づく珪藻生産量の変動を検討した.高野層のSiO2/Al2O3比は,生物源シリカ量と相関を持つので,珪藻生産量の指標となる.珪藻生産量と花粉に基づく環境指標を比較した結果,珪藻生産量はおもに気温に支配された可能性が高い.珪藻生産は,深水層の栄養塩が有光層まで回帰する時に高まることから,気温が表層水温を規制し,湖沼の循環機構に影響を及ぼしたと考えられる.スペクトル解析では2万年周期が検出されるので,この現象は歳差運動に支配されているといえる.しかし,気温上昇よりも珪藻生産の増加が遅れる時期がある.これは気温上昇により形成される土壌起源の栄養塩が,湖内に蓄積する時間を反映する可能性がある.土壌起源の栄養塩を運搬するのは河川なので,土壌形成を促す気温のみならず,降水量も影響しているのであろう.しかし,高野盆地のような閉鎖的で集水域の小さな場所にできた湖沼では,降水量の影響よりも気温に影響を受けることが指摘できる.
資料
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