栃木県喜連川丘陵では,最終氷期に形成され,その後堆積物に埋積されたガリーの断面が,多くの露頭で観察できる.その化石ガリーを埋める堆積物の層相およびテフラ層との層序関係から,ガリーの埋積開始時期と埋積過程におけるガリー底への斜面物質移動様式の変化を明らかにした.さらに,それらに基づき,当時の気候変化について推定を試みた.
最終氷期中頃の温暖期に,谷壁斜面に短いガリーが多く形成された.赤城鹿沼軽石(約3.2万年前)降下後,ガリー上流部では,ガリー壁の崩壊などによりガリー底に流入する堆積物を排出できなくなり,ガリーの埋積が始まった.これは,亜氷期に入り,降雨強度が低下したためと考えられる.男体小川スコリア(姶良Tn火山灰層の上位,約2.2万年前)降下前頃になると,ガリー壁の崩壊は起こらなくなり,ガリーの埋積はクリープ的移動を主体として進行した.これは降雨強度の一層の低下によると考えられる.このような,最終氷期中の約3万年前以降に生じた化石ガリーの形成と,埋積過程における斜面物質移動様式の変化は,テフラ等の風成堆積物の降下・堆積に影響されたものではなく,2段階で進行した降雨強度の低下を反映している.
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