第四紀研究
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38 巻, 6 号
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  • 山崎 晴雄, 太田 陽子, 松島 義章
    1999 年 38 巻 6 号 p. 423-425
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
  • 石橋 克彦
    1999 年 38 巻 6 号 p. 427-434
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    相模湾西部周辺におけるフィリピン海プレートの沈み込み口は,相模トラフ中軸~足柄平野ではなく,相模海盆の南縁付近である.したがって,フィリピン海プレート上面の深さは,足柄平野直下ではすでに10km以上ある.この沈み込み口は箱根火山北縁の古い沈み込み口にジャンプするが,そこが現在衝突境界なので,必然的にほぼ南北走向のフィリピン海プレート内の「西相模湾断裂」が生じる.真鶴海丘南縁断層は,大規模な力学境界の覆瓦断層としての実在は疑問である.
  • 小山 真人
    1999 年 38 巻 6 号 p. 435-446
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    明治時代およびそれ以前における東伊豆単成火山地域の群発地震史を文献史料から調べ,噴火を類推させる地変記録についても検討をおこなった.群発地震については4事例(1868または1870年,1816~17年,1737年,1596年),噴火可能性については2事例(1854年,1777年)を検討した.1868(または1870)年の地震記事は,伊東付近で起きた群発地震記録と考えてほぼ間違いないこと,1816~17年の地震記事についても伊東付近の群発地震記述である可能性を指摘した.19世紀以後,伊東付近においては上記2事例をふくめた1816~17年,1868(または1870)年,1930年,1978年~現在の4回の群発地震記録(すなわちマグマ貫入事件の記録)が残されており,約50~60年間隔で起きてきたようにみえる.事例数が少ないため確かなことは言えないが,1978年以来現在も間欠的に続いている群発地震は,間欠的とはいえ21年以上にわたって継続している点において,過去の群発地震と特徴を異にしている.噴火の可能性については,検討した2事例とも否定的な結果が得られた.
  • 山崎 晴雄, 水野 清秀
    1999 年 38 巻 6 号 p. 447-460
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    国府津・松田断層の地震テクトニクス上の位置づけに関しては,現在二つの異なる見解が示されている.一つは,相模トラフ内のセグメントとは独立に活動し,丹沢山地や大磯丘陵を持ち上げる大磯型地震を引き起こすというものである.もう一つは,関東地震を200~300年ごとに引き起こすプレート境界断層から分岐した副断層の一つであり,関東地震と連動することなしに大地震を起こすことはないという考えである.これを検証するため,断層崖の麓で5個所のトレンチ発掘調査を行い,最新の断層活動史を復元した.完新統に明瞭な断層変位は認められなかったが,地辷りや崩壊堆積物から3,000年間に4ないし5回のイベントが識別された.このうち,大規模なイベントは約3,000年前の1回だけで,これが同断層の活動を示すと考えられる.ほかの小規模なイベントは,相模トラフで発生した大地震の可能性があるが,その頻度は数百年という短い間隔ではない.
  • 棚田 俊收
    1999 年 38 巻 6 号 p. 461-467
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    神奈川県温泉地学研究所によって決定された1990年から1998年の9年間の震源データを用いて,「神奈川県西部地震」の想定震源域である相模湾北西部における地震活動と地質構造との関係について考察した.
    地震活動の高い地域は,神奈川・山梨県境や箱根火山のカルデラ内に分布し,それぞれ丹沢山地の隆起運動や箱根火山の火山活動に関連していると見られている.箱根古期外輪山の山麓東部では,地震が深さ10~20kmに発生しており,震源の深さは箱根火山中央火口丘から山麓東部へと行くに従って徐々に深くなっている.この特徴は,火山体近くの熱的構造を反映し,地震発生層の厚み変化を表していると考えられる.
    一方,伊豆地塊の衝突によって形成された足柄山地や,断層で囲まれた大磯丘陵,湯河原や多賀火山等の第四紀火山地帯では,地震活動は相対的に低い.また,神縄断層や国府津-松田断層などの活断層付近では,浅い地震は観測されていない.
  • 加藤 茂
    1999 年 38 巻 6 号 p. 469-477
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    相模湾には,フィリピン海プレートと東北日本のプレートとの境界が横切ると考えられている.また,1923年の関東地震の震源が相模湾にあり,神奈川県西部地震も隣接して発生すると考えられている.相模湾については,これまで多くの手法で頻繁に海底地形・構造探査が行われてきた.相模湾の海底地形は複雑で,多くの海丘,海底谷,深い相模トラフ,南西部の海底火山からなる海丘群など,さまざまな地形が見られる.
    反射法あるいは屈折法による探査結果からは,相模海盆において伊豆半島側から北東方向に斜めに傾き下がる基盤反射面が見られ,またトラフを埋める厚さ4kmを超える堆積構造など,海底から深さ約5~10kmまでの構造が明らかとなった.しかし,これらの記録からは,相模トラフにおけるフィリピン海プレートの沈み込みを明瞭に示す構造や,相模湾西部に西相模湾断裂を示唆する構造は得られていない.
    相模湾のテクトニクスの解明は,関東東海地域の地震防災の観点から重要であり,今後さらに効果的かつ詳細な海底探査が望まれる.
  • 太田 陽子
    1999 年 38 巻 6 号 p. 479-488
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    三浦半島を横切る衣笠,北武,武山の3断層はほぼ平行して走り,いずれも第四紀後期以降には右横ずれ変位によって特色づけられている.最近のトレンチ調査やボーリング調査によって,これらの断層の完新世における活動史に関する情報が蓄積されてきた.活断層である確証がなかった衣笠断層については,完新世に繰り返し活動した活断層であることが確実となった.北武断層の最新活動期は約1,200~1,400yrs BP,武山断層のそれは2,000~2,200yrs BPで,それぞれ独自に活動した.再来間隔は,北武断層では1,500~2,500年,武山断層ではやや不規則であるが,平均約2,000年となり,いずれも次の活動に近づいている活断層である.変位地形がやや不明瞭な衣笠断層では13,000年間に2回の活動を記録しているにすぎない.どの断層も東部での変位地形が明瞭であり,東方海底に延長する可能性を示す.これらの断層は地下では,おそらく一つに収斂する断層帯を形成しているものと思われ,断層帯としての活動間隔はより短かくなるであろう.
  • 藤原 治, 増田 富士雄, 酒井 哲弥, 入月 俊明, 布施 圭介
    1999 年 38 巻 6 号 p. 489-501
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    相模トラフ周辺で過去1万年間に発生した地震イベントを,房総半島南部と三浦半島に分布する4つの沖積低地の内湾堆積物から検出した.
    堆積相解析の結果,基底に侵食面をもち,上方へ細粒化する砂層や砂礫層によって,自生の貝化石を含む均質な泥質層の堆積が中断されるイベントが,各沖積低地で10回以上識別された.また,一部の砂層では,海と陸の両方向の古流向が見られる.内湾堆積物に含まれるこれらの粗粒堆積物は,いわゆる“イベント堆積物”である.
    タフォノミーの視点からの化石群集の分析によって,イベント堆積物の供給源や運搬・堆積プロセスが推定された.イベント堆積物は,内湾泥底と岩礁など,通常は共存しない異なる環境に棲む貝化石群集が混合しており,湾周辺からの堆積物の取り込みと内湾底への再堆積を示す.湾奥の汽水域や湾中央で堆積した泥層に挾まれる2枚のイベント堆積物は,外洋性の貝形虫化石を多量に含み,外洋水が湾奥に侵入したことを示す.これらは津波堆積物の可能性がある.
    137個の高密度の14C年代測定によって,7枚のイベント堆積物が相模湾沿岸で広域に追跡され,乱泥流が南関東沿岸の広域で同時に繰り返し起きたことが推定された.5枚のイベント堆積物は,南関東に分布する完新世海岸段丘の離水と近似した年代を示し,津波起源であることが強く示唆される.
    化石群集から復元した古水深変動から,イベント堆積物を挾む2つの層準で急激な海面低下が見いだされた.このイベントは海底の地震隆起と地震に伴う津波を示すと考えられる.
    地層から地震イベントを検出することは,古地震研究に有力な情報を提供し,地震テクトニクスの新たな研究方法として貢献すると考えられる.
  • 松島 義章
    1999 年 38 巻 6 号 p. 503-514
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    相模トラフの北東側に位置する大磯丘陵や三浦半島は,完新世においても地殻変動の活発な隆起地域で,3~4段の完新世海成段丘が発達する.その中で,三浦半島南部に分布する段丘は,海食洞窟や考古学資料などから約6,000yrs BP,約4,000yrs BP,約3,000yrs BPの汀線や離水が明らかとなった.三浦海岸に対応する3回の間欠的な地殻変動のあったことが分かった.
    相模湾北東沿岸は顕著な隆起を示し,その背後に「秦野-横浜線」の沈降帯が存在しているが,完新世ではその軸方向が南にやや下がり,秦野-大船-金沢八景を結んだ線で把えられる.
    国府津-松田断層を挾んで大磯丘陵南西部一帯は,約6,500yrs BPに離水したことが貝類群集,14C年代や鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah)によって確認された.この離水を起こした変動では,国府津-松田断層に変位が認められず,約6,500yrs BP以降における本断層の活動で大磯丘陵の著しい隆起,森戸川低地の緩やかな沈降となっている.足柄平野南西端の小田原は約4,500yrs BPには離水しており,海成層が+5mを超えて明瞭な隆起を示す.その上限高度は,東の国府津-松田断層が位置する森戸川低地に向かって序々に沈降する.
    相模トラフの南西側に位置する伊豆半島では,約6,000yrs BPの旧汀線を示す証拠を陸上で見出だすことができず,縄文海進は半島北部で約4,000yrs BP,南部では約3,000~2,000yrs BPまで存続していて,その後に隆起に変わっている.
    相模湾沿岸の溺れ谷低地の海成層中には,多くの津波堆積層の介在が確認され,その形成年代から沿岸に分布する海成段丘の離水時期を解明する手掛かりが得られた.今後は,この研究手法によって相模湾沿岸の詳しい地殻変動史を明らかにすることができよう.
  • 海津 正倫
    1999 年 38 巻 6 号 p. 515-524
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    古地震イベント,とくに内外の津波堆積物に関する研究を渉猟し,従来の研究によって明らかにされたそれらの特徴について整理・検討した.古地震に伴うイベント堆積物にはさまざまなものがあり,顕著な特徴をもっている.これまでの研究によって明らかにされた沖積層中の古地震イベントには,1)沈降・離水などに伴う堆積環境の変化,2)液状化に伴う噴砂痕や重鉱物の集積などの堆積構造の変化,3)タービダイト・水中土石流などの重力流による海底・湖底堆積物の二次的堆積,4)津波堆積物の堆積などがある.
    これらの堆積物の認定にあたっては,広域に共通して分布するなどの地域的特性や同時性などが注目される.これらの堆積物は通常の堆積物に比べて,粗粒な砂質あるいは砂礫質堆積物であり,上方に向けて細粒化する級化構造をもつことが多く,外洋から内陸に向けて薄くなり,細粒化する傾向をもつ.また,津波堆積物の場合には,基底にフレーム構造をもつことがあり,海水起源の微化石やイオンなどを多く混入するという傾向もみられる.
  • 熊木 洋太
    1999 年 38 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    地震性の地殻上下変動が顕著な地域では,完新世の段丘,特に海成段丘の形成は地震時の隆起を反映していると考えられることから,その形成史や高度は地震テクトニクスにとって重要な情報を与える.相模湾沿岸においては,広域に分布する完新世最高位段丘面の高度分布は,フィリピン海プレートのもぐり込みないし伊豆半島の衝突と,それによる陸側のプレートの圧縮変形を示している.また,この地域では約6,000年前の完新世最高位段丘面とそれ以下に計3~4段の段丘面が認められる.その高度分布および1923年の関東地震の地殻上下変動量などから,房総半島では平均500~600年程度の間隔で隆起現象を伴う地震が発生してきたことなどが推定される.しかし,高度の精度や形成年代の解像度についての問題もあり,相模湾周辺の各地域の完新世海成段丘形成史の統一的な説明は今後の課題である.
  • 上本 進二, 上杉 陽
    1999 年 38 巻 6 号 p. 533-542
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    相模湾周辺の遺跡から,地震の痕跡(地割れ・噴砂・地すべりなど)の検出例が増えている.それらをもとにして,過去の地震発生時期を以下のように推定した.
    伊豆半島北縁断層地域では,(1)約5,000年前,(2)約3,000~2,800年前,(3)3,000年前~AD 100,(4)AD 687~750年,(5)after AD 1707(1853年の可能性がある)の5回の地震跡が認められた.
    丹沢山地南東縁から大磯丘陵地域では,(1)4世紀または5世紀後半~6世紀前半頃,(2)AD 687~750年,(3)8世紀後半,(4)9世紀の地震跡を確認した.相模川以東~三浦半島地域では,AD 100~400年の地震跡が海老名-鎌倉を結ぶ線上に集中する.
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