第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
53 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
2012年日本第四紀学会学術賞受賞記念論文
  • 兵頭 政幸
    2014 年 53 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2014/02/01
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
    近年,地磁気逆転期の百年〜千年スケールの磁気・気候層序が明らかになってきた.大阪湾掘削コアの海水準プロキシは海洋酸素同位体ステージ(MIS)19の歳差周期シグナルをもつ.同コアでは,マツヤマ−ブリュンヌ(MB)逆転トランジションは海水準のハイスタンド19.3以前に小反転エピソードで始まり,ハイスタンド19.3とロースタンド19.2の間の海面低下期に終了する.終了直前には小反転が多発する.気候の最温暖化はMB逆転直後,最高海面の約4,000年後に起こる.同様のMB逆転磁場の特徴が中国レス,インドネシア・サンギランの更新統,歳差周期シグナルをもつ深海底堆積物の記録でも見られる.MB逆転直後の最温暖化はバイカル湖,ヨルダン峡谷,地中海沿岸でも起こっている.MIS31でも最高海面から4,000年遅れて地磁気逆転直後に最温暖化する.これら温暖化の遅れは,逆転期に増加した銀河宇宙線が誘起する寒冷化が最高海面付近で起こったことが原因の可能性が高い.
論説
  • 小岩 直人, 葛西 未央, 伊藤 晶文
    2014 年 53 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 2014/02/01
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
    青森県北西部に位置する十三湖の沿岸付近においてボーリング試料を採取し,堆積物の層相観察,珪藻分析,イオウ分析,粒度分析,14C年代測定を実施することにより,縄文海進以降の十三湖の地形環境および湖水環境の変遷について検討した.最終氷期以降に陸域であった調査地域は,約9,000calBP以降に縄文海進がおよんで水域となり,7,000calBP前後には塩分の高い海域となった.十三湖は,7,000calBP以降の砂州の発達により日本海と隔てられることで形成され,約6,000calBP以降には淡水の影響が強くなり,とくに5,000〜2,000calBPには淡水の影響の極めて強い湖沼であった.この時期の十三湖は現在よりも水深が大きく,流入した海水が湖底に滞留し,表層に淡水が存在する成層状態となっていたことが推定された.その後,水深が小さくなったため風波による湖水の攪乱が生じやすくなり,遅くとも約1,000calBPには汽水環境が成立していた.
  • 藤原 治, 入月 俊明, 大林 厳, 平川 一臣, 長谷川 四郎, 内田 淳一, 阿部 恒平
    2014 年 53 巻 1 号 p. 35-53
    発行日: 2014/02/01
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
    伊豆半島北東岸の静岡県伊東市における6,300BCから2,000BCにかけての相対的海水準変動を,ボーリングデータを用いて復元した.相対的海水準は,当時の海底の標高を示す堆積曲線と古水深のデータを総合して推定した.堆積曲線はコアIT-1(30m)とコアIT-2(10m)について合計37個のAMSによる14C年代測定値を使って作成した.古水深は,コアIT-1,IT-2の堆積相と貝形虫化石および貝化石の解析結果から復元した.堆積相の解析には,既存のボーリングコア(合計23本)と14C年代測定値も参考にした.これらのデータから,合計6つの海面高度のコントロールポイントが得られた.復元された相対的海水準変動曲線からは以下のことが推定される.海面高度は6,300BC頃には−16m付近にあり,5,900BC頃には−13m付近まで上昇した.完新世の最高海面期は4,800BC頃に認められ,現在よりも約3〜4m海面が高かった.海面高度は4,600BC頃には+1.5m,2,900BC頃には+1mとなり,2,000BC頃には現在とほぼ同じになった.本研究で復元された6,300BC〜4,800BCの相対的海水準上昇量は,地殻上下変動が小さい地域に比べて10m以上大きい.このことは,調査地域周辺でのローカルな地殻上下変動を反映しているのかもしれない.
短報
  • 谷川 晃一朗, 澤井 祐紀, 宍倉 正展, 藤原 治, 行谷 佑一
    2014 年 53 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2014/02/01
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
    東北地方北部の太平洋岸における長期間の地震・津波の履歴およびその規模を明らかにすることを目的に,青森県三沢市の低湿地において津波堆積物調査を行った.その結果,シルト層および粘土層中に挟在する2層のイベント砂層を検出した.上位のイベント砂層は人為的な擾乱によりその成因は特定できない.下位のイベント砂層は4,800〜2,900calBPに堆積したと推定され,海岸線から内陸約700mの地点から約1kmにわたって連続的に堆積し,内陸に向かって細粒化する.また,砂層中とその直上の粘土層中には淡水生珪藻だけでなく汽水生珪藻も含まれている.このイベント砂層は津波により形成された可能性もあるが,上位の地層からも汽水生珪藻が産出することから,背後の海成段丘構成層からの流れ込みによって形成された可能性も否定できない.また,周辺地域でこのイベント砂層に対比される津波堆積物の報告はなく,イベント砂層の成因を明らかにするにはさらに調査を進める必要がある.
feedback
Top