第四紀研究
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48 巻 , 2 号
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論説
  • 松島 紘子, 須貝 俊彦, 水野 清秀, 八戸 昭一
    2009 年 48 巻 2 号 p. 59-74
    発行日: 2009/04/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    埼玉県鴻巣市(旧吹上町)および行田市で掘削された2本のボーリングコア(吹上コア,行田コア)を用い,関東平野内陸部における中期更新世以降の地下層序を明らかにした.ボーリングコアの層相を記載し,粒度・礫種構成比・電気伝導度・全硫黄含有率・帯磁率を測定した.両コアは礫層とシルト~砂層主体の細粒層の繰り返しで構成される. 14C年代やテフラ・花粉分析結果に基づき,礫層と細粒層のセットを海洋酸素同位体ステージ(MIS)と対比した結果,これらの層相変化は,礫層を基底とする一連の海退—海進サイクルに伴う堆積環境変化を示していると考えられる.両コア周辺の地質断面図を作成し,時代ごとの層相の側方変化ならびに古地理を考察した.MIS 11およびMIS 9の海進時には,海域が鴻巣市・行田市以北にまで拡大し,海進最盛期以降は吹上には海浜が,行田には浅海底を埋積するデルタが形成されていたと推定される.また,吹上コアの礫層は,行田コアと比べて層厚が大きく,礫径も大きい.2本のコア間で認められる層相の地域差は,関東山地からの距離や利根川・荒川などの河川流路との位置関係の相違を反映すると考えられる.
2007年度日本第四紀学会シンポジウム
「考古遺跡から何がわかるか? : Geoarchaeology」
  • 佐藤 宏之, 出穂 雅実
    2009 年 48 巻 2 号 p. 75-76
    発行日: 2009/04/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 宏之
    2009 年 48 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2009/04/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    地考古学は,日本考古学ではまだ一般的ではないが,欧米ではすでに遺跡の調査デザインに組み込まれ,考古記録の解釈に活用されて,大きな成果をあげている.欧米の地考古学では,地質学的・地形学的な遺跡形成過程(自然的改変作用)を主とするアプローチが主流を占めているが,プロセス考古学以来の文化的改変作用の考古学的成果を取り込んだ,より包括的な概念として活用するのが望ましい.なぜなら,遺跡の形成過程は,文化と自然に截然とわけることが困難であり,両者は密接に関係するシステムであるからである.
    人類生態系概念をモデルとして,地考古学成立の過程とその有用性について解説する.地考古学的分析を加味しなければ,考古学的分析の基礎となる遺跡情報の正確な理解は困難である.地質学などと地考古学は,研究手法を共有するが,前者はより自然の形成プロセスやメカニズムの解明を目的とするのに対し,後者はあくまでも個別の遺跡の理解から出発し,人と大地の関係の解明を目的とするという学的理念と方法の違いを明示し,地考古学の意義について説明する.
  • 中沢 祐一, 出穂 雅実, 赤井 文人
    2009 年 48 巻 2 号 p. 85-96
    発行日: 2009/04/01
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    先史狩猟採集民の遺跡内での人間活動に関する推論を確立するため,北海道厚真町上幌内モイ上部旧石器遺跡(14,400~14,800 yrs BP)の研究を行った.はじめに,パリンプセスト(複数の行動エピソードが空間的に重複することによって生じた考古学的記録)が生じる確率を予測することを目的とした,占拠地点への居住強度・居住集団の規模・堆積率を変数とする形式モデルを提示した.遺跡の層序,堆積物,年代,遺物分布,石器組成をのべた上で,存在が推定された不可視的な炉(H-2)と発掘時に確認された炉(H-1)のあいだの垂直的位置に違いがないことについて,堆積率と居住強度の関係から説明を加えた.次に,二つの炉(炉址 : H-1と,不可視的な炉址 : H-2)の利用についての仮説 : 同時利用(プロセスA)と断続利用(プロセスB)を提示し,それぞれについて踏みつけが生じた場合の遺物分布パターンを予測した.垂直分布と二つの炉を中心とする被熱遺物の平面分布の定量的検討から,狩猟採集集団が二つの炉を同時に利用したこと(プロセスA),そして居住強度(居住期間と居住頻度)は低いとみなされることが示された.さらに,二つの炉の周りにおいて石器石材(黒曜石・“硬質頁岩”・砂岩)の消費形態には相異があることから,それぞれの炉に結びついた分業が想起された.分析結果を形式モデルに利用し,パリンプセストの生じる確率を評価すると,上幌内モイ遺跡がパリンプセストである可能性は中程度であったといえる.しかし分析結果そのものが示す居住強度の低さは,当遺跡がごく短期間利用されたことを示唆している.本研究は,上部旧石器狩猟採集民の短期居住開地遺跡の場の使い方にみられる行動的多様性を理解するうえで,貴重な事例と評価できる.
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